出産した女性に辛い日本社会
2023/07/03 14:28
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は優秀な女性をたくさん存じ上げている、でも結構して出産してしまうと、会社の中ではいわゆる出世コースからは弾かれてしまう、その人がどんなに優秀でも、能力的には彼女より明らかに劣ると思われる男性に負けてしまうのだ
紋切り型を脱し、データに基づく分析で女性のキャリアを阻んできた制約と障壁を明らかに
2024/04/09 11:09
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投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米国における過去100年のデータを用いた詳細な分析で男女間に賃金格差が生じる原因解明した書。キャリアを阻んできた制約と障壁は何だったかを、説得力をもって明らかにする。男女の賃金格差の原因は、「育児負担が女性に偏りがち」など紋切り型で語られるケースが少ない。しかし筆者は、残業が多い、厳しい納期を守らなければならない、日々変化する意思決定を下さなければならないといった「仕事の性質」が原因であり、性差ではないことをデータに基づいた明晰な分析で解き明かす。
筆者は1900年から2000年の100年を、5つのグループに分けて分析する。出産未経験率、未婚率、労働参加率、大学卒業率、初婚年齢、プロフェッショナル・スクール(医学、法学、歯学、MBA)卒業生に占める女性の割合などのデータを使った分析は説得力がある。5グループ間の変化を見ると、米国の女性たちが先輩の背中を見ながら人生の歩み方を変え、徐々に歩を進めてきたことがよく分かる。例えば女性の職業の比重は、司書・看護師・ソーシャルワーカー・事務職・教師から弁護士・経営者・医師・教授・科学者へと移ってきたという。
第1グループは家庭かキャリアかの選択を迫られた世代である。第2グループは仕事の後に家庭に入った。第3グループで家庭の後に仕事を選んだ。既婚女性も様々な働き方ができるようになり、筆者は「新しい女性の時代の予感」させる世代と位置づける。第4グループはキャリアを積んだ後に家庭に入った世代である。ピルの認可が大きな影響を及ぼし、「消費型・就職志向」から「投資型・キャリア志向」への変化を促した。第5世代はキャリアと家庭を両立させる世代で、出生数の増加が特徴である。
著者は2023年のノーベル経済学賞を受賞した米ハーバード大のクラウディア・ゴールディン教授。翻訳がこなれていて読みやすい。男女格差が大きな問題となっているなか、今後の改革に役立つ情報に富む本書はお薦めである。
男女の賃金格差は賃金にとどまらない課題である
2024/01/10 11:31
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はアメリカでの100年にわたるデータを活用して、大学卒の女性が、いかにキャリアと結婚、子育てに向き合い、障壁に直面してきたかを分析したものである。中心は賃金格差であるが、内容は幅広いものとなっている。100年を5つのグループに分けて、そのグループの特徴を抽出し、時代の変化を追っている。女性の生き方や性差別との闘いがクローズアップされている。闘いだけでなく、技術革新の反映もとらえている。もともと、著者は大卒女性に限って調査してきたわけではないが、実践的な要求に応じてきた面がある。目次を見ると、
第1章 キャリアと家庭の両立はなぜ難しいのかー新しい「名前のない問題」
第2章 世代を越えてつなぐ「バトン」-100年を5つに分ける
第3章 分岐点に立つー第1グループ
第4章 キャリアと家庭に橋をかけるー第2グループ
第5章 「新しい女性の時代」の予感ー第3グループ
第6章 静かな革命ー第4グループ
第7章 キャリアと家庭を両立させるー第5グループ
第8章 それでも格差はなくならないー出産による「ペナルティ」
第9章 職業別の格差の原因ー弁護士と薬剤師
第10章 仕事の時間と家庭の時間
エピローグ 旅の終わり-そしてこれから
謝辞、訳者あとがき
女性登場人物リスト、資料付録、図・表付録:出典および注釈
原注、参考文献、索引 となっている。
以上のように展開される。その時代の特徴や変化が読み取れ、数多くのデータが活用されている。大卒女性といっても白人女性が対象となっており、黒人女性等のデータが少なく、活用できなかったことにも触れている。アメリカでの100年間ということで、日本でそのまま適用できるかという問題はあるが、先進諸国での共通課題も見えてくる。少子高齢化が進んできているが、少子という課題と直結している問題でもある。
また、第6章の静かな革命では技術革新の影響の大きさも読み取れる。社会運動との関係を見ていくことも必要だろう。大卒女性ならではの職業という点も取り上げ、掘り下げられている。一読してほしい本である。
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あなた自身のやり方の問題
どん欲/柔軟な仕事・ポジション
キャリア:人生のコースまたは歩み、一定期間の継続が必要
平等な結婚vs収入の多い結婚
①家庭かキャリアか
②仕事のあとに家庭
③家庭のあとに仕事
④キャリアのあとに家庭
⑤キャリアも家庭も(1980年以降の大卒者)
チャイルド・ペナルティ:出産前後のン収入が下落
手っ取り早い解決策<問題を知る→正しい方向に進む
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アメリカの女性の賃金についてここ100年の変遷を時代ごとに「キャリアか家庭かのどちらか」「キャリアを築いたあとに家庭」のようににパターンわけをして分析されている。参照データも多く信頼できる結果だと思う。
医師や弁護士といった職業、MBA取得者といった経歴を持つ女性であっても同じ仕事をする男性と比較していまだに賃金が低い現状がわかり、ジェンダーの公平には依然として課題が残っていることがわかる。
単純な性ごとの年収だと子育てをする女性などの労働時間の差が大きく反映されてしまうが、時間給で計算しても現状で男性1ドルに対し女性70セント前後の差があるらしく、同じかそれ以上の仕事をしても女性が差別を受けている。
正直、日本は男尊女卑が色濃く女性が受ける差別が特に大きい文化圏だと思っていたが他国でもまた別の点で性差別の課題があることがよく理解できた。
賃金差も1ドルに対し50セント程度という2倍近い差があった頃からは改善されてきているが、これは何年もかけて女性が奮闘してきた結果でもある。
まだまだ差別は残っているがこれまでの女性には敬意をあらわしつつ、現代とこれからの女性にはキャリアのためにやむをえずか家庭を捨てたりするのではなく、自由意志でどちらも選択したり、どちらかに集中したりできるような人生を送れるようになってほしいと切に思う。
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女性って、人生の選択も多いし、特に出産後は不利にされやすいことがありありと。生年毎のグループ分け分析が興味深い。。。
勝間塾生とマミートラックについて話して気付いた唯一の打開策|エッセイスト寧華yasuka✈只のOLが旅行しまくれる訳✦ @yasuka20200818 #note #私の仕事 https://note.com/ruly_yasuka/n/ne2f9ce1554fe
ワタシがnoteに書いたことと諸々リンクしそう
【結局20年変わってない女性の地位】
https://note.com/ruly_yasuka/n/n26f42712233e
【女性と給与】
https://note.com/ruly_yasuka/n/n792ef7d93c39
【複数育児同僚の退職理由に違和感】
https://note.com/ruly_yasuka/n/n144767b97d45
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少しでもこの本を読んで女性の生き方が変われば嬉しいですね。
特にエピローグに書かれているコロナ禍で子どものために仕事と家庭で葛藤する女性。
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出版社(慶応義塾大学出版会)ページ
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428476/
原著
Goldin, Claudia. Career & Family: Women's Century-Long Journey toward Equity. Princeton, NJ. Princeton University Press, 2021.
(『キャリアと家族:平等を目指す女性の1世紀にわたる旅』)
コーホート分析
安田洋祐による紹介記事「歴史とデータが明らかにする男女格差 」
https://note.com/yagena/n/n64fe10044672
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ノーベル経済学賞ということで読んだ本。
研究結果をまとめた、という形で、本としては少し読みづらさを感じた。
記載されていることは至ってシンプルで、仕事の重要な時期と子育ての時期は重なり、どちらにどれだけ時間を割くかという話になる。仕事に時間を割くほど時給換算の給料が上がるシステムなので家庭内の平等を取ろうとすると世帯としての収入は損なわれる、というもので、これまで感じてきたことがデータに基づき記載されていた。
大学卒の学歴の高い女性に限定して、100年のわたって仕事と家庭への関わり方を研究した、というのは興味深かった。
女性がピルという武器を手に入れたという記載があったが、今日においても日本ではピルはそこまで浸透しておらず、この部分だけみても日本は欧米からだいぶ遅れをとっているよな、とは感じた。家事育児に費やす時間も依然として世界トップレベルでもあり、日本女性の苦労が軽減していく方向にもっと進んでいってほしい。
男性のみが社会での労働力だっただったころは、女性が主な担い手であるケアの重要性について気に留める必要はなかったが、女性が労働力のおよそ半分を占め、人手不足もあり、主に若い世代の男性意識の変化もあるなかで、企業の重役もケア労働に目を向けざるを得なくなってきていると思う。AIの登場などにより、仕事の質自体も変化していく時代の流れの中で、長時間労働できる人材が好ましい、という価値観から、短い労働時間でアウトプット出していける人材の評価を高めていく方向へシフトして行ってほしいと感じた。
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感想
どちらも求められる。家族が、社会が圧力をかける。能力に差はない。しかし要求があまりにも大きい。十分に能力を発揮できない。格差は残る。
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品切れを恐れ、経済学賞発表直後に「200年分のデータってどんな風に集めたの??」と不思議に思い、ポチッと注文したのは正解だった。
手に取りやすい邦題を胸に、原題の「キャリアと家庭:女性たちの平等へ向かう100年の旅」を(日本との『時差』を感じつつ)終えた。
祖母、伯母、母たちの人生から感じ、自分のキャリアを振り返りながら日ごろ娘たちに伝えてきたことは、単なる思い出話ではなく「バトン」だったのだと認識することもできた。
新聞の書評の言葉を借りれば「エリート職種にうめ込まれている『業務構造(日本では「働き方」)』こそが原因」なのだと。
男性女性、すべての人たちの幸せな人生のために。
出版されていたこと、翻訳されていたことにも感謝。
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The history of employment of women is interesting. But I don't like how to write books redundantly, which is often shown in books written in English.
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ノーベル経済学賞のニュースを見て、これは早めに図書館で予約しなければと借りた本。
会社の働き方・慣習・風土への不満。
だから女性が働きやすくならないのだ。
育児参加したい男性なんてさらには気遣ってなんてもらえない。
この会社は嫌だ辞めたい!
と仕事・育児・家事でギリギリの状態になると考えてしまうのは多くのワーママにあると思う。
でも会社単体の問題でもない、業種の問題でもない、国家さらには世界での、また今という時代だけでなく100年前からの根深い問題なのだと本書は提起している。
長時間労働時間という仕事・育児・家事の両立の敵はいつやっつけることができるのだろうか。
自分の子どもが社会人になるまでには絶対にMUSTだが、自分の職場の後輩がこれから産休・育休・復帰を迎える時にこんな苦労をしてほしくない。今すぐに解消にとりかかってほしい。
◆メモ
・ジェンダー格差が起きる→会社が軽い叱責を受ける→役員に昇格ふる女性がひとり増える。育休を取るリーダーが数人増える。
これは病気になった人にバンドエイドの箱を投げ渡すようなもの。
・女性の職業が男性の分布に従ったとしても男女収入差のせいぜい3分の1しか消し去ることはできない。
・「家庭」は子どもを持つことを定義とし、必ずしも配偶者はいなくてもよい。夫と犬という家族はいても、彼らは家庭を構成していない。
・「キャリア」は人生の歩みであり、一定期間の継続が必要。キャリアには進歩と忍耐強さを伴う。
・「ジョブ(仕事)」は自分のアイデンティティや人生の目的の一部にはならない。収入を生み出すためだけのもの。
・過去一世紀の変遷①家庭かキャリアか→②仕事のあとに家庭→③家庭のあとに仕事→④キャリアのあとに家庭→⑤キャリアも家庭も
・経済学用語(GNP,GDP)の概念に今は慣れてしまっているが、この概念は最近編み出されたものであることに私たちは気づいていない。
・1930年代初頭米国経済不況時に国民の生産能力測定のシステムを構築するにあたって、女性の家庭での労働力と市民消費のかなりの部分を占める商品やサービスを生産していることを計算に含めるかの議論があった。
・コロナ後の世界では在宅勤務の期間を増やすようになった。リモートワークは特に子育て中の親に長期的な有益効果をもたらすかもしれない。しかし、保育園・学校の休校を繰り返す影響として、これまで以上に男女格差が際立つ可能性がある。コロナ以前より片方の親が家にいなければならない時間が増えるため。
・世代や職種を問わず、時間はキャリアと家庭を求める女性にとって敵になる。
・育休を利用する男性が増えている。しかしその前に企業は休暇を取得した男性が将来的にペナルティを受けないように、全員から賛同を得なければならない。
・アメリカは、デンマークフランススウェーデンのように幼い子どもの世話は地域社会の責任であるという考え方を受け入れてこなかった。
・日本はデンマークスウェーデンドイツと比較し、出産による収入減とその後の回復が弱い。
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2023のノーベル経済学賞を受賞したゴールディンの一冊。米国社会で女性がキャリアと家庭の両立を求めて苦悩してきた歴史を各世代ごとにパターン分けして解説する。日本でもほぼ同じことが起きているし、世代や人によってそれぞれのパターンに大体分類できるように思えた。弁護士と薬剤師における女性のキャリア状況の違いが示唆に富んでいた。そういう働き方がどの職種や会社でも求められてきている。本書に書かれていることをもとにキャリアと家庭のバランスについて夫婦間で話し合いができるとよい。
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ジェンダーギャップを学ぶシリーズ第2弾。100年間の女性の社会進出を分析し、男女の賃金格差について考察している。世界的に見ても性別が違うというだけで賃金格差があるということを再認識。しかも、先進国・途上国を問わない。高等教育終了時点では、修了者数、成績等むしろ女性の方が評価されている。しかし、5年後ではほぼ変わらない年収が、7〜8年後から差がつき始め、15年後には大きく開いていわゆる鰐の口となる。本書ではこの原因の一つとして、労働のタイプをあげている。特に高給な業務では、不定期な労働時間(夜中だろうが休日だろうが呼び出されたり、為替の変化等に対応したりすること)、非定型業務(新規事業開発やリスクの高い業務に取り組むこと)に対応することが求められる。これを貪欲なポジションと呼ぶ。一方、保育園からの呼び出しや年老いた親の介護、趣味など、個人の時間を優先する業務を柔軟なポジションと呼ぶ。平等な家庭を目指し結婚したカップルであっても、貪欲なポジションをどちらが担うかを検討した際に男性が担うことが多く、子育てなどのイベントが終了した後でも、格差は埋まらないという分析。もちろん逆パターンもあるのだろうけど。他にも職業別の分析もあり、日本でも身近なところにある課題であり、勉強を続ける必要がある。