紙の本
「愛」にあふれた素朴な民話集
2005/12/20 09:30
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トルストイは晩年、このようなキリスト教の愛を描いた民話をいくつか書きました。ここにはその中から「イワンのばか」はじめ9編が収録されています。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などの重厚な長編とくらべると、ふわり、として凝縮した核があるといったまったく違った雰囲気がこれらの短編にはあります。民話集「人は何で生きるか」よりは宗教色は薄めで、素朴な民話色の強い作品が多いように思えます。「小さい悪魔がパン切れの償いをした話」は悪魔が仕返しをする話で、「鶏の卵ほどの穀物」は昔はそんなものもあったというちょっと荒唐無稽な感じもするお話、というように。民話として楽しむには「人は何で生きるか」よりもこちらの方がお勧めかもしれません。
表題作「イワンのばか」の主人公も神を信じてはいますが、「ばかなぐらい素朴」な方が幸福になる、という感じのお話です。お金は子どものおもちゃにしかならない。兵隊は歌を歌わせる人たちでしかない。攻めて来られても泣いているだけの人びと。壮年期に書かれた壮大な作品「戦争と平和」と、その後に書かれたこの作品とを並べ、トルストイの戦争への思いの変遷というのが感じられる、というのは想像がたくましすぎるでしょうか。それでも、そんなことも考えてみたくなるような民話集です。
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まんが日本昔ばなし、です。
2019/07/07 11:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルどおり、戒めとして、肝に銘じながらスイスイ読み進めました。非常に読み易く、本当に『まんが日本昔ばなし』で映像を見るが如く各章を読みました。
本書のタイトルになっている『イワンのばか』にしても、他の作品にしても、しみじみと良い作品だと思います。
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「人にはどれほどの土地がいるか」もおもしろい
2020/01/26 21:49
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「イワンのばか」に登場する末弟・イワンという男は、しばしばロシアの民話に描かれる純朴愚直な男らしいのだが、トルストイのこの民話調の話は、岩波文庫の解説によりと「その基底にこれといった特定の源泉を持たず、ただ、国民伝説の中にひろく普及しているイワンのばかとその狡猾な兄たちの像を、利用したにすぎない」彼のオリジナルだということだ。イワン王国の唯一つの掟「手にたこのある者は食卓につけ、そのないものは残り物を食え」という言葉には、のちの社会主義政権の考え方の礎が見て取れる。といっても、あの政権がたどった歴史はトルストイの非暴力主義とは全く真逆なものになってしまったが。あまりに欲をかきすぎたために最後に悲劇が訪れる「人にはどれほどの土地がいるか」もおもしろい
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確か中学の教科書で「イワンのばか」って出てきたはずだけど、
大人になっても楽しめるし、考えさせられる作品。
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トルストイが厳格なキリスト教徒に目覚め、博愛主義的な、また教義主義的な作品を書き始めた直後の作品。元々、ほとんどが民話を元にしており、トルストイがアレンジしていると言うが、それぞれの民話に潜むメッセージとトルストイが示そうとする教訓は非常におもしろく感じた。正直、小説は話の内容にブレがあり、好き嫌いがはっきりと出ると思うが民話集の語りかけるメッセージは、小説にある混沌や迷うがなく良い。
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労働に付いて考えさせられる。テーマもまたロシアならではなのだろうか。
民話の読み方を間違えてた。休日に読む作品じゃなかった…。(きだ)
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短編集。しかしいずれもテーマがあり、読み応えがある。しかしいつもながら、いかに偉大な人物の著書であろうとも、宗教的な事が出てくると、無宗教の俺からしたらあまりに分かりやすい矛盾が出てきて冷める。
短編の中にはハズレが無いと言ってもいいぐらいだが、その中で「悔い改むる罪人」が異彩を放っていたように思った。70年間罪悪を重ねてきた悪人が、天国の番人の悪事を追及すると、あっさり天国の門を開いてくれる。
この作品にこそ解説が必要だと思ったが、なんと、この作品のみ最後の解説が無い。解説したのは誰なのだろうか。訳者であろうか。
ある意味、都合の悪い部分は無視する宗教のご都合主義の部分をみた気がした。
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正直者が馬鹿を見ず、欲張らない者が本当の幸せを得る。
いまとなっては、ばかになることも、欲を捨てる事もむずかしいけど、他人のものを妬んだり、人を欺いたり貶めたりは絶対しない、今ある幸せを感じる事が幸せだと、そんな自分でありたいと思う。
すこしだけでも、たいせつな人の生きる意味になりたい。
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おもしろいし、
読みやすかった。
昔話なんてもんは教訓じみてるものでしょう。
海の上を滑るように走って追いかけてくる
3人のおじいちゃんたち。
怖すぎて笑えてくる。
2009.03.08.読了
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大好きな話です。
結局、純粋な物は強くてしなやか。
誰も、何も太刀打ちできない。
人生をこのように全うできればと思います。
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トルストイの民話集。どんなもんかと思って手にしてみたが、これが大当たり。九編からなる短編集となっているが、ハズレがない。一度は読んでおいて損はない。
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トルストイの有名な小説とは違います。(読んでないけど)
本人もアンナカレーニナとか否定してましたし。
これは本当に胸に響いて感動しました!!!
短編集だから読みやすいし、オススメです。
かぶってる話も収録されていますが、
「人はなぜ生きるか」もオススメです。
自分も美しい生き方をしたいと思いました!!
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ときどき疲れると、無性に読み返してみたくなる本である。人間や社会の本質が見事にやさしい言葉で書かれている。心が洗える本というのは数少ない。金・力・知というものが、いかに地に足のついていないあやういものであるかということを暴いており、この3つは現代社会のなかで日々悩まされている問題であるだけに、自分の人生を確認してみたいと思わさせるのだ。おそらく、年齢を重ねるほど、身につまされる話のはずだ。また、この話は労働が貴いとか、馬鹿には勝てぬとか、資本主義・軍国主義への批判とか、通り一遍の解釈で終わる話でもない。この話は「バカ」が、あらゆる罪で誘惑してくる悪魔を自滅させるというパワフルな話でもあり、ユーモアのなかに読むといつも何かしら生きる力を与えてくれる本である。土地持ちでない現代のサラリーマンは、すでに作中のイワンのように生きる基盤を欠いているが、そうした現代人の生き方もイワンの「バカ」は大きく包み込んでいる。悪魔がしたように「頭で働く」ことも彼は否定はしないのだ。「手に豆のないものは人の残り物を食う」ことを自覚するならば。人間は天使ではない。したがって、あらゆる人間は「バカ」である。これは何もキリスト教の信仰を持ち出すまでもなく、誰もが日々感じる実感だ。そして、万人がもつこの「バカ」は、イワンのように人生を楽しく、強く、豊かに生きるための基盤なのだろう。この点ではトルストイは絵空事を書いたのではないだろう。「イワンは今でも生きている」と書いている所以である。単に「働かざる者食うべからず」ときびしさをつきつけ、「バカ」な人間どうしを隔てる作品ではないのだ。イワンは人の技なら何でも許してしまうだろう。つまり一種の「神」でもあるのだ。収録作品ではほかに「洗礼の子」が興味ぶかい。どうすれば、悪をなくせるかが書いてある。
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イワンの馬鹿、というお話を引用した小説を読んだことがあったので、たまたま目に入ったこの本を借りて見た
ら、素朴なおはなしがとても面白くて、解説までついーっと読んじゃった
題名が有名な作品がいくつも収録されているし、短いもので2、3ページのものもあるので気軽に読めるし、内容もかなり考えさせられるような話ばかり
ロシア文学とかあんまりなじみがなくてもかなり面白いですよ
個人的にはイワンのばかや洗礼の子、人にはどれほどの土地がいるかがおもしろかったです
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後輩先生のオススメで借りて読んだ作品。
「イワンのばかとその2人の兄弟」のみ読了。
その後輩が、イワンのような先生になりたいと言っていたが、
もっとたくさんの先生が、頭でっかちばかりではなく、
ばかになることも必要だなぁと、読んでいてしみじみ感じた。
頭でっかちなつもりにとらわれるが故に、
へんてこな方向に行ってしまいそうな(すでに行ってしまっている)
先生も数少なくはない実態もあるので…(汗)
とにかく、その後輩先生と、彼の影響でこの作品を読んだ私は、
少なくとも、へんてこな方向へ行くことからは免れるだろうなぁとしみじみ。