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紙の本
シングル・モルト・ウィスキーのアロマのように、ただただ味わうしかない
2004/05/08 21:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、仕事で倉敷に出かけて久しぶりに美観地区を歩き、前々から贔屓にしているマスカット・ワインを買って、何十年ぶりかで大原美術館を訪れたらもう閉館の時間になっていてのでミュージアムショップに足を運び、すでに絶版になっているらしい新潮文庫版の小林秀雄『近代絵画』がもしかしたら置いてないかと探したけれど見つからず、記念に一冊、白洲正子の『遊鬼』を買った。
「美なんていうものは、狐つきみないたものだ。空中をふわふわ浮いている夢にすぎない。ただ、美しいものがあるだけだ」という青山二郎の言葉や「だいたい結論なんてものは書いてみなくてはわからない筈で、わかっているものは書く必要がない、ということを私は小林[秀雄]さんから教えられた」といった文章が出てくる(『いまなぜ青山二郎なのか』につながる)第I部もよかったし、あたかも一編の幻想譚のような「龍神の宿」が収められた第II部もいい。
鴎外の「百物語」に登場する希代の「遊鬼」鹿島清兵衛とぽん太の数奇な人生を素材にした表題作や、小林秀雄が「判るか。梅原さんは、行住坐臥、描いてるんだ。筆を持たなくたっても、描いているんだ。常に描いているから勘違いもする。……だいたい、梅原さんの言葉は、もう言葉でない。絵なんだ。言葉が絵なんだ」と語る梅原龍三郎を描いた「北京の空は裂けたか」といったすごい文章が出てくる第III部もいいし、第IV部の「白洲次郎のこと」の乾いた筆致も心に残った。
とにかくすべていい。シングル・モルト・ウィスキーのアロマのように、ただただ味わうしかない。文藝という語彙はこの人の文章のためにあるのではないか。
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