紙の本
ベールをはがせ
2001/12/21 22:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りさこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔は飛行機に名前が付いていた。その名は「よど号」。その昔空港には手荷物検査がなかった。無計画な若者たちは、北朝鮮に行こうとよど号をハイジャックした。
この本は学生運動が盛んな時代のハイジャック事件について詳細に書いている。そして、そのあと若者たちがどのように生活し、活動し、生きているかを書いている。
あの事件から長い時間が過ぎた。結婚して、子供も大きくなった。最近その子供たち(といっても大人だったような気がする)が日本に帰ってきた報道があったような気がする。あのときはぜんぜん興味がなかったけど、この本を読んでいればきっとテレビにくぎ付けだっただろう。
国内で、海外で日本人がいなくなる事件がある。それがあの人たちの仕業であると書いてある。これがほんとかどうかは自分では確かめることはできないけど、この本はそのほかのこともたくさん調べていて、どんどん秘密のベールをはがしていく。そのベールの数は尋常ではない。ページをめくるたびに新しい驚きが記載されている。
そして読み終わったときに、これはあの若者たちのことを書いた本じゃない、北朝鮮のことを書いた本なんだ、ということに気づく。
この本の目次が平壌の写真になっている。読み終わってもう一度目次を見ると、背筋がぞっとする。
紙の本
よど号事件のその後
2001/01/15 14:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dakara - この投稿者のレビュー一覧を見る
1970年の3月に、赤軍派のメンバーが羽田発福岡行きの日本航空旅客機をハイジャックした「よど号事件」はあまりに有名です。
僕はその頃はまだ生まれていませんでしたが、よど号事件に関しては、何度もテレビで特集がなされてきました。
本書は、よど号事件の背景や、事件を起こした彼らの「その後の人生」を丹念に追っています。
700ページほどもある大著ですが、一晩で読みきってしまいました。著者の丹念な取材による良質なルポルタージュであると思います。
ちなみに、本書は講談社ノンフィクション賞を受賞しているということです。
紙の本
誤った思想が人生を狂わせる。 よど号赤軍派のかつての仲間でもある著者の渾身のルポルタージュ。
2021/10/26 09:58
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「反対だけが実績です」というポスターを目にしたことがある。
予算に反対しておきながら「私たちがやりました」と平然と言えてしまう人々のことを言ったのだろう。
では、その人たちが政権を担ったらどうなるか?
「反対ができない国」「選挙がない国」が出来てしまう。
1970年3月31日。
「われわれは赤軍派だ。北朝鮮へ行け!」
羽田発福岡行きの日航機「よど号」は、学生たちにハイジャックされてしまう。
「我々はあしたのジョーである」
「世界同時革命」という妄想の末、多くの人の犠牲の上に彼らは北朝鮮に渡った。
「首領様の金の卵」として遇され、「主体思想の戦士」に染め上げられていく。
赤子の手をひねるように簡単であり、赤子の手をひねるように残酷なことだ。
考えるのは首領様であり、人民は手足である。
失敗は自分の責任であり、成功は首領様のおかげである。
「よど号赤軍」は、朝鮮労働党の手先となり、日本人拉致事件に関わっていく。
北朝鮮に渡った赤軍派。その家族。彼らに嫁いだ日本人妻。彼らに拉致された被害者。そしてその家族。
誰一人、幸福になったものはいない。
彼らの革命が成就されることはない。
誰の支持も得ることはないからだ。
誤った思想が人生を狂わせる。
取り返しの付かないことになる。
よど号赤軍派のかつての仲間でもある著者の渾身のルポルタージュ。
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真実かどうかはともかく、かなり興奮して読んだ。特に最後の方の金太郎さんの話は。ノンフィクション版ミステリー。
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読むべき本をどんだけ読んでいないのだろうかと嘆息した。ひとまず、よど号博士とかになりたいのでなければ本書1冊を読んでいれば十分すぎるぐらいかと思う。
北朝鮮のことはよく知らないが、キューバでは遠すぎて燃料の補給が大変とかいう安易な理由で、超自己中な主体思想とは相容れない「過渡期世界論」「国際根拠地論」という「理論」に基づいて「俺が金日成をオルグする」(故・田宮)「立派な兵士になって帰ってくる」と掛け声勇ましくよど号をハイジャック、北朝鮮に乗り込んだもののおそらく非転向のために死んだ吉田金太郎と岡本武以外は洗脳されるがままになって日本人を誘拐したり偽ドルつくりに加担したりして今に至るというよど号メンバーの成り行きを赤軍派の元活動家でよど号リーダー田宮の友人でもあった著者が、かつては同志だった彼らの変貌ぶりへの落胆と、それでも滲み出る旧友としての共感を抑えつつ出しつつ、約700ページという長編をたいへんな取材力で充実した内容にまとめている。
とにかく北朝鮮以外のどの国に行ってもこれほどひどいことにはならなかっただろうと思われた。
出発前、仲間の1人が、北朝鮮に行ったら長髪を切らなくてはならないから嫌だ、行かないと言ってグループを抜けたという話が出てくるが、知識なんてなくても、そんなふうに普通にそういう管理国家ダメじゃんとか思えなかったのかなあ。
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星5つでも足らんわ。「よど号」と言ってもリアルタイムでは知らない。古本屋でで売っていたから興味本位で買ってみたのだが、凄かった。まさに事実は小説より奇なり。ルポってこんなに面白い物なのかと。一気に読むにはチト長く、ちょっと疲れるが、内容への興味が薄れることはなかった。著者の文章の書き方、話の盛り上げ方が実に上手い。しかし、これはノンフィクションである。「面白かった」ですます分けにはいかない。普段何気なくテレビで見ている北朝鮮という、最も近くて、最も遠い国に付いて、考えさせられると共に、「日本」という自分の生まれ育った国に対する考え方にも、改めて考えてみる必要があるように思った。、
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よど号事件を巡った一書の中ではかなり内容の詰まった一書でした。
よど号のハイジャック事件だけでも十分に重厚な内容だが、北朝鮮に向かった後のよど号メンバーに待ちかまえていた北朝鮮国内における思想改造の経緯や日本人拉致を行う為にヨーロッパへ潜伏した事など、混沌の時代を背景に若者の思想や行動、紡ぎ出された一つの時代の答えが凝縮されている。
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第21回講談社ノンフィクション賞。
昭和45年に起こった「よど号事件」のメンバーを、北朝鮮まで行って取材してきたノンフィクション小説。
名前くらいは聞いたことのあった「よど号事件」、どんな事件かまったく知らなかったけど、この小説はよく取材してあってまるで現場に居合わせたかのように具体的に事件内容が書かれている。
また、北朝鮮がどのように拉致工作を行なっていたか、拉致した人にどんな教育をしていたかにも詳しい。
ただ、著者もちょくちょく述べているが、北朝鮮内での言葉はどれが事実か分からない。というか「事実」という言葉の概念がそもそも違うのだ。われわれが言う「事実」とは、まさに本当に起こったことそのものを言うのに対し、北朝鮮では「そうあるべき、そうでなければいけない」ことが「事実」であり、実際どうであったかは関係ないのだ。
だからよど号メンバーの結婚話でも、実際は拉致してきた人と北朝鮮内で結婚したのに、ヨーロッパで偶然出会って結婚した、という妄想上の出来事を「事実」として語っていて、本人たちもそう信じている。
著者の取材は徹底していたが、もうちょっとコンパクトにまとめられなかったかと思う。全670ページは膨大すぎるし、繰り返し述べられるところもあって冗長な感じ。
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外国にいて、日本語で話かけてくるヤツには注意しろ、と言われますが、日本人同士だと分からないのですかね。まあ、そのために日本人を拉致しているのだとは思いますが。
日本人妻が、一人捕まって素性がバレたら、それまで日本に埋伏されていたスパイたちが、一斉に国外に逃げた、というのが映画「メン・イン・ブラック」のようでした。
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とても面白い本。読み応えがある。ああそうだったのか。方々に散らばっていた貧弱な知識群がボクの中で綺麗に繋がった。今から40年前の夜。東京。駒込駅前の喫茶店「白鳥」に集まったメンバー。ハイジャックの謀議。すべてはここからはじまった。今でもなお続く拉致問題。北朝鮮と日本の間に横たわる深い溝。世界を舞台に彼らが何をしてきたのか手に取るようにわかる。一筋縄にいかない理由。それらすべてが本書でわかる。
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謀略に怒りを覚える。そして自身の置かれた境遇が重なって暗くなる。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080830
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110804
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「よど号」ハイジャック事件が発生した時、わたくしはまだ頑是無い子供でありました。よちよち歩きとまでは申しませんが。よつて当時のことはほとんど覚えてゐません。
ひとつには同時期に開催された大阪の万国博覧会の印象が強すぎて、ほかのニュウスはかき消されてしまつたといふ事情もありさうです。
北朝鮮へ渡つた「よど号」メムバアは、予想外の好待遇で迎へられ、朝鮮労働党から有形無形の恩を売られたことで、思想改造も容易に進んだのではないかと思はれます。
その後は金日成体制下の主体(チュチェ)思想に則り、労働党の傀儡もしくは手下として動くしかありませんでした。日本人拉致事件にも関つてゐたのです。
日本の関係者が全く情報を得られず、何となく北朝鮮国内で不自由な生活を強ひられてゐると思ひ込んでゐた時期に、実は彼らはヨーロッパ各国で活動したり、ちやつかり日本へ潜入したりしてゐたのでした。
また、9人のメムバアは全員が同じ方向を向いてゐた訳ではなく、主体思想に馴染めない者もゐました。さういふ人物はある日忽然と姿を消すのであります...
質量とも充実したノンフィクションと申せませう。著者の高沢氏は、メムバアのリーダー・田宮高麿の友人だつたさうで、高沢氏だからこそ彼らもここまで語つたのでせう。
2012年2月現在、9名ゐた「よど号」メムバアのうち、健在が確認できるのはわづか4名に過ぎないのださうです。
彼らには今後の展望は見えてゐるのでせうか。現在も続く悲しい歴史であります。
http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11153510683.html
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20代の幼い思想で突っ走り、後半の人生を北朝鮮で過ごしたよど号のっとり犯人たち。
決行日、飛行機など乗ったことのない貧乏学生たちは、
飛行機を電車のようにすぐに乗れると思っていて遅刻者続出したとか(で、別の日に再度決行した)、
北朝鮮で半監禁生活(けっこういい暮らしだったそう)の中、日本から恋人をおいかけて女の子が一人やってきてから、男同士がぎくしゃくしだしだとか。(この女の子もびっくりだ。)
私の中で歴史の中の事件の犯人が、生き生きとした息子たちと変わらない青年にみえてくる。
犯人は謎の死をむかえたり、行方不明になったりしたが、2名ほど存命だそう。
次は重信房子さんの話を読みたい。
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最近、出版されたよど号メンバーによる本の内容とは違う点がある。当たり前かもしれないけど、本当に真相は闇の中。。
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1970年3月末、赤軍派メンバー9人が日航機をハイジャックし、北朝鮮へ亡命した「よど号」事件。
犯人たちのその後の人生とは。
犯行の計画、北朝鮮の思想教育、日本人拉致の実態、そして日本潜入工作――。
ルポルタージュ。