鼻/外套/査察官
自分の鼻が一人歩きをして物議をかもす「鼻」。貧しい官吏が思い切って新調した外套を奪われ幽霊となって徘徊する「外套」。戯曲「査察官」では、ある地方都市にお忍びの査察官がくる...
鼻/外套/査察官
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商品説明
自分の鼻が一人歩きをして物議をかもす「鼻」。貧しい官吏が思い切って新調した外套を奪われ幽霊となって徘徊する「外套」。戯曲「査察官」では、ある地方都市にお忍びの査察官がくるという噂が広まり、市長をはじめ小役人たちがあわてふためく――増殖する妄想と虚言の世界を新しい感覚で訳出し、従来の深刻、生真面目な作家像を完全払拭。代表作3篇を収録した、これぞゴーゴリの真骨頂。
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落語調で訳されてないゴーゴリなんてこの先絶対に読む気にならないぞ
2008/07/20 08:43
19人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
いまどきなんでゴーゴリをと訝しく思われる方もいらっしゃるでしょうが,これがその,光文社が今度始めた「古典新訳文庫」ってやつの一冊でしてね。キャッチフレーズが「いま,息をしている言葉で,もういちど古典を」てんですが,このゴーゴリの巻は東大の浦雅春ってロシア語の先生がなんと「落語調」で翻訳してるんでさ。ゴーゴリなんて「鼻」ってのをずぅっと昔,かれこれ三畳紀の終わり頃に「ちくま文学の森」中の1冊で読んだことがあるだけだよってテイタラクのアタシもそれなら面白く読めるかもしれん……ってオレまで落語調になるこたないんだが,とにかくそういうことなんである。
いや実際,「ちくま文学の森」の「変身ものがたり」に収録された「鼻」(平井肇訳)から受けた印象とは全然違う。もちろんストーリーは同じもので(違ったら大変),ペテルブルグのある下級官吏が鼻を失くし,その鼻が床屋のパンのなかから出現,後難を恐れて捨てられると次は制服を着て街を闊歩するという話で,平井先生の訳ではシュールレアリズムというかアヴァンギャルドというか,なんだか人生の深淵に潜む真実を暗示しているかも知れないと言われればそうかと納得してしまいそうなそんな印象を受けるわけだが,これが落語調だといきなり「つまりは『あたまやま』なんぢゃねぇか」と合点が行くんだな。
あのドストエフスキイが「我々はみなゴーゴリの『外套』から生まれた」とか言ったとかで長らく「ロシア写実文学の金字塔」あつかいされてきた「外套」も,なんだか似た話が落語にあったような(「品川心中」……あ,あれは生きてるのか)気がしてくるし,腐敗したロシア官憲の実情を告発したとして名高い戯曲「査察官」(従来採られていた「検察官」という題名はすんげぇ誤訳なので改めた由)も,まるで落語の速記本だ。そう言えばロシア人の名前って寿限無が地でいけそうなほど長ったらしいし(そんなことはありません)……。というわけで大層面白かったのだが,気がつくと結構問題である。何がって? だってもう,落語調で訳されてないゴーゴリなんてこの先絶対に読む気にならないぞ,これ読んだら。
そうか、落語と思って読めばいいのか。
2007/05/10 17:17
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「鼻」や「外套」は、私にとってはわかりにくい世界でした。鼻が一人歩きする話。外套に執着する男の話。以前他の翻訳で読んだときは、「やけにシュール」で突飛な話しなのに重たい感じがし、取りつきにくいままで読み終わってしまった、という印象のみが記憶に残っています。
今回この翻訳を読んで、なにか、すとん、と腑に落ちました。そうか、落語と思って読めばいいのか。笑い飛ばしながら、皮肉や、哀感も感じればいい。
落語風の翻訳はこの著者が初めてではないそうです(と、あとがきにあります)。その前例にめぐり合っていなかったのが私の不幸であったのかもしれません。ともあれ、この翻訳に出会って、苦手感は随分薄れたことは事実。こうやって読むと、ゴーゴリの短編は私にも面白いものでした。
戯曲である「査察官」(これまでは「検察官」と訳されていたことが多い)も、この訳でもすでにどたばた喜劇の面白さが充分出ています。ついでに落語に書き換えてみたら、とおもいました。どうぞ、どこぞで試して読ませてくださらないでしょうか。こんなお話を書いた人ですから、ゴーゴリさんも笑って許してくれそうに思います。
できたら、これらの話を高座でどなたか落語家さんに語ってもらいたいです。ほかの古典名作などにも、結構落語にしたらよさそうなものはありますね。「古典新訳落語」って、結構いいかもしれない。そんなことまで思った新訳でした。
読みやすい文体
2019/09/13 01:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
光文社古典新訳らしく、とても読みやすい。口語文かな、と思ったら訳者あとがきに「落語」とあって納得。多分意訳などもあるだろうし、厳密な翻訳ではないのだろうが、それでも面白かった。
面白くて読みやすい
2021/06/21 09:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:らむね - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めてロシア文学の作品を読んだが、落語調で書かれているため、内容が入ってきやすく、一気に読めた。作品解説も読みやすく、お気に入りの1冊。
収録されている3作品のうち、特に「鼻」が印象に残った。普通ならありえないような世界観で、面白い。不思議な世界観が描かれているにもかかわらず、すっきり読める。
ロシアの小説では、ゴーゴリが一番好き
2019/01/26 00:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めてのゴーゴリ。訳者の浦氏は、この喜劇(悲劇?)をすべて落語調に翻訳している。そのことによって、どんどんこのありえない出来事に登場する人たちにどんどん引き込まれていく。鼻持ちならない否や奴の鼻がとれた「鼻」、命より大事な外套を強盗に奪われた男の悲劇「外套」、誰一人、「この人だけはまともだ」という人が出てこないので、逆に「だめ男」のフレスタコフに肩入れしてしまう「査察官」、どの作品の人物描写にも、すべての人への悪意が感じれて、それがまた好感がもてる。
面白い。肩肘はった退屈な作品ではなく、賑やかな小説です。
2007/01/30 14:24
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:R_for_KOK - この投稿者のレビュー一覧を見る
気軽に読める。肩がこらない。
いろいろな解説にあるように、物語の裏を深読みして
頭を悩ます必要もない。
ああ、ゴーゴリってこんなシンプルな娯楽だったんだな、
と思える。
この新訳、文章が落語調になっている。
ここが大きな魅力であり、同時に欠点でもある。
昔から落語が好きな私としては、
「江戸弁を気取っていれば落語調」
という訳者の見解が見え隠れするこの落語調の文章が
どうも鼻について、「鼻」を読むのに難儀した。
訳文の調子でいくと、賑やか過ぎるし、緩急もない。
だから、脳の中で少しトーンを落とそうと、いろんな
師匠方に演じさせてみたが、とりあえず志の輔師匠の声と
語り口を当てはめて、想像しながら読み進んでいったら
気持ちが落ち着いたのでメデタシめでたし、と。
しかし、いくらなんでも全編通して志の輔師匠の味に
はまるようなものでもないので、興が乗ってきたところで
そんな想像はやめて、普通に読みこなしていきましたよ。そりゃ。
で、気持ちが落ち着いてどんどん読み進むと、
これが素直に面白い。
滑稽で奇天烈で馬鹿馬鹿しい。
旧来「検察官」と訳されてきた「査察官」なんて
(古典だから仕方ないが)べたべたの喜劇。
だまされたと思って、読んで見てください。
きっと楽しめますから。
愉と哀の二文字が合う
2021/11/14 19:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろろろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「外套」が好きで、光文社古典新訳と岩波文庫の2冊を比べ読みしています
こちらの新訳は落語調とのことで それまで愛読してきた岩波文庫のそれとは違い、ぐっとこちらに引き寄せたような 親しみを感じる印象
アカーキー・アカーキエヴィチのかなしみは 岩波文庫での平井肇訳のほうが胸に迫る気がします
読みやすいのは確かなのですが
2015/09/30 22:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YASU - この投稿者のレビュー一覧を見る
『カラマーゾフの兄弟』など、ロシア文学の紹介にも熱心な古典新訳文庫からの刊行です。他の方も書いておられますが、落語調の翻訳という試みについては評価が分かれるところでしょう。高校生の愚息は読みやすくて面白かったと言い、確かにとっつきやすさという点ではその試みは成功しているのですが、かつて岩波文庫版で感銘を受けた旧世代の者からするといささか違和感が残ったのも事実です。