紙の本
年をとったら年寄りらしくせよ。
2023/06/09 06:50
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
沢木耕太郎さんの文庫版『深夜特急』第4巻は、
いよいよシルクロードの旅が始まる。
第10章「峠を越える」ではパキスタンのバスの凄まじい運転を体験し、
続く第11章「柘榴と葡萄」はアフガニスタンのカブールで過ごした
ヒッピー宿での暮らし、
そして第12章「ペルシャの風」ではイランで自身の旅を見つめ直す姿が
描かれている。
沢木さんの『深夜特急』の旅は
いつも意気揚々としているわけではない。
時に自分の行動にげんなりし、疲れきりぐったりすることもある。
そんな中、第12章のカブールの街角で見かけた
アリとフォアマンのヘビー級の試合。
調べるとこの試合が行われたのが1974年10月30日。
この時、沢木さんのイランの街角の電気店のテレビの前にいた。
私はどこにいたのだろう。
長い旅のささやかなシーンではあるが、
その試合が奇跡的なアリの逆転勝利ということもあって
とても鮮やかに描かれている。
沢木さんの作品の魅力はこういう一滴の水のような清涼さといえる。
そして、この巻の最後に
沢木さんはこんな言葉を引用し、書き留める。
「若いうちは若者らしく、年をとったら年寄りらしくせよ。」
その言葉に引きずられながらもあらがう、
ここにはそんな青年の姿がある。
電子書籍
シルクロードの旅
2023/01/16 20:12
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投稿者:マー君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
インドからパキスタン、イランへと。イランは確かにシルクロードの旅。
氏によるとパキスタンのバスはすごかったようだが、今でもインドからパキスタンへバスで移動できるのだろうか?
紙の本
深夜特急4
2022/09/16 20:25
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
インド、パキスタン、アフガニスタンなど中東諸国をめぐる。現在では考えられないアフガニスタンの旅がとても興味深く、よかった。パキスタンは現在でも当時でも治安が悪く、著者がテロリストに間違われるなど、危ない場面が心に残る。
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シルクロード、バックパッカーでは旅行しづらくなった地域。今考えれば、あの時代はいい時代であったと思う。
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イギリスの名も知らない若者が、ほかのヒッピーが冷たく物乞いを追い払う中、温かい姿勢で自身の僅かな所持金を分け与えていた場面に作者同様考えさせられるものがあった。
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パキスタンの長距離バス運転が印象的。常にチキンレース。ど真ん中を突っ走り、相手が避けるまで突っ走る。仮に事故っても乗客もおおらかでいる感じ。このシルクロード篇に限らないけど、世の中の一般常識というのは、なんて、限られた世界、限られた時代のつくられた偶像にすぎないものなんだろうかと常に感じさせてくれる。狭い世界観にとじこもって鬱々とするときはあるけれど、そんなときは、この本を読んで、視点を世界に、時代も超えることで、つまらないことにくよくよするのがバカバカしくなるような、そんな痛快さがある。
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過去3冊に比べて、人との関わりが少し希薄だった気がする。
個人的に、奇妙なバスでの長旅の部分は興味をそそられたが、それ以外の部分はなんだかただ通り過ぎた感じが強かった気がする。
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・アフガニスタンの風景はこころに沁み入るようだった。とりわけ、ジャララバードからカブールまでの景観は、「絹の道」の中でも有数のものなのではないかと思えるほど美しいものだった。鋭く切り立った崖が、果てしない壁のように続く奇勝。やがてそこを脱すると澄んだ水が流れる谷間の河に遭遇する。さらに上流に向かって進んでいくと、透明な水をたたえた湖がある。東南アジアからインドにかけての泥のような水しか見られなかった眼には、動悸が激しくなるほどの新鮮さがあった。 駱駝をひき連れた遊牧の民が落日を浴びながらゆったりと砂漠を横切っていく。あるいは砂塵にまみれ、薄汚れた灰色になってしまった遊牧民の包が、二十近くも砂漠の一カ所に固まって張られ、その間から夕餉の支度なのだろう白い煙が幾筋も立ち昇っている。たったひとりで西方のメッカに向かい、一日の最後の祈りを捧げている老人の姿もあった。山を上り、下り、また絶壁を通り過ぎ、ふとバスの後部のガラス窓から今まで走り過ぎてきた辺りを振り返ると、そこには赤く夕陽に色づいた山々に囲まれた平原と、その中を微かに蛇行しながらキラキラと光を放って流れている河があり、思わず息を呑んでしまう。その気配に誘われるようにして、他の乗客も後を振り返り、私と同じように息を呑む。まさに暮れようとしている薄紫色の世界の神秘的な美しさに、乗客はみな茫然と眺めているばかりだ。 夕陽を隠す西の山と、その光を受ける東の山と、それらに囲まれた一台のバス。この広大な砂漠に在るのはただそれだけだった……。n655
→NHKの映像とともに流れてくるナレーションみたい。綺麗な日本語。こんな景色見てみたいし、こんな風に描写してみたい。何気ない風景の方が出来そうな気がする。
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インドからパキスタン、イラクへとバスの旅が続く。
前半の香港、マカオ、マレーシアに比べると街散策が淡白になっている様に感じる。それともこの旅行記に慣れて来たのか、デリーからロンドンへ当初の目的地にやっと到着した為か、急ぎ足で中東の旅が進む。
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バスでの情景が多かったようにおもう。
旅を続けると曖昧になっていく感覚、人の親切を食ってしまう感覚。
自分が主人公と同じ立場になって旅をしてみても楽しめる自信がない。
全てを噛み締める間もなく時間が流れていきそう。
でもだからこそそんな旅をしている人を想像して自分とは違う感覚を感じられるからなんだかんだ読んでしまう。
やっぱり最後の対談がいつも面白い。
今回は今福龍太さん。
理解できたと思ったようなことはみんな腐っていく。わかったようなことは言わない。
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旅が長くなってきた頃の心情変化の描写が見事。
以下、印象的な1文。
『若いうちは若者らしく、年をとったら年寄りらしくせよ。』
時の流れに抗うことなく、ありのままに生きることが自然で良い。
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子どものころからテレビや雑誌で見て、憧れの地であるシルクロード。前作のインドと同様、まず訪れることはないであろう。
私の頭の中のぼんやりとした世界地図では全く理解できないので、章の始めに掲載されている地図を何度も見返しながら読み進めている。それにしても地続きの国境なんて本当に不思議な感覚だ。
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中学校の時に読んだ本を、思い立って読み返してみた。
大学時代以降、バックパック旅行にハマってあちこちに行っていたため、作中に出てくるイランの主要都市はほとんど行ったことがある(メシェッド、シーラズ、イスファアン)
作者がシルクロードを旅したのは今から40年前。本の中に書かれている世界を見ると、変わらないもの、大きく変わったものの両方が見えて面白い。
・変わったなと感じるもの
パキスタンやアフガニスタンは、今はどう頑張っても当時のように旅するのが難しいので、作者の通り過ぎた旅路がなんとも贅沢なものに感じられる。カイバル峠をバスで通ったり、カブールの市場を冷やかしたり、バーミヤンの遺跡を眺めたりできる日がまた来てほしい。
アフガニスタンは悪い方へ変わってしまったが、
インド、パキスタン、イランは、40年前に較べたら格段に豊かになっている。
インドには行ったことがないが、インド人と国際電話やメールを使って仕事をすることはあるので、ムンバイの発展具合はなんとなく知っている。ボリウッドの映画や、IT面でのインドの大躍進を知っているので、筆者の見たインド世界と今のインド世界は全然違うんだよなと感慨深い。
パキスタンは、簡単にはいけない国ではあるが、一年間留学した友人、旅行した友人を知っているのでどんな感じなのか話に聞いている。
40年といえば、ちょうど、ファクトフルネスの作者が「世界は格段に良くなっている」とデータを上げて証明した期間に一致している。
ファクトフルネスでは、世界の貧富ランクを1ヶ月の所得で4段階に分けて付けている。この40年はちょうど、多くのLV2の国がLV3,LV4へと成長し豊かな生活を享受するようになった期間である、というの。
深夜特急の世界と私の見聞きした世界を比べるとそれがすごく実感できる。
作者はテヘランで、公衆電話がたくさんあること、そこで生き生きと話す若者がたくさんいたことに衝撃を受けていた。
しかし今や、インド、イランは言うまでもなくパキスタンにも携帯電話とインターネットが普及している。
イランの田舎町に行っても物乞いに囲まれることはないし…インドはその点相変わらずだけど…
そしてパキスタンはテロの危険が格段に増してしまったけど…
作者がイランに行った時、現地の学生が「僕にはパフレビーネットワークが無いから出世できないね」って言ってたのびっくりした。そうか、この時はまだホメイニ師によるイラン・イスラム革命前の時代なのか!
今ではイランはシーア派によるイスラム国家なので、旅行者でも女性はスカーフが要る。イランの熱い日差しを思うとスカーフは良い熱中症対策になって良かったが、それでも強制されたものだと思うと、ここで生きるのはしんどいだろうなと旅をした時に思った。
ただし、イスラム規範によるルール付けも悪いことばかりではない。メシェッドに行った時、思い立って市民プールへ行った。宿の親父がプールまで乗せていってくれたところまでは良かったのだが、その後プールに一緒に入ろうと言って来た。それまでのやりとりから、親父は助平な奴だとわかっていたので正直かなり嫌だったのだが、そこで係員が一言。「中は完全に男女で分かれてるぜ」
宿の親父は「イラン革命が起きたこの方、世の中は悪くなるばかりだ」と英語で嘆いたが、私は助かったとアッラーに感謝した。
男女で空間が分かれていること、ヒジャブやブルカを着ることは、一方ではハラスメントから身を守り、容姿を品評されないという尊厳に繋がる。
しかしそれが一歩間違えは隔離と抑圧に繋がる…諸刃の剣
良くなった点、悪くなった点、いずれにしても40年という時間は長い
インターネットのない時代の旅なので、旅に必要な情報があまりにも少ない。
宿は飛び込みで予約、有名なバックパッカー宿は口コミで広がっていく、というのは面白くもスリリング。
旅先の名所旧跡の情報を調べられないのも勿体ないよなと思う。
もちろん、現地に行って、現地の人に教えてもらったところに行くというのも乙なものだが、せっかく遥か遠くまで旅をするのだから、その場所の歴史や文化や地形や宗教やらを全部味わい尽くし学びたい…というのが旅人としての人情なので、現代にインターネットがあってよかったなとしみじみ思った。
・変わらないもの
作者が見たイスファハンの光景、特に王の広場の風景は今と全然変わっていない。かつて世界の半分だった歴史を伝える街。古の記憶と美にまどろむ様な街…世界遺産に登録されたから変にさわれないというのもあるのかもしれないが…。
シルクロードに生きる人の信仰、砂漠と岩肌の織りなす自然の美、そういうのは40年たっても変わらぬ素晴らしさ、旅の醍醐味として変わらずあると思う。
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イランやアフガニスタンをバスで横断した筆者の記録。一期一会の旅行者やスタッフ、物売りとの会話などが印象深い。
現地についてから飛び入りで宿を探す・日本人の旅人どうしで本を交換する・大使館にメッセージを残すなどネットやスマホがない時代だからこそのユニークな文化を垣間見ることができた。今の旅行はスマホがあるから全部自分で完結する。便利で快適(詐欺とかに引っかかる可能性も低いし)だが、面白味に欠けるかもなと思う。
また筆者が横断したアフガニスタンやイランは、政情不安、そしてなによりもコロナで行くのが難しい。その過程で筆者が感じた活気や風土が失われてしまった地域がたくさんあるのだろうなと思うととても惜しい。旅は行けるうちに行くのが正解だな〜
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ピンとこない巻。旅という長いトンネルを意識したとき、確かに不安になると思う。トンネルを越えた先に何があるのか、何をやってるのか。ある意味現実逃避が終わった時が一番怖い。