紙の本
偶然の産物
2018/06/16 07:22
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投稿者:まさる - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語が予想の斜め上に進んでいく印象を受け、引き込まれた。所々ユーモアも効いていた。
人生は偶然の産物であり、人間はただ翻弄されるのみである。
紙の本
作者の分身達が住むパノラマ世界
2002/05/20 09:16
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投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなこと誰も言ってないだろうし,もしかしたら世界でオレだけがそう感じるのかもしれないんだが,このポール・オースターって作家は自分の創作した作中人物を好きになったりしないんだろう,作中人物の誰も愛していないんだろう,と思う。それは,作中人物が完全な作り物で作者自身が全然投影されていないというのではなくて,いやむしろおそらく作者自身のモノの考え方や感じ方,そして何よりヘンな言葉だが「モノの感じな方」を練って固めて作中人物を造形するあまり,愛せなくなってんぢゃないかな,という感じ,この小説最初から最後まで結局オースター自身以外は出てきてないんぢゃないかって思うのである。
そしてその「愛してない人物」たちを,まさに「映画」のように,「現実」のように見えるけれど「その裏側に別の約束事」がある世界のそこかしこに配置して,いきなり時計のネジを巻く。止まっていた時間が動きだすように,人物達はそれぞれ「小説の中での人生」を「とてつもなく途方にくれた」地点,時点から始めさせられる。そう,オースターにとっての小説世界というのは,作中で大金持ちのストーンが製作している模型の世界のようなもの,我々「客」にとってはテーマパークの「★★ライド」みたいなものなのだろう。自分の背筋をなぜていった冷たいものが本当のところなんだったのか,分らなくても我々はオトなしく家路につかなければならないのである。
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オースター作品で私の中では1,2を争うのがこの小説。不条理すぎる展開に最後まで目が離せず、脇役のポッツィが何ともいえずいい味を出していると思います。ポーカーをやらせると右に出るものはいないというほどの天性の腕を持つポッツィとあり余るほどの財産を持つ二人組みの奇妙な男との大切な勝負の最中で主人公のナッシュがふらりと部屋を出て行きそこから徐々にツキが逃げ始めるくだりなど、何とも不吉な雰囲気が漂ってきて「うわー、何でそういうことするかな」と心臓がドキドキし、ページをめくる手が震えます。
その後の延々と石を積み上げるシーンなども意味のない作業を続けるところにカタルシスを感じ始めるナッシュと徐々に弱って行くポッツィの対比も見所で途中衝撃的な展開を経てラストはまさにオースターらしい結末が待っていて唖然とする事間違いなし。オースター未読の方、ありきたりな小説には飽きた方には絶対おすすめ。
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あまりに意味ありげな表紙のこの本。思わず買ってしまいましたが、実は映画"スモーク"の脚本家。"偶然"をテーマにした、とても深い作品です。
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それまで何となく避けてたオースターなんですが、最初にコレ読んで一寸吃驚。袖擦り合うも多生の縁て感じで。
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で、この人の本の中で一番好きなのがこの本です。
どうしょうもないということの恐ろしさが非常に心地よいです。
何度読んでもいい。ドストFスキーと違って、読むたびに新しい感動もなにもなく、ただただ居心地の悪い寂寥感のみが募るのですがそれでもやめられないです。
at okayama jyunkudo
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柴田元幸訳。ポールオースターの作品の中で一番好きかも。いかに人というものが儚いかが伝わってくる。栄華、没落、葛藤。
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今秋、小栗旬くんと仲村トオルさんが今作の舞台をなさるので買ってみました!まだ読めてませんが…深いお話っぽいです。。
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最後まで読者を飽きさせない手腕には脱帽です。
読後の脱力感にかけてはピカイチかも・・。
舞台化されたらしいけど、ハラハラ感が上手く出るのかどうか気になる。
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いつものかんじかなと思って読み進めていくと、突然投げ出されたラストにしばらく「えー?!」としか言えなくなった。大好き。
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4/22巻読
この話、希望と思ったことがどんどん裏切られていく。「but」に満たされた物語だと言う感想。まず第一の裏切りとして、ポーカーに負ける。その他にも、逃げ出して自由になったと思ったら自由でない。痛めつけられて行方不明。ポッツィに出会うまでもそうだ。彼女と腰を落ち着けようとしたら、一度まとまりかけた話なのにアウト。殺したいけれど、殺さない。憎みたいけど、憎めない、憎まない。考えたくないけど、考える。人間くさいくて、意思がない。味方のような、敵。ブレーキを踏む暇もないから、アクセルを踏む。
不可解なことも沢山。なんでフラワーとストーンはぱったりと姿を見せなくなったの?壁って何???ミニチュアは何???意味のないコレクションって何???私に気付く暗喩もあれば、読み取れない暗号も沢山。あとになって気付く布石。その謎解きも多分オースターの魅力。多分無駄な言葉なんてひとつもない。
沢山の種類の偶然。宝くじ、ポーカー、出会い、目撃されたこと。衝動的に盗んだもの。
尻切れになったこと。フラワーとストーンの行方。ポッツィの行方。未完成の壁。未完成のミニチュア。未完成のコレクション。ナッシュの未来。ジュリエットの未来。
時間のストレッチ。9章のうち、4章まで場所が止まらない。あとがきにもあったけど、これはあちこち動き回っていたのが止まったところから物語が始まると思う。なのに、なかなか止まらない。止まってからは、あるイベントがあると、それに膨大な紙を割く。繰り返しの毎日っていうのもあるのかもしれないけれど、そのイベントの中で起こったことならば、どうでもいいような瞬間についてもしつこいくらいに描写される。あたかもすんごい長い時間のように。
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大富豪相手にディーラーと組んでの大博打に挑む。なんて書くと違う話みたい。けしてエンタメではない。不条理&けっこうブルー。
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目的を失い、車で移動することそれ自体が目的になってしまった男が、寓話的な世界で新たなる目的を"築こう"として、さらにすべてを失う。「ミスター・ヴァーティコ」が「飛翔と転落の物語」だとしたら、「偶然の音楽」は「移動と激突あるいは行き止まりの物語」とも言えるのかな。文中、非常に同感というか共感した一節。「運転しながら、バッハ、モーツァルト、ヴェルディのテープをえんえん聴いていると、まるで自分のなかから音が湧き出てきて風景を浸しているような、可視の世界を彼自身の思考の反映に変えているような、そんな気持ちになってきた。」たしかに、運転しながら音楽を聴いていると、そういうことって、あるな。 (2002 Aug)
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ラストが圧巻です。あの高揚感は時計仕掛けのオレンジ並。
日本人には真似できない人生を体現していると思う。
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途中で物語の展開が大きく変わり、書かれてはないが2部構成になっていることに面食らった。所謂起承転結ではなく、よろよろと話が進んでいく様が、ストーリーの空虚さを強調しているようで引きこまれた。「石をただ積んでいく作業」というテーゼが暫く頭から離れない。