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投稿者:いろは - この投稿者のレビュー一覧を見る
本編の後に付録として掲載された「前書き」を読みながら、つい最近書かれたもののように錯覚した。新型コロナのパンデミック、ウクライナを始めとする各地の紛争。それらについて書かれたのではないかとの錯覚。チャペックがこの戯曲を書く契機となったという理念の衝突は姿を変えながらも存在し、1937年当時と同じく今もまだ何も解決していない。チャペックの言葉が重くのし掛かる。「私たちは、単なる観客であってはならない。小さな民族のまったき正義、まったき生は、劇的な世界の対立のどちらの側にあるのかを知ろうと試みる戦士として、関与しなくてはならないだろう。」
紙の本
死に至る伝染病とファシズム
2020/10/25 12:23
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1937年刊行。第二次世界大戦勃発前夜。ファシズムの影がヨーロッパを覆いつつあった時代。
身体に白い斑点が表れ、肉が朽ちて悪臭を放ち、やがて死に至る伝染病「白い病」。貧しい人びとだけを診療する町医者が治療法を開発する。治癒にあたり彼が提示した条件とは…。
「ついに、私は人民を国民にしたのだ」ヒトラーを彷彿とさせる元帥の言葉。このひと言が全体主義の本質を表している。人民は国家という体制に編成され、祖国防衛を掲げて戦争に熱狂していく。死に至る白い病の治療法と引き換えにしても、戦争に突き進む。
決して旧くない、現代社会にも示唆を与える戯曲。
紙の本
未知の病…。
2021/06/22 01:04
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投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
未知の病が、蔓延していくなかで、やがて、国の問題となり、世界の問題となる。そしてまた、容赦ない病の広がりは、身分や地位を超えた脅威となっていく。
治療薬を見出した研究者のヒューマニズム的な考えと国の統治者の信念が衝突する一方、思慮ある人たちや自らの死を恐れ始めた人々は、平和と治療を選ぶべきだという考えに傾いていく。しかし、戦争の気運が高まり、焚き付けられた群衆は、思考を停止し、新しく正しい考えを、無知な暴力で潰してしまう。
短い戯曲ゆえの象徴性が、端的に核心をついた問題を、コンパクトに表現していて、わかりやすい。
紙の本
あらためて流行り病を考える
2020/12/22 18:25
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投稿者:deka - この投稿者のレビュー一覧を見る
今の日本の感染病を感がると流行り病の恐ろしさをこの本を読んであらためて考えさせられた。日本人の性格的にこの白い病のようなことにはならないだろうがこのまま見通しが立たず人々がどう行動をとるのか。。。恐ろしい。
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朝日新聞の紹介があり、Webでよんだ。最後は、で終わる。ドイツあるいは日本の戦争中に当てはまる内容である。戯曲なので、映像があればぜひ見たい。
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第二次世界大戦前に描かれたチャペックのパンデミックを扱った戯曲。
40代以降の人物しか罹らない白い病。致死率100%、治療法は見つからない。
その状態で、貧しい町医者が治療法を発見する。だが、彼はある条件をもとに枢機卿顧問官や元帥に治療法を渡すことを拒む。
自身が診察をするのは本当に貧しい人物だけ。
皮肉な戯曲だと思った。医師と政治家たちの意思の違い。それは互いに患者や国民のことを考えているようで、全く違うと私は感じた。
チャペックはこの元帥にヒットラーの姿を見ていたのだろう。
今も世界はとてもきな臭い。そんな時にこの本が翻訳されて出るのもまたとてつもない皮肉だ。
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コロナ禍の中、カミュの「ペスト」や、デフォーの「ペスト」が読まれているようだが、本書も"白い病"と呼ばれるパンデミックを題材として扱っている、ということで、興味本位で手に取ってみた。
カバー裏には、突如流行り始めた未知の疫病。そこへ特効薬を発見したという医者が現れるが、施療に際し、彼は一つだけ条件を提示した、と筋のあらましが紹介されている。
果たして、彼の示した条件とは?そして、人々はその条件を承諾するのか?
この戯曲は1937年の作品であるが、作者チャペックの生きた、かなりキナ臭くなってきた祖国チェコを取り巻くヨーロッパ情勢が、作品の背景として思い起こされる。
本作の結末は、抑制の効かなくなる現代社会を象徴しているようで、実に悲劇的であるが、作者は完全に絶望している訳ではなく、一抹の希望を残してくれている。
短い作品であるが、汲み取るべき課題は重い。
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文庫化で再読。非常事態宣言下でnoteの連載で読ませてもらったときは、話の展開を追うのに意識が集中していた。今回は作者による前書きや解題・訳者による解説も加わって、本作への視座が深まる。作者はパンデミック災禍を体験した訳ではなく、遠い昔の感染症を架空の病に置き換えて、人間の矛盾を描いたという経緯に驚き。短い戯曲に詰められた鋭さが見事。
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新型コロナウィルスとの戦いの中で日本語に翻訳されたカレル・チャペックの戯曲。
社会がきたるべき戦争に熱狂する中、治療法のない恐ろしい伝染病が蔓延する。50歳を超えるものは皆かかりそして死んでしまうと言うのだ。一方若い人にはこの病気はかからない。
独裁者、病院長、軍需産業の3人の巨大な権力者と、彼のみが知る治療法と言う武器をもって対峙する1人の医師。医師は、独裁者たちに迫る。治療して欲しくば戦争をやめよと。
希望の種はちりばめられているが、結末は悲劇だ。
1937年に書かれたこの戯曲が、あまりにも生々しく今日のコロナ禍を映し出す予言となっていることに驚嘆せざるをえない。
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白い病は、今年のコロナが世界中に広がる中
ぜひ一度は読むべき小説だと思う。
戦争と疫病が蔓延する世界。
コロナが流行している今も何処かで戦争
は起きている。
コロナを引き金に暴動が、世界各地で現実に
起きているし病気が終息しても、紛争は無くならず
また新たな病が世界で起こるかも知れない。
貧富の差も問題だ、薬が買えないとしたら
また紛争の引き金になる。
ガーレン医師の求める理想的な平和と元師の戦争で
国の求心力を求める事は表裏一体で、どちらの選択も難しい事なのかも知れない。
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この本がでたのは1937年とか。世の中が不穏にざわついていたころだろうか。コロナ禍の今、隔離と治療しつつも経済優先のためにgo to~。何が正義なのか公正なのか。いろいろ考えながら読んだ。後ろの解説がとても丁寧でありがたい。
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致死率の高い謎の伝染病の流行するなか、人間愛を貫く事は出来るのか。
際限のない欲にかられ戦争が繰り返されていた時代に。
疫病と戦争と言う、いやが応にも人間が露わになる舞台。描かれる物語に、多くのことを投げかけられた。
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ラストに、思わず「えっ?!」と声が出てしまった。アイロニーとかシニカルとか、そんなもんじゃない。絶望ではないのか、これは。
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20201122 今年だから買って読むことになった。疫病と政治、国毎で対応が違う、主義主張に付いて考えた事は無かったが今を生きる人として考えさせられた。
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カレルチャペックという推し作家の戯曲です。
戦争を目前にし、全世界に突如と広まった「白い病」と聞けばまぁ今の情勢を思い浮かべる人が9割でしょう。
唯一治療法を知る医者、軍需産業に携わる経営者、
枢密院顧問、戦争を指揮する元帥閣下、民衆。
なんでもない一家のやりとりが一番リアルでフィクションめいている。エッセイもとても面白い作家なので、もっと知られたらいいのになあ。紅茶ばかりでなく。