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紙の本
「みんな金が欲しいのだ、いや、金しか欲しくないのだ」
2021/11/14 21:23
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「三四郎」「それから」「門」の前期三部作「彼岸過迄」「行人」「こゝろ」の後期三部作のあとに発表されたのが「道草」、失恋、不倫、略奪愛(後期の作品になるほど、その恋愛模様は自己中心的な嫌なものになってくると私は感じる、「三四郎」と「こころ」を比べれば一目瞭然、三四郎に主人公はすがすがしいが、こころの主人公はぶん殴りたくなるほど勝手だ)という作者の十八番がこの作品には登場しない自伝的な要素のある作品で、かつて養父母だった人たちに金をせびられ、妻の実家とはうまくいかず、兄、姉ともしっくりこない、イギリス帰りの学者にしてはさえない毎日、事実、養父が金を無心に来たことはあったらしい。「みんな金が欲しいのだ、いや、金しか欲しくないのだ」という健三のセリフはあまりにも身もふたもない
紙の本
主人公のつぶやきとぼやき
2021/07/01 22:42
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投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石の作品の中ではそれほど人気の高いものではないかもしれないが、自分は漱割と好きな作品。
「人間の運命はなかなか片付かないものだな」。
など、主人公のつぶやきとぼやきが最高。
紙の本
道草。読み終って、題名を振り返る。
2017/11/08 13:36
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投稿者:鶴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石の登場人物って、本当に好き。
怠惰な夫を意識しながら、女を見下す姿勢も好き。
しかも登場するほとんどが嫌な人ばっかりだから、安心するのね。
あー、こんなに嫌な性格でも人を責めたり、生きたりするんだね、というような。
夏目漱石の「行人」が好きな人だったら、この本好きじゃないかな。
ちょっと物足りない気持ちになることもあるけど、あれ、この本って結局?
って考え直すと、それなりに思うところがある。
紙の本
道草
2021/02/28 21:12
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。
その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。
養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻お住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。
苦悩を描く漱石の自伝的小説である。
紙の本
ドロドロの私小説
2019/02/28 22:40
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投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石唯一の私小説といっていいだろう。主人公の健三は漱石自身が、そして彼に金をせびりにくる育ての親、島田は、漱石の現実の養父がモデルのようである。なるほど、とうに縁を切った養父との間に、健三が繰り広げる生々しいやりとりからは、身内との因縁に懊悩する漱石の様子がうかがわれる。物語では、妻の父からも金の無心をされるなど、どこまでが現実生活の再現かはわからないが、それまでの漱石作品がもつ、人間の本質を追求する、どちらかというと抽象化され、昇華された人間類型の闊歩する文学世界が、妙に人間臭いだけの、ドロドロしたドラマに変貌している。
また、産気づいた健三の妻が産婆を待てず生みおとした赤ん坊を、何か異様な物体のごとく叙述する箇所もリアルで、この作品がいわゆる自然主義と呼ばれる人びとから称賛されたのにも首肯できる。
ただ一つ私が、漱石らしいと思った文句は、最後の健三夫婦の会話にでてくる。島田とのトラブルを解決したあとで、これですべて片付いたと安堵する妻の御常にむかって、健三は言う。「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他(ひと)にも自分にも解らなくなるだけの事さ」―因果応報のごとき哲学をぶつ健三を尻目に、御常は生まれたばかりの子どもをあやす新春ののどかな風景で物語は終わる。