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グロテスク みんなのレビュー

第31回泉鏡花文学賞 受賞作品

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みんなのレビュー238件

みんなの評価3.8

評価内訳

231 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

『リアルワールド』に続いて、桐野が描くのは女子高校生の世界。もちろん、大人の世界もたっぷりあるけどね。で、これをリアルと感じるかどうかで、読者の成熟度が分かるんじゃあないか、私はそう思うんだよね

2003/08/03 21:17

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに母親のところに帰って朝日新聞の日曜版を読んでいたら、読書欄に『グロテスク』が大きく取り上げられていて、今日はこの本を書くと予定していた私は「やられた」と思った。おいおい、桐野夏生を一番に扱うなんてことをやるなよな、アサヒメ、である。こうなったら、得意の外見から入るしかないじゃあないか。で、この本、カバーイラスト・章扉イラストは水口理恵子。特に、章扉がちょっと硬質なお色気があって、私は好きだ。出来るなら、イラストもカラーで見たかった。

ついでに書くと、この本を読まされた中三の長女は「この本、嫌いだ」という。あれ、面白いはずだぞ。だって、あんたの好きな私立の学校の話だし、ま、小説の方は慶応を思わせる小学校から大学までエスカレーターの名門校だけど、一応あんたも、中高一貫校に行ってるわけだし、と首をひねったものの、たしかに彼女の思いが分からないわけじゃあない。出てくる人間に、子どもでも分かる魅力的なキャラがいるかというと、決してそうではない。でも、ここに出てくる男女は、まさにあなたであり、私であり父である。現実は、笑うだけの面白さでは括れない。

全体は七章+最終章で、手記の形で描かれる。第一章は私が語る「子供想像図」。以下、ユリコの姉「裸子植物群」。ユリコの手記「生まれついての娼婦」。ユリコの姉「愛なき世界」。張の上申書「私のやった悪いこと」。ユリコの姉「発酵と腐敗」。佐藤和恵の日記「肉体地獄」。最終章、ユリコの姉「彼方の滝音」。

舞台は大きくは二つ。一つは今から22年前。ただし、ここで描かれる女子高生の姿は全く現在そのもので、回顧という形式を取っていなければ、過去と思う人はいないのではないだろうか。桐野には過去の時代を描く、という気はない。私はポーランド系スイス人の父と、日本人の母の間に生れた。父は吝嗇である。妹の名はユリコ、怪物的な美貌の持ち主で、小さい時から、誰の子だろうと騒がれ続けてきた。いつも周囲の目を惹く妹が煙たくてしょうがなかった。そんな家族の生活が崩れたのが、父親の事業の失敗である。日本での生活をあきらめた父は、家族と共にスイスの弟のところに帰ることを決める。しかし、両親との暮らしを望まぬ私は、名門校のQ女子高に受かったことで、独り日本に残る決心し、独り年金生活を送っている祖父と公団で過ごし始める。Q女子高内部のヒエラルキー、主流と傍流といった話が、私の視点で克明に描かれる。そこで私が出会った中等部組の天才のミツル、学校の中にある不文律に気付こうとしない佐藤和恵。子どもを名門校に入れた中流の親たちの背伸びし、絶望する姿がリアルだ。しかし、彼らの学校生活は、ユリコの突然の帰国とQ校の中等部への編入で崩れ去っていく。

もう一つの舞台が現代日本、東京である。私は、現在、東京のP区役所でアルバイトをしている。名前は最後まで明かされることはない。39歳。妹ほど美人ではないが、エキゾチックな顔立ちが人目を惹くらしく、他の部署の課長が顔を眺めに現れたりする。妹とは全く似ていない。二年前37歳の時、新宿の安アパートで殺されている。そして、先日、私の同級生の佐藤和恵が殺された。場所は渋谷の円山町のアパート。彼女は大手建設会社のシンクタンクで働くキャリアウーマンで、私と同じQ大卒。ユリコも和恵も、街娼をしていた。

視点は平田百合子、殺人者、佐藤和恵と移るが、そこにはいつも、ユリコとその姉がいる。彼らの言葉が明かす、自分と他人の評価のズレ。それが個人の思い込み、欺瞞をあぶりだしていく。ただし、この本はミステリではない。様々な視点による価値観、判断、ぶつかり合い、矛盾しあう言葉。東電OL殺人事件を思わせる事件が、核にあるけれど、やはり女性の手になると久間十義『ダブルフェイス』とは一味も二味も違った、一層説得力のあるものになっていく。

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紙の本

洞窟の壁画が語る夢

2005/04/29 15:56

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村静英 - この投稿者のレビュー一覧を見る

一つの事実を複数の人間が語る。
幾度も語られることで物語は展開する。
重く悲惨な事件をとりまく人々の本気の想いが、その生い立ちも含め、これでもかというくらいに濃く描かれる。
自分を中心に置いた、自分だけが清く正しく美しい独白の中に、どれほどの真実があるのだろうか。
実際にあった殺人事件がベースになっているらしく、“歪んだ現代社会の中の悲劇”と、無難に言えばそんなところか。
が、各々の一人称の告白は、一つの真実を探すには矛盾しすぎている。
まるで「羅生門」のように、言葉だけが空ろに回る。
人間はここまで自分を美化できるのだと、感心を超えて呆然となる。
果たして、本当の事だけを言った人は、いたのだろうか?
一番の嘘つきは誰なのか?
それとも、語られたたくさんの言葉は、それぞれにとって全て真実だったのか?
結果、彼らの身勝手な言葉の中に、事件の真相を見ることはできない。
誰もが正直な嘘つきなのだから。
人は誰も自分の聖域を持っていて、それを信じ守ることで、生は極上の娯楽になる。
犯罪や殺人さえも綺麗な言葉で正当化し、崇高な自己の世界に溺れていく。
人の業の深さの呪いのように。
たった一つ、判ること。
みんな、ただ、幸せになりたかったのだ。

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紙の本

なにが本当か

2008/02/22 23:12

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る

確かなことは、
二人の女性が売春相手に殺された、
ということで、
それ以外は、この話のなかでは、
はっきりいってどこまでなにが本当なのかは、確かではない。
どれも1人称の語りである。
主だった語り手は、
殺されたユリコの姉であり、
和恵の同級生でもある女性だが、
他の手記や日記に対して、
嘘ばかり、興味がない、と繰り返す。
しかし、しかしである。
彼女の言っていることもあやしいのだ。

なぜ、美しく、怪物的なユリコやミツルはカタカナ表記なのに、
和恵や百合雄は漢字表記なのか。
こまかいですが、そういうところまで気になりました。
東電OL殺人事件をそのままモデルとしてドキュメントした、
というより、すごく込み入った構成だと思います。
2段組ですが、あまりしんどさを感じませんでした。

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紙の本

桐野夏生の小説は読者を徹底的に支配する…

2004/05/09 16:59

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本作の登場人物は私、ユリコ、和恵、ミツルの4人が中心。
ユリコと和恵の2人は殺されるのだが、本作においては誰に殺されたのかなどの興味を持って読まれることを前提としていない。

女に生まれての容姿による人生の悲喜こもごも…

前半は私とユリコの姉妹間の確執が中心で興味深い。
特に、高校時代のエピソードは読者(とりわけ女性)にはリアルだと思う。
男性読者が読むと理解し辛い点もあるのだが、退廃的ではあるが、“女性の本音”だと思って割り切って読んだ。

やっぱり1番悲惨でその変貌振りが目立ってグロテスクなのは和恵であろう。
昼は一流企業のOLで晩は娼婦と言うモデルとなった「東電OL殺人事件」の主人公も和恵に当てはめることが出来る。
彼女の精神の分裂ぶりが後半の1番の読ませどころかな。

果たして娼婦に成り下がった登場人物たちは幸せであったのだろうか?
“努力”の象徴として勉学に励んで一流企業に就職した和恵の現実は儚すぎる。
女性の奥に潜む“真の孤独感”を描いてるとともに、先天的なもの(ユリコの象徴される)と後天的なもの(若い頃の和恵に象徴される)とのどちらを優先すべきであるかが不明瞭な“日本の社会のどうしようも出来ない歪み”がよく現れてると思う。
桐野さんの凄さはもちろん、小説として許される限りの脚色をほどこして読者を楽しませてくれる。

この作品はある意味“人生模索小説”である。
桐野さんは“読者の明日からの人生で壁にぶち当たった時や何か挫折しそうな時、この物語が何かの教訓となれば”と書かれたのであろう。
とっても重くて暗いけど、いつまでもどっぷりと読者の心に根ざす作品であると確信している。

トラキチのブックレビュー

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紙の本

誰か声を掛けて。あたしを誘ってください。お願いだから、あたしに優しい言葉をかけてください。綺麗だって言って。可愛いって言って。お茶でも飲まないかって囁いて。

2003/08/10 00:41

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「桐野夏生」の書く女達は、いつだって好きになれない。

嫌な女愚かな女醜い女。感情移入とは一番遠い所から、入っていくのが常のこと。この本「グロテスク」も例外ではない。いやむしろ、その度合いはいつもより激しい。誰もが誰もエゴが丸出しで浅ましい(それは女に限らないけれど)。それでも本から、気持ちが反らされることはない。そこには作者の「力」を感じる。とにかく強引なぐらいグイグイと惹き付けて読み進めさせる「力技」。そのせいだろうか、この本を読み終えた私はクタクタにくたびれていた。そしてさっばりとこの本から顔を上げ、毎日の暮らしに戻っていくのが難しかった。引きずられた。自分の立ち位置がグラグラとする。そんな本に出会ってしまうことが、私には時々あるのだ。

物語は「わたし」の語りで進められる。その湿った語り口は禍々しく、視線は意地悪く、どこか猟奇的な匂いさえする。江戸川乱歩の「人間椅子」や「芋虫」を遠くで思い出したりもした。

「わたし」には超人的な美貌を持つ妹「ユリコ」がいる。物語は「ユリコ」と「わたし」の同級生でエリートOL「和恵」が、中年の娼婦となって殺される。その謎を辿るという形で進んでいくけれど。「謎解き」が物語の主ではない。いつぞや週刊誌を賑わせた「東電OL殺人事件」がこの物語のベースになっていることはすぐに分かるが、おそらく、この物語は現実を大幅にリードしているのではなかろうか。そんな勢いと力に溢れている。

「ユリコの手記」「和恵の日記」「張(娼婦殺しの容疑者)の上申書」などを盛り込みながら、「ユリコ」「和恵」「張」そして「わたし」の姿を立体的にあぶり出していく。有り体な言葉を使うなら「心の闇」に迫っていくのだ。それぞれの心の底に巣くう、ぬぐい去れないコンプレックスを晒していくのだ。

常識やバランスを崩すほどの美貌の存在というものは、決して穏やかな日常など約束してはくれない。まるでそこだけ磁場が崩れるかのように、様々なことが起こっていく。妹に何かにつけ比較される「わたし」はいつしか戦うことを止め「悪意」で武装することを覚える。

「わたし」に限らず「ユリコ」に関わった人々が皆「不幸」になっていく。落ちぶれ見る影も無くなっていく。誰の心にも終わることのない、憎悪と混乱と不幸のスパイラルを描いていく。その「ユリコ」自身でさえも、自分の力に復讐されるように滅亡へと進んでいく。「ユリコ」とは不幸の象徴ではないか。と、私は物語の半ば過ぎまで思っていた。

しかし、物語が終わりに近づくにつれ、私の考えは変わっていった。ここに「不幸な出来事」など存在しないことに気が付いたからだ。そして、思い出しもした。「桐野夏生」の書く女達が、ある時点を境にいつも目覚めることに。それは彼女たちの奥底に眠る姿なのかもしれないし、思いも寄らない自分の姿かもしれない。とにかく、彼女たちは目覚めていく。後戻りはできないその場所から、大きく根を広げて飛び立つのだ。それは醜いアヒルの子が、白鳥になるのではない。空恐ろしい「怪物」への変身だ。とにもかくにも、目覚めてしまった彼女たちは絶対だ。嫌な女だろうと愚かだろうと醜くかろうと。私は言葉を挟めない。

物語の終盤。「和恵の日記(肉体地像)」には、とにかく引き込まれた。私は彼女のことは最後まで好きにはなれない。それでも彼女が、その痩せ過ぎてボロボロな体ひとつでつかみ取ろうとした世界を。世界を征服するということを、羨ましいとさえ思っている。彼女が世間という荒波を、全力で泳ぎきったということだけは、誰にも否定される事のない事実なのだから。

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2004/10/13 15:36

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2004/10/22 23:02

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2004/10/23 07:58

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