紙の本
この本を読んで、思わず暖めたミルクの表面の皮を思い浮かべた人に、イエローカード
2003/01/28 20:28
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いま、甘美な小説を書ける男性作家といったら、誰がいるのだろう。どうも若い人には思い当たる人がいなくて、年配の作家になってしまう。文章に官能性を与えようとすると、語彙の豊かさや圧倒的な教養が背景にないと、その背伸びが目に付くせいかもしれない。残念だけれど純文学作家には、もうそういう人材がいなくなってしまい、むしろミステリ畑で、泡坂妻夫などが目を惹くくらいだ。
北村薫は、そういう実力を持ち、作風でもあるけれど、どちらかと言えば立つ位置を良質の読物というところに置いてきた印象がある。だから1994年にこの本の初版が出たとき、私は完全に見逃してきたし、騒がれたという記憶も無い。『冬のオペラ』と『スキップ』が前後に出たせいで、印象が薄かったのかもしれない。だから、読む本がなくて、仕方なくこの短編集に手を出した私は、幸運としかいいようがない。
本には10の短編が収められ、それらを著名な11名の人々が解説をする豪華な企画の文庫で、単行本のほうはこういう構成ではなかったのかもしれない。解説では山口雅也、加納朋子、若竹七海の三人のものが抜群で、やはり好調な作家の自信みたいなものが伝わる。作品はバラエティに富んでいるが推理小説はない、それがこの本を評判にしなかった一因かもしれない。
中では表題作「水に眠る」が凄い。水というものをここまで美しく描いたものが、今まであっただろうか。思わずナイフを、薄刃の剃刀かなにかを手に、すっと水の表面を切ってみたくなる。なんと冷たく、湿り気を帯びた幻想だろう。「植物採集」の男と女の微妙な心理の綾もいいが、「矢が三つ」のSF艶笑談も意外。なんという深い眼差しだろう。
冒頭に泡坂妻夫に触れた。連城三紀彦も、最近はこういった密度の短編は書かないし、宮本輝は完全に美文から離れてしまった。そんな中で、この作品の高みは、最晩年の澁澤龍彦の作品を思わせる。そう、最近もそういう本を読んだばかりだった、舞城王太郎『熊の場所』。持ち味は全く異なるが、あれも凄かった。推理小説作家の作品を甘く見てはいけない。
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表題作の「水に眠る」に出てくるウィスキーの水割りが飲みたくなって、自分にも水の上蓋を取り除くことができるんじゃないかと本気で考えてしまう。あ、いや、ただ自分が飲んべえだということじゃなくてね・・。(2003.2.11)
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書評を読んで面白そうだなあと思って購入したもの。北村作品は初めて読みます。この方、ミステリー畑の方らしいのですが、今作の短編集はミステリーというよりも不思議な話が満載な1冊。設定やキーとなるモチーフがヘンテコなものも多く、それがどんなものなのかをイメージしながら読むのが面白くて、結構ぐいぐいと引き込まれていってしまいました。こういう、ちょっと変わった設定というのは、長編だとだらけがちなんですよね(と私は思う)。ので、短編ならではの手法を生かした作品ばかりだなあと感心。特に表題作『水に眠る』『くらげ』『矢が三つ』はものすごーく面白かったです。元々長編を多く書く方らしいので、次回はぜひぜひ長編にチャレンジしてみたい。
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じんわりと心を締め付ける切ない話ばかりの短編集。
どの話も美しく、しんみりとした涙の気配をはらんでいます。
私は「ものがたり」、「植物採集」が好きです。
北村先生の描く情景はどうしていつも、これほどまでにすっきりと美しいのでしょう。
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北村薫さんの短編集を読むのは初めて。ミステリアスで、すっごく魅力的。切ない話や怖くなるような話や、様々・・・。すごく読者側に考える余地を持たせてくれているので、読んだ誰かといろいろ話してみたい、と思いました。
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北村さんの短編集
ミステリーではないけれど、そういう要素がなきにしもあらずで最後ハッとさせられるものも。
お風呂に浸かっていると、いくらじっとしていても自分のまわりをぬくいお湯がたゆたう。
そのリズムに身をあずける、それはとても心地よい時間。
表題作の『水に眠る』はそんな時間を思い出す。
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・珍しく短編集。「水に眠る」の漢字は好きかな。あと「植物採集」。どれも不思議な感じ。ミステリっぽくないのが、意外なのかも。
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不思議なお話が多い。「植物採集」は、切なくて好き。「贅沢な解説」は、本当に贅沢で、趣向もおもしろい。
2006/6/27再読
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可もなく不可もなく。
最近の本ではありません。
なんていうか、どうにも救いようのなく、オチのないどうでもいい話ばっかりです。北村薫は、「スキップ」とか好きだったんだけどなあ。
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同僚への秘めた想い、途切れてしまった父娘の愛、義兄妹の許されぬ感情……
人の数だけ、愛がある。短篇ミステリーの名手が贈る十篇
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運命の糸のはしっこを掴んだ人の幸福や、違和感に気づいてしまったが為に憂鬱の罠にはまってしまったやるせなさが描かれている。
日常に潜むちょっとした出来事で起こる気持ちの浮き沈みは、共感できる。
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なんだか北村さんらしくない感じがすごくする、短編集。不思議な話が多くて、タイトルの付け方も良いなぁと思った。
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読んだ後にせつなくなり、せつなくなりたいがために読む、そんな本です。10の作品の中でも冒頭を飾る「恋愛小説」が一番好き。こんな恋愛をしてみたい。「植物採集」では胸が痛く泣きたくなりました。
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ありえない設定なのに、この人に書かれると「そんなこともあるなかな〜」と思ってしまう。思わずグラスの水をひっかいてみたり。他にもくらげ、かとりせんこうはなび、矢が三つ、このあたりはフィクションなのにそれを感じさせない感じ。なんだかほんとに個人用クーラーが開発されたら、男女比が2:1だったら、ここで書かれていることがふつーって気にさせられる。
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短編集。不思議な読後感が漂う作品が並んでいました。元々北村さんの作品はほっこりする暖かさがあるのですが、この短編集もそんな感じ。納得するとかそういうのとは別のところに魅力がありました。