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ななつのこ みんなのレビュー

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みんなのレビュー295件

みんなの評価4.2

評価内訳

284 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

残酷な現実を見つめ、それでも最上の選択をしようとすること

2009/10/03 22:28

10人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

『モノレールねこ』がおもしろかったと書いたところ、
加納朋子さんなら、初期作品の『ななつのこ』が
特に好きだというコメントをもらった。

「ななつのこ」???

自分は言葉が入ると
自動的に脳内検索をはじめるようにできているらしい。

悲しいことに童謡の歌詞とそのイメージ、
そしてあろうことか替え歌しか出てこない。

はい、書名で検索ね・・・。

ハードカバーは1992年9月出版で、文庫は1999年8月出版、
『ななつのこものがたり』というのもあるのね?

おんなじ表紙で、似たタイトルの本がなぜあるのかな?

そうか、作中作があって、それが絵本になっているのね。

「駒子シリーズ」?

シリーズだったのか・・・。

さて、何冊あって、どの順番なの?

あんまり、多いと全部追っかけるにはパワーがいるけど・・・。

・・・

・・・

よかった、3冊だった。

『魔法飛行』、『スペース』と続くのね。

どちらも文庫まで出ている。

今から追いかけても追いつけそうだ。

でも、いきなり3冊全部は買わない。

まずは、最初の1冊で気が合うかどうか、なのである。

と思っていたのも最初だけで、読了した瞬間に、
なぜ3冊1度に買っておかなかったかを激しく後悔したのだった。

そして、ここにやたらと饒舌に本書と出会った経過を書きつけているのは、
悔しかったからに他ならない。

今はたくさんの読書時間を確保することができる環境にあるので、
まるで過去の空白を埋めるかのように本を読み、
ここにその記録を書きつけている。

だが、いくら今たくさん本を読んでも、本を読むのは今の私である。

時間を巻き戻して、子どもの頃や若い頃の私が読書をするわけではない。

本書については、もっと早く出会いたかった。

そして、今日までに何度も何度も何度も読み返してみたかった。

時代設定的に90年代に大学生というところが自分の時間と重なっており、
また住んでいる地域も私が高校まで過ごしていた地域に近いというのもある。

なんとなくまとっている雰囲気が似ているところが
たくさんあって、妙な親近感を覚えたからかもしれない。

この本が出たときに出会って、駒子が読んだ『ななつのこ』を
私も読んでみたいと思いながら時を過ごしてみたかった。

インターネットの時代になる前に、
誰かに本気でファンレターを書いてみたかった。

そうやって時を過ごしたなら、『ななつのこものがたり』は、
リッキーさんが書くように、心待ちの書になったに違いない。

なぜなら、私は、作中作の『ななつのこ』にも
ほどなく惹かれたからである。

本書が生まれる前に作中作の『ななつのこ』は
もう存在したのではないかと思ったくらいだ。

そして、駒子の「ファンレター」は、
同時に、明らかに読者書評だと思ったのである。

駒子が読んだ『ななつのこ』を、私どのように読むのだろうか。

もう、第1章を読み終わる前から、それが頭を占めていた。

どこか天然ボケキャラの駒子だが、
ファンレターには、こんな鋭いことを書いている。

  一見童話のような要素を多く含みながらも、
  子どもには理解できないような(むしろ理解を拒むような)
  箇所が随所に見られるからです。

  そして物語が途中、いかにファンタジックになろうとも、
  最後にはときとして残酷なほどに
  現実を見据えて幕を閉じます。

  読んでいてふと、ファンタジーとは残酷な現実を
  飴でくるんだものではないかと考えたりもしました。

  幻想が内包するものを、垣間見た気もします。

  そんな厳しい現実の中で、
  主人公の少年は確実に成長していきます。

  その成長の過程が、はやて少年を
  生き生きと魅力的にしています。

年齢が若い人の手による、私なんかよりも
ずーっとずっと練られた表現を見ると、
心底悔しい気持ちになるのだが、
それと同じ感情を作中人物に対して持つ
という変な状態になってしまった。

読み進むごとに、天然ボケだけじゃない
駒子の深い部分が少しずつ見えてきて、
この手紙の駒子と普段の駒子が次第にかみ合うようになってくる。

本書と駒子が読んだ『ななつのこ』は、7つの章ごとに呼応している。

駒子の世界 ― 駒子が読んだ『ななつのこ』の世界

1 スイカジュースの涙 ― すいかおばけ

2 モヤイの鼠 ― 金色のねずみ

3 一枚の写真 ― 空の青

4 バス・ストップで ― 水色のチョウ

5 一万二千年後のヴェガ ― 竹やぶ焼けた

6 白いたんぽぽ ― ななつのこ

7 ななつのこ ― あした咲く花

そして、問いを発する者と問いに答える者が
駒子の世界にも『ななつのこ』の世界にもいる
という意味においても共鳴している。

その意味では、駒子のファンレターは、
駒子の読んだ『ななつのこ』の書評でもあり、
本書の書評でもあるということにもなる。

読んでいる間に、心が大いに動いた作品でもあった。

確かに誰も死なないし、刑事事件は起きないけれど、
どの事件もなんだか複雑な気持ちにもなった。

残酷な現実が見え隠れするせいだろうか。

お話であっても、確かに私達が生きていかなければならない
世界の現実がまざまざとそこにある。

これは、『モノレールねこ』を読んでいて感じた何かと同じ気がした。

それは、初期から今までの彼女の作品の底に
変わらずに流れる何かということになるのだろうか。

その人がその行為を選択するのには、
外から見てわからなくても、
傍から見て理不尽であったとしても、すべてに理由がある。

そして、皆見えないところで、
様々な喪失―ときには大切な者の死のような大きな喪失―に耐えているのだ。

その現実があった上で、悩んだ上で、
それでもその中で最上の答えを出していこうとする姿勢が
すべての謎解きの根底にあるのだと思う。

タイトル付け、名付けが深いのも、
初期作から今まで変わらないものである。

本書も「ななつのこ」でなければならなかったのだ。

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紙の本

読書歴

2008/11/22 00:11

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

ななつのこ 加納朋子 創元推理文庫

 短編の連続モノです。最初は、児童文学を読み始めたような感じ、ラストで、この著者さんは天才だ! 胸がすーっとします。こういう推理小説もあるのだなあ。作家になるべくして生まれてきた著者さんだ。
 わたしにとって共感を呼ぶのは、わたしが過去に読んだ本を著者さんも読んでいたということがわかることにあります。同じような読書歴をたどってきたのです。
 わたしは友人・知人と本の話をしようとしても話が合いません。本を読まない人たちです。以前、話が合う同僚がいたのですが、退社してしまいました。とても淋しかった。

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紙の本

「七つの子」の歌が聴こえてくる

2007/01/05 23:42

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:白くま子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

連作短編集であり、7つの章からなる。
どの話もよかったが、特に6つ目の「白いタンポポ」は印象に残った。タンポポの花の絵を真っ白に塗る、小学校1年生の真雪ちゃんの話である。
読み終わった後「白いタンポポは確かにあるのです」という言葉が心に浮かんだ。本文には直接出てこないが、気が付いたら頭の中で繰り返していた。そしてこれまた気が付いたら泣いていた。
そういうとき私の場合は、どこかに「泣かせのツボ」があって泣くことが多い。だがこの話の場合、私にとっての「とどめの一言」が特には見当たらないまま、ふと我に返ったら涙が流れていた、という状態であった。
真雪ちゃんのような年の頃はもちろん、年をとって大人になっても、誰かに肯定してもらうということは、なんと嬉しいことであろう。人と同じ色に染められない部分が、誰にだって1つはあると思う。それを頭から否定されることを、悲しいことに私たちは子供の頃から幾度も経験し、慣れてくるのである。その「人とはちょっと違う部分がある」という“火種”が大きくなってくると、嘲笑され、馬鹿にされ、そして「いじめ」に・・・となってくる。だから年を重ね、経験を積んだ末に、慣れざるをえなくなるのである。しかし幾度経験しても、幾つになろうとも、そして慣れていようとも、やはりその度にどこかで傷ついているのである。だから、誰かが「白いタンポポは確かにあるのです」と、ただ肯定してくれるだけで、いい大人になった今でも、嗚咽がこぼれて、涙が止まらなくなるのだ。自分が長い年月をかけて、これほど傷ついていたのかと、自分自身で改めて思い知って驚くほど、泣ける話であった。
3つ目の話の「一枚の写真」も大好きな話である。子供の頃に、同級生にアルバムから盗まれた写真が、19歳になったときに、その盗んだ本人から郵送されてくる、という話である。
これはもう、盗った女の子の側、盗られた女の子の側、双方の昔と今の気持ちが、同じ女性として、言葉や理屈ではなく分かるように感じて、心に深く染みてくる話である。
この「一枚の写真」の話の中に、二重構造で出てくるもう1つのお話「空の青」の中で、はやてくんとその仲間の少年たちが、夏休みの宿題の絵を書く場面がある。真っ赤な夕焼けの村、お祭の夜の花火、夕立の曇り空、端から端まで全部山、といった絵である。青い空の絵が1枚も無いのにはわけがある。青い絵の具が何者かに盗られてしまったことと、困り果てた少年たちに「空は青いばかりじゃ、あるまいに?」とアドバイスをしたおばあさんがいたことなどから、それらの絵が生まれたのである。無くなった青い絵の具はどこにいってしまったのか?この「謎」には、それは美しい謎解きが待っている。
しかしまあ、なんと美しい話の数々であろうか。白いタンポポ、青くない空、みんな温かく肯定してくれる人が、この本の中には存在するのである。その人、その事実を、そのまま普通に受け入れて、抱き留めて、日常は続いていくのである。
ふるさとの自然と思いが満ちた、夕焼け、夕立、花火の夜、山、といった子供たちの描いた絵、そしてこの文庫本の表紙の、郷愁あふれる美しい絵。これらの絵を言葉にして物語にすると、この本の中身になる。そのような本である。

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紙の本

日常の謎の名手は、デビュー作でとんでもない作品を放っているのです。完膚なきまでやられましたよ、まったく。

2017/05/17 00:32

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

ななつのこは加納朋子さんのデビュー作である。
七つの連作短編である。
主人公の駒子が,ふと手に取った絵本から話が始まる。
駒子の日常に起こる様々な出来事と,絵本の展開,絵本の
作者との交流が絡み合い,入れ子構造の凝った作りである。

Wikipediaでは,特に初期の頃は北村薫さんの影響が強いと
あった。一話目を読んだ時,北村薫さんの空飛ぶ馬の影響が
強いようにわたしも感じた。
でも読み進むにつれ、そんなことはどうでもよくなるくらい作品の
世界に浸ることができた。

手に取った理由は、北村薫さんを気に入って読み進めていくうちに、
他の作家さんも読み広げていきたいと考えたからである。
読書にはまり始めたころだったため、経験も知識も全然少ない
中で日常の謎という言葉も覚え、加納朋子さんを見つけたことは
非常に幸運であった。

こころ安らぐ話が多いため,ひとつひとつ読み進めていた。
ところが,デパートの上からビニール製の大きな恐竜の遊具が
消えるというお話を読んだ時,所詮,二番煎じだと勘違い
したのである。

場面設定からトリックが手に取るように分かる。
こういったことが起こらないように管理が徹底されるのは当たり前。
ゲンバを知らんのかと私は勝ち誇った気になってしまった。
この本を読んだときは読書経験が浅かったからしょうがないかも
しれない。致命的な誤読である。

本作は,七つの短編ばかりでなく,一つの長編としての意味も持つ。
最終編で,ひとつひとつの宝石がネックレスとしてつながる瞬間,
全ての謎が解かれる。そのとき自分の浅はかさを知ったのである。
こんな凝った作りの本に出会ったのは初めてだった。衝撃だった。

書評も書き始めの頃であり、そのときはじめて上から目線で
読んでいた自分に気付き恥ずかしく思った。
分析は重要だけれど、真摯な心で読書に望む重要性を深く
学んだのである。

恐竜の謎以外にも、白いタンポポという話にも参ってしまった。
この一冊に出会ってから、全巻読破対象にさせて頂いている。

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電子書籍

心地よい読後感

2015/02/04 21:19

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:にこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本の魅力は、謎と謎解きの奇怪さや斬新さではなく
読み終えたときに、ふと優しい気持ちになるところでしょう。
「これってこういうことなんだろうな」と思った通りの展開なのに
不思議と引き込まれます。
印象に残る言葉遣いや台詞。はやてとあやめさん。表紙の絵。
全体の雰囲気が良いんでしょうね。
主人公駒子に共感するところも多く、とても読みやすい1冊でした。
「魔法飛行」、「スペース」と続編もあります。

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紙の本

心優しい作品

2016/01/24 22:31

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る

童話を読み進みながら、主人公の遭遇する日常の謎をゆっくりと解いていきます。心優しくなる、温かいミステリです。

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紙の本

ノスタルジーたっぷりの、優しい物語

2010/09/30 01:21

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:依空 - この投稿者のレビュー一覧を見る

『ななつのこ』はノスタルジーたっぷりの、本当に素敵な物語でした。ジャンルとしてはミステリーに入りますが、日常の謎を書いた作品らしい、ほのぼのとした優しくて温かい雰囲気を持っています。
加納さんの作品は何年か前に一度だけ読んだことがあるのですが、それがあまり合わなかったのか、それ以来手に取ることはありませんでした。本書を読んだきっかけは、絶対に好きな作風だとおすすめされたからなのですが、一章を読んだ時点で、なんでこの本を一番初めに手に取らなかったのか、もったいないことをしてきたものだと後悔してしまいました。

本書は、偶然手に取った本に惚れ込んだ駒子が、作者である佐伯綾乃さんにファンレターを送るところから始まります。自分の身近で起きた不思議な出来事も一緒に綴って送ったファンレター。返事が来るはずもないと思っていたところ、思いがけずご本人からの返信が届きます。その中には、駒子が書いた不思議な出来事に対する、佐伯さんからの謎解きが入っていました。それから2人の間では駒子が日常の謎を送り、その真相を佐伯さんが推理するという不思議な文通が始まります。
作中作『ななつのこ』も、はやて少年が遭遇した謎をあやめさんという不思議な女性が解き明かすという物語です。駒子の日常の物語と『ななつのこ』の物語が微妙にリンクし、読者は2つの謎を同時に楽しめるようになっています。さらにラストには全編に通じていた謎までが明らかになるようになっていて、最後まで読むとその構成にへぇ~と感心してしまいました。

1番印象に残ったお話は、「白いタンポポ」ですね。「白いタンポポ」には小学校1年生の女の子が登場するのですが、その子はタンポポの絵を描いたときに白く塗りつぶしたことによって、家庭内の問題のこともあり情緒が欠落していると疑われていました。最後の佐伯綾乃さんからの手紙で何故女の子が白いタンポポを書いたのかが分かるのですが、それは固定観念に縛られてカチコチになってしまった大人の寂しさと残酷さを感じました。小さい子にとって、自分の目で見たものを否定されることはどれほどの打撃なのでしょうか。思わず、自分が幼い頃に経験した同じような出来事を思い出し、少し切ない気分になってしまいました。その分、駒子と女の子の交流には、心がじんと温かくなりました。

北村薫さんの『円紫さんと私シリーズ』と似たような雰囲気を持っていますが、北村さんとはまた違った魅力を持った素敵な作品です。

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紙の本

こんな物語が教科書に乗っていたら素晴らしいのになぁ。

2005/02/24 15:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:いくら - この投稿者のレビュー一覧を見る

加納さんの作品に出会ったのは、とあるミステリのアンソロジー本でした。
様々な作家さんが勢揃いする中、一人だけ毛色の違う「犯罪が起きない」ミステリに心奪われ、デビュー作であり、鮎川哲也賞受賞作品でもある本書を手に取りました。
主人公の駒子が購入した『ななつのこ』のストーリーと駒子の日常生活、そして『ななつのこ』著者である佐伯綾乃さんとの手紙のやりとり…これらが交差して物語は進んでいきます。
殺人、誘拐、強盗…などの凶悪事件は起きません。あくまで短大生・駒子の日常生活が描かれているんです。
物語から紡ぎ出される言葉ひとつひとつが繊細で透明で力強い、心にしみるものでした。
大人になる一歩手前の女の子の心情…「些細な謎」や「心の葛藤」が見事に描かれています。
読み終わった時、心がぽわぁんと温かくなるような、ミステリという枠を超えた珠玉の一冊です。
こんな物語が教科書に乗っていたら素晴らしいのになぁ。

「ミステリが苦手」という方にこそ是非とも読んで頂きたいです。
「謎」が提示され、それを手紙という手がかりの中から解決していく…という形でミステリの掟はきちんと守られていますが、上で述べたように犯罪が起きません。
ミステリの楽しさは、色々な箇所に撒き散らされた手がかりに如何にして気付くか、また気付かないで騙されるかだと思っていますが、「ななつのこ」の魅力はそれだけではありません。
一つの物語としての純粋な素晴らしさに加えて、ミステリとしての楽しみである解答が提示された時のドキドキ感を同時に味わって下さい。

By T.O.M

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紙の本

日常の「謎」に気づくことの大切さ。「疑問」に思うことの素敵さ。

2004/05/13 16:52

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あう - この投稿者のレビュー一覧を見る

 誰もが遭遇し得るとても身近な「日常の謎」を追った連作短編のミステリーです。さらに、本の中に本があるという「作中作」の方式が取られているので、私たち読者は『ななつのこ』という本を2冊分読むことができます。派手さや驚きといったものはないですが、作品の持つ柔らかい雰囲気がとても好きです。

 短大生の駒子は、表紙に惹かれ『ななつのこ』という本を手に取る。この本に惚れ込んだ彼女は、作者にファンレターを出すことにするが、ちょうど身近に起きた「スイカジュース事件」のことも一緒に書き添える。後日、思いもかけず作者からの返事の手紙を受け取るが、そこには「スイカジュース事件」の謎解きが書かれてあった。こうして二人の不思議な手紙のやりとりが始まる。

 ひと言で言えば、殺人事件の起きない穏やかなミステリーといった感じです。主人公の駒子と同じように私も綺麗な表紙の絵(菊池健さん画)に一目惚れし、そして最初の話「スイカジュースの涙」を読み始めてすぐにもう大好きな本になるだろう確信がありました。表面的にはほのぼのしていますが、悲しみや痛み、様々な部分を持ち合わせていて、軽さと重さのバランスが絶妙です。駒子に共感できる部分が多いことも本書が好きな大きな理由の一つです。

 日常の謎といえば私もたまに遭遇します。例えば玄関先に置いてあった亀の子タワシが行方不明になり、なぜか隣家の屋根の上で発見され、なぜあんなところに? いったい誰が? とかそういう感じです。そして自分なりにタワシに何が起きたのかを推理してみたりもするのですが、そういう「謎」は結局は「謎」のままで、いつの間にか記憶の片隅に追いやられがちです。ところが、そんな迷宮入りしそうなささやかな「謎」が、本書では佐伯綾乃という作家によって鮮やかに解き明かされています。解かれた瞬間、スカッと爽快な気分になるのは、自分では解けないもどかしさの反動と、日常という平坦なものの裏側に隠れていたグラデーションを持った深い何かを垣間見ることができるせいかもしれません。それはどこか宝探しのドキドキワクワク感に似ているような気がします。

 「謎」はいつだって自分の近くにあるもので、そしてその「謎」の裏にあるものに気が付くということは、きっと日常を平らなものから立体なものへと変え鮮やかな色付きにしてくれる術なのでしょう。この作品はそんな素敵なことを教えてくれました。

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紙の本

22世紀でも、きっと現役。だからこそ、いま読みたい一冊。

2003/10/13 01:25

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る

  『私の骨は頑張って、1万2千年後まで残します』
   などと力説することの空しさに、突然思い至ったのだ。
(——P192)

  バナナの葉に包まれて、じりじりと石蒸しにされる
  ポリネシアの子豚の気分なんて、そう味わいたいものではない。
(——P141)

  「そうですね。ハイドロプレーニング現象が起こりやすい天候です」
(——P159)

入江駒子、短大生。
もうすぐ二十歳。その日常。おだやかな毎日。

変化のきざしは、一冊の短編童話集。作中作『ななつのこ』。
きっかけは、著者に宛てた一通のファンレター。

これは、おだやかで、おかしくて、真摯な往復書簡の物語。

1992年に発表された、加納朋子さんのデビュー作。
本書と出会って2年半。今、再読しても、色あせない。

『赤毛のアン』や『若草物語』や『あしながおじさん』同様、
10年経っても、100年経っても、命を失わない作品。

しかし、まっさらな状態で、『ななつのこ』を読む喜びは、人生で一度きり。

卓越した構成力で、「物語を読む喜び」と「謎に触れて驚く喜び」を
一度に堪能させてくれる本書は、構造上ネタバレに弱い。

・『ななつのこ』が好きな人は多い。
・毎年、『ななつのこ』と出会う人は現れる。
・良い本を読めば語りたい。

「危機」が増え続けるなら、自衛策は「今」読んでしまうこと。
ネタバレに遭わず、堪能できた幸運をかみしめた一冊。

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紙の本

空飛ぶ馬ならぬ

2020/09/14 12:47

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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る

空飛ぶ恐竜、が出てきましたね。
北村薫さんの影響を受けたらしいですが、
加納さんのほうが酔いやすい感じかな。
本作がデビュー作とは。

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紙の本

復刊を待ちましょう

2020/05/13 14:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る

北村薫の『遠い唇』が文庫になったので読んで、
『冬のオペラ』を再読したんです。
そうすると、[円紫師匠と私]を読み返そうか、
という気分になったのですが、北村薫ばっかり続けるのも
なんだかな、と思ったので、
テイストが似通っていて、少しライトで、同じぐらい楽しめる
加納朋子の[駒子]シリーズを読み返すことにしました。
最初は『ななつのこ』。
やっぱりいいなあ。
小さいしかけと大きいしかけがうまく組み合わさって、
ちょっと凝ったつくりの物語をうまく流れさせる。
加納朋子は、新作が待ちきれないので、
そろえてある在庫を読もう。
レビューを書こうとhontoのページを開いたら、
なに?
紙の文庫本は取り扱ってないの?
そりゃないよ。
電子書籍があるとはいえ、
やっぱり紙のページをめくる楽しみも残しておいてよ。
これから読もうとする人は、辛抱強く、復刊を待ちましょう。
ブックオフとか行っても、あまりないと思うよ。
読み返しても面白いもん。

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紙の本

デビュー作

2015/08/29 18:03

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投稿者:nazu - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者が、北村薫の円紫さんと私シリーズが好きで、ファンレターのつもりで書いた(違ったかな?)、というデビュー作。知人の中には、作風をまねてるだけで、中身は物足りない、という人もいるが、私は北村作品とはまた別の、若さ(いい意味で)のある素敵な作品だと思う。

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紙の本

ワクワクする身近な謎解き

2002/05/28 08:49

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投稿者:あき - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公の女子大生、駒子が買った「ななつのこ」と、本書の「ななつのこ」を絡ませて書いている形式の作品です。とってもほのぼのとしたミステリーです。ミステリーというよりも、身近にある謎解きの感じで、いたずら心をくすぐられているような、子供心を思い出すような、ワクワクする心持ちで読めました。

全部で七編が収められているのですが、最初の「スイカジュースの涙」以外の六編は、どれもみんな暖かくてほんわかしています。特に「白いタンポポ」という話は印象深かったです。
駒子は、ある少女と出会います。その少女は、学校の図工の時間に、水仙も、チューリップも、タンポポも白く塗りつぶしてしまうという子で、学校の先生は、情緒不安定になっているのでは…? と思っています。そんなことで情緒不安定と決め付けるなんて…と、憤慨する駒子は、少女と打ち解けようとします。そして、フト気づくのです。「白いタンポポは本当にあるのでは?」と。
「タンポポは黄色い」と決め付け、白いタンポポを否定された少女を思いやる駒子と、少女との交流に、胸がハッとさせられました。私も「タンポポは黄色い」と決め付ける側の大人なのだと思うと、少し悲しくもなったり…。

いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。
↑は、本の帯に書かれている言葉ですが、この帯のとおり、些細な出来事を暖かい謎へと導いている、ほのぼのとして読みやすい作品でした。

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紙の本

ナンバー1ミステリ

2002/01/08 19:23

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投稿者:かずね - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本は読みながらにして同じ名前の本をもう1冊読めてしまいます。この本の主人公、入江駒子はふっと表紙の絵に惹きつけられて、手に取った本が「ななつのこ」。この本の作者にファンレターを書くのです。そして、作者と駒子との文通が始まり、文通により話はなりたっていきます。駒子の日常の謎を手紙でときあかしてくれる「ななつのこ」の作者。まるで北村薫さんの円紫さんシリーズを読んでいるような感じでした。そして、この穏やかな世界にどっぷりとつかっていたい、そんなきもちでいっぱいでゆっくり読んでしまいました。
 「スイカジュースの涙」を読んだ時の衝撃はすごいものでした。このようなミステリがあったとは! すごい作品だと思いました。みなさんにもこんな気持ちにひたってもらいたいな。まちがいなく、今年読んだ本のベスト1作品です。
 収録作品……「スイカジュースの涙」・「モヤイの鼠」・「一枚の写真」・「バス・ストップで」・「一万二千年のヴェガ」・「白いたんぽぽ」・「ななつのこ」

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