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全3巻があっという間でした。
もっと読みたいです。
http://blog.livedoor.jp/maikolo/archives/51030388.html
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徳川秀康に対するイメージが変わる作品。世で狸といわれる理由がわかった気がした。秀吉が死に、待ちに待った天下を取るチャンスをネチネチといやらしく取りに来たという印象がある。関ヶ原の戦いは家康側が楽に勝ったのだと思っていたが、かなりの接戦で会ったことは初めて知った。
自分としては石田三成にかなり共感できるところがあった。あまりに観念的で、物事に対して敏感すぎ、利ではなく義という物差しでしか考えられない。そのため、自分としては正しいことをやっているつもりなのであるが、融通が利かなく、横柄者として多くの人に恨みを買う。事務的な能力は長けているけれども、物事を好き嫌いで考えてしまうことが多く、秀吉の人たらしの才能がなく、信長のように理詰めで考えたり、辛抱強く機を待ったりすることができない。反面、義に篤いということから、自分の云ったことは必ず実行する律儀で信用できる人物でもあるため、彼を好いている人物には非常に信頼されている。実際に大義があるのは三成側であるが、上のような性格が災いし、豊臣家に対して恩義があるものまでも、徳川側につき負けてしまう。それでも家康軍以上の軍勢を揃えるが、役職が低いことから、自軍に対して強く命令することができず、戦う前からかなりの軍が戦意無し、または家康につく気でいるという状態になってしまう。最も期待していた毛利家も最後まで戦況を傍観し、奮戦したのは三成の親友であった大谷吉継位であった。そして小早川秀秋の裏切りをきっかけとして石田側は壊滅し、敗北する。捕まった三成は敗軍の将としての礼儀も受けられず、見世物にされた上で斬首される。負けてしまった以上悪は三成であり、「勝てば官軍、負ければ賊軍」が良くあてはまる例である。歴史の例で良くあるように、負けた方の首領というのは戦争の責任があるように、今回の戦争の諸悪の根源として殺される。戊辰戦争が終わった後の近藤勇のようなものだ。
それでも三成の参謀として活躍した島左近は英雄的な扱いをされたらしい。島左近は石田三成の性質を良く見抜いており、その欠点を指摘し諫めている。それでも三成がそれを改めようとしないことをお見通しで、それを苦く思いながらも決して裏切ろうとしない。このようなところに強く好感が持てた。
池田輝政、加藤清正、福島正則等、名前が知られている名将に対する印象が変わる。彼らは武断派として家康側の先鋒となり、文治派の首領の石田光成を討つが、どうしても家康に好いように利用されたとしか思えない。確かに武勇はあったかもしれないが、大局を見る能力がなく、所詮は有能な駒でしかない存在である。
全体として石田三成についての部分は暗く、後半はほとんど家康についての記述で、これからは自分の天下だという野望に満ちている。この作品で最も強く感じたのは豊臣秀吉の凄さである。彼自身農民の出で、身分は非常に低いが、天下の実権を握るのに成功してる。しかし三成は豊臣家の天下を維持するのに失敗する。確かに秀吉の後期は無駄に朝鮮出兵等をして費用がかさみ、民の生活が逼迫していたという豊臣天下に対して嫌気がさしていたという背景がある。ただ、何よりもこの二人の大きな違いは、人心掌握術であると思う。三成は正しいことを主張しているが、他人の心をつかむ術を知らなかった。いくら正しいことを言っても、人は理屈だけでなく感情で動くこともあるのでそれを考慮しなければならないと思った。
司馬遼太郎の小説を読んで良いことは、以上のように何かしらの教訓を引き出すことができるところであると思う。
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最終巻だけど淡々として盛り上がりに今ひとつ欠けるなあ。どっちかというと群像劇になってて、共感を寄せる相手が絞りきれなかったのかも。主人公という意味では家康よりもむしろ光成寄りに描かれています。内応とか裏切りとかいろいろあった戦いなのでついつい「もしも…?」を考えてしまいますね。秀吉の中国攻めではあんなに華々しく活躍した安国寺恵瓊がこんな末路を辿ることになるとはねえ。
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西軍それぞれの最期を読みたくなくて幾度と無く中断しましたが、やっと読めました。
想像していたよりも淡々と全てが進み、少し呆気なかったです。
同じ司馬遼太郎作品『夏草の賊』にある戸次川の戦いで戦死した長曽我部信親のように壮絶に描かれるのかと思いきや案外そうでもありませんでした。
家康の内部工作で東軍が勝った以上、それは仕方のない事ですが。
しかし大谷刑部吉継の最期は胸が痛かったです。
そして石田三成の人望の無さに同情を覚えてしまうのは致し方ないこと。
戦で死に花を咲かせる、の意味が少しながら解った気がします。
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圧勝
東軍のそれで終わるかと思いきや、意外にもそう簡単に戦運は傾かなかったようだ。
「戦いとは、始まる前から決まっている」とは「新史太閤記」の秀吉の言葉であったか、家康においても関ヶ原の合戦に向けて智謀策謀を繰り広げた。三成とはその差が勝敗を喫したのだろうし、作中でも大きく描かれていた。
十万余軍を動員した天下分け目の合戦は、約6時間ほどで決着をつけたらしく、当著においても上中下巻合わせて1500頁のうち、関ヶ原の合戦部分は僅か100頁余りである。それはこの合戦がどのような性質を帯びているかを見事に表しているし、それまでのあらゆる智謀、策謀、思惑がその100頁の間にぶつかり弾け飛び、それが後の300年を築き上げると考えれば、これほどまでに筆舌に尽くし難いことはない。
その100頁の文章の中で、光を浴びていたのは、敗軍の将たちであった。特に、大谷吉継、島左近の最期の件は目頭が熱くなる。
最後も、それまでにさんざん語ってきた義と利から、合戦を綺麗に締めくくっていた。いや、この締め方は司馬遼太郎の長編小説の中でも随一だと思う。
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上・中と読み進めてきてついに完結。ずっと家康の狡猾さと入念な寝返り工作から圧倒的に家康有利で進むかと考えていたが、実際の戦いとなると、紙一重の状態だったことが、非常に興味深かった。
また、それを左右したのが全く無能だった小早川秀秋というのも面白い。やはり男は立場や権威というものに弱いのか。
長編だったが、あっという間に読んでしまった。
家康の今後の作品も読んでみたい。
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本巻ではいよいよ関ヶ原の戦いそのものが描かれ、徳川家康率いる東軍が石田三成率いる西軍を破り終結する。
家康の勝因及び三成の敗因は、それこそ挙げればキリがないが、家康は合理主義者、三成は理想主義者という点に有ると私は思う。司馬氏はそう描いているし、一昨年前に読了した「天地人(火坂雅志著)」でも同様だった。それは、家康の海千山千、百戦錬磨の老獪さ及び三成の若さによる経験不足に由来するかも知れないが。
とにかく、この関ヶ原の戦いを機に260年に及ぶ政権の基礎を作った家康は勝利者であり、現代に生きる我々が学ぶことは多い。もちろん、敗者の三成を反面教師として学ぶことも出来る。
この三成を象徴的に表現したのが以下の発言である。
・「吉川広家は羽柴の姓まで頂戴しているほどの鴻恩ある男だ。いまこそ故太閤殿下へ忠を致すべきだろう」
戦術家にとって飯よりも欲しいのは少しでも多くの現実と事実であり、それ以外にはなかった。既に銃声の聞こえているこの戦場で「べきだろう」という観念論など、むしろ有害であった。三成の現実を見る目は、その観念によって常にゆがんだ像しかみえないのではないか。
片や、以下の家康の発言は合理主義そのものである。
・「戦いに勝ち、みな飢えが迫っている。このような時に慌てて生米を食い、腹を痛めたりするものだ。されば米をよくよく水に浸しておき、戌(午後八時)になってから食せよ。そのように諸大名たちにも伝えよ」
私も、理想主義(観念論)ではなく、合理主義(唯物論)をもって生きていきたいものだ。
面白かったのは本作品の締め方。黒田如水という老武将に担当させたのである。更にこれは予想通りであるが、三成の女性である初芽と絡ませて。黒田如水は「新史太閤記(司馬遼太郎著)」にも秀吉の名参謀として登場しており、司馬氏お気に入りなのかも知れない。
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日本中から戦国のオールスターキャスト勢揃い。
群像劇風になっているので、
歴史入門というよりは、
歴史好きが読んで、面白い、というタイプの小説。
三成、家康という両雄が、あれだけ知力、労力を尽くして、
結局のところ、土壇場でバカ殿小早川秀秋が勝敗を決めてしまう、という
のも、歴史の皮肉としか言いようがない
(小早川秀秋が、東軍に切り込んでいれば、勝利は
西軍のものだった)
一番面白かったのは、島左近が戦死し、大勢が決まった後の戦場で、
唯一、沈黙を守っていた一群が、クローズアップされる所。
ご存知、鬼の島津軍であるが、
はっきりいって、三成より不器用なんじゃないかという集団である。
終始、なんの定見も無かった、と書かれてしまっているが、
結局、合戦には一切参加せず(かといって裏切るわけでもなく)
最終局面というか、すでに大勢が決まった後で、
「敵中突破」という、常識外れの蛮勇を敢行。ほぼ全滅しながらも、
その存在を強烈に印象付けて、九州に帰っていく。
マジで、何しに来たんだろう?という感じである。
関ヶ原は、最後の、この敵中突破の場で、幕となる。
三成の人物像については、実際のところは分からない。
人望が無かったのは確かだろうが
(一方で、西国をまとめ上げる戦略的な力量は持っていたが)、
豊臣家に忠節を誓っていたのか、
実は天下をねらっていたのか、というのは、
今となっては、分からないことである。
勝った所で、三成の力量で、黒田如水や、伊達正宗が、
治まったとも思えず、下手すれば、
戦国時代に逆戻りだと思うが。
ともあれ、三成が最もかっこいいのは、東軍に捕縛された後である。
ここら辺は、内面的なことでなく、外面的なことなので、
事実に近いのだろうが、
家康の命で、城門の前に座らされ、さらし者にされるが、
それを馬鹿にしに来た小早川秀秋を相手に、
弁舌のみで喝破して、腰を抜かさせるという、
三成特有のすごさを見せている。
ほとんど、歌舞伎の世界である。
島左近の「かかれ、かかれ」の声が、
戦後も耳について、離れなかった、という東軍の談話もすごい。
戦後、家康に裏切られた人物は多いが
(加藤清正とか、福島正則とか)
どうやら吉川広家が、裏切られ者の、第1号らしい。
戦後、すぐに裏切られている。
関ヶ原を勝利に導き、毛利輝元を大阪城から騙して、
出すという働きをしたにも関わらず、
毛利家お取りつぶしを、家康が言いだす。
なんとかとりなして、毛利家の領地をほとんど没収、
に譲歩してもらったらしい。
西軍にあって、吉川広家ほど、東軍を助けた人物もいないのに、
無茶な話である。
しかし、吉川広家は、かつての両川の一人、吉川元春の息子、
両川のもう一人、小早川隆景の後継ぎは、
養子の小早川秀秋(秀吉の甥)
総大将に、毛利輝元が担がれているにも関わらず、
両川が二人とも裏切っているのだから、
毛利���の内部事情も、無茶苦茶である。
毛利といえば、安国寺恵瓊の情けなさも、印象的だった。
信長の死と、秀吉の台頭を予言した、
卓見の外交僧だったはずなのに…。
それにしても、
構図としては、豊臣家の内部分裂を、家康が利用しただけで、
加藤清正や福島正則も、自分たちこそが「義」だと思って
(豊臣家を守るために)、
戦ってるんだが、なんか、そういうことが分かってないレビューが
多くて気持ち悪い。「滅びの美学」なんて、司馬遼太郎が、
再三嫌悪感を示している思想なんだが…。
三成の偉い所は「勝つために戦っていた」ところであろう
(「滅びるため」ではなく)、
唯一、明らかに行動で義を見せたのは、島津義弘の夜襲案をしりぞけた
ところくらいで。
天下を決める戦いなのだから、正々堂々、
正面から決戦する、と言い切った
(不利になることを覚悟しながら、潔さを選んでいる所は)。
そもそも、東軍の鳥居元忠だって、明らかに忠義のために捨て石となって
玉砕している。西軍だけが義にあつかったわけではない。
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日本国内における古今最大の戦闘となったこの天下分け目の決戦の起因から終結までを克明に描いている。
家康・三成の権謀の渦中で命運を賭した戦国諸雄の人間像を浮彫りになる。
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ついに関ヶ原の合戦が開戦した。ようやく味方の裏切りに信用した家康は江戸からのぼり始まった。勝ち戦と睨んできたはずの合戦だが、東軍の1/3程度の兵力の西軍に苦戦した。勝利は西軍の手に見えたところで小早川秀秋の家康の手による裏切りで完全に逆転した。
そこからの西軍の死力を尽くした義、男の戦いには心が揺さぶれた!!!
特には大谷吉継勢、宇喜多勢の猛戦ぶりが。
西軍は義で満ち溢れていた。真田昌幸、三成・吉継につく兵たちの働き、吉継の首を決して家康に伝えなかった五助。秀頼のことを思い続けて、関ヶ原に敗戦してまでも切腹せずに落ち逃げた三成、その三成をかくまった近江領の村人たち。
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後半は三成好きすぎるあまり辛かったけど、一番泣けたのは刑部の最期でした!一番萌えたのは、左近の負傷でした!読んで良かったです!!
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全体的に。
巻をますごとにどんどん三成……、お前……。と言う気持ちになりました。
それでも一緒に戦って死のうと思ってくれる人もいるわけで、人との関係は妙なもんだなと思いました。
石田三成と大谷吉継の関係について、有名な茶室の事件だけではない、この時代には珍しい友人という倫理観…、のような話があり興味深かった。
なんというか西軍にしろ東軍にしろ総大将よりも、その側近がかっこいいですね、という馬鹿な感想。
島左近が一番好きです。
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有名な話で明治時代にドイツの軍人が関ヶ原の
東西の布陣をみて「絶対、西軍が勝ち!」といったけど
東軍=家康が勝利した事実にビックリした逸話が
あります。
この事が言いたいんでしょうね。
小説で読むとどう考えても家康はピンチだし
勝つわけないけど、西軍の武将は三成になびかないし
裏切られる。それは三成が相手の立場や気持ちを
理解できないで自分都合の論理で独りよがりで
進めてしますからです。だから現実がついてこない。
これを小説では単純に人が利で動くが三成は正義で
物事を説得する違いにしか表現されていないが
もっと深い話だと思う。
でも3巻はちょっと冗長だよね。
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小説でありながら、1つの歴史書として出来上がっている、司馬遼太郎の魅力が詰まった一冊。
主人公は石田三成だけど、西軍東軍どちらについた大名にはそれぞれ名分やドラマがあって、それにもきちんと触れられている。
戦国時代って面白いなーと思える。
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歴史小説は史実を知っているだけに、最後が悲しくなる。
三成・左近の思いが最後まで届かなかったことが悔しい。