- 販売開始日: 2016/02/13
- 出版社: 朝日新聞出版
- ISBN:978-4-02-251345-8
坂の途中の家
著者 角田光代
最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼...
坂の途中の家
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商品説明
最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていく。社会を震撼させた虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。
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書店員レビュー
家族の光と闇
MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店さん
「最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない。」
主人公の里沙子は、2歳の娘、文香を育てている時、乳幼児虐待事件の補助裁判員になる。子どもを殺した母親、水穂の証言にふれていくうちに里沙子は、幸せだと思っていた自分の家族が、実は偽りの幸せだったのだという事に気づき愕然とする。
「幸せだと思っていたものは偽者だった。」主人公が心の中で呟く言葉は重く読者にのしかかる。義祖母の優しい言葉には悪意があり、最愛の夫の言葉も裏返せば里沙子に劣等感を植え付けてくるものだった。
家族の光と闇をテーマにしたこの小説は、読んでいると息苦しくなる。他人事と割り切って読み終わりたかったのに、それが自分の身近にもごく普通に潜んでいる心の闇なのだと気づいた時、心が凍りつく思いがした。
文芸書担当:島守
家庭という密室
2016/02/10 07:32
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
角田光代はまたひとつ金字塔を打ち立てた。
きっと多くの女性読者の共感を呼ぶだろうこの長編小説に男性読者は震撼とするだろう。
女性は怖い。いや、違う。怖いのは、絶対にわかりあえない個としての人。
その点では女性であろうと男性であろうと変わりはしない。もしいえるとすれば、角田光代という作家が女性の方にいることだ。
33歳の専業主婦里沙子。2歳年上の陽一郎は優しい。もうすぐ3歳になる文香のお風呂にもちゃんと手伝う。義父母とは適度に距離を置き、ママ友とのどうということのない会話も楽しむ。
きっとどこにでもいるだろう、若い夫婦。
里沙子のもとに裁判員制度の候補者になったという手紙が届いたところから、二人の間に少しずつ亀裂がはいっていく。
里沙子が担当することになった裁判は30代の母親が浴槽で八カ月になる赤ん坊を殺めてしまった事件。
被告の裁判を通じて、里沙子の心は少しずつ崩れていく。
崩れていく、のではない。露わになっていくということだ。
母乳の出なかった自分は何気ない義母の言葉に傷ついたことがあった。被告と同じではないか。陽一郎の優しい言葉に棘が隠されていたことにも気づく。被告が夫の言葉に恐怖を感じていたように。そして、里沙子も泣き止まぬ文香を床に落としたことがある。被告がその子を浴槽に落としたように。
被告席に座っているのは、事件の被告ではなく、里沙子本人であるかのように思えてくる。裁判席に座っているのは、読者である私たち。
私たちは里沙子を裁けるのか。
陽一郎に罪はないのか。幼子をお風呂にいれることで育児に協力しているなんて言わないで欲しい。
義父母に罪はないのか。あなたたちが心配なのは自分の生んだ息子だけではないか。
里沙子に罪はないのか。一体あなたは何におびえているというのだ。夫か。義父母か。それとも小さな娘なのか。
公判中、里沙子がずっと気になっていたことは、食い違う被告と夫や義母の証言の本当のことがわからないことだ。何故なら、家とは密室だから。
この事件にどんな結審がなされるのか、それは物語の最後に明かされる。
他者に見る私
2022/01/29 10:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みっつー - この投稿者のレビュー一覧を見る
裁判員に選ばれた主人公の新米ママは、子育てに悩み、夫婦関係や親子関係に微妙な問題を抱えるフツーの女性。そんな彼女が臨む事件は、自分とさほど変わらない環境に暮らす新米ママによる幼児虐待殺人事件。
フツーの女性が同じ様な環境の中で犯した事件をどの様に捉え、どの様に裁判員としての役割を果たすのかが見物。愛娘との対峙、夫や義父母との間に生じる摩擦、そしと角田光代文学の真骨頂である主人公自身の葛藤がリアルに津波の様に読者を襲う。主人公の感覚に読者である私が呑み込まれる感覚、事件の渦に巻き込まれるゾクゾク感をお楽しみください。
法廷で心通わす
2022/08/01 03:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
他人事だったはずの乳幼児虐待が、補充裁判員制度によって俄にざわめき立っているようで。平凡な専業主婦の山咲里沙子が、言葉を交わすことなく被告の心に触れていく様子が伝わってきました。
テーマは重たいです
2018/09/14 07:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しんごろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主婦が補充裁判員になる話!内容が幼児虐待ということもあって、ほっこり系の好きな自分にとって重たすぎる話でした。読むペースもかなり落ち、読むのに苦戦しました。ただ里沙子さんのように、もし裁判員になったら恐らく自分も被告に感情移入するんでないか(事件によりますが)と思いました。そして被告のダンナさん、なんか自分も少々思い当たることもあって、しっかり反省しなければとも、思いました。角田さん、スゴイ作家さんです。
坂
2019/04/30 06:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なま - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺人事件の裁判官に指名されるという事は、どんなにきつい事なのだろうか?そして、それが自分の身に迫る問題だとしたら、現実に起こりうる設定の中で話が進んでいく。考えさせられる作品である。
愛という名の闇
2016/03/30 16:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:せーとー - この投稿者のレビュー一覧を見る
角田光代の作品を読むと、胸がざわざわする。
はっきりと悪意が提示されるわけではないのに、正に真綿で首を締めるように、違和感が少しずつ積もっていく。
今作は主人公の回りで大きな事件が起きたわけではない。
八日目の蝉や紙の月のように、自ら深い穴に堕ちていくのではなく、気が付けば暗い穴の底にいた。
それは主人公だけではなくて、読者をもいつの間にか真っ暗闇の中に誘う。
悪意なのか愛なのか。
正しいのか間違いなのか。
読み終わると、身近な人が少し怖くなる。
読んでいて何度も胸が苦しくなった
2016/12/20 16:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供が小さかった頃の妻の気持ちがどうだったんだろうかと思うと、読んでいて何度も胸が苦しくなった。男の自分でそうなんだから、女性はなおさらだろうな。結婚直前の女性や妊娠している人、小さい子供がいる人はあんまり読まない方がいいかもしれないね。
期待
2016/03/31 23:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
裁判員に選ばれてしまった女性が主人公。被告は、我が子を浴槽で溺死させた女性。主人公も同じくらいの子持ちのため、心は揺れ動く。人が人を裁く難しさ、辛さ。母とは、妻とは、家族とは。検事や弁護士はもとより、証言に大きなニュアンスの違いがあり、裁判員制度とは、これほど神経をすり減らすものなのかと考え込まざるを得ない。年長の裁判員・六実が良い味なのだが、他のメンバーが描き切れていない感じ。尤も、そうすると名作「12人の行かれる男たち」を越えられなくなるか。母子の関係性を描かせたら上手い作家の一人だが、これまた「八日目の蝉」というヒット作を越えなければならぬ苦しさがある。
裁判員制度と子育てともっとみんな強くなろう!
2016/03/12 21:43
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
里沙子にもっとがんばってもらいたかった。この作品に出てくる人間はみんなおかしな人ばかり。