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改版なった漱石『明暗』
2010/02/10 10:20
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧版が文字が小さく少々読みづらかっただけに、このたびの改版は中高年の読者にとって大変有難いものである。50ページほど増えたものの、その分文字が拡大されて「普通に」読みやすくなった。
さて、漱石作品中の最長編でありながら未完となった『明暗』だが、内容の重厚さ等から、漱石文学の上位に位置づけられる作品であろう。
評者の主観では、『こころ』や『虞美人草』などと共に、ベスト5に挙げていいのではなかろうか。
物語は、後半に大きな転回をみせ、その後のストーリー展開に期待を持たせるあたりで終わってしまっている。
未完であるが故に、漱石はどうストーリーを展開させただろうか、と想像をめぐらせるものだ。
続編として、水村美苗氏が『続 明暗』を発表している。その中では、さらにストーリーをふくらませて展開させる。
それはそれで面白いし、一つの楽しみ方である。が、水村氏の続編に拘らず、未完のままそっとしておくのもいい。その後の展開は想像をめぐらすだけでも悪くない。そんな印象である。
ところで、水村美苗氏は評論『日本語が亡びるとき』の中で、日本の近代文学の作品群にもっと注目すべきことを説いている。それらは教育において国語力の養成にも重要である。
また、日本文化として読み継いでいくことも大切だろう。
『明暗』も国語力の向上に資するものであり、読み継いでいきたい作品の一つである。
明暗 改版(新潮文庫)
2016/02/11 21:05
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明暗は、背景が狭く、登場人物も少ない中、よくもここまで長編を飽きさせないよう次から次へと先を読みたくなるように誘導する、その力量は流石、夏目漱石だと思います。
絶筆にしてこれから益々小説が円熟期に入ったと予感する作品で、未完ということが大変残念です。
作品は未完かもしれませんが、漱石の永遠性を感じる大変良い作品だと思います。
本当に、この先が読みたい
2021/02/28 21:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は大正5年に朝日新聞に掲載され、漱石の死によって未完結で終わった。津田がお延と結婚する前に付き合っていた清子を彼女が湯治している温泉宿まで追いかけて行って・・・、とこれからどうなるんだろう、津田はお延を選ぶのか、清子を選ぶのか、それとも、という期待が膨らむ展開なのだが、もちろん結末はわからない。間違いなく漱石の小説の中で何本かの指に入る名作になったことは間違いない(この未完の状態でも上位に来る気がする)。インテリばかりが登場する漱石の作品の中で、ここに登場する小林という貧相下劣な男が異彩をはなっている。彼は自分のことを「実を云うと、僕には細君がないばかりじゃないんです。何にもないんです。世の中がないんです」と卑下する、そして卑下することによってインテリと渡り合おうとする。この男のこの先も知りたかったのに
「真正の」ユーモア小説
2002/05/09 21:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうしてこんなに面白いのだろう。これが「真正の」ユーモア小説なのだと思う。タイトルが暗示するように、登場人物(たとえば津田と小林)も筋も対照的な二つの世界の均衡と破綻への予感の上に言動し展開していくのだが、作者の視点の随時の移動によってこの不安定さが微妙にずれていく。続編を水村美苗が書いていて、これはこれでとても面白かったのだが、『明暗』は未完のままでいいと思った。
唯一の恋愛小説?
2019/07/31 23:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石未完の遺作。主人公は、津田義雄という新婚の会社員である。彼は、健康上の問題を抱えるうえに、金銭的に困窮し、妻のお延ともぎくしゃくした関係にある。津田には、お延より前に、結婚を約束した清子という女性がいた。二人の過去を知る吉川夫人の手引きで、彼は、手術後の療養と称して、清子の滞在する湯治場に出かけ、かつての恋人との再会をはたす...
漱石作品のほとんどは、男女関係を題材にしているが、その多くは恋愛や結婚生活の問題よりも、もっと根源的な人間関係の問題を描いている。『それから』では、愛の衝動を隠した自分を偽った行為の報いや業の深さが、『行人』では、人間不信に懊悩する人格が、『こころ』では、社会に向けた刃が自分に襲いかかるという絶望が...どれも迫力をもって描かれ、どれも読者に鋭く訴えかけてくる。恋愛小説を、恋愛を主たるテーマにした小説と定義するなら、漱石の大部分は恋愛小説から外れることだろう。
それで彼の作品から、このような定義にかなう恋愛小説をあげよと言われたら、私は、この『明暗』を選びたい。ここには、男女関係のややこしさ、もつれを象徴する人間心理の描写がある。それまで男の側からのみ心理描写をしてきた漱石が、この小説でお延という女性の視点に立った心理描写をおこなったことは、恋愛を男女平等に、客観的に描こうという意図の表れではないだろうか。津田とお延だけではなく、お延を嫌う小姑の妹お秀の暗澹たる内面も叙述される。これによって男女の泥沼はより立体的に浮き彫りにされる。
一方、津田と清子との再会の場面で語られるのは、あくまで津田の胸の内だけで、清子の心は描かれない。それによって、清子の人格は謎めいたものになってゆくが、小説はこの再会とともに終わるので、その後どのようにこの心理描写が発展したであろうかは、わからない。
大作家の未完作品はたいてい、ドストエフスキーの『カラマーゾフ』のように、残されているものだけですでに完成しているものであるが、『明暗』は正真正銘の未完成である。もう1年でも漱石が長生きをしていたら、これも完成し、漱石文学の新たな方向性が開けたであろうと思うと残念でならない。
完結してないだけに
2021/03/28 21:31
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投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは続きが気になる終わり方。最後の作品という事で、タイトルは知っていたが、読むのは今回が初。言い回しなんかが回りくどくて、物事を難しく考えるこの時代の人々の喧嘩の様子なんかが伺えて、この時代を満喫できます。どの時代も男の人っていうのは目移りする物なんですね~。結果、津田さんはどうなる予定だったのかが気になります。