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紙の本
北ヨーロッパの小さな友達へ
2005/12/15 10:29
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チッチ、寒い日々が続いています。そちらの冬はきびしいでしょうね、こちらも急に冷え込みました。とうとう初雪のニュースが報道されました。街角の本屋さんではクリスマスが間近なので、素敵な絵本、童話がカラフルに陳列されています。その中で一際目立つ酒井駒子の絵による『赤い蝋燭と人魚』でした。
この童話の舞台は北の海に面した港町です。≪人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります。≫、アンデルセンの『人魚姫』はよ〜く知っているでしょう。だから、読み始めると、アンデルセンの生地デンマークの北の海を思い浮かべるかもしれません。
でも、この童話は小川未明という日本の作家が書いたのです。チッチより百十歳ぐらい年上かな、多分、チッチのお母さんが生まれた頃、亡くなった人なんです。日本海に面した新潟県高田(上越)市が故郷です。「日本のアンデルセン」と言われていますが、日本海の港町で寒さのきびしい土地なのです。
人魚のお母さんは優しい人間の住む世界に娘を置き去りにしました。可愛くなかったからではありません。とても可愛くて堪らなかったので、娘の幸せを祈って、蝋燭を商うお爺さんとお婆さんの家に神様のお導きと縁を感じた爺婆に引き取られるのです。 おとなしい、うつくしい娘に成長して蝋燭に絵を描き始めます。
≪娘は、赤い絵の具で、白い蝋燭に、魚や、貝や、または海草のようなものを、産まれつき誰にも習ったのではないが上手に描きました。お爺さんは、それを見るとびっくりいたしました。誰でも、その絵を見ると、蝋燭がほしくなるように、その絵には、不思議な力と美しさとがこもっていたのであります。≫、
そして、この一家は豊かになります。港町も繁盛します。みんな、みんな、豊かになったのです。赤い絵の具で描いた蝋燭を山のお宮さんに灯明した祈りの霊験なのでしょうか、その燃えさしの蝋燭を身に着けると海難事故もなくなりました。
灯明の下みんなは幸せでした。人魚のお母さんも人間の優しさに海の底から感謝したに違いありません。でも、何と人間は哀しい生きものなんでしょう。そんな幸せに耐え切れないのです。自ら不幸を招き寄せるのです。人魚は売られます。娘が真っ赤に塗った蝋燭が残されます。血の涙でしょうか、
≪真っ黒な、星も見えない、雨の降る晩に、波の上から、蝋燭の光が漂って、だんだん高く上って、山の上のお宮をさして、ちらちらと動いて行くのを見た者があります。≫
酒井駒子の絵は哀しいまでに美しい。僕は無意識に音読しながら読んでいました。未明の文が駒子の絵とコラボレーションして耳で聞き、絵で見ることで、絵本が豊饒な厚みのある舞台空間に変ずる体感があります。お母さんに読んで聞かせてもらいなさい。お母さんもきっとこの世界にハマって、「人魚の涙」を流すかもしれませんね。
千人印の歩行器
紙の本
儚い願いを
2012/08/19 20:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桔梗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒井駒子さんの美しい絵と 小川未明の儚くて悲しい物語が
見事に溶け合ってる絵本
人魚の母親は 人間のやさしさを信じて娘を託すのに
その想いを踏みにじって お金に目がくらみ娘を売り飛ばしてしまう老夫婦
愛しい娘の幸せを願っていた母親の 人間に対する怒りは当然のことだろう
『人間は、この世界の中で一番やさしいものだと聞いている』
人魚の母親の言葉が 虚しく響く
いちど手を付けたなら どうか捨て置いたりしないで
いちど心をつかんだなら どうか離したりしないで
そう願ってしまうけど
もう 人間は そんなやさしさを忘れてしまったんだろうか
紙の本
胸にしんしんと降り積もるような北の海の童話。酒井駒子さんの絵は、しみじみ素晴らしい。
2004/05/25 17:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
須賀敦子・文『こうちゃん』を読んで、酒井駒子さんの絵をもっと見てみたくなりました。それで、随分昔に読んだ記憶のある小川未明の童話「赤い蝋燭と人魚」に酒井さんが絵を寄せた本書を手にとって、読んでみました。
> から始まる小川未明の童話。
淡々と進んでいくなかに、北の海の寂しさと人魚の哀しみが惻々と心に響いてくる話でした。さり気なく幕を引くラストは、どこか怖いようなところもありました。
心をこめて蝋燭に絵を描いている娘の気持ちは、どんなだったでしょう? そして、そんな娘の姿をきっとどこからか見守っていたに違いない人魚の母親が、赤い蝋燭を目にした時の思いは、どんなだったでしょう?
ごうごうと海鳴りが聞こえてくる北の国の海辺の町。
月明かりに照らされたしずかな寂しい町。
その中で、心にぽっと火が灯るような蝋燭の光のゆらめき。
一心に蝋燭に絵を描く、異界の娘のどこまでも寂しい気持ち。
小川未明の童話のそうした話の風景を、そして水妖である人魚の哀しい気持ちを、酒井駒子さんはそっと、やさしく掌にすくいとって絵に表している、そんな気がしました。
暗く、静かな黒の中に、ほのかな明かりに照らされて浮かび上がる人魚の娘の哀しい表情。後ろ向きの背中に湛えられたさみしい気持ち。テーブルの上に散らばって横たえられた三本の赤い蝋燭。
幻想的で、怖いような寂しさを持った小川未明の童話を、人魚の母親の視点から描いていった酒井駒子さんの絵。心に染みとおる美しさと、味わいの深さがありました。
小川未明の童話については、ここ bk1 で、『小川未明童話集』(新潮文庫)に寄せた書評が実に読みごたえのあるものでした。ご一読いただければと思います。
紙の本
NEWコラボ!あの名作と、人気のイラストレーターが
2003/02/10 17:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真愛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの小川未明の名作「赤い蝋燭と人魚」と「よるくま」で有名な個性的な絵を描く酒井駒子のコラボ。何度読んでも良いあの作品が、こうして挿し絵が付く事によって、より強く心に張り付いてきます。
ある北国の身重の人魚が「自分の子だけは、優しいとされている「人間の世界」で暮らしてあげたい。こんな冷たい海の底ではなく。」そう思い、人魚はあるお宮の階段に子供を産みました。
其処に、海岸で蝋燭で生計を営む老夫婦が、「いつもこうして生活できるのは神様のおかげ。お参りにでも行ってこよう。」とおばあさんは出掛けました。その帰りです、あの人魚の産み落とした子供を見つけたのは。そして、おばあさんは「きっとお参りの帰りに子供のいない私たちにこうして気付かせるなんて、神様の志だ。」とおばあさんは、その子を連れて帰り、おじいさんと相談して育てる事にしました。しかしです。その子をよく見ると、腰から下が人ではありません。噂に聞いていた「人魚」と知りました。しかし、その子の愛くるしい目や、なんとも和やかな顔を見ていると、分け隔てなく育てる事にしました。
やがて成長するにつれ、誰もが目を奪われる程の美しい娘になりました。そして娘は「育ててくれたから、せめて」と、おじいさんの作る蝋燭に絵を描きたいと、申し出ました。「それなら」とおじいさんも承知すると、何とも素晴らしい絵を赤い絵の具で描きました。そして、その蝋燭はとても売れました。その蝋燭には、不思議な力があったのです。それをお宮で奉ると、どんな嵐でも船も乗り組み員も無事、帰る事ができたのです。
そんなある日、南の国の香具師がやってきて、大金と「人魚は昔から不吉なもの」と吹き込み、初めは渋っていた老夫婦も、お金に眩みその子を手放してしまいます。そんな事とも知らず、娘は連れて行かれました。その時、娘は絵を描く事も出来ず、2、3本真っ赤に塗ってその蝋燭を形見の様に置いて行きました・・・。
あまりにも人間の本性、生活の変わり方で失う「本当に大切な心」そういう事がリアルに書き出されている作品と思います。有名な作品なので、知っている方も多く、取り方も様々でしょう。しかし、私にはこの老夫婦の、娘と過ごした歳月より、目の前の大金に眩む、その心にとても悲しさを覚えました。そして、その子を幸せにしたくて人間へ託した人魚の想いも。
酒井駒子さんの絵が、とてもリアルにその状況、表情を書き出していると思います。とても昔書かれたお話と思えません。その個性的なタッチで表されている表現は見事と思います。
お子さまと読むには、使用語が昔のままなので多少難しさがあると思いますが、大人の方は是非、読んで頂きたいと思います。
「本当に大切なもの」見落としていませんか?
紙の本
童話
2023/12/31 16:26
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
海の中より美しいという人間世界です。人間の優しさを信じ子供を託した人魚だったのですが、物悲しいお話に美しい酒井駒子さんの絵があってる。
紙の本
大好きな一冊
2016/06/18 23:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わらび - この投稿者のレビュー一覧を見る
図書館でたまたま手にして、すっかり惚れ込んでしまいました。
これが小川未明さん、酒井駒子さんとの出会いでした。
ページをめくった瞬間に、ハッと息をのむ。
赤いろうそくと人形は、何種類か絵本が出ていますが
やはりこれがいちばん好きです。
紙の本
「記念」と書いて「かたみ」と読む
2016/01/31 22:34
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投稿者:師走 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この絵本を初めて読んだのは中学生の頃で、
小川未明という作家も知らずに題名と絵に惹かれて手に取りました。
酒井駒子さんの絵を知ったのもこの時で、以来お気に入りの画家さんです。
表紙の暗さから 明るい結末を期待していた訳ではないけれど、
絵本でこんなに怖いんだ・・・と思った記憶があります。
「人間はやさしい」と人魚、
見ず知らずの他人の言葉を信じ、娘を見ようともしない老夫婦・・・
娘はどれほどの思いで売られていったのか。
久し振りに読み返したんですが、「記念」のふりがなが「かたみ」となっているのを見て
胸が苦しくなりました。