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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性が子供を産むのは自然なこと。
だけれど、産まないことが悪いわけではない。
産んだ女性が産まれた子供を育てるのは自然なこと。
だけれど、育てないこと自体が悪になるわけではない。
ただ「不自然」な状態を悪と断じる風潮は確実にあるわけで、
それと向き合う覚悟のようなものは確かに必要になる。
選択肢が増える現代で、
しかしそれを選ぶ自由が増えたわけではない現代。
目の前に思いもしなかった選択肢が現れたときに、
また価値観というのは揺さぶられる。
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投稿者:ちひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現実にはありえない設定でおこる物語だが、登場人物たちにおこる感情は、ありふれているとまでは言わなくても、十分に想像できる気持ちばかり。
読者の経験や、ものの見方によって感じ方は変わるだろうけど、
幸福と嫉妬、性別の社会的役割、偽善的な同情、読みながらまとめて襲ってきて、私にはつらかった。
サクッと読めて、ごつんと衝撃。
2023/08/11 17:29
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投稿者:なっとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
重たい内容ですが、すらすら読めました。
どこか他人事のように、淡々と進んでいくのが余計にリアルというか。
ちょっと恐ろしい。
読み終わりは、ちょっと放心。解説も良かったです。
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
短い話なんだけど、ページ数以上に、読むのに時間がかかった。
なんだろう、なかなか読み進められないっていうか。
主人公の心情が重いのかなあ。
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すっごい面白かった!!
正直、あらすじを知ったときは、ふーん、という感じだったけれど、読み出してみれば、ほぼ一気読み。(途中で来客があった)
………………………………………………………
主人公の間橋薫は同棲中の恋人田中郁也とセックスレス。
実は薫は、セックスが苦手で、恋人ができてもしばらくするとしなくなってしまう。
それでもいい、と、言ってくれている郁也と長く恋人関係を続けていた薫だったが、ある日郁也にドトールに呼び出される。
そこにはミナシロさんという女性が一緒にいて、彼女は郁也の子を妊娠していた。
そしてこう言う。
「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり、子ども、もらってくれませんか?」
…………………………………………………………
素っ頓狂なお願いから幕を開けるこの小説。
もしかしたら、主要登場人物みんなに嫌悪感を覚える人もいるかもしれない。
まるで、犬の子を里親に出すように人間の子を扱っているように見える。
知人に、子供はかわいいよ、と言われたことがある。
猫みたいに?と、聞いたら、それより、何倍も。と答えられて、私は、わかんないな、と、思った。
近所の同級生の女性が子供を産み育てている。
その子は大の猫好きだったのだが、子供が生まれてから子供が一番になっちゃった、と、そう話してくれた。
わかんないな、と私は思った。
思えば、私にとって、他者の子供は、その他者自身に感情移入しないと「かわいい」に、ならないんだな。
子供そのものが、かわいいという感じではない。
この小説の主人公薫も、子供より犬の方がかわいい、と思っている。
その薫が、どういう結論を出すのだろう、と、気になって気になって。
ラストのミナシロさんの思いも、薫の決意も、なんか分かるような気がする。
世間の常識からすると不自然な展開のように思えるのに、何となく自然に思えてくる高瀬さんの手腕は確かに素晴らしい。
子供を産むことの出来る性として、生れついた人間なら、思うことがあると思う。
文庫の帯で優しく微笑む高瀬さんに感謝。
この感想を書いたら、奥泉光さんの解説と皆さんのレビューを読みにいきます。←引きずられるので我慢していた。
楽しみ!
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自分の心境の描写が独特でリアル
男女平等的なのが流行っている昨今だけど、やっぱり女にしかない苦痛は男には理解出来なくて、
そのせいで私は一生男を心から好きになれないなとか思った
そもそも悪いのは郁也だろと思う
けど抱いてくれなかった元彼のことを思い出して、1ミリくらい郁也に同情してみたりした
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主人公の戸惑いや考え方、自分が変なのかなとかいつのまにか自然に受け入れ態勢だったりするところ、全てが違和感なく読めるのに対し、周りの人たちが理解し難い…けど、リアルではないとも思わない。あり得る、と思う。
セックスが子どもができる行為なのだと意識していなければ、あり得る。考えていなかったことに直面したときどうするか、なんてものは、じっくりと考えたつもりでもちょっとした要素で簡単に変わるだろうし。
あまり普段は読まないタイプの本なのだけど、文体が読みやすいことや、表現が素直で主人公がリアルに感じられることに救われながら読了。
読む世代でも感じ方は変わるんだろうな。
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子供を産むの、産まないの、女性にしか分からない
悩みがあるということがよく分かりました。
主人公の薫は、若い時に卵巣の病気で手術をして、
子供を産むことへの恐怖感や、周りの人たちが子供を産んで、自分が取り残されてしまったと焦りを持ち始めた。とてもデビュー作とは思えない、ストレートに心に沁みる感じが取れて、面白かったです。
女性に読んでほしいです。
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自分の存在意義はどこにあるのか。愛している相手次第で、その人の中にある自分の存在意義が変わってくる。
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間橋は、二十一歳で卵巣の病気の手術を受け、子どもが産めるのか産めないのかわからない体でした。そして、誰かと付き合って早いと一か月、遅くても三、四か月で、セックスをしたくなくなってしまう女性でした。
間橋は郁也とも付き合って四か月が経つ頃には嫌になり、しなくなってしまいますが、郁也は「薫のこと、好きだから大丈夫」と言い、二人は三年付き合っていました。
しかし、郁也はお金を払ってミナシロにセックスさせてもらっていたうえ、妊娠させてしまいます。ミナシロは子どもが嫌いで育てたくないと言い、間橋に「子ども、もらってくれませんか?」と聞いてきます。
子どもを産むか産まないか。子どもを持つか持たないか。女性なら誰しも考えるようなことを、ミナシロと間橋も考えていました。
そして、ミナシロは産むのは今回のでクリア、だけどほしくないと考えたのでした。
間橋は、子どもより犬の方がかわいいと思っていました。結婚して、セックスして、子どもを産んで、二人で育てるというシンプルな方法が選べませんでした。しかし、子どもを持たない人生を送る覚悟も、子どもを持つ覚悟もありませんでした。そんな中、ミナシロの話から、郁也は本当は子どもがほしいと思っていたことを知ります。
間橋は「子どもを、もらおう」と決めます。母や祖母が喜ぶなら、郁也がもらえるなら、子ども付きでもいいと考えたのでした。わかりやすい形ではないけれど、間橋から郁也への気持ちも愛だと思いました。
ミナシロの言動は非常識にも思えますが、子どもを中絶したくないけれど育てたくもないという気持ちも、一つの考えでおかしくはないと思いました。子どもを産むこと、持つことについて、改めて考えてしまう作品でした。
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何だか鉛のような話。
主人公はもっと怒ってもいいと思う。皆がみんな淡々として狂っている。
罪悪感から周りに気を遣っている?のかもしれないけれど、傍にいる決断をしたのは彼。
ただただミナシロさんが胸糞悪かった。
これは主人公以外のメインキャラ全てが加害者だと感じた。
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主人公が性に対して抱いてる感情は自分もあるのでリアリティある生々しい話なのかなと思ってましたが、ミナシロさんがぶっ飛びすぎてバランスが取れてなかった。
タイトルは良い。
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すごい、これは、「BOOK OF THE YEAR2022」ノミネートだ!
…いい!
もう最初っからぐいぐい持っていかれっぱなしで、通勤電車を降りたくなかったくらい!
以前読んだ高瀬さんの作品『水たまりで息をする』より全然いい!
『水たまりで息をする』は、もっと夫に壊れてほしいと、少し欲求不満に終わってしまったんだった。だけど、この2作品には共通点もあって。
いずれも、”主人公がマトモで、そのマトモな主人公のもとに訪れる不穏でリアルな日常”がテーマとなっている。
この「マトモ」って部分を少し考えてみたのだけれど。
解説ではP150「『わたし』が読者と等身大の、リアリズム小説の主人公にふさわしい、『平凡』な人物であるところに本小説の力動点はあるのだ」
としていて、あくまでこの主人公に対して、P148「『わたし』は平凡、とはいえぬまでも、常識的な人物として造形されている」と描かれている。
確かにそうだ。でも、どうなんだろう。この主人公「わたし」は常識的な考え方なんだろうか。個人的には、現実から少し距離をとっている人物と思ったのだけれど、どうなんだろう。
少なくとも、『水たまりで息をする』よりも。
この「わたし」の人物像を表現するならば、普段は隠し持ってる、護身用のナイフのようなもの。
わたしの場合、その護身用ナイフを常に振りかざしちゃってるので、たぶんマトモをこじらせちゃっているばかりか、逆に無防備になっているのだけれど。
当所人物が要所要所で吐き出す言葉には、悪意ではない、毒のある本音があって、これはたぶん誰しも抱えてて、でもそれは普段はしまわれてて、それを登場人物に言わせてる。
特にそのしまわれてるものの塊が、ミナシロさんの存在だ。
なぜかわたしの頭の中で、ぶっ飛んでた元同僚のイメージとぴたりと重なってしまって、その後も訂正することなく、そのまま読みすすめた。
『犬のかたちをしているもの』
このタイトルから、誰がこんな内容だと推測できただろう。
川上未映子さんの『夏物語』の時に考えた「産む、産まない問題」が再浮上してきて、またわたしの中をぐるぐると駆け回る。
自分の中に渦巻く、「こう思ってるけど、こんなこと思ってちゃいけない」というのを、その目線で語る主人公。
一方ミナシロさんは「こんなこと思ってるとやばいと思われるかもしれないけど私はこう思う」ってしれっと人に言えちゃう人で、その対比がとにかく面白い。
このミナシロさんの存在によって、ちょっと現実から距離を置いてるように見える主人公が「マトモ」に見えるのだ。
真面目に生きてると言えなくなるいくつかのこと。
だけどそれを閉じ込めてると苦しくて、でも飼い慣らすこともできない。
そんな感情の持っていきどころを、ミナシロさんが全部抱えていて、嫌な役割を背負わされてる。でもそれも、生きてる人間である以上、感じることであって、否定できない負の感情。見逃すと余計に苦しくなる。
やっぱり小説っていいね。
なんで自分がこんなに小説が好きで、小説を読み続けているのか、わかった気がする。
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たとえ今と同じ体の状況だったとしても、悩むほうこうが、なんというか、世間と足並みが揃えられるって楽ちんじゃないか。
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心理描写がリアルで、自分とは少し遠い価値観だったけれど説得力がありました。
「だるいな」って表現とか、顔に笑顔を貼り付けてやり過ごす場面とか、
あとは合理的ではないけれど、三島まで行って、タクシーで京都に向かって、結局家に帰るところとか、
異端だけど共感できる心理を拾ってくるところがすごいなと思いました。