私たちの在り方を問う
2023/08/29 12:06
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本は「国民主権」である。しかし「国民の声を聞く」と称して政治家が安易な会見に導こうとすることに著者は違和感をおぼえる。本書は、そもそも主権とは何か国民とは何か、その概念の歴史からひもとき、「主権」が「主体」の恣意性が無制約になることを危ぶむ。
では誰が「主体」になるのか。やはり選挙で選ばれた政治家なのか。
さまざまな問いかけが成される。
導かれるのは、政治家の都合で動員される「国民」ではなく、私たち一人一人が権利や意思を持った民(市民)として、権力を監視したり声をあげたりする。主権者たる自身の権利や役割を果たすべきだという答えだ。
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主権はフィクションであると言いつつ、主権者・有権者・市民としての役柄、選挙に依存せず代表制に頼らない民主主義の再構成を、主権の理論史を通して、政治と法のあるべき関係を意識しつつ主権在民を考えている書。
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憲法改正は「賭け」であるとする、基本的には「護憲派」の立場から書かれたもの。衆愚な国民を信用していないようだが、かと言って「哲人政治」を望んでいるわけでもなく、硬性憲法に期待しつつ改憲を抑止したいという結論ありきで論理が組み立てられ、議論が展開されている印象。よって、現実政治を踏まえた憲法改正の必要性等には殆ど触れていない。
一応憲法学者の書いた本なので法学系の本にジャンル化されるのかもしれないが、内容的には政治学系だし議論の内容そのものには興味深いものはあるので、政治思想史等に関心のある人が読んだらそれなりの面白さは感じられるとは思う。
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近代国家の要件として「国民に主権のある民主国家」とはよく言われることだけど、主権って「憲法改正の権限を持つ」ってこと。さらに国民ってのが曲者でこれは誰のことなんだろう。特定の個人になってしまえば専制になるし、誰もが国民であり主権者なんだということは、誰でもないんだってことと同じこと。主権者、有権者、市民の3つの位相を検討する本書の投げかけは、もっと共有化されていい。分人民主主義は一つのアイデアだと思う。
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第一章では、意思、ロゴス、神と日常であまり使わない概念が出てきて、あまり理解できなかった.第二章でも、国民主権、衆愚政治など主権に関する議論だが、これも難しい.第三章 民主主義、第四章 市民社会は何とかついていけた.でも法学者の考え方はある程度理解できたような気がする.民主制は「民衆支配」であり、その民衆は放っておくと衆愚に陥る可能性がある. との解説があったが、どこかの国の政治をみているようだ.さらに、随所でタイトルにあるように主権者を疑うことの重要性も強調している.約300ページの新書だが、内容のあるものだと感じた.
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先ほどもニュース番組でコメンテーターが来年の参院選について「(有権者ではなく)主権者として」との言葉遣いで論評していたが、本書を読んだあとそうやすやすとは「主権者」という言葉は使えなくなった。
憲法に規定される国民はまず憲法制定(改正)権者としての主権者であり、選挙にあたっては有権者であり、また権利義務の主体として市民である。
究極的には誰でも有りながら誰でもない、最高権者としての主権者に畏れながら期待するために、国民の三相の相互の関わりの中でどのようなシステムが構想可能か、思考実験的な様相も含む。「国民的議論」とか「国民の皆様の判断」といったクリシェに思考停止しないための議論で頭がほぐされる。