紙の本
異常なのに共感
2022/08/28 14:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:悟り小僧 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公・奈月が「ポハピピンポボピア星人」として昇華されていく過程は、異常であり、狂気である。
しかし、その根底にはいたって一般的で共感可能な感情がある。家族からの疎外感や、変えようのない辛い現実に対して、何とかして我慢して「生き延びる」というのは誰しも経験のあることだろう。ただ彼女の場合、辛さの度合いが甚だしく、我慢思考が少しばかり強かっただけである。
そう考えると、「ポハピピンポボピア星人」を生んでいるのは、社会におけるありふれた理不尽や、欺瞞や、抑圧なのかもしれない。
おそらくそうした「はみ出しもの」としての「宇宙人」が生まれることは、避けられない。本質的に問題なのは、「宇宙人」を「地球星人」へと教化しようとし、あるいは排除しようとすることである。私たちが真に多様性ある社会を信奉するならば、「宇宙人」を「宇宙人」として社会に包摂するような営みが求められるのではないだろうか。
紙の本
どうしてこんなに偏ってしまうのだ。
2021/11/21 14:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日のちょっとした違和感も極限に偏ってみると、ぞっとするほどのことになってしまう。でも違和感がない世界なんて、やっぱりそれはそれで気持ちが悪いでしょう。むしろそのほうが息苦しいでしょう。偏らせてしまったのは、もしかしたら平均的な考えからはみ出せない側かもしれない。だから、私の普通にあなたの普通ばかりを押し付けないで、この世界に生きている命は全部違って当然なんだ。
紙の本
地球星人
2021/05/31 02:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
序盤と終盤の具体例は、
今回も極端に振り切っていく。
極端と極端に挟まれた中盤の
現実をぞわりと撫でていく感じがたまらない。
正常という異常。
常識という洗脳。
村田さんの発するメッセージとしては、
「消滅世界」ですべて受け取れたと思っているので、
心の隅のラジオは常に村田さんにチューニングしているイメージで、
次のシグナルを受け取れる状態で生きていきたい。
紙の本
I'm an alien.
2021/04/30 10:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヤマキヨ - この投稿者のレビュー一覧を見る
スティングの"Englishman in New York"では「僕はコーヒーではなく紅茶を」とアメリカ文化の中では異国の人になる英国人がうたわれていました。alienは異国人、外国人。映画がヒットしてからは宇宙人、異星人としてもつかわれるようになりました。
この作品はまさにエイリアンを描いた作品と言えるでしょう。主人公は地球星人の中で違和感を感じながら生きる女性。「普通」の人々の中で暮らす息苦しさを扱っているのは「コンビニ人間」にも通底するものがあると思いますが、本作では地球星人の予測を超えるまさかの結末です。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Chii - この投稿者のレビュー一覧を見る
コンビニ人間と同様、村田さんの問題視する点が的確すぎる。ただ、今回は私にとってはグロテスクな表現が多すぎた。 誰もがあたりまえのこととして目を瞑っていることが浮き彫りになった、そんな本。
投稿元:
レビューを見る
村田さんの世界には今作もグラグラさせられました。
でも、これまでと違ってどちらの側にも全く寄れなかった…「地球星人」も「ポハピピンポボピア星人」も、わたしとは違うなぁ…と思ってしまいました。いつもなら(こっちのほうがわかるかも)となるのに。
安易にどちらかの立場を選ばせない村田さん流石です…凄い。
「恋愛宗教の信者」という言葉はしっくりきました。恋愛、無いよりある方が良いなとは思うのですが、かと言って無理矢理したり「絶対やった方がいい」みたいに押し付けるのは気持ち悪いと思う。
「結婚するための相手を探す」というのも腑に落ちないのでやらないけど、奈月みたいな考え方ならちょっとわかります。型にはまるため、かぁ。
小さい頃は性的なものは禁止され遠ざけられてるのに、適齢期(?)になると「やらないほうがおかしい」と思われるのも違和感覚えます。まぁ、妊娠があるので仕方ないとは思うけど、正しい性教育するほうが大事。わたしの頃はまだギリギリ結構ちゃんと性教育やってたけど(日本での中絶のやり方とか男女一緒に習った高校時代)、現代はもっとダメな感じになってると小耳に挟みます。
「なにがあってもいきのびること」。地球にあって異星人として生きのびるのは過酷だけれど、独りじゃないのでどうにか……どうか、と思わずにはいられません。
これからもっと凄まじくなっていくのかなクレイジー沙耶香ワールド。目が離せません。
投稿元:
レビューを見る
価値観を押し付けることの危なさや、周りから理解されないことへの苦しさや、子供を制する大人のずるさが書かれていました。子供の頃に受けた周りからの扱いは、良くも悪くもその人の将来を大きく左右してしまう。子供がもっと大人を信じられて、かつ自分の居場所をみつけられるような社会にならないとな、と思った。一人の少女が壊れていって大人になって仲間を見つけてやっと前進するんだけど、その方向性は地球星人の私からみたら直視できなかった。かわいい表紙とは裏腹に夜中にみると寝れなくなるので注意。
投稿元:
レビューを見る
秋級っていいところだなー。田舎とか親戚とかのしがらみもまあ面倒だけど、人間臭くていいなー。
なんてのんびり構えていたら、大変なことになった!
何が起こるのか、何が正しい?のか、ページを捲る手が止まらず、あっという間に読み終えてしまった…
終盤のあの場面は、ちょっと正視できず、かなりの飛ばし読み。
衝撃的過ぎて、内容忘れないと思うが、重いのか軽いのか…判断しかねて、ハマりそう。
投稿元:
レビューを見る
今後も地球星人として生きていくであろう自分としては、とんでもない作品を読んでしまった感。
この工場は宇宙人が彼ら本来の生き方をするにはとてもやりづらいよう設計されている。
地球人としておとなしく生きていくほうがおそらく負担も軽く合理的なので、私はそうする。
投稿元:
レビューを見る
地球星人は工場で2種類の道具として働いていて,工場の部品になることを強要されているという宇宙人の視点を,少女期の体験から持つようになった奈月.奈月はそうなれない自分を不良品だと感じ,部品になるために早く洗脳されたいと願いながら,工場のきまりから逃れたがっている夫の智臣と,部品になったフリをして暮らしている.奈月と智臣は元異星人で子供の時に奈月と結婚した従兄の由宇との3人で,限界集落にある祖父母の家に異星人として暮らし始める.
なるほど,宇宙人の視点から観れば地球星人の振る舞いは非合理的なのかも知れない(もっとも,異星人も人間と同じような進化の産物なら,2種類の道具として工場で部品となって働いているような気がするが,・・・).工場の部品の中では,変態塾講師の伊賀崎よりも姉の貴世のほうが嫌悪感が強い.
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに読み応えのある文章に出会えた、と喜びを噛み締めながら読み進めたけど…。
狂気なのか、そうじゃないのか。
最後はとんでもない世界に連れて行かれた。
いくつもの突き刺さる言葉たちが、自分も同じ世界の人間なのかもしれないと思わせてきて、味わった事のない読後感に包まれた。
投稿元:
レビューを見る
当たり前とされている倫理観を、正面からあっさり否定するスタイルが痛快。
現実離れしていそうで、結構考えさせられる一冊。
投稿元:
レビューを見る
根源的問いと重いストーリー、そして解き放たれた後半の爽快感と若干の滑稽さ。どうしてもラストにかけてのボルテージの高まりに目が行きがちだが、やはり随所における表現が濃厚で心摑まれる作品。
「お腹の中で、私たちは互いの体温を静かに食べていた。」
投稿元:
レビューを見る
自分を魔法少女と信じる奈月と自分は宇宙から来たと信じる少年。
この2人の小さな恋から始まる。
そして、大人になった奈月。
どこか社会から浮いていて、馴染めない。
…『地球星人』か否か。
衝撃的すぎて、しばらく感想を書けずにいました。
実に村田沙耶香さんらしい作品。
読んでいるうちに…どこか『地球星人』を離れた場所から観てる自分がいた。
正直、読んでてしんどくなるとこもあります。
が、あえての★4で。
投稿元:
レビューを見る
「コンビニ人間」の次の長編、ということにまずは少し驚く。
思えば「コンビニ人間」フィーバーのあと、遡るようにして全作を読んだ、この数年濃密に村田沙耶香を追っていたわけだ。
ようやくついていけるようになったわけだ……文庫派なので数年遅れだけど。
表面的には「コンビニ人間」の「語り手の変」からの派生。
ただし魔法少女とかぬいぐるみ(モロにまどかマギカのキュウベエじゃん)とかステッキとか食虫とか殺人とか毒親とか、作者の諸作の集大成とも寄せ集めともいえる。
(いい意味でも悪い意味でも)既視感もありつつジワジワ前進している手ごたえが、ある。
目的は「普通の幸せ」への強烈なアンチたろうとする意識。
解説で小林エリカが「これから人類のことを裏切るかもしれない」という芥川賞スピーチを引用していた。
また検索したら「応援してくれている人を裏切るような言葉を探すかもしれない」という言葉もあった。
そうだ!
突き抜けてくれ!
そこらの町にも村にも跋扈している「普通の人たち」がでんと尻を落ち着けて動かない常識という畳を引っぺがしてくれ!
読んでいる常識人を揺さぶってくれ!
というのが作者への期待。
「ポハピピンポボピア星人」というネーミングは安易なんじゃ……性的虐待というのは安易を通り越して書き割りっぽいんじゃ……という前半の隔靴搔痒を、優に超え、高らかに人肉食や単性生殖を歌い上げる作家でいてくれ! と。
作者が目論んだ「宇宙人の目のインストール」は、読後否応なしに完了している。