鍵・瘋癲老人日記
2021/06/10 18:22
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
谷崎潤一郎が戦後発表した日記形式の小説二つが収録されている。
「鍵」は高血圧などの病気持ちで、肉体的に貧相な50代の大学教授と、心臓に病を抱えている古風な40代の妻の日記が交互に引用されている。互いに日記を隠しているが、同時に互いが日記を読んでいることを意識しているという、複雑な構成。夫婦と一人娘、そしてその結婚相手にと考えられている男が複雑に交錯し、性的嗜好がやがて死につながっていく様子が描かれている。
「瘋癲老人日記」は老人の日記が引用され、最後に老人が日記を書く事をとめられた後、看護婦と医師がその老人について記した看護ノートのようなものが引用されている。
この小説でも老人の性的嗜好が老人を肉体的に破滅に導いていくわけだが、その相手が息子の嫁となっている。また「鍵」では主要な登場人物が全員性的嗜好に協力していたのに対し、この小説では常識人として老人の妻と娘が登場する。この常識人が登場する事で、構成は単純でもとても面白く読める。また、老人が墓石に嫁の足跡を彫らせる事を考える事で、性的嗜好によって肉体が滅びても半永久的に性的欲求がかなえられるという結末になっていて、とても面白かった。
やはり河野多恵子氏の書評は目の付け所が違う
2020/11/16 21:58
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が勝手に日本3大変態作家と呼んでいる(他の二人は川端康成氏と河野多恵子氏)谷崎氏の晩年の名作。どうして私がこの3人を敬意を持って変態作家と呼んでいるのは作品の中に変態性をうかがわせるものが数多くあるということからなのだが、谷崎氏の作品にはマゾな主人公が多い(例えば「痴人の愛」の主人公、「春琴抄」の佐助)、「鍵」に登場する夫や「瘋癲老人日記」のお爺ちゃんもそれにあたる、同じ「変態」であり、谷崎文学の崇拝者でもある河野氏は「谷崎文学の愉しみ」という本の中で「鍵はマゾヒズムを書くには不向きな2元描写であるために作品の弱点はその洋式に復讐され、瘋癲老人日記は、同じ日記体であっても、一元描写対になっているのですばらしい作品になっている」と述べている、さすがに目の付けどころが違う
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投稿者:193 - この投稿者のレビュー一覧を見る
二作とも日記文学である。では日記文学とはなにかというと物語が作中の登場人物の日記により構成されているのである。
とくに「鍵」は夫婦がたがいの日記を見られていることを感づいていながら、なおかつ、その認識の上で繰り広げられる性的な日記の遣り取りは谷崎文学の妖艶な魅惑と高い完成度を持ち合わせている。傑作である。
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
高い地位と知性に恵まれながらも、肉体的に満たさないのが男の哀しさですね。奔放かつ無垢な女性たちとの、コントラストも秀逸です。
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性欲とは何か、肉体が衰えたとしても、性欲というものは衰えることはない。誰しもが、老人になってみて納得する性感覚があるそうです。若いころに読んでみてもいいですし、30代、40代になってから読んでみても、読みごたえはあるのではないでしょうか。ただし、カタカナの文章構成が、大変読みづらいです。無理して理解しながら読んでいこうとすると、ストーリーに入っていけないので、あらすじを先に知っておいてから、適当に読み進めていったら良いのではないでしょうか。もう、ホント読みにくいですから。。
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谷崎は手法にこだわる作家だなあ、と思うことがあります。「フウテン老人日記」はカナと漢字だけで描かれ、「鍵」は夫婦の日記形式です。でも読みにくいときもしばしば。やっぱり日本語ってちゃんと考えられて漢字とカタカナと平仮名なんだなあ、と思うのです。
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谷崎潤一郎、大好きです。うまく言えませんが、性描写が美しいです。
『鍵』は女性の足へのフェチシズムが描写されています。初めは読むことに抵抗がありましたが、今は大好きですね。人によって好き嫌いが分かれるかもしれませんが。
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「鍵」は夫婦の日記をお互いが盗み見るという形で物語が進んでいきます。お互いに見られているかも知れないと薄々感じつつも、顔をあわせるとそ知らぬ顔をしています。とてもよく練られた構成で、最後まで読み終わったときに思わず唸ってしまいます。一方「瘋癲老人日記」は一人の老人の日記です。構成としては一件「鍵」よりも単純ですが、最後に看護婦や医師の診察記録が掲げられ、本人の目線と、周りがそれをどう捉えていたかということが浮かび上がるようになっています。
どちらも、ある種異様な世界を描いてはいますが、不快感を感じることはなく、興味深く読むことが出来ます。
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秘密にする為にではなく、秘密を暴いてもらう為に鍵をかける。老いてなお衰えぬ性欲。所々、本文が全てカタカナで書かれているので、ちょっと読みにくいです。でも、読んでいくうちに慣れていくと思います。
谷崎らしい、色気のある怪しげな作品です。女性が身に纏う衣装の描写なんかも、お洒落です。
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http://coco6calcio.blog96.fc2.com/blog-entry-15.html
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老いてなおあいかわらずエロ&ドM趣味全開の谷崎先生。
「瘋癲老人日記」は70過ぎてからの作品だって言うからしびれるぜ
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谷崎の新潮文庫にしてはちょっと厚めで中編が2篇収録されています。
「鍵」は未完なのかな?
テーマはもちろん性癖。第三者ならほほ笑みながら読める感じです。
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ブランデーで妻をベロベロに酔わせて、
寝ているうちに身包みを剥いで裸体をポラで撮る教授に
「ヤー、ずいぶんな変態ですなあ」と感心しましたが、
好みの腕や手を持つ男子を酔わせてつぶして
袖を勝手に捲り上げて写メを撮りまくる自分も
大差ない変態ぶりだと気づき、ちょっとブルーになりました。
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谷崎さんは細雪、痴人の愛、春琴抄あたりが好きなのですがこれは微妙。
『鍵』は最初この夫婦二人がまわりくどいバカップルで娘と木村に呆れられている話かと思ったら、どんどん雲行きがあやしくなっていきます。
結論は4人とも馬鹿だった。ってか、黒幕は誰? という話。
寝とられ系の話が苦手な私にはきつかった。
奥さんは、谷崎さん好みのあるいは妄想の結晶した女性なのかもしれないけれど、まったく共感できない。エロスってそういうこととじゃないだろ、とどん引きです。
最初の方の、旦那への愛憎入り混じる描写が良かっただけになんだかなあ。ただの男好きじゃん、としか思えなかった。
ラストもよくわからない。結局なにがしたかったのか。救いもなければ答えもない。もやもやする話。
好色爺の話がハマらなかったのとカタカナ文で、瘋癲老人記は挫折。
いつか理解できるようになる日が来るのでしょうか。
とりあえず今の私にはちんぷんかんぷんだった一冊。
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「瘋癲老人日記」のお爺ちゃんが気持ち悪すぎて吹いた。以後、オススメの本を聞かれた際にはこれを薦めようと思う。