オスマン帝国の後宮
2024/08/17 22:54
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
オスマン帝国の後宮ハレムについてその制度、どんな人がいたのか、文化的な側面などなど知らないことだらけで面白かった。
スルタンのプライベート空間
2022/09/01 18:32
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投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
オスマン朝の後宮「ハレム」を紹介した一冊。外廷→内廷→ハレムと「奥」にいくほど皇帝のプライベート空間が広がる構造や、しっかりとしたヒエラルキーに基づく官僚制が確立されていた点など、江戸時代の「大奥」と似た部分が多くある。ただ宦官や小人、唖者を使う辺りは大陸の王朝らしいよなとも。女奴隷出身の女官と妻妾なんて、字面からすると如何わしいが、後ろ盾がない故に外戚の介入を防げるというのは成程。兄弟殺しの慣行といい、皇帝の私的な領域を、ドライかつシステマチックに処理している印象が強い。王朝が長く続いた一因はこれかも。
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いったいハレムとは何だったのか、興味本位でないオスマン帝国の研究が厚みを増しているという。オスマン帝国についての否定的なイメージが払拭されてきたためらしい、西洋に仲間入りしたかったアタテュルクと西洋と一線を画すエルドアンという二人の強烈なリーダーシップを持つ大統領の違いか
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はじめに
性愛と放埒の場というイメージ/オスマン帝国のハレム/新しいハレム像へ/本書の構成
第一章 ハレム前史――古代よりオスマン帝国初期まで
一 ハレムの起源
ハレムという語/古代地中海世界のハレム
二 イスラム世界におけるハレムの発展
イスラム登場前後/正統カリフ時代/ウマイヤ朝/アッバース朝初期/アッバース朝中期/奴隷身分出身の寵姫たち/イスラム世界における奴隷/トルコ・モンゴル系王朝の登場/トルコ・モンゴル系王朝における王族女性/「アッバース朝型」と「トルコ・モンゴル型」
三 オスマン帝国黎明期のハレム
オスマン集団の登場/オスマン帝国の発展/ブルサとエディルネの宮殿/オスマンの母と寵姫/寵姫ニルフェル/キリスト教諸国の王女たち/トルコ系侯国の王女
第二章 ハレムという空間の生成――トプカプ宮殿の四〇〇年
一 トプカプ宮殿の誕生
生成するハレム/新たな帝都/旧宮殿/旧宮殿の建築/トプカプ宮殿の建設/帝王門と第一の中庭/トプカプ宮殿の三つの空間/外廷
二 初期のハレム――寵姫ヒュッレムのための増築
トプカプ宮殿初期のハレム/最初期のハレム/壮麗王スレイマン一世の時代/寵姫ヒュッレム/ハレムの拡大/セリム二世時代のハレム
三 ハレムの統合と完成――一六世紀後半
ムラト三世の治世/ハレム統合の理由/考え抜かれた空間構造/黒人宦官と女官の区画/母后の区画/スルタンの区画
四 空間の多様化と様式の変容――一七世紀から一九世紀まで
ムラト三世以降のハレムの改築/メフメト四世の時代/ハレムの火災と改修/西洋の意匠の導入
第三章 女官たち
一 女官の登用
ジャーリエたち/女官のリクルート/戦争捕虜と有力者からの献呈/民族と宗教/家族との絆/新しい名前
二 女官の組織
女官の職階/新入り/女中/女中頭/宝物役頭/最高位の女官長/乳母と守役/給金と人数
三 ハレムでの生活
女官の暮らし/散策と小旅行/ショッピング/旅と巡礼/病と治療/宮廷料理所/ハレムの食材/近代におけるハレムの食卓/女官への処罰
四 ハレムを離れた女官たち
ハレムの「卒業」/出廷はいつか/自由人の女性として/結婚/出廷後の生活
第四章 王族たち
一 妻妾――序列化された寵姫
スルタンの妻妾/スルタンの寵愛を得る/愛妾と夫人/夫人との結婚/昇進の条件/スルタンを袖にした寵姫
二 母后――ハレムの最高権力者
スルタンの母/息子の即位を待つ/母后行列/母后の側近たち
三 王子――檻のなかの獅子
獅子たる御子/帝国前半期の王子/兄弟殺し/兄弟殺しの廃止/鳥籠制度/鳥籠で子を生す/王子の教育と師父
四 王女――継承権なき王族
王女たち/女婿/以前の妻を離縁/王女たちの生活/王女の子供たち
第五章 宦官たち
一 イスラム世界における去勢者
宦官の重要性/イスラム法における男性器切除/アッバース朝における宦官/聖地の守護者としての宦官/宦官の施術
二 白人宦官――内廷の実力者
オスマン帝国初期における宦官/白人宦官���白人宦官の去勢手術/白人宦官のキャリア/白人宦官長/帝国最大の白人宦官長/経歴の始まり/宦官となる/トプカプ宮殿での栄達/ガザンフェルの活躍/ヴェネツィアのネットワーク/黒人宦官長の台頭/ガザンフェルの失墜
三 黒人宦官――ハレムにおける陰の支配者
オスマン帝国における黒人宦官/ハレムの拡大と宦官/黒人宦官の職階/黒人宦官長/聖地の警護/宦官たちの斜陽
第六章 内廷の住人たち
一 小姓――帝国を支えるエリート候補生
内廷の人々/内廷という空間/内廷組織/デヴシルメ制と離宮での選抜/大部屋と小部屋/上位の部屋/スルタンの私室/出廷/内廷の変容と終焉
二 小人――陽気な近習
宮廷の異能者/小人の役職/小人の役割/栄達した小人
三 唖者――静謐の担い手
唖者の登用と配属先/手話/近習として/処刑人として
第七章 ハレムと文化
一 音楽と芸能
文化の担い手としてのハレム/イスラムと音楽/オスマン宮廷における芸能/芸能の種類/芸人たちのリクルート/芸能奴隷の価格/女官たちの習いごと/音楽家ウトリー/女官の楽団/女性作曲家たち
二 読書と文芸
書物と読書/詩作の重要性/詩を詠んだ女性たち/散文
三 寄進と建築
宗教寄進と建築/多様な宗教寄進物件/寄進を通じた人的ネットワークの形成/帝都を一変させた新モスク/ダーダネルス海峡の危機/「海の壁」と「砂の城」の建築
第八章 変わりゆくハレム
一 トプカプ宮殿の運命
危機のオスマン帝国/変わるトプカプ宮殿/トプカプ宮殿の新たな役割/トプカプ宮殿のハレムの変容/旧宮殿の終焉
二 新しい宮殿の登場――ドルマバフチェ宮殿とそのハレム
新たな宮殿たち/ベシクタシュ宮殿からドルマバフチェ宮殿へ/ドルマバフチェ宮殿のハレム/ハレムの三つの区画/ドルマバフチェ宮殿のその後
三 ハレムの変容と終焉
宮廷を去りゆく小姓と白人宦官/黒人宦官の凋落/チェルケス系の女官と妻妾たち/開かれる王族たち/第二次立憲政時代と旧ハレムの人々/「民主化」されるハレム/オスマン帝国の滅亡/女官たちの末路/最後の黒人宦官たち
終章 ハレムの歴史的意義
一 ハレムと君主制
世襲君主制とハレム/王位継承を支える官僚組織/特異な組織/ハレムの役割の消失
二 ハレムとイスラム
ハレムはイスラム由来か/イスラム法の規定とハレム/ハレムにおける脱法的な事例/現実主義の重視
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トプカプに行く前に読んでおくべき本。
ハレムの組織については分かった。しかし、そこから次の疑問が湧いてくる。
オスマントルコの皇帝は、かなり長くずっと奴隷出身の母の子で、母の出自はヨーロッパ、ウクライナなどが多かったとすると、皇帝って、金髪が多かったりする?そういう絵は見たことないけど、ターバンだから分からないか。
母が常に奴隷であるのは、トルコ人有力者から嫁を取って、有力者間の勢力争いが起きるより良かったのかなあ?イスラム社会の相続は、ヨーロッパや東アジアとは違うのか? マムルーク朝なんて、子供に相続させないしなー。
分からないことだらけ。
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とてつもない強大な帝国を築いたオスマントルコ。
歴史の表舞台になかったトルコは今、ロシアウクライナ戦線で調停のテーブルに着く重要な責を担った存在として浮上してきた。
近代から現代への流れを知りたく読むが、気鋭の研究家のペンは面白く読ませる、、簡易なのが非常に良い。
「王位継承者の育成」に最もポイントを置くハレム、その存在に中人を担うのはスルタンの母后.皇后でないところが意義深い。
広大な領土に存する多民族の中から奴隷として供給されてくる。多くの源はチェルケス人~コーカサス地方。
興味深かったのは奴隷は原則、非ムスリム。しかし,チェルキス人は異なっていたが受給の関係でそれに目をつぶっていた様だ。
種々の文化の発信源ともなっていたようで専ら詩、散文に高い芸術性を認め、文学はあまり発達しなかった模様。奴隷からハーレムへ入った人らはキリスト教徒なら改名しペルシア風へ。それは女官、黒人宦官でも同じことであったようだ。
終章で近代化への道を辿る中、ヴェネチアとの関係が大きかった事、欧州の圧力が多々に有ったこと、WW1の中、スルタンは追放されトルコ共和国が建った流れがよく分かった。
世界から見ると中国・朝鮮・我が国(江戸幕府)は同じものだろう。
王位継承者の育成、文化の偏愛などまさに。
世界から見ると 我が国の大奥が消え、朝廷へ奉還後、天皇制が残っている事は奇異に思われるかもしれない。
読み終えてみると「欧州がプレスしてきた近世から現代」の偏見の大きさに気付かされる。
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イスラム帝国からオスマン帝国にかけてのハレムについて、その成立や目的、立地や人的構成など多岐にわたって解説されている。また、これらの帝国の簡単な歴史紹介にもなっている。
本書によれば、ハレムとは、王位継承者のプールであり、王統が途切れず、かつ、親族どうしで王位継承の争いが起きないようにするという目的のための私的かつ公的な組織だということのようだ。キリスト教世界の王位承継や日本の皇統承継との比較についても少し述べられており、現代の問題とのつながりも見られた。
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日本ではハーレムと呼ばれることの多いハレム。
エキゾチックでエロティックな空間、と言うイメージが強いが、本書を読むと、官僚機構であった、とイメージがガラリと変わる。
そもそも、国内の美しい女を侍らせ…ではなく、女性たちは奴隷身分であった。
しかも、14世紀のハレムでは、王子の母が奴隷身分の他宗教出身であっても君主の名代として振る舞っていたと言う。
女官組織は母后を頂点としている。
19世紀には西洋文化を身につけるレッスンも施された。
宦官組織も、白人、黒人で大きく分かれることもなかった。
読み進めていくうちにイメージがどんどん変わる。
世襲君主制や官僚組織としてのあり方も興味深い。
いくつかの王朝との共通点もあり、類似性から特異性を探ることもできよう。
しかしまだ研究途上(280頁)と言うこともあり、これからの研究にも期待したい。
新たなる視点を授けてくれる本書は、低く見られがちな文化に対する転換の一つであるのだ。
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様々な角度からハレムが考察されていてとても興味深かったです。
以下簡単な内容メモ。
・ハレムは構造が果たす役割が大きい
・王子はスルタンになるまで鳥籠の間で暮らす→ほぼ幽閉(至高の存在に至近するものでありながら、制限されている)
・王子は即位の機会がなければハレムにずっと軟禁される
・兄弟殺しが通例だった
・母后の権限がとても強い
・女官はピラミッド型の統率された社会
・白人宦官と黒人宦官がいた
・去勢の過程で化膿もろもろで四分の一が死亡するため、宦官は他の奴隷よりも高値で取引された
・各役職がしっかりと統制されていて興味深い
・「我が獅子よ(アルスラヌム)」→某戦記を思い出しました。
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"ハーレム"(ハレム)と聞くと女性を何人も侍らせている男性を想像してしまうが、それは昔の欧州の人々が"オスマン帝国"という巨大な国家に対しての蔑むこと、もしくは無知からくる想像であることが分かる一冊
本書において"ハレム"というのは後継者を育てるための巨大な組織機構であることがわかり、女性の扱いにおいても奴隷の身から考えると格別な待遇であることが伺える
従来の"ハレム"像とはかけ離れた内容であり、学術的な内容であるため、期待外れと思う人は中にもいると思われるが、学術書より読みやすく書かれている一冊であり、興味がある場合は手に取ってみるのも良いかもしれない
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オスマン帝国の君主がトプカプ宮殿に構えた、ハレム。
それは帝国の国政と文化を担った場所であり、組織だった。
第一章 ハレム前史―古代よりオスマン帝国初期まで
第二章 ハレムという空間の生形―トプカプ宮殿の四00年
第三章 女官たち 第四章 王族たち 第五章 宦官たち
第六章 内廷の住人たち 第七章 ハレムと文化
第八章 変わりゆくハレム 終章 ハレムの歴史的意義
コラム1~11、注、図版出典一覧有り。
主にトプカプ宮殿を中心にハレムの存在意義と、
住まう人々について、分かり易く、かつ詳細に説明している。
身分は非ムスリムで非帝国臣民の奴隷たちが大部分。
それぞれの事情、ハレムでの職階と職務、生活、給与や人数等。
女官の結婚や刑罰について。夫人と愛妾の序列。
ハレムでの最高権力者の女后。
王子殺しから、年長者相続と鳥籠制度に変化した王子たちの境遇。
王女たちの婿探しは、宮廷政治にとって重要だったこと。
内廷での実力者、白人宦官。ハレムでの陰の支配者、黒人宦官。
幹部候補生として内廷に住まう小姓。
内廷とハレムでの小人や啞者の職務と存在意義。
女官の音楽と芸能、読書からの文芸、宗教寄付による建築。
そして、時代の変遷のなかでの、トプカプ宮殿の位置付けの
変化や改革、近代化、戦乱の影響はハレムにも及び、
何よりも奴隷交易廃止とオスマン帝国自体の滅亡が、
ハレムを終焉へと導く。
400年以上も続いたハレムですが、その内情はパンドラの箱の
如く。住まう者の多くが奴隷であり、非ムスリムで非帝国臣民で
あったことは、帝国臣民すら知らぬ場所だったと思われますし、
西洋に伝わったイメージも偏見や憧れで誇張されてきたことが
分かります。王位継承者や幹部候補生の場というのも、新鮮。
史料の都合もあり、まだまだ研究は途上なので、
今後の研究が待たれるとのこと。それでもハレムの一端を
知ることが出来て、良かったです。
他国や江戸時代の大奥と比較してみるのも面白いかも。
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いわゆる、あの「ハーレム」です。
女性が男性を取り巻いているようなアルファオスの象徴というか、破廉恥な文脈でもありそうな、あの現象?について。その語源を歴史を紐解き真面目に解説したもの。
ハレムは、オスマン帝国のスルタン(君主)がトプカプ宮殿に構えたもの。アッカド語のハラムが語源。シュメール語には、女性たちの家と言うハレムを指す単語がある。一夫一婦制を規範とするキリスト教以降、ハレムのような慣習は徐々に失われていったが、イスラムは、妻の数は4名まで。君主でもこれを破ることはできなかったが、所有する女奴隷と性的関係を結ぶにあたっては、数の制限はなかったから、ハーレムに住む寵姫たちは、基本的に奴隷から選ばれたのだという。
酒池肉林的な淫らなイメージもあるが、現実的には、後世に子孫を残す仕組みとして機能しており、奴隷であっても寵姫に格上げされたり、その子供も重んじられた。また、実際には酒池肉林のような世界は一部のスルタンを除いて常態化していたわけではない。日本では大奥のような世界だが、似たようなものだと言える。
本書のもう一つの重要なキーワードは「宦官」だ。これもイメージ通り、男子が生殖器を去勢すること。睾丸を取り除く場合と、ペニスから根こそぎ取り除く場合があり、後者の方が手術の成功率は低く、命の危険性があるために、宦官となった奴隷は高額で取引されたらしい。手術は、非ムスリムにより、イスラム世界の外で執刀されなければならないというイスラム法があったが、その規定はほぼ無視されていた。この手術の描写は、本書を読んでいても痛々しい。
ハレムや宦官の存在は、原始的なヒエラルキーにおける原初的な欲求を機軸とした君主の強さを物語る。ただの性欲というよりも、血を繋ぐことでの支配欲だ。権力に対する統制が徐々に大衆の人権を高めたが、それ以前の世界は、現代の価値観では信じられぬような悍ましい慣習が横行していた。興味深く読めた一冊だった。
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私にはどっちかというとガジェットネタかも。いろいろどうしてそういう考えになるんだか、はあるが海に沈められる話はぞっとする。
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中公新書の「ケマル・アタテュルク-オスマン帝国の英雄、トルコ建国の父 」に続いて読んだが、分かりやすく面白い。すっかり小笠原先生のファンになってしまった。淫蕩なイメージのある「ハレム」についてその歴史からその構成員を主軸に描いている。巻頭にオスマン帝国周辺地図と歴代スルタンの一覧があり、本書を読み進める上で非常に役に立った。「ハレム」という王位継承者を確保するのに最適な官僚機構について興味深く学ぶ事ができた。
【第1章 ハレム前史】
王族女性が「トルコ・モンゴル型」から「アッバース朝型」への変遷過渡期に2代目スルタンの寵姫ニルフェルの存在があったとの事だが、その変遷理由が分からなかった。スルタンの妻が衆目の目に晒されるか否かや、名家出身か奴隷かでは全く価値観が違うが。
【第3章 女官たち】
ドラマ「オスマン帝国外伝」を視聴していたため良く理解できたが、奴隷身分である女官がハレムの官吏として働いていた事は改めて面白い。かつてのアメリカの奴隷制度と全く違い、不可触民ではなく単なる身分制度。女官朝に至っては母皇よりも高い棒給を得ていた。
【第5章 宦官たち】
宦官手術の死亡率が25〜50%と高いことから宦官が高価になり、通常の奴隷の2〜3倍で取引されたという話は興味深い。ビザンツ帝国やオスマン帝国から中華帝国まで様々な地域で用いられた宦官だが、中国から強く影響を受けた日本には制度として取り入れられなかったのは何故なのだろうか。
【第7章 ハレムと文化】
宗教的寄進の際、出資者がモスクなどの公共性の高い施設と共にその後の運営のために店舗などの利益を生み出す物件を用意する仕組みには感心させられた。同時代のキリスト教社会では考えられない、この合理的な仕組みは、流石は元商人のムハンマドが創始した宗教である。
【終章 ハレムの歴史的意義】
「ハレムは徹頭徹尾、王位継承者を確保するという目的に最適化された組織だった。いわば、ハレムは官僚組織であり、ハレムに住まう人々は官僚だったのだ。」「皇室を有する日本を含め、世襲君主制を採用している民主国家では、後宮不在の時代にいかに君主の後継者を確保してゆくか、という問題に直面している。現代における君主制は、こうしたアポリア(難問)をかかえて運用せざるを得ないのである」