無国籍者への無関心さ
2021/12/13 06:50
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
国籍がない人の存在は、時々話題になる。しかし、その問題性は当事者だけのものだと思っていた。世の中に完璧などはなく、完璧な人間もいない。不完全な人間同士が、不十分ながら互いを補い合い、やっとのことでそれらしい形を保っているのが、この社会である。その社会の網から、生まれた瞬間に零れ落ちてしまった人が無国籍のヒトであり、何も与えられていなかった。その存在は、世間の無関心が、閉鎖的な空間に押し込めてしまっているのかもしれない。社会派ミステリとして、読む者に揺さぶりをもたらすものである。
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
法律がおかしいからね。
今は多少変わったのかな。
政治家が変わらない限り、根本的な解決は無理だろうなあ。
コミュニティは現実的ではないけど、問題提起としては十分アリ。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「無知なカリスマほど怖いものはない」無戸籍者にスポットを当てた、理屈では割り切れない歯痒さが詰まった長編ミステリー。入り組んだ事件の謎に迫る緊迫感と、理不尽な社会のルールへの問題提起が印象深い作品
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蒲田署の刑事・森垣里穂子は殺人未遂事件の捜査途中で無戸籍者が隠れ住むコミュニティを発見する。そこには工場の片隅で密かに暮らす人々がいた。だが、事件によってその住処が脅かされてしまい…
かつて、日本中を震撼させた「鳥籠事件」の被害者が容疑者のハナと兄のリョウではないか?里穂子の刑事の原点である鳥籠事件を捜査したくて、コッソリ担当刑事の羽山とバディを組むが、里穂子がアメなら羽山は鞭。何もかもが正反対の二人だけどバディとしては息の合ったペアでした。
個人的に事件よりも里穂子の家族との距離の方が心配でした。育休明けですぐに刑事の仕事復帰もビックリでしたが、旦那さんが在宅ワークで家事に育児に任せっぱなしで、イライラが募って離婚するんじゃないかとヒヤヒヤでしたが、凄く理解のある旦那さんでホッとしました。
容疑者が二転三転と変わっていき、ジェットコースターみたいでドキドキでしたが、ラストは爽快でした。
コミュニティは解散してしまったけど、それでも前へ進んで行くメンバー達の未来が明るい事を願っています。
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1996年5月森垣里穂子が6歳の時に起きた「鳥籠事件」。
名取宏子という母親が3歳の男の子と1歳の女の子の兄妹をペットの鳥と一緒に部屋に監禁容疑で逮捕された事件。
その二人の兄妹がさらに誘拐されるという事件が起きました。
2021年里穂子は結婚して一人娘を育てながら刑事として働いていました。
斎藤敏樹26歳が何者かにナイフで刺された事件を担当し、一度自白をしたけれど供述を翻した元恋人の叶内花26歳を追っていくと、無戸籍の者たちだけで集まって一緒に15人が暮らしている、皆が「ユートピア」と呼んでいる食品工場を発見します。
ハナ(花)にはリョウという兄がいて里穂子は年齢が一致することから推測して二人が鳥籠事件で誘拐された将太と桃花の兄妹ではないかと考えます。
そして特命捜査対策室の羽山圭司と一緒に捜査をすることになります。
果たして二人は誰なのか。本当に誘拐されたのか。
ユートピアの関係者が誘拐したのか…。
以下ネタバレありますので、お気をつけください。
斎藤敏樹を刺した犯人は捕まり、24年前の事件も解決します。
ハナの天真爛漫なキャラクターがこの物語を明るいものにしてずっと救っていたと思います。
「戸籍がない」なんて考えたこともなかったのですが、無戸籍で学校に通っていないとか健康保険証がないとか、あまりに当たり前のことができない人がいるということを初めて知りました。(よく読むと義務教育は受けられるらしいのですが)
無戸籍者支援を行っていた政治家でNPOの園村勝代や食品会社社長の叶内丈などの善意の人々の心があたたかく、ユートピアに暮らしていた人々のこれからの幸せを一緒に願いたいと思いました。
ミステリーとしてもよくできていて面白かったです。
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*
トリカゴ/辻堂ゆめ
読みました。
産休明けで刑事課に戻った森垣里穂子は、
当番日の深夜に起こった殺人未遂事件の容疑者を
現場で逮捕する。
ハナと名乗る彼女の取調べをする中で、
彼女が無戸籍者であることが分かるが
戸籍を持たないハナは身分を証明することも出来ず、生年月日や名前も分からない。
そして、一旦容疑を自白した筈のハナは後日、
一転して否認に転じてしまい事件は有耶無耶と
なってしまう。
証拠不十分で釈放されるハナを見送った里穂子は、
見知らぬ方向へ歩き出すハナを不審に思い後を追い
ある倉庫を発見する。
そこはユートピアと名付けられ、無戸籍者の男女と
幼い子供が集団生活をしていた。
戸籍を持たず社会から存在しないと見做されてる
彼らは、社会や福祉の恩恵を全く受けず排除され
虐げられ、ひっそりと息を殺し肩を寄せ合って
暮らしていた。
里穂子は刑事として殺人犯逮捕の職務に励む傍らで、彼らの助けになりたいと葛藤する。
民法第772条問題と無戸籍者の実情、
子どもへの虐待や育児放棄と言った社会問題が、
殺人未遂事件と過去に発生した鳥籠事件と
名付けられた虐待事件を軸にした語られる。
当たり前だと考えていた現実は、
社会のほんの一面でしかなかったことを
思いしらされて考えさせられる小説です。
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蒲田警察署刑事課にいる里穂子は、ある日、ナイフで襲われる事件を捜査することになった。被害者の証言から、恋人が犯人と証言したことにより、恋人を逮捕した。しかし、恋人は、名前はおろか住所を含め、戸籍も無かった。最初は犯行を自供したが、送検した際、一転無罪を主張した。結局、不起訴となり、釈放されたが、住所がないため心配した里穂子はいつも利用しているというネットカフェまで同行した。
さよならを言って別れたが、里穂子は再び目撃した。ついて行ってみると、そこは無戸籍の人が集まる「ユートピア」だった。
無戸籍をテーマにしたミステリーで、事件を解決するだけでなく、戸籍について色々勉強になりましたし、考えさせられました。
当たり前にあると思っていた戸籍。生まれてすぐに役所に申請しないといけませんが、様々な事情で戸籍を得ることができないケースがあります。
理由があるにせよ、一時期はそれでいいかもしれませんが、その後、その子の人生にどれだけ影響を与えるのか、想像を超えるものばかりでした。知識としても、無戸籍であるが故の生活の弊害について、知らないことだらけでした。
無戸籍についての社会問題もそうですが、ミステリーとしても大いに楽しめました。
冒頭で語られている25年前の事件。それが、現代の事件とどう結びついていくのか。
色々、キーワードとなるような要素が綴られていたものの、あまり意識せずに読んでいました。しかし、後半になると、キーワードとなったものを使って、鮮やかに回収していくので、その面では清々しかったです。
25年前の事件、「ユートピア」の人達、殺人未遂事件などあらゆる事が、一気に解決していくので、読み応えがありました。
ただ、推理としては楽しめましたが、その背景にある社会問題を考えると、素直に喜べないなと思いました。
無戸籍になった本人は、何も悪くないのに、そうさせてしまった大人達の身勝手さや無知さが際立って、憤りを感じてしまいました。
「無知は罪なり」。この言葉が似合うかのように、あらゆる大人達に蔓延っていて、自分も含めて反省し、学ばなければいけないなと思いました。
「ユートピア」の人たちが、今後新しいスタートができるよう、願いたいです。
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無国籍や、離婚後300日問題について知った。今の社会に何の疑問も持たずにボーっと生きてきて申し訳なく思ってしまったくらい衝撃的な内容だった。
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ジャンルとしてはミステリーだが、無戸籍問題を深く掘り下げ啓蒙に導く社会派作品に仕上がっている。
無戸籍者の発生メカニズムや救済の方法、そして改善への歴史的背景などを興味深く読めた。
やはり無知は罪、だな。
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無戸籍者は、現在の日本に、1万人は存在すると言われている。
本当にこれが同じ日本の話なのか?と思いつつ読んだ。
戸籍が無い理由や事情なども描かれている。
そのことに無関心だったので、
なるほどと思い、
出だしから引き込まれて読む。
鳥籠事件は、育児放棄した母親が部屋に幼い子供2人を飼っていた鳥と一緒に監禁した事件のこと。
放ったらかしにされていた子供は、鳥っぽいところがあり、まるで狼に育てられた少年のように、野性化傾向があったと報道されている。
戸籍が無くても住民票、は取れるところもある。
戸籍、住民票が無くても国民健康保険と国民年金にも入れるらしい。
生活保護も受給できる。
勉強になる!
無戸籍者支援をしているNPO法人の園村さんが神!カッコいい。
えっと、そもそもの事件、斉藤敏樹を刺した犯人の動機が怖すぎる。
無戸籍者コミュニティの閉鎖性と、世間の無関心が引き起こした悲劇だった。
そして羽山が追っている未解決事件「鳥籠事件」の真相もスパッと明らかに。
その動機もものすごく怖い!
母親は一見普通に見えるかもしれないが、狂ってると思う。
「生きるのが大変になったら、ともに助け合いましょう」
光が射す終わり方で良かった。
里穂子が捜査で忙しすぎて、家に帰れず、
旦那さんと会話がなくなって、でもその事で不仲にならず、良かった。
リモートワークの旦那さんが家で仕事しながら家事・育児をカバーしてくれていて、良い旦那さんだった。
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痴情のもつれによる殺人未遂事件、と、24年前のネグレクト事件、と、兄妹誘拐事件、3つの事件に関わる無戸籍者たちの存在。
事件がどうつながっていくのか、一つの点に向かって状況が集約していく、と、思いきや…
自分が思っている以上にこの国には戸籍のない人たちが多く存在していた。ここにいるのに存在しない人たち。
彼らの現状と、知らないが故に受けられてこなかったたくさんの権利。法の外側にいる人たちを、どうやって法の中で救っていくか。ミステリとともに社会についての学びも多い。
伏線が回収され真実が明らかになったとき現実の残酷さに胸が痛む。
ただ、無知と善意が生む悲劇、そして妻であり母である刑事の「家庭」の問題について、もっと深く描かれてもよかった気もする。
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衝撃的な内容でした。
傷害事件の被疑者が無戸籍だった。名前も住所も生年月日も分からない。その事件を追う中で、無戸籍の人たちのコミュニティーにたどり着く。主人公の刑事の「法律を守ることと、自分の良心に従うことは、イコールだと思っていた」という台詞には切実なものを感じました。
本書は、幼い子供の壮絶な育児放棄の事件と無戸籍の問題がテーマになっています。どちらにも共通することは「存在しないこと」。子供を存在しないものとして育児放棄し、無戸籍のため自分が何者なのか分からない。難しい問題を突きつけられました。
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衝撃的な事件やカルト的な環境からもっと暗い気持ちになるかと思ったけど、最後はそれぞれに希望が見えたから割と爽やかな後味。
無国籍者の存在は普段気にしたことがなく、かんがえさせられた。
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無戸籍者という日本社会の暗部に迫ったミステリー。東京の蒲田が舞台で、刑事の里穂子は殺人未遂事件の捜査中に、無戸籍者が隠れ住む生活共同体「ユートピア」を発見する。ユートピアのリーダのリョウと、事件の容疑者のハナに、かつて日本を震撼させた「トリカゴ事件」との共通点に気付いた里穂子は独自に調査を進めるが・・・ユートピアとトリカゴ事件の「共通点」を最後まで追っていく話だが、同時並行で日本における無戸籍者の状況も学べる。思わせぶりな終わり方だったので続編があるかもしれない。前作「十の輪をくぐる」に続き面白かった。
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25年前の会話まで、そんな細かく覚えている?まったく理解、納得できない誘拐犯の動機に衝撃的な結末。あちこちに張り巡らされた仕掛け。よく思いついたなと感心してしまうストーリーだけど、疲れてしまう。でも終わりよければマッいいか!辻堂さんの頭の良さと引き出しの多さに感服。「今の社会のルールは、この国に住むすべての人間が恩恵を受けられるようにはできていない」「いついかなる時でも例外なくルールや常識に従おうとするのは思考停止しているのと同じことだった」その通りです…