紙の本
世界で一番幸せな本屋さん
2024/05/31 07:01
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近芥川賞直木賞の発表の際のニュース性に肩を並べるほど注目を集めているのが、
全国の書店員さんの投票で選ばれる「本屋大賞」。
この賞には、「本屋大賞」以外に「翻訳小説部門」と「発掘部門」があって、
2024年度第21回の「翻訳小説部門」に選ばれたのが、
ファン・ボルムさんの「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」(訳 牧野美加)だ。
韓国で2021年電子書籍として刊行、その後紙の書籍となり、韓国でもベストセラーとなった作品。
本屋さんが舞台の物語だから、書店員さんが選ぶ「本屋大賞」に似合っているが、
この作品を読み終わった素直な感想を一言でいえば、
「とてもよかった」だ。
しかし、こうも思った。
実は一度読んだだけでは、この作品の良さを十分に享受したとはいえないのではないか。
確かにいい作品だが、きっと読み返したら、もっともっと心にずんとくる
そんな作品のような気がする。
物語の舞台は、ソウルの架空の町「ヒュナム洞」という静かな住宅地に開店した
「ヒュナム洞書店」という本屋さん。
店のオーナーは30代の女性店主ヨンジュ。
彼女が何故この街に本屋さんを開いたかは物語の後半明らかになる。
そして、もう一人、この本屋さんで提供されるコーヒーを出すパリスタの青年ミンジャン。
彼もまた鬱屈の中で、この本屋に漂着した一人だ。
ヨンジョやミンジャンだけではない。
この本屋さんに集まってくる人はそれぞれ悩みを抱え、時に絶望し、時に迷い、
答えを見いだせていない。
それでも、彼らの心を癒すものがこの本屋さんにはある。
彼らは幸せが遠いところにあるのではなく、身近なところにあることに気付く。
実はこの本のページの中にも、きっと幸せが閉じ込められている。
またいつか、その幸せを確かめるために、
この「ヒュナム洞書店」の扉を開けるだろう。
紙の本
魅力的な書店を舞台に
2024/04/17 10:45
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
架空の街ヒュナム祠という住宅街に開店した書店を舞台に、店主ヨンジュを中心として、その書店に集う人々の交流を描く群像劇。人を愛することで自分の人生を手放すより、愛を手放して自分の人生を生きたいと離婚したヨンジュが開いた書店は、本のある空間の安ど感を伝える、カフェを併設した魅力ある書店だ。資本主義経済下、本屋は、本に関するあらゆるものとお金を交換する空間なのだが、本を関わりの剤として、人々の交流の場でもある。ベストセラーという存在が、多様性の消えた出版文化を物語っているけれど、こんな書店で、過ごしてみたい。
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韓国の作家さんの小説を読むのは初めてでした。
エッセイと小説が混ざったような心地良い文章が綴られています。
ヒュナム洞書店に訪れる人々は様々な悩み、揺らぎ、挫折を抱えていて、もがきながらも自分を信じ成長していく姿が描かれている。
心にじんわりと柔らかく優しさが染み込んでいくような素敵なお話でした。
人生には嬉しいこと、悲しいこと、苦しいこと、様々なことが起こるけれど、その時に寄り添ってくれる人と一冊の本があれば。
それってすごく幸せなこと。
人と人が繋がる場所。心と身体を一休みさせてくれる場所。
ヒュナム洞書店はそんな素敵な本屋さんでした。
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生きていると時折「違う、そうじゃない。こんな自分は私じゃない。」という心の声が聞こえてくることがある。
内容の違いは人それぞれでも今を生きる人たちが感じている生きにくさをリアルに描いていてきっと共感できる登場人物が一人はいるだろう。
どうしようもない悲しみややるせなさにヒュナム洞書店に集う面々は程よい距離を保ってそばにいてくれる。
心をゆるめられて、でも心強くてそんな素敵な場所。
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韓国翻訳本から判断すると、韓国の人たちも日本同様疲れている人たち多そう。住宅街の本屋さんが舞台のハートウォームそうな小説。本好きとしてぜひ読みたい
#ようこそ、ヒュナム洞書店へ
#ファン・ボルム
23/9/26出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
https://amzn.to/3ta5IGX
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読書記録61.
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
10月に旅先の釜山で読んだ作品
自分の弱さと人の痛み
社会への思いと心の持ちよう
悩みを抱えた人々がゆっくりと繋がり、本と書店という空間が彼らをそっと優しく、包み込むように進んで行く物語
韓国のどこかにこんな本屋さんがあったら、수세미(たわし)をもらって読書会に参加して、イベントに出たり、コーヒーを飲んだり
そしてもちろん代表さんのおすすめ本を買って読みたいな
・・・・・
『幸せはそう遠くにあるわけじゃないっておもったら、ちょっと生きやすくなるような気がしたんです』
『だから、わたしは幸福ではなく幸福感を求めて生きようって、考えを変えたんです』
『ヒュナム洞という町を選んだのはヒュナム洞の「ヒュ」が「休」という字だと偶然知ったからだ』
『本の舞台を実際に訪ね〜中略〜その都市を舞台とした本を読みながら何時間でも過ごすこと。これ以上にロマンチックな読書の方法があるだろうか』
↓
この本を韓国滞在中に読めた事、
物語後半にこの文章が出てきた事に、心が躍るほど嬉しくなりました
折に触れ読み返したい、宝物の作品になりました
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書店でトークイベントを開催する場面の、ヨンジュとアルムのやりとりいいなあ。タイマーを使った時間の確保のやり方、生活の中に取り入れてみよう。
登場人物たちの距離感が心地いい。
ジミとヨンジュとジョンソの年齢はバラバラだけど、自宅に呼んで飲みながら話を聞いてあげる仲の良さ。ミンジュンがどんどんコーヒーにのめり込んで、美味しいコーヒーを淹れる研究に手を貸すジミ。好きな作家を書店に招き、ぎこちないスタートからも、いつの間にか惹かれているだろうなって感じるスンウ。ヨンジュの文章から伝わる最初のイメージと実際に会って感じたイメージ。違うなと思いながら、時間を削ってまで行動的になっていくスンウが好きでした。ただ…ベルリンで会いましょうのくだり…ぐいぐい来すぎて怖かった…気持ちが傾いてるから和らいでいるけど、あんなふうに「お手伝いしますよ」「嫌でしたか?」「行ってもいいですか?」なんて国を超えてまで会いにくるの怖すぎる。断れんて、
終盤のテウがお店を訪ねてきて、チャンインのことが触れられたあたりから展開が変わって、読む手がぐらついた。チャンインとの過去は、ヨンジュの突然の変わりようとお互い仕事人間ということもあり、あまり良い関係ではなかったのかな。。忙しくて相手のSOSにも先延ばしにして宙ぶらりんのままだったし。
でもヨンジュの要望は、夫婦だからといって、必ずしも受け入れなければいけないということはないと思った。相手にも同じことを求める必要はない。
しかし離婚直後のチャンインの言葉は重いなー。
「〜〜おまえは俺を忘れろ。俺と過ごしたすべての瞬間を忘れろ。俺のことを思い出してくれるな。二人で過ごした日々の記憶も消してくれ。俺はおまえを忘れないでおくよ。一生おまえを恨みながら生きるさ。俺を不幸にした女としておまえを記憶しながらいきるよ」 ヨンジュが一方的に告げた別れから、離婚までしたけど、相手には俺を忘れろ、俺は恨みながらお前を記憶しながら生きるよなんてさ…生涯言葉が枷となるだろうよ…
少しずつ読むから、久しぶりに出てきた人物に「ヒジュって誰?!!どこに出てきた?!」とパニくる笑
初めて書店で映画上映をすることになり、そのタイトルが是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」。
訳されていない原文でも、このタイトルなんだろうか。
p.352 ヒュナム洞書店ならではの個性を、深さと多様性に求めることにしたのだ。客には少々難しいと思われても深みのある本を中心にキュレーションし、多様性のためにベストセラーは排除した。
→ こんな本屋があってもいいと思う。ベストセラーなら大体の本屋やオンラインでも買える。自分で選んで手に取って、自分の中のお気に入りを増やしたい!あと本屋を楽しみに通うなら、その本屋独自の味が欲しいところ。私ならzineを多く扱う本屋に行きたいなあ。
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作者のあとがきより、自分の人生を評価する基準が自分の中にあれば、それでもいいのだ。
海外の作品には苦手意識があり、いま迄手を出さなかったが、なんとなく題名が気になり図書館で借りる。読み始めると、とても癒される作品で最後まで楽しんで読むことができた。
いくつか、韓国の文化がえがかれているところもあるが基本的な働き方や結婚感、多様性などなど日本と共通するところが多く、共感しながら読み進められるところが多かった。
自分なりのものさしで生きていこうよ。という、優しい話に読んでいるこちらも優しくなれた。
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離婚して仕事も辞めてたったひとりで個人書店を開業したヨンジュと書店に通う常連さんたちの心温まるいいお話。 登場人物全員が魅力的でした。 いい人の周りにはいい人が集まる。 近しい人と縁を切ったり、仕事を辞めたりすることは世間体とか常識から外れたことのような気がして自分を責めたり、誰にも言えず殻に閉じこもったりしがちだけど、縁を切ることで新しい人間関係が生まれたり、転職で自分の生き方を見つけたりする。 だから罪悪感を捨てて、今自分の周りにいる人たちを大切にして生きよう、と励ましてくれるそんな本。
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■2024年3冊目(図書館)→購入済み
※追記
本屋大賞翻訳小説部門第1位
おめでとうございます…!
本好き、本屋好きの方に
ぜひ読んでいただきたい大好きな1冊です。
書店が舞台の物語ですが、
様々なことを改めて考えさせられます。
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本屋を舞台に…というとこで、まずワクワクする。
そしてコーヒーが加わることでワクワク半端ない♬。.
こういう静かな物語がほんと大好きで、ヒュナム洞書店に集まる人が少しずつ増え、その人たちの暮らしと日常がほんと変わり映えしない日々だけど、みんながヒュナム洞書店に寄り添っていく姿がほんと暖かい。
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「どうしよう、おもしろすぎる…」と読みながら何度も思った。登場人物もストーリーも文章も言葉も、すべてが愛おしい。
頑張って努力して一生懸命に生きてきた登場人物たち。彼らは走り続けてきた足を止めて、時間をかけてゆっくりと自分を見つめなおす。書店に集う人々と関わり合いながら、少しずつ自分にとって良い生き方を見つけていく。そんな物語。
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仕事やプライベートに悩みを抱えた人達を温かく、優しく包む「ヒュナム洞書店」。少しずつ自分の中にある何かを変えながら前に進み、成長していく登場人物達に共感しながら読んだ。ヨンジュさんって“リセット症候群”だったのかも?あとがきの【自分の人生を評価する基準が自分の中にあれば良い】という作者の言葉に、背中を押されたような明るい気分になれた。
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仕事を辞め離婚もしたヨンジュは、何かに憑かれたようにソウル市内にヒュナム洞書店を立ち上げる。就職に失敗したミンジュンをバリスタに雇い、自分の考える本屋を作り上げていく。そこに集う人々は、自分の心のどこかにある不安な気持ちをヒョナム洞書店で癒やしていく。
本を愛するヨンジュの醸し出す雰囲気が伝わってくる。期待以上だった。
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ソウル市内の住宅街にできた「ヒュナム洞書店」。
会社を辞めたヨンジュは、追いつめられたかのようにその店を立ち上げた。書店にやってくるのは、就活に失敗したアルバイトのバリスタ・ミンジュン、夫の愚痴をこぼすコーヒー業者のジミ、無気力な高校生ミンチョルとその母ミンチョルオンマ、ネットでブログが炎上した作家のスンウ……それぞれに悩みを抱えたふつうの人々が、今日もヒュナム洞書店で出会う。
新米女性書店主と店に集う人々の、本とささやかな毎日を描く。
大きな夢や目標がなくても、「これでいい」と思える日常がある――そんな日常を続けていくことも、ひとつの「幸せ」ではないだろうか? そう気づかせてくれた1冊。
夢を叶えたり、目標を達成することはもちろん素晴らしくて素敵なことだけど、「これでいい」と自分の毎日を肯定できる日々を過ごせることも同じくらい意味のあることだと思いました。
いい会社に就職してちゃんと仕事をして、誰かを好きになって結婚してあたたかい家庭を築く――誰もが正解だと思っている「幸せ」。でもその「幸せ」の形に押しつぶされそうになる時もある。そんな人たちが登場人物で、正解じゃない「幸せ」を見つける物語。ものすごく心に刺さりました。目からウロコが落ちた。
ポイントは「これが」じゃなくて、「これで」いい。「私はこれでいい」――そう言える日常を続けていくのも十分幸せじゃないですか? 思わずふっと微笑んで言える言葉じゃないですか?
でも何かを諦めているわけではないのです。ヒュナム洞書店にやってくる人たちは、「これでいい」と思える日常を見つけて、成長していくんです。大きなことは起こらなくても、ちゃんとみんな成長しているからこそ、物語と最初と最後は違う展開になっている。そこがとても良かった。
好きな本だけ並べる本棚を作るなら、この本も間違いなく加えたい1冊です。