- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
7 件中 1 件~ 7 件を表示 |
不意の声
2023/03/19 18:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
リアリズムの文体によって、恐ろしい内容が淡々と記されている。しかも繰り返しの記述の意味に気づかず、解説でようやくわかった。小説の楽しみを味わうには、自分が少し未熟だったかな、という感じ。鈴木貞美の言うように、何度も読み返すことが小説を読むことの楽しみかもしれない。
本当に恐ろしい小説ばかり書く河野氏
2022/04/04 12:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当に恐ろしい小説ばかり書く河野氏、この作品も出だしは亡父が幽霊になって姿を表して主人公を見守っていくという心温まる作品かと思っていたが、そんな生易しいものではなかった。亡父が三本の指を突っ立てたまま、眼鏡の中から鋭く主人公を見つめる、主人公は亡父が全くうまくいっていない夫婦生活に見切りをつけて離婚をすすめていろのだと思っていたのだが、その3本の指は3人を往かせろという怖い指令だったのだ。母、昔の男、その息子、その三人を本当に彼女は手にかけたのか、そこは読み方一つではないのだろうか、まず読み終わったときには何ということだと絶句したのだが、もう一度読んだときに、そうか夫に「出て行け」と言われ腹を立てた主人公の妄想かと気が付いた(というか、妄想であってほしいという私の願望がそう読ませたのかもしれない)
屈折する殺意
2003/07/19 15:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
「吁希子は時折、亡父に対面する」と書き出されている本書は、主人公吁希子の幼少時代から話をはじめる。父が吁希子にとっては恐怖以外の何者でもなかった時や、成長するにつれて父に対しては強くでることができるようになっても、母に対してはわだかまりが抜けないといったような、家族に対する感情が細かく描き出されていく。
そしてまた、現在には夫の馗一がいる。彼はすでに吁希子にとって、抑圧であった。家に金を入れず、吁希子に対しては、亭主を支える女房にならなければダメだと恫喝し、吁希子は次第に憎悪を抱く。
これがひとまず前半の流れなのだが、ここで亡父が登場する。
そして亡父は、吁希子に殺人を三つ犯すことを示唆するのである。彼女はその殺人に赴くことになるのだが、どうやらここら辺からこの小説が一筋縄ではいかないことが分かってくる。ここでは、誰を殺すことになるのかは明かさない。是非確認して欲しい。
普通に考えれば、彼女が最終的に殺そうとするのは馗一になるのだが、彼は殺されない。ここに来て、理由とも言えない理由による殺人というようなものが顔を現わすのである。しかし、たんに理由なき殺人を描いているわけではもちろんない。ここでは周到に準備された伏線がめぐらされており、それをひもとくことである程度の理由付けは可能なのだ。
一読しただけでは、おそらく煙に巻かれたような読後感と共に途方に暮れるだろう。約束が違うではないか、と。
しかし、彼女と夫や父母との関係が一体なんであったのか、それを考えることでかなりの部分がクリアになるのではないだろうか。彼女の生い立ちには何があったか、ということもあわせて。
家族という制度、女という制度、そしてまた、母という制度が、この小説の底を流れるものなのだと思う。それはまた、「幼児狩り」などの短篇群を見ても、通底するものである。
心の闇といったような評言も適当ではないだろう。ここでは、亡父の存在そのものがなかば幻想であるように、内面のリアリズムがやがて主人公にとっての現実すら書き換えていくかのような現象が現われている。内面のリアルが、内面に止まらないのである。
社会のなかにある人間が、いかに現実への悪意を育てていくか、という物語であるとも言える。その意味で、内面に還元してしまうことは、作品が持つ力を削ぎ落としてしまう。
各殺人のシーンの緻密な描き方には感嘆する。特に、第一の人間を同じ蒲団に横たわりながら殺すシーンは圧巻だ。
屈折した愛情、奇妙なこだわり、生々しい描写、作中最も密度の高い部分だろう。
7 件中 1 件~ 7 件を表示 |