紙の本
吉村昭の長編作品としてはめずらしい
2023/11/01 08:42
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
二宮忠八。歴史辞典に必ずしも名前が載っているわけではない人物であるが、ライト兄弟よりも「飛行器」の原理にたどり着く。吉村昭の長編としてはめずらしく、主人公が絶望的な局面に遭遇するような場面は後半になるまで登場しない。最後に、ライト兄弟の飛行成功に接した場面もどこか抑え気味に感じられる。だからこそ、長年にわたり苦闘を続けてきた主人公の胸中に思いを馳せることが出来る。
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明治実業物語
2021/12/09 11:28
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
吉村昭らしい剛直な文体で描き出された先駆者の「悲劇」のお話である。航空機史と製薬業界史の両方が描かれているが、主題である、航空機史よりは製薬業界史の話が面白かった。創業期の武田 田辺 シオノギ 小西 各製薬会社の道修町での活動が生き生きと表現されている。儒教的権威主義 和を持って尊しとなす みんな一緒 という日本社会 特に軍 官僚社会と、ある意味 非日本人的な大阪商人社会との対比が面白い。
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本での飛行機開発先駆者の話。著者独自の視点で描く物語。採用されなかった悲劇も丹念に描く。晴れ舞台に立つことのなかった人物に焦点を当てるのは著者の一つの特徴と言っていい。
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夢を掴みそこねるもどかしさもまた人生
2019/06/19 10:21
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投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢を追い続けた男の物語かと思って読みはじめるも、読み進めるうちに、夢を掴み損ねた男の物語ともとれる挿話も多く、その人生のもどかしさも本作が描くポイントだと感じた。凧、軍隊、製薬業界という異なる題材を一直線上に描き上げる視点は吉村氏ならではだ。
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二宮さん凄すぎ。烏からヒントを得て飛行理論を自分の手で作ってしまうとは。商売の才能もあるし。
ただ、変人扱いされていたのが残念だった。人と違ったことをする者を排除する風潮は昔からの日本人の性質なのかな。
あとは、世の中はここ100年で随分と狭くなったんだなと思った。
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ライト兄弟よりも先に飛行機を考え飛ばそうとしていた日本人がいたとはこれを読むまで知りませんでした。先見の明があったにもかかわらず、理解者を得られず資金もなく、ライト兄弟に先をこされてしまう。こういう人物についてしっかりと光を当てて書いてくれるのが、吉村昭という作家です。
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こんな人が、かつていたんですね。
時代にもまれつつも、自分の意思を貫いた男の物語。
よかったです。
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ライト兄弟が飛行機を飛ばす前に日本で真剣に飛ぶことを考えていた二宮忠八。その人生を描いた小説だが、後半にかけての医薬品会社に入社してからの物語に感情移入する。明治-大正期のビジネスマンが企業を立ち上げる様は今の世の中にないバイタリティーを感じる。
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二宮忠八の歴史小説。本人の人生とともに、日本航空史の黎明期が簡潔にまとめれてていて、お得感がある。彼の名声は軍国主義とともに高まり、敗戦後あまり語られることがなくなったが、パイオニアの一人として記憶にとどめたい。
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二宮忠八の生涯を描いた歴史小説。彼は、明治時代、ライト兄弟よりも早く飛行機の原理を発見した人物として知られている。
昭和初期の軍国主義時代に二宮忠八は国定教科書でも取り上げられ、村田銃やゼロ戦と同様に日本独自の技術力の高さを以って賞賛されていたのだろうが、昨今ではあまり知られていない。(私自身も、この小説を知るまで彼のことを知らなかった)
歴史の表舞台には必ずしも出てこない人物を、このような形で知り、学ぶことができることが歴史小説の醍醐味であり、一期一会的な人物との出会いが嬉しい。
忠八が子供の頃に新型の凧を造る際に手助けをする竹籠職人など、日本人が、永らく手先が器用で技術力に才能を有していた民族であることを改めて感じるところ。
また、忠八は壮年期より製薬会社で実業者としても成功し、それについても多く紙面が割かれており、明治の企業勃興期の状況を理解する一助になる。それも興味深い。
好奇心の大切さ、また、それを志に換えて、執念の以って成し遂げようとする心の強さの大切さ。改めて心に刻んだような気がする。
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ライト兄弟より先に飛び立とうとした日本人がいたことは知ってました。テレビでやってたので。そのプランを却下したのがあの長岡外史だということもしってました。しかしその二宮忠八が製薬業界の重鎮なのはちょっと想像ができませんでしたなあ。明治の日清日露の頃のエネルギーはどの切り口でも面白くて。浅田飴、龍角散、正露丸(征露丸)…。飛行機の話を読もうとしたら国産の製薬の事を知りましたよ。やはり吉村昭は面白いですね。
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ライト兄弟が世界最初の飛行機を飛ばす十数年前、独自の理論を構築し”飛行器”の完成を目指した二宮忠八の生涯を描いた歴史長編。
吉村さんの作品でやっぱりすごいなあ、と思わせるのは綿密な取材に基づいた描写です。今作でもそれがいかんなく発揮されていて、忠八の生涯はもちろん、彼の人生のターニングポイントとなった日中戦争での調剤士としての従軍体験、軍から離れ製薬業界へ飛び込む様子。そうした折々のポイントが当時の世相や社会情勢の描写と共にしっかりと書き込まれています。
卒論をちょくちょく書き始めている自分にとって、お手本にしたくなるくらいに詳しく、それでいて簡潔な文体で書かれています。ただ調べたことをちょこちょこ、と書き込んだのではなく自分の頭できちんと消化して新たに生み出された文章なのだな、ということが読んでいて分かります。
独自研究の限界を感じつつも、最終的に一人で研究や制作を続けざるを得なかった忠八。その裏にあるのは周囲の無理解という単純なものではなく、異質な才能を嫌い均質化を求める日本人の気質や思考、
そして、日本人にそんなことができるわけがないという当時の欧米へのコンプレックスといったものが透けて見えるような気がします。そうしたものを文章で説明してしまうのではなく、登場人物たちの言動と、世相の描写で暗に読者に伝えるのも吉村さんの巧さだと思います。
自らの夢のため仕事に打ち込む忠八の姿は読んでいて熱くなるものがあり、最終的に忠八がたどり着いた姿も爽やかで読後感も良かったです。忠八は功名心から飛行器の制作をしたわけではなく、ただ本当に純粋に空への憧れで行動し続けたからこそ、読み終えて爽やかな気持ちになれたのだと思います。
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いやぁ。すごい。二宮忠八もすごいけど、著者の吉村昭もすごいよ。どれだけ取材したんだろうねぇ。って感じ。伝記としてだけじゃなくて、日清戦争や日露戦争の頃の日本の姿も良く分かった。
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ライト兄弟より20年も前に飛行機開発に成功していた男の物語。成功物語は世にあふれているが、臥薪嘗胆の末、日の目を見ない物語は少ないので貴重。しかし、その努力は決して無駄にはならず、むしろかなりの確率でその他の方面に大きく役立つ。そして、それが認められることと幸せであることは、別物であることがこの書から分かる。海外の飛行機開発や各国との戦況と同時並行的に記述されており、多角的な視点で楽しめます。
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明治時代から日清・日露戦争の中、飛行〝器″を発明した天才 二宮忠八の苦難に満ちた人生の記録。そして、航空史も学べる。絶対に傑作です。
名作「漂流」の心理描写、代表作「戦艦武蔵」の歴史記録小説の間をとったバランスが絶妙。
貧乏ながら、企業家・ビジネスマンとしても一流で、画期的な発明家である、このような鬼才を登用できなかったこの国とは。