武士道セブンティーン
著者 誉田哲也 (著)
「強さは力」の香織と「お気楽不動心」の早苗。対照的な剣道をする相手から多くを吸収したふたりだったが、早苗は、家庭の事情で福岡の剣道強豪校に転入。そこでの指導方法は、いまま...
武士道セブンティーン
商品説明
「強さは力」の香織と「お気楽不動心」の早苗。対照的な剣道をする相手から多くを吸収したふたりだったが、早苗は、家庭の事情で福岡の剣道強豪校に転入。そこでの指導方法は、いままで学んだ剣道とはまったく違う、スポーツを極める剣道だった。一方香織は、母校の女子剣道部で後輩の育成に精を出し、狭かった自分の世界をひろげてゆく。互いを思いつつも、すれ違う17歳。ふたりは、目指す剣道に辿り着けるか──思わず剣道が好きになってしまう青春小説、第2弾!
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二人は別々の道を歩き始める。でもそれは大きな道の右端と左端なのだ。そしてその、道の名は。
2011/03/04 11:53
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
剣道大好き!というより、剣の道まっしぐら武士道精神そのもの!という磯山香織。愛読書は尊敬してやまない新免(宮本)武蔵の「五輪の書」という、硬派ばりばりの女子高生。もちろんその剣道の腕は他の追随を許さず、中学時代には全国大会で準優勝をしていた。ところが高校に入る直前に気晴らしで参加した市民大会で、同じ歳の女の子に負けてしまう。その相手西荻早苗も同じ剣道名門校に入学し、二人はそこで出会うのだが。中学から剣道を始め、「楽しい剣道」を実践する早苗に怒りをも覚えた香織。ところがまたしても、その早苗に試合で負けてしまうのだ。ちょっとピンぼけだけど真っ直ぐな気持ちで剣道を愛する早苗と付き合ううちに、香織の中の剣道も少し形を変え二人は良いライバルでありながらも、お互いを認め惹かれ合って行く…。というのが、前作「武士道シックスティーン」での簡単な流れであるが。
本作品に入って、作者は物語を大胆に展開させている。剣道に対する考え方も姿勢もまったく違う香織と早苗。でも通底する同じ「剣の道を愛する心」に、お互いの心は知らずと共鳴していた。だからこそ二人はお互いを認め合い惹かれ合い始めたのだが。早苗の転校という形で、二人をあえて引き離してしまうのだ。近くで切磋琢磨していくと思っていた二人を引き離すこの展開は、どうなのだろうと一瞬思ったのだが。読み進めるに従い本書のテーマを表すに最上の設定だと、大納得させられた。これは前作に続き本作も相当期待出来るな、と思ったのだが。まさにその通りの素晴らしい作品に仕上がっていた。
早苗が転校した九州福岡の高校は、全国大会常連の強豪校。そこで目指しているのは、常に「勝つ」こと。ルールを最大限に生かして、スポーツ的に勝つ事を目標として日々稽古に励み切磋琢磨していた。だがある事をきっかけにして、早苗はその剣道に違和感を覚えてしまう。勝つ事を主体にした剣道、勝つ事だけの剣道。香織も勝ち負けには拘った、でもここの剣道とは何かが、決定的に違う。そして自分は、こんな剣道は好きになれない。そして香織と元いた学校を、懐かしく思うのだが…。
剣道にはそもそも、あやふやな所がある。サッカーのゴールラインや野球ホームベースのように、はっきりとした得点ポイントというのがない。フェンシングも有効打突に剣があたればピカリと電気が点くシステムだし、柔道だって相手の背中を地面に付ければ一本。剣道にもメン・コテ・ドウ・ツキと打突ポイントがあるのは誰でも知っていると思うが、実はそこを竹刀で叩いただけでは一本とはならない。「気・剣・体」が一致し、残心までが取れて初めて一本となるのだ。つまり「打ちたいという気持ち(声)を見せ、有効打突ポイントを剣で打ち、正しい姿勢を保つ事」そしてその後「残心」(まだ気を許してないぞという姿勢)を見せて、初めて一本となるのだ。逆にどれ一つとして欠けては、一本にはならない。さらに剣道では、二人の選手の技が同時に繰り出される事が多い。それは達人になればなるほど速くなり、まさに目にも留まらぬスピードとなる。二人の打突の差はほんのコンマ0.001秒以下程度か。それを人間の目で判定しようというのだから、スポーツ的な意味合いではその判定はあやふやな物になってしまう事がある。ただ元来、剣道はいわゆるスポーツとは一線を画する。その起源は真剣での斬り合いにあるのだから、首を振ってメン打ちを防いだり、拳で相手の竹刀を弾いたりはルールとしては問題なくても、本来あり得ないはずなのだ。その結果、スポーツとしての判定、勝ち負けを最重視するというのは、いわゆる剣の道からは乖離してしまう。しかし剣の道を進む者は、やはり勝ち負けにも拘りたいもの。そこが、本作品のテーマとなっているのだ。勝つ為の当てっこ剣道か、起源である武士の魂を重視した剣道か。もちろん、勝負にこだわる剣道を否定しているわけでは全くない。それも当然ありなのだ。それをして、作者はこのテーマを大きな道の「右端」と「左端」と表現しているのだと思う。
そのテーマをくっきりと描き出すのに、二人に別々の道を歩かせた構成が非常にウマい。早苗が新しい剣の道に戸惑い、以前の剣道に戻りたいと願う気持ちで良くそれが表されていた。そして香織と早苗のそれぞれの悩み苦しみ、そして時折遠く離れたお互いを思う気持ち。それが何とも絶妙かつ清々しく美しく描かれる。そこで見つける思い、気が付く自分なりの剣の道、そしてお互いの大切さ。もう、目頭が熱くなってしょうがなかった。剣道に汗する人達にはもちろん、剣道にはまるで縁がなかった、という人にもとてもオススメの一冊。日本人の、魂がここにあります。
香織と早苗、二人は別々の道を歩き始めた。でもそれは大きな道の右端と左端。そしてその道の名こそ、「武士道」。香織の父が命がけで教えてくれた道。はるか遠く終わりなき、道なのだった。
単行本第1刷発行:2008年7月10日
2015/08/30 20:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bbsf - この投稿者のレビュー一覧を見る
これが女性作家だと脇役の中高年男性がネチネチと主役の女子高生二人の足を引っ張ったりする展開にしがちなのだがここではフォロー役に徹していてしかもオッサンたちが何気にかっこよかったりしているのが後味の良い読後感につながっているのだろう
剣道女子の話
2014/06/02 14:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぎんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
武士道シックスティーンの続編。少し成長した二人。特に早苗の方が悩みも深い。
女の友情
2023/04/10 14:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
高二を迎える前に早苗が福岡に引っ越しをした。早苗は転校先に剣道の名門の福岡南高校に転校する。早苗は強豪に交じってレギュラーを掴むが大会をまえにして、足を負傷してしまう。香織と大会で再開することを約束していたが・・・・・。
想像していた内容とは違っていましたが、なかなか面白いですね。早苗の成長や、香織の意識変革、福岡南と東松との違い等々、ちょっと感動してしまいました。彼女たちの青春には必ず剣道があったのですね。ちょっと羨ましく思えました。
スポーツと武道
2022/01/12 18:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
前編「武士道シックスティーン」に引き続きワクワク面白い青春学園小説に仕上がっている。軽くて読みやすい文体からラノベかとも思わせるが、しっかりと要点は抑えられている。
主要登場人物二人の交互の語り という話の進め方は、通俗的なテーマを扱っているにも関わらず変化があって新鮮である。この巻はさらに「レナ」というライバルを登場させ、スポーツとしての剣道と武道としての剣道を対比させている。オリンピック競技になって完全にポイントスポーツとなった柔道のことを考えると、奥深い問題提起だと思う。
武士道とは
2020/08/16 17:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dsukesan - この投稿者のレビュー一覧を見る
武士道というものに目覚めた前のストーリー
そしてこの巻では、その武士道の実体にふたりの主人公が気づき体得する。
武士道とは、争いを収めるためにある。
武道と勝負至上主義のスポーツの違い、武道と暴力の違い、それらを描き、武士道を浮き彫りにしていくストーリーに、心洗われる。
武士道シックスティーンの続きということで
2014/10/12 09:42
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:shingo - この投稿者のレビュー一覧を見る
武士道シックスティーンの続きということで、読みました。
楽しかったのですが、やはり前作より評価は下がる、と思いました。
続きがまだあるようですが、ここで止めておこうかな。。