高校の世界史教科書がキーワード。歴史教科書はなぜ研究成果と乖離した内容なのか、研究者による論集です。
2018/07/26 12:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世間一般の歴史観を形作る指標と言うべき高校世界史教科書の記述を、歴史学者はどう評価する?又、教科書を使わせる側と使う側双方が経てきた歴史や事情にも触れ「歴史学的な研究対象」として高校世界史教科書界隈を論じた稀な一冊。高校地歴で教員免許を取ろうとしている学生さん必読の書。
あるべき教科書を真摯に探る
2023/12/27 14:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校世界史の教科書に研究者からするとおかしな記述が散見されるというのはよく言われる。本書はそれをあげつらうようなものではなく、あるべき教科書を真摯に探るものである。
投稿元:
レビューを見る
面白いです。主に以下の2つの部分からなる。1.色々な時代、地域の専門家から見て、教科書の記述が正しいかという話
2.教科書の検定、採用、入試問題など、教科書の作成、利用に関する話
1は、多数の人が書いているが、最初の長谷川修一氏による古代イスラエル史の論考が、一種の基調講演になっている。
各社教科書における出エジプトやダビデ、ソロモンの記述を比較しつつ、世界史という教科の成り立ちや、教科書作成事情にも触れらていて、一読に値する。
世界史の教科書の古代イスラエル記述って、古事記、日本書紀を歴史の時間に史実として教わるようなものだったのね。
歴史の記述は、客観的ということはあり得ず、結局は歴史感や解釈としてしか存在しないと思うが、教科書に暗黙のうちに含まれるバイアスは知っておきたいですね。
後半の2については、教科書作成の過程なんて知らないことなので興味深くはあるが、テーマは良くても、核心に迫っていない印象。例えば、入試の分析は戦前のものだけれど、やっぱり知りたいのは今どうかということかなと思うし、教科書作成と言いつつ出版社側の意見は無し。ま、無いものねだりをしてもしょうがないですかね。
しかし、世界史が今時の選択教科として人気が無いって知らなかった。共通一次(年がばれる)では、倫社、政経の方が簡単だから有利とは言われていたけど、文系は!日本史、世界史が王道だとおもってましたわ。
投稿元:
レビューを見る
12章ぶんの歴史学×高校世界史教科書論が読める。私は長谷川修一の聖書考古学観点から世界史教科書の問題点を指摘する第01章(003–024)を目当てに読んだが、全体としても、新課程に入る前の各社世界史教科書の特徴(長所/短所)を窺い知ることができ、参考になった。また、第10章(新保良明)の教科書調査官の職務説明は、他ではなかなか読めないタイプの記述だ(237–245)。
第12章の矢部正明による2018年時点での検定済高校世界史教科書7種の学校採用率基礎データ(via 内外教育2017-01-20)とそれらに対する寸評は、その後の新課程の教科書を直接論評したものではないが、2024年時点でも参考になった。山川詳説世界史Bのシェア率は新旧版合わせて52.3%と高い。帝国書院(新詳世界史B)7.8%、実教出版(世界史B)6.2%、山川新世界史1.0% について“構成、叙述に至るまで編集に「進取の意思」をより感じる”(p. 245)と述べている。これらの編集方針は帝国書院世界史探求/実教出版世界史探求/山川世界史探求新世界史にそれぞれ引き継がれている。