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戦争における「人殺し」の心理学 みんなのレビュー
- デーヴ・グロスマン (著), 安原 和見 (訳)
- 税込価格:1,650円(15pt)
- 出版社:筑摩書房
- 発行年月:2004.5
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文庫
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紙の本
兵士は人を殺せない
2010/12/07 09:36
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は人が人を殺す「殺人」について、色々な研究結果や実際の行為から考察している。とかく殺人が合法とされる「戦争状態の中での殺人行為」とはどのような事かに特化して、語られている。だが決して殺伐とした内容ではなく殺人を全く否定し、戦争中でも実は否定されているのだと、そう紐解いていくのだ。「戦争の実際」を客観的に冷静に分析するのに、非常に興味深い内容になっている。本書著者のデーグ・グロスマンは下士官から将校へと昇進し、今では中佐へと登りつめた人物である。しかもレンジャー隊員や落下傘部隊の資格も持っており、ばりっばりの最前線実戦部隊を経験した人物。さらには心理学者や歴史学者の肩書きさえ持っているという。そういう人間の言葉は重く、この上ない説得力がある。
戦争とは愚かな物だ。おそらく人類が生み出した、最も愚かな行為である。人が人に最もしてはいけない事は、殺す事。だから人は人を殺すことを忌避する。それは今年行われた裁判員裁判で、初の死刑判決を下した民間裁判員が、後のインタビューで心労と苦悩を重ね涙さえ毀れたと吐露した事からも良く分かる。相手が犯罪者で憎むべき犯罪を起こしていたとしても、その命を間接的にさえ奪う事は辛いのである。その殺人行為が、一種の外交として認められているのが戦争である。そしてそこで殺人を職業にしているのが、兵士なのだ。さらに戦争では、殺しあう兵士同士に憎しみなど無い。大体兵士は、戦争など起こさない。戦争を起こすのは上層部であって、一介の兵士はただ命令に従って相手を殺すのだ。昨日まで親友だった二人が、国境を違えたというだけで今日は殺しあうかもしれない。憎しみも無い相手に銃を向け殺しあっているなんて、あまりにバカバカしい事だ。
ところが本書は冒頭から衝撃的な一言を切り出す。「兵士は、相手を殺せない」と言うのだ。何と8割の兵士が、相手に銃口さえ向けられないという。一体それはどういう事なのか。兵士もやはり一般の市民と同様、人は殺したくないし殺せない。銃を発砲する際も、威嚇行為程度にしか使用していない兵士がほとんどだという。本当だろうか。しかし実際には、何百万人もの人々が戦争で殺されているではないか。その真意は、一体どういう事なのか。
戦争における殺人、その時の兵士の心理を実際の戦闘からも科学的にも考察し、色々な殺人行為へと展開していく。殺人行為という、絶対に行ってはいけない事。それが許される戦争の実際を研究し考察することで、殺人行為を多角的多面的に見つめ科学的にも考察する。その結果、戦争も殺人行為も否定していく。非常に説得力のある作品、というより文献である。多少小難しい文章が続くので読みづらいかもしれないが、目を覆いたくなるようなひどい描写はないのでぜひ誰にでも読んでもらいたい一冊。そして戦争とはなんと愚かなことだろうと、思い至れば何よりである。
紙の本
人を殺すとはどういうことか
2004/05/16 11:11
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:S.Titilat.M - この投稿者のレビュー一覧を見る
本著は米国陸・空軍士官学校にて教科書として使用されているものです。
殺人はいけないこと、普通の人なら抵抗を抱くその行為を命じられる職業、それが軍人です。
しかし、軍人といえどもやはり人間、われわれと同じように人を殺すことを好き好んでやっているわけではありません。
人を殺すとは、命を奪うとはどういうことなのか。殺人と性行動のつながりとは。人を殺した人はどういう思いになるのか、どんなストレスを受けるのか。
距離によってその思いは変わるのか、権威者からの命令・集団での殺人とは人を殺すことにどのような影響を与えるのか。
動物の命を自ら奪うことなく、食料を手に入れられるようになった現代は命を奪う行為をどのように変化させたか。
実際に従軍し、人を殺した兵士、殺さなかった兵士から体験を聞きまとめ上げられた、人間の本能に根ざす衝動と重圧を学ぶ教科書です。
万人に薦められる書籍ではありませんが、自衛官や警察官は必読です。
紙の本
人間が戦い、殺し合うのはなぜか
2021/10/08 14:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は本来、人を殺すことに強烈な抵抗があるのだそうだ。
にもかかわらず、人間が戦い、殺し合うのはなぜか。兵士として戦場に送り出すにはどうするのか。
元米軍将校で、心理学者・歴史学者でもある著者がインタビューなどを基にまとめた研究書だ。
日常生活で人を一人殺せば殺人犯として逮捕されるのに、戦場では兵士が殺し合い、それが英雄となるのは、冷静に考えればとてもおかしなことである。
しかし、私たちはその理由を理解しようともしていないのではないか。この本を読んで、それに気付かされた。
著者は、第二次世界大戦までは15~20%の兵士しか敵に発砲しなかったのに、ベトナム戦争では9割以上の人が発砲するようになっていたことに触れ、人を殺すことに本能的な抵抗がある若者が条件付けなどの訓練が施されていたことなどを紹介している。
そして、殺人と戦闘による罪悪感で帰還後に苦しむ兵士たちの問題を社会が直視せず、兵士の問題として兵士たちに任せていることに、警鐘を鳴らす。
なぜ殺し合うのか。戦場や兵士のリアルを直視し、想像しなくては、いつまでたってもこの世界から残虐行為や陰惨な事件がなくならないと。
人間の本質、そしてそれを見ようとしない社会の現実を突き付けられ、胸が苦しくなった。
紙の本
強烈。。考えなくては。
2015/10/25 20:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ottoさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
犯罪でないにしろ人間が同種の人間を殺すことについて、これほど考えた人が日本にいるだろうか。
相手の顔が見えるぐらいの距離以下で、発砲したのは、第二次大戦で15から20%、しかも頭上を狙ったものが大半だった。それが朝鮮戦争で55%、ベトナム戦争で95%になる。そこには、軍隊が兵錬で、考えられないこと(殺せ!)を考えること、考えられないことをすることにパブロフの犬のように条件づけをおこない。そして考えられないことを否認(正当化)することが行われている。
軍隊での兵錬が、普通の社会でテレビ、映画、ゲームの中で若者に対して行われていると忠告されている。そのことに社会は気づいていないと。