紙の本
かっこいい女
2022/03/04 07:09
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品には、前作がある。
タイトルも『ブルース』。
前作の主人公は、この作品の中でもたびたびその名が出てくる、6本めの指を持ってうまれた影山博人。釧路の街を闇から牛耳った男。
前作はそんな闇の男の半生を描いた連作短編集で、2014年に刊行された。
その続編といえるこの作品を読むに際して、実は前作の内容をほとんど覚えていなかった。
そんな読者だけでなく、最近作者である桜木紫乃のファンになったという人には前作を知らないままこの作品を読んだということもあるだろう。
もちろん、前作の影山博人の闇を読むに越したことはないが、その義理の娘である莉菜という女性の半生に付き合うのも悪くはない。
この作品も前作同様、連作短編集の形となっている。
最初の「最愛」が書かれたのが2016年で、最後の10作めの「祈り島」は2021年に書き終わっている。
なんと桜木は5年の歳月をかけて、一人の女性の半生を描き続けたことになる。
その女性も、この作品の中で次第に若さをうしない、年老いていく姿をさらけ出していく。それでいて、どの作品でもこの女性莉菜はかっこいい。
ここでいう「かっこいい」とは、ほとんど誰の世話にもならず自立しているという意味で。
「莉菜は死に場所を探しながら年を重ねてきましたが、人は流されながら年を取り、丸くなっていく。そうやって生きているといいこともある」、これは作品を書き終えた桜木紫乃の、かっこいい言葉だ。
紙の本
釧路の街の風景を思いながら…
2021/11/03 07:22
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
恥ずかしながら前作「ブルース」を知らずに本作から読んでしまいましたが、釧路の街の風景を思いながら十二分に楽しむことができました。街とともに当然そこに住む人々にも栄枯盛衰があり、それを毅然と受け入れる莉菜の姿が魅力的です。前作も読んでみます。
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物足りない
2022/01/17 21:43
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブルースの続編とは知らず読んだ。
しかし、登場人物の描写もストーリーも薄ペラで読むのが難しかった。
登場人物たちが、何故魅力的で、こんなに力があって、地方都市の政治を支配する程の力があるのか、全く分からなかった。
そして邪魔者があんなに簡単に消されてしまっては、警察いらないでしょうと突っ込みたくなる。
桜木紫乃さんは北海道在住で売れっ子の作家です。
図書館の予約もなかなか届かないほど。
でも本作はなんだかなあのレベル。
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【死に場所を求め、生きる女。裏切りの果てに辿り着いた終焉の地とは。】釧路を牛耳る影山莉菜。父の血をひく青年を後継者に育てようとするも苦難が降りかかる。究極の後始末をつけようとする女は強く儚い。
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2021/09/24予約 3
主人公の莉菜の男、父親ヒロトの周りの女たちの話。
ヒロトを継ぐ男役をする莉菜の生涯。
運転手兼ボディガードの弥伊知と妹の支靜加、松浦酒店の女将とその息子・武博。
ヒロトの女3人、莉菜と女将、莉菜の母親の人生を絡めながら、その女たちの間をうまく漂う武博。
寂れた地方都市の裏社会を束ねる莉菜、そのカゲヤマ家の廃れと地方都市のますますの寂れが同時に進行して、そこにかつての敵の娘が市長になり…
話の中のことといえばそれまでだけど、ドクターにまでなった娘が地方都市の市長に魅力を感じるか、そして何期も続けるか、話の展開が突飛なところが幾つもあり、ついていけなかった。
いつも桜木紫乃の作品は楽しみにしている。
そして裏切られたことはなかった。
だけど、今回は、少なくとも自分には何も響かなかったのが残念でたまらない。
次は好きな作品でありますように。
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読み始めて、この作品は『ブルース』という作品の続編だと言うことが分かり、先に『ブルース』を読むべきだったと思いつつ読み進めていくうち、記憶の中に『ブルース』の内容が蘇ってきた。そうだ、自分は既にその作品を読んでいたのだった。
本作品は、釧路に暗躍していた影の大物・影山博人の夫人の連れ子である莉菜の物語である。博人の死後、徐々に影山という名前が通用しなくなり、釧路から去って瀬戸内に暮らすようになるまでの莉菜の人生を追っている。冷静さ(冷酷さというと冷たすぎるように思える感情)と情念の二面を表裏一体として持ち合わせていた莉菜。作品の始まりと終わりとでは最低でも10年は経っていると思われるのだが、莉菜の心情には老いというものが感じられない。それを作品の本質と捉えるかどうかが鍵になるかも知れない。ただし、作品の結末がやや安易な内容であるように感じられたのが残念。
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彼女が書く小説は、北海道を地にして描くものがほとんどだと思うが、今回も釧路の街を裏社会から牛耳る女を軸にしている。
街の風景もある種の昏さと色気を醸し出す表現は流石だと思う。
女のワルもほどほどに小気味良く感じた。
歳を重ねて最後の地で何を思うのか…
余韻が残る。。
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桜木作品はほぼコンプリートしたけれど、中でも好きな作品の一つがブルース。影山博人という男の魅力に取り込まれた。
この作品はその続編であり、完結編とも言える作品。ヒロト亡き後もヒロトに囚われ続ける女たちの生き様が描かれるが、それは死してなお女たちの心を掴んで離さない、ヒロトの魅力を描いているに他ならない。
ヒロトの息子に亡きヒロトを重ね合わせ、裏社会のフィクサーとして彼を国家の中枢に押し上げることを人生の目的とする莉菜。ワルに徹しながらも、ふと過ぎる女としての思いが切ない。
短文が多い桜木さんの作品は、スピード感と潔さを湛え、同時に独特の表現で北の地で生きる女たちの哀切を描き出す。
その比喩や言葉の選び方が好きだけど、この作品は言葉選びが今までに増して難解になっているように感じた。凝りすぎた?印象。
もう少しストレートな表現でもいいのにと思う箇所も多々あり。
好きな作品とは言え細部忘れているところもあり、ブルースを再読して臨むべきだったと後になって後悔しました。
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前作「ブルース」で苛酷な少年時代を過ごし釧路に流れ着き蹂躙していた影山博人の義理の娘、莉菜。博人の遺志を受け継ぎ金と欲望を渦巻きながら釧路の街を裏から支配する。権力、愛憎や嫉妬心が見え隠れする冷酷な莉菜であるが、武博を代議士に歩ませようとする意図も野望のひとつだったのか。「女のワルには、できないことがない」と決して感情を吐露しない生き方。そして、ようやく博人の亡霊に解き放たれ釧路を旅立ち辿り着いたのは瀬戸内の島。終始ドロドロとした侘しさの残る話だったが弥伊知への思いは伝わったように思う。
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「女のワルには出来ない事はない」と決して感情を出さない生き方 顔に自信があるとすぐ飽きられる。自分はどんな時も顔に出さない 不細工が不満そうな顔すると見られたもんじゃない。女に不自由しない男はおかしな趣味が有るかも、だから嫉妬だけは顔に出すまい最後は思いが伝わったかと思う莉奈から弥伊知へ、
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『ブルース』の続篇。影山博人の娘である莉菜が主人公のため、順番に読んで正解だった。前作とは異なり、今回はすべて莉菜の目線で語られる10篇で構成されている。影山博人亡き後の釧路でなにが起きているのかがメインなんだが、そもそも博人の存在の意味がよくわからない。いわゆる“ドン”として君臨していたようだが、そこがすっぽり抜けてしまっているのでその死の影響も、後を継いだ莉菜への態度もイマイチわかりづらかった。
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ブルースの続編、その後といったところ、以前読んだ記憶が断片的に思い出されるが、今回の主人公・莉菜の前作の記憶がおぼろげだ。
読み進める中で、きな臭い危うい感が漂いながらも、政治家にする目的がよくわからず肩透かしのような。
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前作「ブルース」を知らずに本作を読了。影山莉菜と影山博人、弥伊知たちの関係性が徐々に明かされて面白くなってくる。武博に執着する理由は理解できたが虚しさもあり。罠の掛け合いが見せ所だ。
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ブルースの続編。
湿っぽい釧路の情景を前作同様に
うまく表現されている。
前作の昭和感と比べると時代が
進んだこともありノスタルジーをあまり感じず。
そもそも北海道は故郷ではないですが。
この作品にら限らず、
2冊作目のハードルは高い。
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読み始めた途端、夜の歓楽街、ヤクザ、政治家、裏社会、女、男。いや~苦手な桜木さんと思ったら。。。読み進めるうちに、これはこれまで読んだ桜木さんとはちょっと趣きが異なり、珍しい女性が主人公のハードボイルド小説でノワール小説でした。そう理解すればそれなりに面白く、確かに桜木さんの文体とも良く合います。
バサバサと切り裂くように描き、必要以上に語らない。その隙間は想像で埋めて行くしかないのですがそれもまた面白く。もっとも読後に知ったのですが、この作品は主人公・影山莉菜の亡義父・ヒロトを描いた『ブルース』の続編だそうで、確かにヒロトがらみの背景が判り難くい。とはいえ、この一冊で充分に独立した長編です。
物語全体の背景である都市や歓楽街の衰退、政治家などの関係の描き方が不十分なため、全体像よりも、それぞれの場面での主人公や脇役、個の想いや動きは面白さばかりになってしまうのが残念です。