こわれた腕環 ゲド戦記2
著者 アーシュラ・K.ル=グウィン作 , 清水真砂子訳
魔法使いのゲドが〈影〉と戦ってから数年後,アースシーの世界では島々の間に紛争が絶えない.ゲドは平和をもたらす力をもつという腕環を求めて,アースシーの東,アチュアンの墓所へ...
こわれた腕環 ゲド戦記2
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商品説明
魔法使いのゲドが〈影〉と戦ってから数年後,アースシーの世界では島々の間に紛争が絶えない.ゲドは平和をもたらす力をもつという腕環を求めて,アースシーの東,アチュアンの墓所へゆく.墓所を守る大巫女アルハは,幼い頃より闇の者たちに仕えてきたが,ゲドとの出会いによって,自らの世界に疑問を抱きはじめる…….
目次
- 目 次
- プロローグ
- 1 喰らわれし者
- 2 石 垣
- 3 囚われの者たち
- 4 夢 と 物 語
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一巻とは打って変わって、この巻では舞台が地下になります。そして、ゲドとならんでシリーズの核となるあらたな人物が登場します。また、展開はゆっくりとなり神話の影が濃密になります。
2009/08/06 19:20
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
少年文庫版が出たのを機に、再読を始めたゲド戦記、第2巻のカバー後の案内は
ゲドが〈影〉と戦ってから数
年後、アースシーの世界で
は、島々の間に争いが絶え
ない。ゲドは、平和をもた
らす力をもつエレス・アク
ベの腕環を求めて、アチュ
アンの墓所へおもむき、暗
黒の地下迷宮を守る大巫女
の少女アルハと出会う。
●中学以上
です。第一巻『影との戦い』に比べると、全体は極めて地味です。動きは殆どない、といってもいいくらいで、それが後半になってやっと動く、そういうものです。これは神話世界に由来を持つ話で、よくル=グウィンについて文化人類学に造詣が深い、といわれますが、それがストレートに出たのがこの巻といっていいでしょう。
そして、この巻を期に全体の主役がゲドからアルハ、というかテナーになっていくらしいのですが、それはあくまで予感に過ぎません。私は全6巻を過去に読んではいますが、前はポツポツと時間をおいて読んでいたので、そういう構造的な変化をうまく把握できていませんでした。
この巻でいえば、確かにゲドの影は薄くなります。だって、彼が登場するのは話が半分ほど進んでからなんです。だから、ごく当たり前に第一巻の延長としてこの話を読んだ人は、ゲドの名前が見える第6章になるまでは首をひねることでしょう。とはいえ、壁画の間でのアルハと囚われの男との会話に漂う緊張感に、男と女、大人と子供、文明と未開とといった新たな物語要素の展開を感じて思わず先を読み進んでしまう、そういうお話です。
それにしても、アルハがゲドに寄せる思いというのが、単なる恋愛感情ではない、すくなくともこの巻では、自分がなぜこの男を殺さず生かしておこうとするのか、というのが判然としないまま物語が展開するというのが、いかにもリアルです。そこらが、そういう話をあっさりと男女関係にしてしまう俗なファンタジーと一線を画しているところと言えそうです。
それとエレス・アクベの腕環です。このシリーズだけではなく、ル=グウィンの多くの著作に言えることですが、彼女はとことん説明をしてしまう、ということがありません。なぜ、こういう話になったのか、といった基本的なところを案外あっさりと書きます。正直、私などはこの腕環の由来をきちんと書ける自信がありません。
むしろ、ル=グウィンはそれをよしとしているところがあります。ですから、最後まで読んで腑に落ちるかというと、必ずしもそうではありません。なぜ? どうして? そういう気持ちを抱かせる、読者が自分で考え自分たちの手でいく通りもの話を編み上げるのを待っている、そういう感すらあります。そこが『指輪物語』とが大きく異なりますし、私が安易にゲド戦記より指輪のほうを高く評価してしまった所以でもあります。
今回は少年文庫になって続けて読むことができるので、全部読み終わったときには、テナーの扱いも含めて、もっと別の理解と評価ができるのではと期待しています。正統的な解釈は訳者の清水真砂子が、あとがきで詳細に書いていますので、読んでみてください。ただし、あとがきは少年文庫版用に書き直された部分は少なくて、旧版のものがメインです。
清水が予感したテナーが中心になっていくという話の流れのありかたと、原作の出版当時アメリカで起きた女性運動が関係しているというのは、以前から言われていることですが、少年文庫の対象読者である少年少女には、少し情報不足の感がします。折角の少年文庫版なのですから、この作品が書かれた時代も含め、もっと丁寧に説明してほしいと思います。
ちなみに、神話のなかでも神殿や迷宮、地下道が好きな私にとって、今回のお話の舞台はまさにうってつけのものでした。子供もこういう場所が好きなんです。胎内回帰願望というのは絶対にある、私はそう思いますし、今回もそれを確信しました。そういう方には、話はまったく違うのですが、久生十蘭『地底獣国』や横溝正史『八つ墓村』をお薦めしておきます。
最後に、参考としてこの巻の目次を写しておきます。
プロローグ
1 喰らわれし者
2 石垣
3 囚われの者たち
4 夢と物語
5 地下のあかり
6 捕われた男
7 大宝庫
8 名まえ
9 エレス・アクベの腕環
10 闇の怒り
11 西方の山
12 航海
訳者あとがき
少年文庫版によせて
さし絵 ゲイル・ギャラティ
子供の頃に読んだ本の再読は楽しい。
2020/06/26 23:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ1作目のイメージから一転。舞台は地下深い闇の中だ。
主人公は、本当の名を奪われ、権威ある大巫女として暮らす身となるが、見方を変えれば死の世界に囚われている少女。大筋では、その少女に青年ゲドが本当の名前「テナー」を見つけて返し、外の自由な世界へ連れ出すという話である。
初読はまだ小学生の高学年だった記憶。主人公が、自らが囚われた世界から自由になろうとしたとき、「自由の困難さに気づき」躊躇したりというのも、小学5・6年生とかのこどもに通じただろうか?そのころの自分に聞いてみたいと思う。ともかく、示唆に富み非常に聡明なお話。オトナになって再読できてちょっと良かったかなと思う。
とらわれていた彼女たち
2020/03/20 16:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
闇の世界に生きてきたアルハに、家庭の中に押し込められていた女性たちの憤りを感じます。主人公のゲドを越えるほどの活躍と、本当の名前を取り戻していく姿が美しいです。