紙の本
本書が読み継がれるべきだと考えられる人類世界に生きることを思う
2009/05/05 15:09
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1865年、帝政ロシアの首都ペテルブルグは暑かった。青年ラスコーリニコフは金貸しの老婆とその妹を惨殺し、金品を奪う。この陰惨な殺人事件を犯した彼にはあるひとつの信念があった…。
1995年、ある新興宗教団体が日本を震撼させた時、私はその15年ほど前の中学時代に読んだ「罪と罰」の主人公ラスコーリニコフのことを想い起こしていました。ロシアの青年が、大義のためには許される殺人があると考えるこの小説をドストエフスキーが著わしたのは19世紀中葉のこと。社会主義革命までまだ数十年があるという時代です。それなのにこの小説の中には20世紀末を生きる日本の私たちが描かれているのではないかという気持ちに強くとらわれ、めまいがしたものです。
今回 ゆえあって再び、3巻合計で1200頁を超えるこの長編小説を手にしたのですが、ラスコーリニコフの物語は決して古びることなく、今も私たちを描いているといえます。
「『非凡人』は権利をもつ…というのは公的な権利ではなくて、自分の良心に対して…ある種の障害をふみ越える権利を持つということなんで、それも、彼の思想の実現(ある場合には、全人類を救済するような思想かもしれませんがね)にとってそれが必要である場合に限るのです」(中巻 143頁)。
この言葉が20世紀末のある教祖の言葉でもなく、今世紀初頭に中東の国の一部の人々を突き動かした言葉でもなく、そしてまたその中東の人々に向けて戦闘機を放った政権担当者たちの言葉でもなく、150年も前の帝政ロシアの青年の言葉であるということを、大きなため息とともに再認識するのはひとり私だけではないと思います。
この小説が今も読み継がれるということが、果たして人類にとって書を読む喜びといえるのか。
この小説を今も必要とする原野が世界に広がっているということに思いが至り、大変複雑な気持ちとともにこの書を閉じました。
紙の本
考えさせられます。
2023/05/30 21:10
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投稿者:Order 6601 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドストエフスキーの有名な著作の一つである「罪と罰」の最後となる下巻です。読みごたえがあり、考えさせられます。
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難解だが、多様な読みができる
2021/11/25 20:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
ついに下巻。
これだけの長編を、世界中の人に読ませるということは、やはりこの作品に大きな力があるからだ。
倒叙ミステリーのようでありながら、描かれている社会の格差や分断、人間の美醜は今も昔も変わらないということだろう。
最後まで、登場人物の名前を覚えるのには苦労した。結局、ラスコーリニコフは善人なのか悪人なのか、人間の罪と罰とは何なのか、答えは出ないが、いろんな読み方ができることも、この作品の魅力なのだと思う。
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「百の善は一の悪に勝る」と考えた大学生ラスコーリニコフは、金貸しのおばあさんとその娘を殺してしまう。その後の彼の苦悩を描く。苦しみ、人を疑い、おかしくなってしまう彼の様子はよく書かれている。名作といわれる理由がよくわかります。
それにしても読みにくいんですよね。名前がコロコロ変わるんですよ。主人公が誰だかもわかんなくなってしまうくらい。
この本もかっこつけて有名な本を読んでいた時代。でも名作って後々ふっと思い出しますよ。読んで無駄にはならないと思う。
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最後の章が台詞が無くてナレーター{?}だけなんだけど、なんか涙がどんどん出てきて、号泣しましたo最後に少し希望が見えて、読み終わって本当に感動しました!古い文学ってあたしは最初とっつきにくかったけど、読んでもっと他の色んな人のも読んでみたいって思いましたo読んでない人は絶対読むべき!と思います☆彡
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すごい。何この終わり方。愕然という言葉が似合います。ごっつい長編なんですけど、手塚治先生が単行本一冊にあっさりまとめていらっしゃいます。なのに原作に忠実。
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ラスコリニコフが発狂しかけだったが、ソーニャの存在でだんだん変わっていく。すごいメッセージ性のある作品で、さすがリアリズムを代表する作品。
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あいかわらずラスコーリニコフはポルフィーリィを怖れ、自分の「道徳心」について思わぬ苦悩を味わいつづけ、ついに…。個人的にはスヴィドリガイロフという人間存在が気になるし、いろいろ考えさせる。さらにキリスト教を理解できれば、この作品をもっともっと楽しめるのだろうけれど…。でもこれは論文じゃなく文学だ。緻密な心理描写、近代ロシアの雰囲気などが充分味わえた。海外文学の邦訳だと、へんてこりんな日本語になってて興ざめするものも多いけれど、この訳書は自然な日本語として意味が理解しやすい。
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もう下巻は一気読み!すごい小説だった。
ソーニャの義母カチェリーナの死、事件の真相を打ち明けた時、隣室で聴いていたスヴィドリガイロフ。その嗜好のロリータ性、ポルフィーリイとの応酬、そしてソーニャの存在。何もかもが圧倒される内容で、本を置くことが出来なかった。
8年後、新たな再生の物語が始まることが予感され、救われた気持ちになった。
テーマがすごく新しい。解説にも「現代性」「世界性」がこの作家の特性だとあった。そう、思う。100年以上前の小説が現在でも普遍的な輝きを放っている。
残念なことが2つある。
かつての私のようにこの名作を前にして下巻まで到達できずに終わる人がどれほどいるだろうかということがひとつ。
もうひとつは当時のロシアの時代背景を知っていればもっと読み取れることが多いだろうということ。
作成日時 2007年04月22日 11:40
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妹の元婚約者ルージンの卑劣な工作により窮地に立たされたソーニャを救い、弁護したラスコーリニコフはとうとう彼女に事件の全てを打ち明ける。ソーニャの純粋さと訴えを聞き入れることができない主人公はそれでも彼女を頼り、全てを終わらせるために最後の行動に出る。
自分は悪くないと信じてやまない主人公とそれでも疑いの目から逃げられなくなった主人公の葛藤は恐ろしくて病んでてそれでも引き込まれていく不思議な物語。
病んでる人にはおススメしませんw余計に病むと思われるwwでも読む価値はアリ。
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アブドーチャとの結婚を破棄されラスコーリニコフを激しく憎むルージンは、ある時ソーニャを自室に呼び、卑劣な策略によって彼女を陥れようとする。
その窮地を救ったのは、ラスコーリニコフであった。その直後、彼はついに、ソーニャに自身の「罪」を告白する──。
自らの「罪」を告白することによって監獄に送られたラスコーリニコフは、そこでようやく自身のソーニャへの愛を確かなものと確信する。
8年という懲役を経て彼らが失くすものと得るもの。その先に、人間の犯罪心理のからくりを解くカギがあるのではないだろうか。
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他の人のレビューや感想によるとどうも「鬱展開に心が折れた」とかっていうのを見る。僕としては、哲学的要素が多くておもしろかったんだが。哲学的要素とともにキリスト教への理解も多少なり持てた。「苦しみを甘んじて抱え込む」のも敬虔な信者だからこそできることなんだろう。とってもおもしろかったです。そして終りが美しいです。
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ここまでくるのに凄く時間がかかりました。メモをしもって読まないと読めないという自分の読解力の無さに気づかされます。
ラスコーリニコフの友人ラズミーヒンがいい奴で好きです。
ラスコーリニコフが殺人を犯し、狂乱する場面は怖かった。
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ロジオン・ロマーヌイチ?ラスコーリニコフ?なぜこんなにもロシア人の名前は長たらしく読み辛いのかw
冗長で芝居がかったやりとりに悩まされながらも読み切ってしまった。気味が悪いほどの生々しい人間臭さと臨場感がある。
人という存在の深層に迫った作品。感動的な終わり方。
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旅行中に読破!
最後まで予想を裏切られました。そしてレビューを書くには当時の時代背景とか、ドストエフスキーについてなんかもチェックしとかないとそう下手なことは言えないなーと思うぐらい色々渦巻く想いが生まれました。
ただ、それでも敢えて言いたいのは愛が彼を救ってくれて良かったと本当に思ったということ。
物語の終わりまで、自己を捨て切れないとんでもなくプライドが高いくせに臆病な主人公にちょっと嫌悪感を覚えていました。でも、エピローグで中途半端な刑に納得できない主人公の内心描写に、彼の真の心の平和がいつ訪れるのだろうかと心配になった。自殺を実行せず、生にしがみついた彼には幸せになって欲しいと、いつの間にか思っている私がそこにいた。そして、やっと彼に希望をもたらしたものが現れ、それが愛であったとき、ほっとしてしまいました。
いつ、どんな環境・時代であろうと愛だけは人を見捨てず、愛だけは万人に与え・与えられることのできる唯一無二なものなんだと、ロシアの文豪に改めて教えられました。