電子書籍
リーガルミステリー
2023/04/24 23:34
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
校則=法律の特殊な高校に通う少年が、法律では裁けない閉ざされた街の秘密に迫る、身の毛もよだつ法廷ミステリ。
「くだらない」ラストの一文にあった様に本当にくだらない理由に躍らされる人間の弱さ。「法律」と「同調圧力」を笠に暴走し、正当化する人間の姑息さは、現役弁護士としての観点が反映されている気がして面白かった。
いじめや窃盗など倫理観を問う学園ミステリかと思ったら、殺人事件を機にガラリと一変。法律を含め倫理観を問うスタイルは一貫している筈なのに、状況に応じて独自の判断で優先されるものが変わる恐ろしさ。
「自分の幸福より、他人の不幸を求めていた」連鎖する不安が作り出す妄想と期待。全てを背負わされた少年の決断に心打たれる作品。
「犯歴」があるからまた犯すだろうという疑いと、一度「犯歴」があるからもう心を入れ替えただろうという期待。信じる事と疑う事は紙一重で、一つの要素がどちらに転ぶかは受け取る人次第だと痛感させられた。
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主人公の持つ爽やかな真っ当な雰囲気のなか、読み進めるとだんだん不穏な空気になり、引き込まれていく。
鏡沢町には何が起こってるのか、何が隠されてるのか気になって夢中になって読んでしまった。
加害者家族の気持ちもわからないではない気がするけど、行き過ぎ。でも当人たちにしか辛さはわからないんだろうなぁ。
後半はちょっと難しかったけど、考えさられる内容だった。
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原点回帰的と言わんばかりに法廷絡ませたミステリー小説となっていた。元々五十嵐律人さんのファンであれば大好きな部類だと思う。
なぜか法律が重んじられる高校、対立する街の人々、何かおかしいぞという不穏な空気感が漂う感じは最高だ。
なぜ彼女は亡くなったのか、それを明らかにするために主人公は大一番に打って出る。思いやる気持ちがすれ違いを生む。
今回も一つの法的解釈に苦しみながらも答えを見出す様がとてもスリリングで楽しめた。
次はどんな仕掛けで楽しませてくれるかなぁ。
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【変死事件で暴かれる町の秘密】僕らの通う高校では?法律?が唯一のルールだ。だが、ある変死事件をきっかけにこの奇妙な?常識?が作られた秘密が暴かれる――。
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デビュー作が鮮烈で、ずっと注目している作家さんですが、この作品はまた攻めてますねぇ。
ページをめくる手が止まらないとはこのことかと。
過酷な人生を生きる主人公が切なすぎる。
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Amazonの紹介より
法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体。
一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび上がる。僕(宏哉)と杏梨は、週に3回クリニックで人工透析治療を受けなければならない。そうしないと生命を維持できないからだ。ベッドを並べて透析を受ける時間は暇で、ぼくらは学校の噂話をして時間を潰す。
僕らの通う鏡沢高校には校則がない。ただし、入学式のときに生徒手帳とともに分厚い六法を受け取る。校内のいたるところには監視カメラが設置されてもいる。
髪色も服装も自由だし、タピオカミルクティーを持ち込んだって誰にも何も言われない。すべてが個人の自由だけれども、〝法律〟だけは犯してはいけないのだ。
一見奇妙に見えるかもしれないが、僕らにとってはいたって普通のことだ。しかし、ある変死事件をきっかけに、鏡沢高校、そして僕らが住む街の秘密が暴かれていく――。
なかなかネタバレをしない範囲で、感想を書くのが難しいほどでした。というのも、ネタバレとなるキーワードを書かないと、うまく感想が広がらないからです。もしかしたら、書いていくうちにネタバレとなる言葉を書くかもしれませんので、ご注意を。
前半は、透析治療や校則のない学校、防犯が厳重という特殊な設定に謎だらけで、時々この設定って必要?と思うばかりでした。
しかし、設定の理由がわかると、あらゆる事が繋がれていき、結果的にそういうことなんだといった驚きとスッキリ感が味わえるので、面白かったです。
ただ、それと同時にその行為をしていることの不気味さやそれに至るまでの状況を判断すると、何とも複雑さを感じました。
その大元となったある一つの事件があるのですが、それによって、あらゆる人達の人生を狂わせることに犯罪や世間の怖さを感じました。
他人事と思っている犯罪も、もしかしたら間接的に関わっているかもしれません。誹謗中傷が招く関係者たちの人生に真剣に考えなければいけないなとも思いました。
被害者だけでなく、加害者にも家族がいます。事件に何も関係ない「第三者」は、そっと見守ることが大切であり、加担しないことが重要だと感じました。
主人公が、全てを知った時、どんな感情になるのか。想像だにできないのですが、きちんとあらゆる出来事と向き合っている姿に、頑張ってほしいと思いました。
特殊なことが次々と登場するのですが、それぞれに意味があってのことであり、それがわかった時の爽快と絶望、やるせなさが、何とも読了後も後を引く余韻だったので、色々考えさせられた作品でした。
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なにか重大な秘密が隠されている予感…。
特に第一章は、なにもわからないまま次々と事件が起こり、衝撃的に終わりを迎え…。
違和感がつきまとう主人公の日常。
最後にみえた全貌で、ようやく合点がいきました。
ありえないと思うけれど、
血について考えれば考えるほど、
非現実的な感情を抱かずにはおれない自分を感じてしまう…。
1つ、注意点。
私は、血液検査ではもちろん、テレビのニュースに出てくる注射シーンでさえ絶対に目を背けるけど、そういう人には、透析、血管、穿刺、手首、抜血、こういう場面のオンパレードなのでかなりキツイ…。
原稿を読ませてもらったのでなければ、きっとかなり早い段階で挫折していた…。
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「魔女」と聞いてオカルト的なものかと思いきやきちんと「人間がこわい系」の小説で面白かったです。
漂流都市のような、この街は何かがおかしい系が好きな私にはたまらなく面白かったです。
以下ネタバレです。
過疎のニュータウン鏡沢町に転入してきた大量の子育て世代は、みな「犯罪加害者の配偶者と子ども」だった。(かがいしゃ、かがみざわ、で掛けているのでしょうか)
町の元々の住人たちが転入組を忌み嫌う理由もすっきりとわかる。
加害者家族たちは、犯罪者の子どもが犯罪者とならないように、法律を遵守する異様な学園を作り出す。
タイトルの魔女の原罪とは、魔女は生まれながの罪があったのか(犯罪者の子どもはどんな環境で育ててもまた犯罪を犯すのか)という住民たちのテーマからです。
血を入れ替えることで、犯罪者の遺伝子(魔女の原罪)が取り除けると思った主人公の母親が、主人公と、犯罪者の子どもではない別の女の子の血を、透析治療と称して入れ替えることを試みた結果、女の子が死亡してしまう。
犯罪加害者の息子と知らずに育った主人公が、町と自分の生い立ち、母親の動機に気づくまでの過程が面白く一気に読んでしまいました
法学部出身なので、担任でもある弁護士の先生の法律解説や、刑事裁判パートも違和感なく読み進められましたが、まったくの初見だと少し難しく感じるのかな…?
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★5 透析治療を受ける高校生が、自身の運命と学校と街の秘密に向合うリーガルミステリー #魔女の原罪
■あらすじ
主人公の男子高校生の宏哉は、いつも同級生の杏梨と腎臓透析に通っていた。彼女は魔女と魔法使いの違いについて宏哉に問いかける。どうやら彼女には秘めたる想いがあるようだ。
彼らの通っている高校は校則がない自由な校風だったが、ルールはすべて日本の法律に準ずるというものであった。ある日部室で窃盗事件が起きると、犯人は朝礼で発表され、全校生徒に糾弾を受けることになる。
犯行について不審に思った主人公は、独自に事件調査と与えられた罰について考え始めるが…
■きっと読みたくなるレビュー
魂が抉られる…
先生は社会問題を読者に突き付けてくる作品が多いですが、本作もかなりドギツイです。正義感や罪の意識といった追及されたくない微妙な部分を、ぐいぐいと抉ってきます。
いつもながらの法律を基盤にして、現代の歪んだ社会の物語が展開されます。世の中にはびこる犯罪と刑罰。学校、会社、町、ネット社会… 生活するうえで必ず付きまとう人間関係の描写が、あまりに痛烈で胸に刺さる。
違法だからダメ、適法だからすべて良い。
確かに先人たちが頭を捻って作り上げたルールは、常識的で理にかなっているものが多いのでしょうが、考えることを放棄してしまったらどうなってしまうのか…
極論、本書のような世界になってしまうのではと恐ろしさを禁じえませんでした。
本作プロットの出来が素晴らしく、エンタメとしても面白いです。
一見学園ものと思いきや、スモールタウンものでもあり、青春ものでもあり、リーガルミステリーでもある。
謎解き要素もなかなか破天荒で驚愕の真相が待ち受けています。しかし悲しくも納得もできてしまうストーリーでした。
そして物語の後半は、からだじゅうが痺れまくりで、もう何も言えねぇ…
主人公の真面目で実直な心情に対して、とりまく関係者の歪んた想い。血の色のようにどこまでもどこまでも深い不幸さが染み出てきて、読み終わった後は、しばらく戻ってこれなくなってしまいました。
■きっと共感できる書評
かつて業務手順を作る仕事をしていたことがあります。いかにミスを少なくし、合理的に仕事を進めるか。まずは目標を明確にし、現状を分析、各工程を整理してマニュアル化を進めていく。この業務マニュアルに沿って仕事を進めれば、その会社の業務はすべてがうまくいくはずでした。
しかし現実は甘くありません。関係者から何度もダメ出しや改善要望を受けることになったのです。
実はルールを定義すること自体は簡単なんです。
なにより難しいのは、ルール通りの運用を実現化することなんですよね。
被差別部落の問題を知っていますか? 他にも人種や性別による格差など、難しい社会問題が根強く残っています。
これはダメ、こうあるべきというルールを決めるだけでは何も解決しない。
さらにひとりひとりが我が事になって考え、皆でとことんまで話し合う。おそらくそれでも解決しない。
で���、解決するにはいったい何が必要なんでしょうか…?
自分の都合を通すのではなく、まずは相手を信じる、受け入れてあげるということから始める必要があるのでしょう。
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第1章を読む途中、やや退屈だなあと感じていたら突如衝撃の展開が起き、その後答えを探る第2章は夢中になって読みました。ミステリ好きはもちろん、その他の人にもおすすめしたい傑作ミステリです。
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法律さえ守ればあとは何でも自由、という学校メインの話ではなく、この街そのものに何かただならぬものがある。西洋の魔女裁判と同じように、本人の行動に関わりなく存在するだけで悪と言われることの理不尽さがテーマ。主人公の高校生、和泉宏哉は正しいと思うことを積極的にやる人物。同級生で人工透析を一緒に受けていた少女の死によって大きな壁が立ちはだかるが、立ち向かう姿が頼もしい。責任感の強い大人になりそうで、将来の姿も見てみたい。
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幻告より好きだった。
最近、魔女裁判や魔女狩りの本がよく目に留まって調べたりしていて関心があったので、より楽しく読めた。よくできていると思った。
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私には少し難しかったかな。
17年間も街ぐるみで隠し通したり、宗教的な集まりが行われていたり不気味さと不穏な空気が先を読みたい欲求に駆られるような感覚。自分だけが知らないって怖いし、知りたいと思う主人公の気持ちの複雑さも分からなくない。全ての真実が知らされたとき、血縁とは関係のない本人の意思が打ち勝って欲しい、負けるなと応援したくなった。
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校則がなく法律を遵守する学園。
「法律違反さえしなければいい」一見自由に感じるが、監視カメラにより徹底的に監視される。
町では「カツテ」と呼ばれる老人達と住人との不和。
この町は何かがおかしい。
主人公が普段感じている違和感により、第1章で学園で起きた窃盗事件に関わっていく。
それをきっかけに主人公の立ち位置がガラリと変わってしまう。
なぜ?と思っている間に友人の同級生が殺される事件が発生。
第2章からは主人公の出生の秘密や、この町の真実などが明らかになっていき、少しずつ謎がわかっていく。
法廷パートではもう読むのが止まらない。
主人公によって全てが明らかになった時、悲しい気持ちになった。
ここまで思い詰めて信じられないほど暴走してしまうなんて。始めはただただ安らぎを求めただけだったのに…
最後の主人公の力強さが救いでした。
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まるでファンタジーを思わせるようなタイトルも相まって、序盤は全くどのような展開になっていくかわからなかったが、得意なリーガルミステリーに着地したことで、納得して結末まで読むことができた。
ミステリーものにあるようなオカルトな風習に支配されたような街。果たしてこのような街が今の時代に部外者に知られることもなく存在できるだろうかという違和感はさておき、謎解きとも言える最後の法廷シーンは作者の本領発揮と言えるくらい緊張感とリアリティがあって圧巻だった。
この街の住人たちがなぜこんな極端で非科学的な思考に支配されていったのか理解しがたいが、弁護士である作者の経験から感じたことが元になっているのかもしれない。コロナ流行時にあった差別など、独善的な人々と閉塞感に満ちた社会を思い出させるようだった。