終始ひたすら統計分析した、学術的な内容です。
2024/11/20 14:39
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる「就職氷河期世代」と呼ばれる世代の人々が、社会でどのような不利益を被っているのか否か、について統計を用いて論じた1冊です。
とにかく終始、統計分析を行っているのが当書の最大の特徴です。紙幅は200頁を大きく下回るほどの薄さですが、学術的で難しく仕上がっている感があります。
私自身が就職氷河期世代なので、当事者として中身を把握したいと思って購読しました。この世代の社会での生きづらさが分かり、当書を読んでよかったです。
データで読み解くと…
2025/01/13 17:14
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
サブタイトルにあるとおり、データで「就職氷河期世代」とひとくくりにされがちな就職氷河期と呼ばれた時代に就職した人たちの仕事や家族形成などを分析している。
一般的にこの世代が正規就職できずに非正規であるから結婚できず出生率が低いと言われるが、その実際はどうかなどを解きほぐし、エビデンスに基づいた対策を求めている。
これまでちまたでいわれてきたことや自分が思っていたことと異なるデータがあり興味深く、ひとくくりにした見方や支援には一行が必要と思ったが、それはこの世代を支援しなくてもいいという話ではないことを再確認しておきたい。
女性の状況は改善、ちょっとずつだけど。でも・・・
2025/01/17 09:42
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投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
個別の印象や事例というだけではなく、データをもとにした全体的な状況を分析しています。そこから、意外なことや、あまり一般的に知られていないことが見えてきていることが報告されています。個人的に印象的だったのは、女性の就業状況や収入状況は、ちょっとずつだけど、相対的によくなっていること。でも、世代全体、および、氷河期を過ぎた以降についても、非正規雇用が増えており、年収もよくなっていないと。新聞等では、ここ数年は学生の就活状況も初任給もよくなっているみたいだけど、それが持続するか。また、一定の期間の間での、この状況は、今後の社会問題になりうるとの指摘にも、納得感がありました。
就職氷河期世代に限定する狭い見方を変えることがわかる
2024/12/22 13:15
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
就職氷河期の世代というと、バブル経済が崩壊して大企業を中心に新規採用を抑制し、職種によれば採用なしとかが出てきた頃からなので、本書では1993年から2004年までとしている。約10年を前期と後期に分けて分析している。その数は約2000万人で、日本の総人口の6分の1に及ぶ。それにとどまらず、リーマンショック前までをポスト氷河期世代、リーマンショック後はリーマン震災世代と定義する。この世代も就職氷河期世代と変わらない、あるいはそれ以上に厳しい状況を示している。単純に不況とはいえない構造的な問題があるかもしれない。まさに、失われた30年といわれるゆえんだろう。本書の目次を見ると、
まえがき
序 章 就職氷河期世代とは
第1章 労働市場における立ち位置
第2章 氷河期世代の家族形成
第3章 女性の働き方はどう変わったか
第4章 世代内格差や無業者は増加したのか
第5章 地域による影響の違いと地域間移動
終 章 セーフティネット拡充と雇用政策の必要性
補論 あとがき 参考文献 となっている。
以上のように展開されている。就職氷河期世代及びその後の世代は不安定な雇用、低賃金という分析はされているが、家族形成にどう影響しているのか、人口動態といえば少子化に影響したのだろうか、データに基づいて明らかにされてきたとは言い難いだろう。ここに焦点を当てた分析が出てきている。その結果をどう評価するのかということもある。女性の働き方や世代内格差、無業者についてもアプローチしている。地域別に影響しているのかという視点も重要といえる。ここでは、近畿の問題がクローズアップされている。近畿は以前から失業率が全国的に見て高めに出ていることが指摘されている。さらに、研究が必要と感じられる。終章で、対応策が提起される。一筋縄にいかないことは明確だろう。この世代の親が亡くなっていくと経済的に極めて苦しくなることは明白だし、本人が高齢者になると低年金、無年金層となっていく。大量の生活保護受給者発生といわれている。生活保護の前の制度が手薄であり、この充実を指摘している。生活困窮者自立支援法があるが、まだまだ不十分と思われる。こうした研究成果を踏まえ、さらなる研究や政策の充実に向いていけばと思ってしまう。ぜひ一読されたい。
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統計に基づいた就職氷河期世代のマクロ的な分析。当事者として興味深く読んだ。が、参照されるデータの多さ、論文調の文章が当方にはなかなか難しく。
女性のケースと地域についての章は流し読み。
最初の就職で躓いてしまい、以降低賃金の非正規雇用から抜け出せずキャリアやスキルを身につけないまま中年になってしまった。年収が低いので結婚できず、老後の年金支給額も少ない。…というのが氷河期世代のイメージか。大方、データもそれらを裏付けている。
意外だったのは氷河期世代は団塊ジュニア世代より子供を産んでいた、氷河期世代の影に隠れがちだがリーマンショックと震災のあった世代の就職状況も劣らず悲惨だった、という2点。というか経済的に自立できない若い人たちが増えているというのは単に日本経済が右肩下がりのせいでは…。コロナ禍後のインフレと円安、過去最高税収、実質賃金は下がり続けているのに物価は上がる一方。生活は厳しい。若い世代の立ちんぼやら闇バイトやらのニュースに90年代のような既視感を覚える。
非正規雇用から抜け出せなかったのは当時の小泉政権が派遣法を改正したのも原因だろうと思っている。
氷河期世代も50代に入っている。職務経験を積む機会なくその年齢になってしまった人に、今更職業訓練や斡旋をしても効果は薄い。自分の職場に、スキルのない50代の男性が配属されてもなかなか難しいものがある。福祉で対応すべきという本書の指摘に同意。
あと10年もすれば氷河期世代も高齢者。年金が少なくて生活できない困窮者が大勢出て社会問題化するのだろう。
自分は氷河期世代としてブラック企業に就職し、その後職を転々としたのち(震災の年にした転職活動は惨憺たる結果だった)今の会社に入社した。もう10年以上の勤務、給与も待遇もこれまで勤めてきた会社で一番恵まれているので続いている。運がよかった。運が悪ければもっと困窮した立場にいてもおかしくなかった。
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1990年代半ばから2000年代前半の、バブル景気崩壊後の経済低迷期に就職した「就職氷河期世代」(本書では、1993~2004年に高校、大学等を卒業した世代と定義)に関し、その前後の世代と比較しつつ、世代別の雇用や経済状況、家族形成への影響、女性の働き方の変化、世代内の格差、地域間の移動などについて、政府統計をはじめとするデータを用いてその実像を検討し、セーフティネット拡充等について提言。
個別の事例を基に印象論で語られがちであった就職氷河期世代について、就職氷河期の若年雇用の悪化が未婚化・少子化の主因だといった通説の再検証も含め、データに基づく客観的な全体像が提示されており、個人的にも勉強になったし、この世代等に向けた政策形成に当たっても基礎とすべき内容であると思う。特に、自分も含まれる、就職氷河期世代からは外れ、政策の対象にあまりなっていない、ポスト氷河期世代(2005~2009年卒)やリーマン震災世代(2010~2013年卒)も雇用が不安定で年収が低いままであるという事実は、目から鱗であった。
最後の政策提言部分は一般論的で具体的な制度設計まで提起されているわけではないが、この世代に向けて雇用政策とは別に福祉の拡充に向き合うべきということ、生活保護の次の段階の既存の枠にとらわれないセーフティネットを拡充すべきということ、氷河期世代より下の世代への就労支援を充実すべきということといった方向性は、賛同できるものであった。
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就職氷河期世代の就業・収入・生活実態を、統計データから明らかにしようとする本。なのだが、俗説で言われるロストジェネレーション的な傾向は証明するのは簡単ではない、というのが本書の結論。
個人的には、氷河期世代当事者として欲しかった結論ではないので、消化不良なのは間違いない。でも、主観や感情論ではなく、データ/エビデンスに基づいて議論をすべき派でもあるので、複雑な心境。
前向きに考えるなら、経年変化をデータで追おうとすると、社会が想像以上に複雑な(データの解釈が難しい)ことに気づけたのは良かった。
例えば、「大学進学率」「女性の働き方に関する考え方」「雇用慣行(雇用の流動化)」などの社会的な変化の影響を考慮すると、就業率や賃金データから、氷河期の影響だけを抽出するのが難しくなっていると感じる。エビデンスがあるからと結論に飛びつくのは危険、というのを改めて認識する。
ただ、そんな中でも確実に言えるのは、バブル世代とそれ以降の世代には、明らかに格差があること。そして、氷河期世代への支援は、年齢的にもはや就業支援は現実的ではなく、福祉支援の段階に来てしまっていること。
後者に関しては、暗い未来しか見えなくて、暗澹たる気持ちになる。。。
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データをもとに説明されているので、図表を参照しながらじっくり読むタイプの本だった。すらすら読み流すスタイルの自分には少し読みにくかった。
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配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01435049
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バブル期から就職氷河期とその後のポスト氷河期世代の状況を様々なデータを元に勉強できました。
数字で見てもバブル崩壊と言うのはそれだけ社会に与えた影響が大きかったんだなと言う感想です。
実は就職氷河期以降は失業率などは低いままと言う事実と、実際に就職氷河期世代に困っている人が多い事を考えると、就職氷河期とはバブル崩壊で大きく変わった社会に人も会社もうまく馴染ませるための10年間だった気がします。
私が若い頃はまだ当たり前のように言われた『お前の代わりなんていくらでもいるんだ!』と言うセリフなどは、昭和の価値観の悪い部分の最たるものだと思います。
就職氷河期世代がバブル期以前の悪い部分だけを煮詰めて飲まされた世代と言っては言い過ぎですが、梯子を外されたとは言い得て妙で、そのように教育されてきたのに社会に出たらそれではダメ(人)、昨日までそうやって来たのに今日からはそのやり方ではダメ(会社)、となった訳ですから世の中はすごく混乱したのではないでしょうか?
例えば非正規雇用と言う言葉一つ取っても、高度経済成長期やバブル期のなんとなく生きていけた社会での非正規雇用と、バブル崩壊を経て安月給なのに嫌な思いまでして働きたくない、もしくは心を病み働けなくなると言う社会での非正規雇用では、意味合いも大きく変わったのでは?と感じますし、数字だけでは見えてこない中身の質の変化をどう捉えるか?も、やっぱり大事だと思いました。
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氷河期世代についてデータをもとに分析している本。自分の感覚と合わないところがあり、データの客観性、大切さを改めて感じた。
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個人的怨嗟の成仏のために読んでみた。帯のまとめの最初2つが、そうなんだ意外、と。あそこで労働環境が構造的に変わってしまったのか…経済の失敗は国を滅ぼすな。地域による差も知らなかった。
著者あとがきに深くうなづく。自分も氷河期のなかでも悲惨な氷河期後期世代ドンピシャだけど、ほんとあの時は若者の自己責任的な空気が強かった。許せん(←成仏できてない)
あと少子化は氷河期あまり関係ない、その前からだし、最近はさらに進行中だけど、ということで。原因はいろいろだと思うけど、なんだろう…一番は空気かな。空気ってなんなのかなー(盛大に話ずれた)
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読了。自分は就職氷河期前期世代なんだと知る。確かに、後期世代に比べ圧迫面接もなく楽だったかもしれないと思う。私らの世代をうまく誘導していれば、失われた30年はなかったのではと考える。難しいのかな?
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自身が本書でいう「氷河期後期世代」にあたることから、一般的に言われている通り、「氷河期世代」は色んな意味で他の世代より損をしているのか、さまざまなデータの裏付けを元に考察している、ということで、興味が湧き購入しました
単に収入や就職率に限らず、少子化や地域間格差、男女による違い、ニートや介護による無業者問題などの観点でも考察されていてとても興味深い内容でした
データ(エビデンス)を用いて、論理立てて考察されていてとても腑に落ちる内容だったと感じます
驚いたのは、必ずしも「氷河期世代」だけが損をしているわけではなく、「氷河期」以降は基本的に特に低所得の領域において下げが止まっておらず、格差が広がり続けているということ、一方で、それが少子化につながっているとは言えないことがデータからは読み取れると言うことです
様々な観点で要因分析されていて、単純な話ではなく、視点を広げるいいきっかけにもなったと感じました
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客観的にみれば、氷河期世代でことが始まったわけではないこと、そして、景気回復期の今の若者で実は雇用、収入の不安定が続いているといっている。
自分は一浪、工学修士で2000年卒の男だ。学卒前の97年、院卒前の99年で就活した時の、今で言う学歴フィルターの威力に打ちひしがれたものだ。運良く外資系ITで職を得て今に至るが、リストラ、パワハラ、競争がひどく、生き残るために必死だった。大学卒でも企業がだいぶ絞ったので正社員になれないやつもたくさんいた。一流大卒者は豊かだったろう。氷河期の頃は、職場のモラルやハラスメント意識も低く、職場環境や支援は今とは比べ物にならない位悪い、感覚だ。
一側面の客観事実とし、氷河期世代から始まったと言われていることが実はそうではなかったと言うことが示されている点は、私にとって新しい認識であった。ただ、あの時代の厳しさは異様ではないかとの思い。バブル期の価値感や制度を引きずった社会が、不況期を受け入れ馴染む過渡期だったので、多くのものを変えていく様が異様に思えた。そこを特別ししているのだな、と自分的には認識したい。あの時代に目先の利益を追うしかないとして、技術を手放したり、互恵や協調のもと、技術を教えたり入りやすくしたことが今の地位に落ちた要因の一つだと思う。などなど、想像力がひろがる、示唆に富んだ大変学べる本でありよかった。何度かまた読み返してみたいと思った本だ。