我々には「悪党」が必要である
2021/12/07 14:13
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
我が国における代表的イギリス史研究者の君塚氏の著作になる本書は、これまでの者とはずいぶんと趣が異なる。何しろ本書は「悪党」の群像歴を描くのだから。いわば「悪党」という深い闇を描くことで、イギリス史を再構築する野心的な試み。本書で次々と活躍する「悪党」たちに、すぐさま引き込まれ次々とページをめくった。
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投稿者:iha - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国史上にその名を残す7名の人物に焦点を当てた伝記です。表題に「悪党」と銘打つだけあってそれぞれがとてもアクの強い人物ばかり。むしろそのくらい個性が強くなければ人間は大成しないのかもしれません。まずその人物の悪党たるゆえんが綴られることで序章が始まり、その後の人生が功罪両面から丁寧に描かれてゆく、とてもドラマチックな作りになっています。非常に面白かったです。
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがきにて偉大な人物はだいたい悪党であるという言葉が引用されてきるように時には評価が分かれるが業績が大きい英国史の人物が紹介されており面白かった。
道徳と能力は別物
2023/03/02 16:23
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
「道徳と能力は別物」ということを再認識させられた書物であった。政治家や軍人は他人を動かして仕事をするので、あまりにも人間性 人柄に問題のある人物は、いくら潜在能力があってもその能力を発揮することができない。その点は個人で仕事をする芸術家との違いであろう。しかし、特に政治的に危機の時代ほど人間性よりは能力を問われることが多い。本書はイギリスに貢献した七人の悪党 人間性に問題のある人物たちの言動を実にいきいきと描き出している。
大英帝国を作った悪党たち
2021/05/18 16:13
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投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘンリ八世、クロムウェル、チャーチルといったイギリスの歴史を転換させた7人の「悪党」を通して描かれる近現代史。英国人の評伝を書かせたら、日本で右に出るものはいないのではないかと思わせる著者の巧みな筆さばきで、各人物の功罪と歴史に与えたインパクトが綴られていく。なにより各人物を通してイングランド→連合王国→大英帝国という歴史の流れが感じ取れるのが素晴らしい。社会史や構造史など、歴史の切り口は色々あるが、やはり人物でたどる歴史の面白さは格別だなと再認識する。
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投稿者:いて座O型 - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国史で、悪人扱いされてる人たちの歴史上の事跡を追った著作。
当時と今とでは、評価の方法や後世での理解が異なるので、なぜ悪人になったのかと、現実はどうだったのかということを、丁寧に説明している。
ただ、多分に物語的な描写なので、読み物としては面白いんだけど、歴史ものとしては物足りないところもあった。
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よく言えば“身近”、悪く言えばカリスマ性のない
小粒な政治家ばかり見てきているせいか、
とても新鮮。
スキャンダルを気にして、ひたすらクリーンを求めると
こういう政治家は出てこない。
メディアとの癒着の元祖、パーマストン
戦時体制を作り上げたロイド・ジョージ、
みずから兵士となったチャーチルなど
功罪あいなかばする政治家たちの姿印象的だった。
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議会は戦争資金の用立てや国外で戦争してる国王の代わりに政治を行うため力をつけた。ロイドジョージの生い立ち。ヘンリー8世。国王、首相の生い立ち、歴史的背景がよくわかりました。
Netflixの「ザ・クラウン」を見る前に読むといいかも。
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・権力とは腐敗する傾向にある。絶対的な権力は絶対に腐敗する。
Power tends to corrupt and absolute power corrupts absolutely.
アクトン男爵:19世紀イギリスの歴史家
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大英帝国を築いてきた「七人の悪党」として取り上げられているのは、ヘンリ八世、クロムウェル、ウィリアム三世、ジョージ三世、パーマストン子爵、デイヴィッド・ロイド=ジョージ、ウィンストン・チャーチルの七人である。
本書の「はしがき」でも「おわりに」でも述べられているが、英国では評伝(伝記)が重んじられ、今でも街中の書店には必ず伝記コーナーに多くのスペースが割かれている(評者が在外研究で英国に滞在したのはもう17年も前の話だが、そのとき書店で一番印象的だったのもそのことであった)。それはマルクス主義史学やフランスの社会史、あるいは最近流行のグローバル・ヒストリーとも違う、「歴史を動かすのはあくまでも人間とその決断であるという史観が比較的強く残っている」(p.6)からだと著者は指摘する。どの歴史観が正しいとか間違っているとかいう話は置いておいても、確かに人物が生き生きと描かれている歴史は読んでいてワクワクする。本書もまた七人の「悪党」を通じて、五〇〇年の歴史の面白さに読者を誘ってくれる。
取り上げられた一人ひとりのエピソードが面白いことは言うまでもないが、単にトリビアな知識を紹介するだけではなく、社会全体の歴史の動きの中で結局どのような位置付けがなされるのかという著者ならではの評価も興味深い。たとえば、不人気な「外国人王」としてのウィリアム三世は、オランダでは地方ごとにバラバラだった公債発行のシステムをイングランドに集権的に導入し、「財政=軍事国家」の基礎を築いたと評価される(pp.126-8)。またケインズにこっぴどく批判されているロイド=ジョージも、第二次世界大戦後の「社会福祉国家イギリス」の原点となる政策をおこなった(p.242)、などなど。
蛇足だが、各人物を主人公とした映画やテレビドラマなども端々に紹介されていて、参考になった。見落としでなければ、ロイド=ジョージの章だけ映画やテレビ・ドラマが紹介されていなかったように思うが……。
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ヘンリ八世に始まりチャーチルまで大英帝国の7人が登場。
ヘンリ八世はビックリするほどの人で、どのエピソードも滑稽なくらい。
チャーチルはまだ記憶に新しいダンケルクも彷彿させる。
型破りな人間味溢れる酔っ払いのチャーチル。
ナチスから救った偉大な政治家だった。
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ヘンリー八世からチャーチルまで7人の大英帝国を支え変革してきた人物。王や首相などの立ち位置は違えども、その個性運命には興味が尽きない。人物像はもちろん英国史にも詳しくなれる。とても面白かった。
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大英帝国を率いたリーダーシップの物語
歴史は人間によって創られる
1940年英国首相に選ばれるのがチャーチルではなく、ハリファクス外相であったら、英国は早々にヒトラーと講和し、ナチスドイツの世界覇権は実現していただろう。(282)
その英国も第二次大戦の勝利と引き換えに、世界の盟主の座を、アメリカとソ連に譲ることになる。
歴史は禍福の如し。
結局、技術・経済・社会システム・軍事により世界の覇権を手中にしても永遠には続かない。
心地よい勝利者の地位は、慢心と怠惰を生み、民衆はパンとサーカスをリーダーに求め、政治はポピュリズムに陥る。
その時に積み上がるのは、軍事費とエンタメ経費を賄うための「公的債務の積み上がり」。世界がその負担を追い切れなくなったとき、世界覇権の盟主の座は置き換わるのが世界史の必然。
現在、世界のリーダーである米国もまた歴史の必然に直面している。
近代と現代の英国史を、キーパーソンの視点で学べたのは良かった。
日本史ももっとリーダー個人の側面から描かれても良いと思うが、明治以降の天皇制下では皆臣下なので難しいか。
コロナ禍でリーダー不在の感がある日本社会の困難の大本がそこにあるようにも思う。
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著名人の多い英国史の中から七人の悪党を選んだオムニバスストーリー。
悪党とはワルではなく、出身階級に関わらず主流派ではなくアウトサイダーだった人達を指す。アウトサイダーだけに、毀誉褒貶が激しい人々で、ヘンリー八世、クロムウェル、ウィリアム3世、ジョージ3世、パーマストン、ロイド・ジョージ、チャーチルが本書の対象。
筆者は、それぞれの悪党についての毀誉褒貶を冒頭に掲げ、その人物の生い立ちや活躍を著述し、最後に些細な悪事はあっても大英帝国の歴史に大きく貢献した事績を簡潔にまとめて章を終える。ロイド・ジョージとチャーチルのように章と章の間の繋ぎもよく、オムニバスなるも完全独立ではなく連続性がある。
それぞれの悪党の事績は、以下の通り。
【ヘンリー八世】
× 処刑癖、浪費癖、多数の妻
◯ バチカンからの独立、教会の摂取による財政健全化と宗教影響力の排除、アイルランド・ウェールズへの帝国拡大、議会との協調
【クロムウェル】
× 王殺し、護国卿としての強権統治
◯ アイルランドの合邦、スコットランドへの征服、プロテスタント外交による新世界でのスペイン領確保(世界戦略を持ったイギリス史上最初の政府byクリストファー・ヒル)
【ウィリアム3世】
× 外国人王(オランダ人)、関心は大陸、淡白で人を信頼しない性格(一般受けしない)
◯ 勢力均衡論によるルイ14世の封じ込め、議会政治の制度化(立憲君主制度化)、イングランド銀行の創設と国債による戦費調達システムの完成
【ジョージ3世】
× アメリカにおける圧政者、議会政治の軽視、外交的孤立によるアメリカ喪失、発狂
◯ ハノーバー王家として初の愛国者、発狂による摂政制度の下での立憲制の発展
【パーマストン】
× ポピュリスト?、極悪非道の砲艦外交、王権軽視
◯ 会議外交による平和の慣行の確立(ヨーロッパ協調)、1848年の革命の封じ込め、イギリスには永遠の同盟国もなければ、永遠の敵大国もない。イギリスの利益こそが永遠であって、不滅なのだ(1848.3.1)、英帝国のアジアにおける拡大、奴隷貿易廃止、世論の有効活用
【ロイド・ジョージ】
× 王権軽視、無知で無責任で中身がない(ケインズ)、栄典売買、アイルランド問題の処理
◯ 人民の王者(労働問題、福祉、富裕層への増税、貴族院の権限縮小)、メディアを使った世論操作、第一次大戦の指導者として総力戦体制を維持、英国初の挙国一致内閣
【チャーチル】
× 傲慢、貴族主義、向こうみず、人種差別的、政党を行き来した節操なし、ガリポリ作戦失敗、首相前はこれといった功績なし
◯ 30年代における英海空軍の強化によるバトルオブブリテンへの貢献、英国を奮い立たせた(ハリファックスなら独の軍門に降っていたか?)
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“悪いやつら”が、時代を動かす。
数々の悪徳を犯した一方で、偉大な業績を残し、人々から支持されたイギリスの「悪党」たちの実像に迫る書籍。
テューダー王朝2代目の君主ヘンリ8世(在位1509~47年)は、「好色漢」で、「残虐性」「浪費癖」もすさまじかった。
その一方、ヨーロッパ国際政治において、戦争・外交両面で影響力を行使した。
・ヘンリ8世は海軍を整備し、勢力拡大を進めた。しかし、スコットランド侵攻に失敗し、対仏戦争でも惨敗を喫した。さらに、戦費がかさんだことで、宮廷は破産寸前となった。
・ヘンリ8世は、結果的にはイングランドの強国化に失敗した。しかし、ローマ教皇庁と決別して教会を国家の下に置いたこと、「勢力均衡」というイングランド外交の基本路線を築いたことなど、イギリスにとって大切な遺産を残した。
ウィンストン・チャーチルは、生粋の帝国主義者で、アジアやアフリカの人々に差別意識を持っていた。その一方、ヒトラーから世界を救った、第2次世界大戦の英雄でもあった。
・1940年、チャーチルの首相就任当時、ヨーロッパの大半がナチスの軍門に降くだっていた。孤立無援の状況下で、彼は演説で国民を力づけ、アメリカやソ連と協力関係を築くため奔走した。もし彼がいなければ、イギリスもヨーロッパもナチスの軍門に降り、世界史は大きく変わっていただろう。
・チャーチルが第2次世界大戦で発揮した指導力のあり方には、単にイギリスの将来にとどまらない、全人類的な平和の構築という考え方がみられる。その考えは「大英帝国」というグローバルな世界が育んだものであり、その意味
で、彼は「最後の帝国宰相」といえるかもしれない。