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電子書籍

刑事ヴァランダー・シリーズ

著者 ヘニング・マンケル(著),柳沢由実子(訳)

雪の予感がする一月八日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。被害者のうち、無惨な傷を負って男は死亡、虫の息だった女も「外国の」と言い残して息を引き取る。片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ……? マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀――スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!

殺人者の顔

税込 1,019 9pt

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みんなのレビュー28件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本霜の降りる前に 下

2023/05/20 16:53

リンダの今後はいかに?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに再会した友人アンナが失踪したことで独自の調査をしていたリンダ。
謎の人物の住所らしきものを見つけたところ、ふいに襲われる。このシーンが何気に戦慄を起こす。昔は先進的な高層住宅だったが、今は裏ぶれ、住人も誰が住んでいるのやらわからない。麻薬の売買も行われている気配があるのに、住人は関りを恐れて放置している。そんななか当初からの住人で、今も自分の住み家の実態に目を光らせているアンデルセン夫人、こういう人がまだいることにほっとさせられること自体が、他人との関係が全くなくなった最近の状況をよく表していると思う。
さらに認知症を発症した老ピアノ教師のアパートに、本人も気づかない誰かが居住しているというのが、この作品全編を通じてもっとも恐怖を覚えた。動物への火を使った虐殺行為や森の小屋でのバラバラ殺人などよりも、静かだがそれゆえに何とも言えない底知れなさを感じさせるシーンだった。

物語はこれらの事件とアンナ失踪という二つのラインが並行して進む。
そのなかで、正体を現しつつあるアンナの父親とその帰還を待ち望んでいたアンナとのいびつな関係と、同じ職業を選んだことでようやく接点を持つに至ったヴァランダーとリンダという二組の親子関係を対比させているのが興味ぶかい。
それぞれの父親が娘の頬をなでるというシーンがあるが、全くちがった印象を与えている。片方は自分に絶対の自信をもち、娘と言えども自分の意思を遂行するための道具としてしか見ていない。一方のヴァランダーはといえば、仕事に信念は持ちながらもすべての状況をコントロールできないという限界を知っており、娘の無謀な行動が不安の種となる。子供は親にどういう存在であってほしいのか?とても考えさせられる問題だ。

ラストでかつての自分を思い出させるような追い詰められた少女に手を差し伸べるリンダが描かれる。このシーンも秀逸だ。ひとは自分の痛みを認識し、そのとき適切な助けを得られたからこそ、他人にも手を差し伸べられる。これこそがこの作品の最大のメッセージではないだろうか。リンダの警官人生もスタートしたがこのことを常に忘れないでいてほしい。

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紙の本霜の降りる前に 上

2023/05/07 13:46

ヴァランダーの家庭状況が・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作「ファイアーウォール」で、娘のリンダから警察官になると告げられたヴァランダー。
新たな社会の幕開けとそれについていけないと自覚している彼だが、娘の進路選択を聞いてもとりわけ喜んでいるわけでもない。子供世代が親と同じ職業を選択したからといっても、しょせん時代も個々の考え方も異なるのが当たり前と見なされる現在、一口に「跡継ぎ」というくくりでは語られないだろう。
現実でも親子、または三世代にわたる警察官一家というひとを時々見かけるが、上の世代は裏も表も知り尽くした自分の職場を、子供世代が選んだことをどう思っているのか知りたいところだ。知っているからこそ就かせたくないと思う気持ち、逆に特殊な環境であるからこそ導いたり相談に乗ったりできるということか?

さらに今作ではリンダが実習直前という微妙なポジションながら、友人が不可解な失踪をしたことで警察の捜査と並行して自分なりの調査を始めるという設定なので、彼女の視点からすべての状況が語られることになっている。
するとヴァランダーやモナとの親子関係、小さいころの家庭環境など、今までよりもはっきりとしたことがわかるようになってきたのは面白い。
親には知られていない二度目の自殺未遂のシーンが彼女の心に深い痕跡をのこしたこと、その場を収めてくれた若い女性警官の存在など、今回の職業選択に強い影響を与えた要因が次々と明かされる。忙しすぎるせいもあるがこれらのことにまったく気づいていないヴァランダー、家族と言ってもその心の中は神秘の森だということがひしひしと胸に迫る。

また母親のモナという女性も気の毒なひとだと思う。シリーズではヴァランダーとの関係をさっさと終わらせ、経済的にも時間的にも恵まれていそうな新しい男性と再婚したことしか情報がなかったが、その再婚も修復不可能なほどの危機に陥っている。上巻終わり近くのモナのシーン、娘なら絶対に記憶から消したいものだろう。その場に残って慰めることはせず、当初の計画どおり友人の捜索を続けるリンダ。親との不毛な関係から距離をおきケンカを避ける彼女は、ストレスの多い警官に向いているともいえるし、自殺未遂から救ってくれた女性警官とはちがうタイプだともいえる。
そしてこの両親の老後の面倒まで視野に入れているのは、30歳前にしてはちょっと老成しすぎている感もある。

とにかく新しい視点が加わったことで新風が吹き込んだこのシリーズ、作者が存命ならどんな展開を考えていたのか返す返すも残念だ。

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紙の本ファイアーウォール 下

2022/06/30 16:32

壁の先には何が?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

下巻で、一気に物語が世界規模の広がりを見せ始める。
スウェーデンの片田舎の町イースタと、アンゴラにいると思われる人物の繋がりが明らかになる。ネットでは、どこでも世界の中心になりうるというが、イースタの人物とアンゴラの人物が意気投合したのは、やはりリアルな接触だったというのが、ちょっと安心する点だった。これだけの陰謀を企む仲間探しには、やはり直接会って、相手の内面を探る必要があるはず・・・と思うのは、自分はまだまだアナログなのか?
現実には、結構な犯罪が闇サイトを通じて仲間を募り、素性も知らない相手と共謀して高齢者の家で強盗を働くという世界が、もう何年も前の事件だったりする現実がある。マンケルがこの状況を知ったら、何と言っただろうか?
さらに言えば、テロ行為だけでなく、一国の政府がネットを使って他国の選挙に介入したり、フェイクニュースを堂々と発信したりと、ネット対策なしには今や政治も成り立たない始末。魅力的だが、ある意味核兵器などより恐ろしい魔法の杖を人類は手に入れてしまったのだろうか。

そして、リアル世界でも、人間の内面や心の在り方が問われる状況になっている。上巻では、隠し撮りされた写真に対する署長の思わぬ反応がヴァランダーを打ちのめすが、下巻では長年苦楽を共にしてきたはずの部下マーティンソンの信じられないような裏切り。でもよく考えてみると、過去の作品でもマーティンソンのそういう傾向は読み取れなくもなかった。ただ、警察に対する住民の不信感から娘に危害が加えられそうになった時には、意気消沈して警察官を辞めたいと本気でもらしていたはずなのに・・・。
さらにとどめの一撃が、勇気を奮って入会した交際相手紹介欄で知り合った相手からの、もうこれは裏切りというレベルではなく、疑似餌に目くらましされたとしか言いようのない展開。
本当に今作では、精も根も尽き果てた感じのヴァランダー。季節の描写もそれに追い打ちをかけるような厳しさだ。かつての友も挨拶もなく去り、同僚は居丈高に自分の座を狙ってくる。父の家では、もはやその痕跡さえも失われており、ヴァランダーの寄る辺のなさに身をつまされる思いだ。

でも、長らく自分探しの旅を続けてきたらしいリンダの決意を聞かされて、一つの壁を通り抜けたと思うヴァランダー。毎作、彼の深い悩みとそこから逃げ出さないことが自分の使命だと感慨を新たにするヴァランダーを見てきたが、ついにその使命を託す誰かを見つけたのかもしれない。この続きは『霜が降りるまえに』でじっくり読めるだろう。

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紙の本ファイアーウォール 上

2022/06/15 15:38

ついにIT犯罪が・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

年一作のスローペースで読んできたこのシリーズ。8作目で、ついにというか、現代社会と切り離せないIT犯罪の分野に踏み込んでゆく展開となった。
人々の心(特に若者の)や、そこから生じる異常な犯罪がもはや理解できないと嘆くヴァランダーに、さらに不可解なITを通じて広がる人間関係や犯罪が襲いかかる。慢性疲労と無力感に苛まれつつも、ひたすら捜査に邁進する姿をみて、これこそヴァランダーだとほっとする自分を感じる。

しかし、このシリーズを読んでいていつも思うのだが、ヴァンランダーに限らず、イースタ署の面々のほぼすべてが、とにかく現場を離れたい、いつ警察官をやめてもおかしくない、今日も何とかしのいで捜査している・・・というスタンスで仕事に臨んでいる。特に鑑識のニーベリは、今作その傾向がかなり顕著だが、彼の発言を聞いたヴァランダーは、どうせすぐに退屈するに決まってると、自分を棚に上げて達観したようなことを言う。
みんな徒労感と人員不足と想像力の先をいくような犯罪の発生に、常にイライラしているのだが、その底にはとにかく目の前の事件をなんとかしなければという使命感、といっては大げさかもしれないが、何らかのエンジンが絶えず稼働しているような心理状態にあるのが、何かとても安心感を与えてくれる。
今目の前にあることが、世の中のすべてに繋がっているという考えは、決して間違っていない。高所から目を配ってくれるはずの本庁の長官たちは、些細な新聞記事に神経を尖らせて内部調査を命じてくる。現場をわかっていない長官はともかくとしても、日々ヴァランダーたちの奮闘を目の当たりにしているはずの署長までもが、取り調べ中の暴行をヴァランダーの精神的な不調の表れと決めつける。
今回は、この二次的な事態がよけいヴァランダーを消耗させる。突発的に職場放棄して、すぐにも辞表をたたきつけてやる、と息巻くヴァランダーだが、ここまでシリーズを読んだ読者なら、先のニーベリと同様、決してそんなことはしないだろうとわかっている。これこそが、このシリーズの隠れた魅力かもしれない。

あと思うのは、ヴァランダーの考えでは(おそらくマンケルも)、個人の心情が表れるのはPCファイルではなく、やはり日誌やアルバムのようなものなのだというのがちょっとほっとさせられる。写真ファイルではなく、丁寧に貼られたアルバムの写真は、その瞬間にタイムスリップできる力をまだ失っていないはず、と感じるのは私だけだろうか。
続く下巻が楽しみだ。

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紙の本背後の足音 下

2021/04/30 23:36

混沌の中に見える力強いラストシーン

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

上巻から引き続き、手探り状態の捜査が続く。糸口は時に思わぬ発見に繋がり、時に行き止まりに誘い込む。作者の最高傑作に違いないという確かな手ごたえを感じつつ読み進めてきた。
各書評にも言われている通り、このシリーズは90年代のスウェーデン社会を如実に映し出したものということだが、とくにスウェーデンに限ったことではなく、当時の世界の広い部分について言える状況だと思う。雇用の不安定化、人間を今現在の効率に当てはめて評価する価値観、しっかりと根を張った生き方を見つけづらい社会システム・・・。
どれをとっても当時から現在に至る日本の状況に当てはまらないものがあるだろうか。
そんな中で、ひとは安住の地を求めて自分だけの世界を構築し、自分だけの秘密をもつ。同僚、友人でも他人の奥底をのぞき込むことはできず、仮にのぞき込めたとしても決して理解することはできない。そんな現代を当然のこととして、生きているものもあれば、ヴァランダーのように長年の同僚の人生や考えにも理解が及ばないことを悩んでいるものもいる。
そしてシリーズ中屈指の不気味さを感じさせる犯人にしても、その素顔はときに性別すら超越してしまうほどの不可解さを見せる。ましてや犯罪の動機など決して分かることはないのだ。
冬を迎えた群島に旅立つヴァランダーは、一時の安らぎを与えてくれた女性にももう寄りかかることはできないと感じる。だが、荒波の中に佇む孤島と、そこで生きたかつてのスウェーデン人の先祖を感じることで、これこそ今のそしてこれからの自分に、この世界に必要なものではないかと直感的に感じ取る。さらに警察官を務め、この世界の崩壊を食い止めるために。群島の描写が真に迫って素晴らしい。ヴァランダーの悩み多い生に幸多かれと願わずにいられない。

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紙の本背後の足音 上

2021/04/25 13:04

救いのない楽園

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

シリーズ順に読み進めてきたヴァランダー刑事もついに第7作目。
とにかく面白い。評価の高い『目くらましの道』よりも、個人的には好きだ。
夜読んでいると、もう一章、あと一章となってしまい、まさしく作中のイースタ署の面々のように、翌朝げっそりするほど読み続けてしまう。いや、お見事というほかない。
今作では、なんと長年の同僚スヴェードベリが殺害されてしまい、ヴァランダーが発見者となってしまう。仕事以外に個人的つきあいのなかったスヴェードベリだが、捜査の過程で、自分をよき友と周りに言っていたことをきき、他人の知られざる内面にこれから踏み込まざるを得ない状況に考え込む。さらに冒頭、あやうく居眠り運転で事故を起こしそうになったことから、自分の体が壊れる寸前であることを知らされるという最悪のタイミングで恐ろしい事件を捜査することになる。
前作以前から、異常に睡眠時間が少ないヴァランダーだが、本作では次々起こる残虐な殺人と、からくも難を逃れた少女が、ヴァランダーのまじかで殺害されるというダメおしまでついてきて、憔悴しきっていたところへ、天使としか思えないような行きずりの女性にあやうく倒れ掛かりそうになる。いままでも、つらいときに身近な女性に寄りかかる癖のある彼だが、今回だけはあまりの苛酷な状況に、それもありかとついうなずいてしまう。
いつも不機嫌なニーベリや何度も退職を考えるマーティンソン、優秀な弟子でもあるフーグルンドなどお馴染みのメンバーの描写も的確に、彼らの個性を際立たせている。
本当にスウェーデンが楽園だなんて、誰が言ったのか?というくらい、その抱える問題は深くそして普遍的だ。後編が楽しみ。

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紙の本五番目の女 下

2020/06/30 22:45

やはり重いテーマだった

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

上巻から読んできて、犯人の背景がかなり見えてくるにつれこれは重たい展開になること必至だと思っていたが、エピローグでやはりそうか・・・と考えさせられた。
声を上げられずに暴力にさらされる女性たち、誰にも気づいてもらえず守ってもらえず、その存在さえ薄れかけている女性たち。そんな状況を打破しようとしたのが今回の犯人なのだが、決して彼女自身も正義の味方ではなく自らの過去に振り払えない悪夢を抱えていた元被害者といってもいい女性なのだ。そして抱え込んできたものが遂に溢れ出る日がやってくる。苦労してきた母が、やっと出かけた海外旅行で何の関わりもないのに現地のテロに巻き込まれ、その事実さえ当局によって隠滅されてしまう。見えない犠牲者、隠されてきた暴力はもうたくさんだと決意する彼女にある種の共感が生まれるのは当然かもしれない。実際、自分もかなり犯人に傾倒している部分があることに気づかされた。
ここからマンケルの問題提起が始まる。法の外に身を置いたものの私刑は正当性があるのか?という何度も繰り返されてきたテーマだ。最近も同じスウェーデンの作家の小説『許されざる者』で同一のテーマに出会ったばかりだ。マンケルはこの作品を読む限りそれは自分には理解できない行為だと明言している。その根拠として、作中に警察の頼りなさを理由に掲げているものの、ただ誰彼構わず暴力で鬱憤を晴らしたいだけの自警団の存在を挙げている。さらにその無分別な行為の結果、仲間の警官の娘が学校で暴力を受けるというおまけまでついている。大人たちの暴走は確実に子供たちも蝕むのだと。しかし一方では声を上げられないものへの威圧や暴力を自分一人ではどうしようもない、もっと大きな社会的問題だとして解答を我々に投げかけているように思える。相手も人間だという、この当然の感覚を全く持ち合わせていない人々が現在世界に増えつつあるようでとても怖い。

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紙の本五番目の女 上

2020/06/14 22:47

まだ上巻だが・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作「目くらましの道」のなんと数か月後という設定で始まる今作。
長いこと心が通じ合わなかった父親とのローマ旅行を終えて、気分一新で仕事に復帰したヴァランダーだったが、一見些細な通報2件からまたも身の毛のよだつような事件が襲いかかってくる。秋というよりほとんど冬のような強風と雨の中、ヴァランダーたちの手探りの捜査が続く。
今作で印象的だったのは、人の心もそそけ立たせるようなスコーネ地方の冬の始まりの描写だ。スェーデンでも最南部のスコーネ地方だが、バルト海に面していてとにかく風が強いらしい。以前デンマークのユトランド半島のドキュメンタリーを見た時にも感じたが、海岸が数年で砂交じりの強風により何メートルも崩壊して後退してゆくという人が住むにはかなり厳しいところなのだ。ヴァランダーの住むイースタもドイツや東欧、ロシアとは海を挟んで向かい合い、開かれた世界のようにも見えるが、同時にそれは未知の人やものが入り込んでくる玄関口でもある。そしてヴァランダーはいつも海の向こうからやってくるものに、自分の価値観とのギャップを知らされ思い悩む。
上巻の最後あたりでリンダに語る彼の心情につい感情移入してしまう自分も、年取った者にも若い者にも厳しい現代の新しい価値基準にはあまり賛成できないし、乗っていこうとも思わない。
下巻で展開されるだろう犯人の理屈を読むのが、もう今から憂鬱に感じて仕様がない。

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紙の本目くらましの道 下

2019/11/06 22:32

天国の裏側

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

上巻から続くやり切れないスウェーデンの赤裸々な現状が哀しい。
上下巻の表紙写真があまりにも天国のようなスウェーデンの夏の日を表現しているので、この裏側で行われている目を覆うような悲惨さがより際立つ。
先進国でかつては福祉天国とも呼ばれたスウェーデンだが、冒頭に描かれた中米の村に暮らす家族と比べて、どこが天国といえるのだろう。
ヴァランダーでなくとも嫌気がさすというものだ。
やり切れないし、ヴァランダー一人でどうなるものでもないが、やっぱりこのシリーズ読むのを止められないのはひそかに我が身に迫るこの世の地獄を自分も感じているからだろうと思う。

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紙の本目くらましの道 上

2019/10/31 22:06

ヴァランダーシリーズ最高傑作と名高い本作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

シリーズ作品を順番に読んできて、本作品にたどり着いた。
のっけから十代の少女の追い詰められた挙句の焼身自殺というショッキングなシーンで幕を開ける。しかもそれがスウェーデンの遅い春を象徴するような菜の花畑の中。やっと蕾がほころび始めたばかりの少女の人生の儚さと相まってかなり衝撃的だ。
そして有力者ばかりがターゲットとなる異様な連続殺人事件が起こる。
犯人らしき人物のモノローグが所々に挿入されており、犯人の心情も徐々に垣間見えてくる。
結末は下巻に続くのだが、物語のベースにどうにもならない悲しみと栄華の影の陰惨さが垣間見える。北欧警察小説は何冊か読んだが、日本では天国のようにイメージされるスウェーデンのこの暗さ、やりきれなさは一体何なんだろう。

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紙の本ピラミッド

2018/11/23 02:16

北欧の正統派ミステリー中篇集。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

帯には短篇集とありますが、日本文学的には中篇集です。
お腹いっぱいの600ページ超で、途中でだれることなく
がっつり楽しめます。刑事ヴァランダーシリーズの作品の一つです。
評判に納得のいく読みごたえでした。

五つの作品が収められています。
二十代で恋人のモナの機嫌をとるのに必死だったマルメ署のころ。
イースタ署に異動してモナと結婚したころ。
捜査官に出世し、家族をかえりみなかったころ。
ベテランになり、わがまま老人と化した父に振りまわされるころ。

ミステリー本編とからめて、ヴァランダーの生きざまが透けてみえるのが
見どころの一つです。

警察官の単独行動は厳禁という原則を、
ヴァランダーはしばしば破ります。
謎を考えぬき、手がかりを見つけ、状況に穴をあけてと、
典型的な仕事バカのヴァランダー。
単独行動は捜査にのめり込んでいった結果なのです。

わたしには冒険ミステリー小説に思えました。
シャーロック・ホームズの系統ですね。
それくらいヴァランダーはよく動くのです。
ホームズほどの洞察力はなく、私生活に振りまわされていますが、
それがかえってミステリーの弱点を補っていて、
実体感を高めていると思います。

どの作品も満足度が高かったです。
なかでも、警察官なのに刑事の素養に目覚めて暴走をくり返す
一作目が好きですね。ナイフの一突きという作品です。

目の前で起きた課題を解決したいと思うあまり数々の失態を
くり返します。 若気のいたりと思っていたら、ラストに驚かされました。
そして作品の雰囲気を理解しました。

この作品集において、謎解きは物語の推進力の一つです。
本筋はヴァランダーの人間性との対話に思えました。
読ませてくれますよ。

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紙の本ピラミッド

2018/09/30 17:50

シリーズ初の短編集

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る

「殺人者の顔」以前のヴァランダーを描いた短編集。短編といってもほぼ中編くらいの文章量はあります。ヴァランダーの成長が見ることができます。それに父親とのやりとりがも一度見れてうれしいです。ただ、表題作の「ピラミッド」は、五編の中では一番したかなと。ちょっと矛盾があったり 一連の殺人が麻薬がらみの事件とわかってから解決までが冗長かなと思えるのが残念。他の作品がトントン拍子に解決しているから余計そう思ったのかな。

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紙の本笑う男

2018/09/29 00:28

ヴァランダーの古き善き価値観は生き残れるのか

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作で仕方のなかった状況下であったとはいえ、ひとを殺してしまったヴァランダー。
精神科に通い、酒に溺れ、人格崩壊の危機に至りつつさまよっているシーンから始まる。
そんなところへ父の死に不審を抱いた友人が訪ねてきて助けを求めるが、どうにもできないと突き放してしまう。
いよいよ退職の覚悟を決めて、イースタに戻ったとたん件の友人が殺されたことを知った瞬間からヴァランダーの怒涛の日々がはじまるのだ。再生の過程をすっ飛ばしたような唐突な復帰に同僚一同は驚くが、やはり彼はイースタ署にとってなくてはならない存在なのだ。
今回の敵は貧しい生まれから世界を股にかける企業のトップに上り詰めながらも決して人前に姿を現さない富豪である。金になるものならなんでも食指を伸ばす富豪だが、チャリティに熱心な背後には、臓器売買にからむ殺人が見え隠れする。
この核心部分は結局くわしく触れられることはないが、需要の高い子供の臓器売買には胸が悪くなるような背景があるだろうことは素人にも理解できる。私がきいたところでは、親が貧困のあまり子供を自ら売るような事実があるらしい。子供のその後の運命をうすうす知りながら・・・。
こういった事情にはおそらく先進諸国の人間は何も言えないだろう。それ故ヴァランダーの感想もその部分にはあまり触れていない。哀しいことだが、ひとは他人の痛みを本当には知ることはない。自分たちの環境からかけ離れた世界で行われることには、自分たちの価値観からくる道徳でしか物事を判断できないのだ。
早くから難民を多く受け入れてきたスェーデンだが、移民たちが自分たちの価値観や財産・権利を侵す勢いを見せ始めると、とたんに心を閉ざしノーを突きつけるのだ。
正義や善意はその時々の状況によって簡単に移り変わり、手のひらを反す。
人間の限界といってしまえばそれまでだが、そうはいっても人の心には他人によくしたいという小さな気持ちは誰でも持っていると思う。それがあまりにも小さく、また稀にしか発揮されないからこそ正義や善意はより光り輝くのだろう。

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紙の本白い雌ライオン

2018/05/29 22:49

時代の変わり目に生きる我々に語りかける物語

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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る

先にケネス・ブラナー演じるドラマを見てしまったので、本作品ではヴァランダーがスウェーデンを一歩も出ずに今回の事件に巻き込まれていったため、前作のような展開ではないのがちょっと物足りなかった。でも映像的には面白くても、このご時世世界中でおきていることにリアルに関われる人間がどれだけいるのか?と思うとかえって、その手の届かないところで起きていることが、案外無関係なに人にどれほど深く影響を与えうるのかというひとつの例示なんじゃないかとも思う。
始まりも終わりもはっきりとはわからないままに、世界の裏側で起きている事件が、政治的判断が、陰謀が、国際関係が、いつ自分に直接牙を向いて襲い掛かってくるかわからない。
ヴァランダーが嘆くように、我々も今まで安全・安心と思っていた自分の属する世界がある日突然、隕石に衝突するように崩壊してしまうかもしれない不安の中に生きているのだと思う。最近普通に生きるのが難しいと感じてしまう。
そういう漠然とした不安をさらにかきたててくれた作品だった。

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紙の本ピラミッド

2018/05/24 03:09

いかにしてヴァランダーはヴァランダーになったのか

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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る

あぁ、もうちょっと読んでいたかったのに、読み終わってしまった・・・。
『殺人者の顔』から始まる<ヴァランダー警部シリーズ>、日本での翻訳時差はありますが、本編は1990年・ヴァランダー42歳の時点からのスタート。本書はファンの声にこたえて作者が「『殺人者の顔』のヴァランダーに至るまでの彼の人生の軌跡」を点描でまとめたもの。なので短編集ではあるものの、ヴァランダーのそれまでの人生を描いた長編と考えることもできるわけで。
それだけのキャラクターへの愛着を読者に持たせるとは・・・やはりすごいなぁ。

5編収録、ヴァランダーの年齢順。
『ナイフの一突き』は1969年6月の出来事。ヴァランダーは22歳でまだ警官、しかもマルメ警察所属。刑事課のエース・ヘムベリに食いついたら離さない気質を見込まれて刑事課の手伝いをし、これが捜査官としてのヴァランダーの将来を決める事件に。のちに結婚し離婚するモナとはまだ恋人時代なれど、「この二人、絶対うまくいかないよ・・・」という空気はくっきり(まぁ後付けですけど、なんで結婚したんだろうね、この二人)。
『裂け目』はこの中でいちばん少ないページ数なれど、ヴァランダーの警察官人生においてのターニングポイント。1975年のクリスマスイヴ。、仕事においては彼は警部補になっているが、モナと結婚して娘のリンダが生まれているがすでに夫婦仲は破綻気味のため次の夏にはイースタ署に転勤することになっている。より田舎に行くことで仕事に費やされる時間を少しでも減らせるように(だからもうマリアガータンのあの家に住んでいる)。「この国はどうなっているのか? どうなっていくのか?」とヴァランダーが心底思った最初の事件かも。
三作目の『海辺の男』からはイースタに完全に舞台が移るので、いつものシリーズの空気感たっぷり。この事件は1987年4月なのでイースタで働き始めてもう10年経っていることに。リードベリに対するヴァランダーの尊敬の念が眩しい(なので体調不良を訴える彼に「早く病院に行って検査を受けて!」と言いたくてたまらない)。
『写真家の死』は1988年4月。この一年でヴァランダーは捜査官としての確かな実績をイースタで示したようで、実質上のリーダーになっている(その割に相変わらず思いつきが先行しての個人プレーが多く、自分でも反省している)。このあたりからイースタ署の懐かしのメンバー勢揃いという感じで、なんだかうれしい。風邪をひきやすくてすぐ休んじゃうマーティンソンとか、せっかちなハンソンに実直なスウェードベリとか!
そしていちばんの長い『ピラミッド』はプロローグとエピローグ付きでもはや短編ではない。スウェーデンの片田舎にいながら犯罪は国境を越え、普通の人と思っていた人たちの意外な裏の顔が存在することが意外でなくなってくる時期に。でもそのことにヴァランダーはまだ慣れないし、慣れたくないと思っている。
この事件は1989年から1990年にかけて、つまり最後は『殺人者の顔』の冒頭とクロスする形で幕を閉じる。なんて素敵なファンサービス!
描かれているのはヴァランダーの捜査官としての成長と、人間としての苦悩、<新しい時代の犯罪>の着実な気配。
それにしてもヴァランダーの父親は困った人だ・・・私だったら絶対縁を切っているけど、ヴァランダーは時に癇癪を爆発させつつも最終的に父親を許している。その関係は正規のシリーズにも続いていくものだけれど、<家族>というのもまたこのシリーズにおけるサブテーマのひとつだからかなぁ。
あぁ、次の作品、読みたい!

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