紙の本
ふるさとを恋う
2008/11/03 22:38
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
津軽 太宰治 新潮文庫
作者36歳、ときは敗戦前年の昭和19年、作者が入水心中で命を絶ったのは、昭和23年になります。大きな戦争のさなかに生まれ故郷津軽を3週間旅した記録です。青森県が舞台なので、以前読んだ「飢餓海峡」水上勉著が最初に思い浮かびました。ただこちらの舞台は下北半島になると思います。次に同じ昭和19年に放浪していた山下清画伯、戦後憲法の英文翻訳に立ち会った白洲次郎氏、同時期のできごとやらが頭の中で重なりました。それから吉幾三さんの歌もひらめきました。
戦争中とは思えないような内容の旅行記です。戦争があったのは、都市部だけで、日本の田舎ではいつもながらの生活が続いていたという印象を受けました。
文章が落ち着いていて読みやすい。心が穏やかになります。旅に出たくもなります。わたしも3週間仕事を休んで旅をしたいけれどそれはできない望みです。日本の自然もまんざらではないと見直しました。小説創作の基本は日記を書くことだと再確認もしました。
54ページ、朝の魚売り。わたしが就学前に住んでいた有明海に浮かぶ熊本県の島での生活がよみがえりました。津軽の歴史に関する記述はとてもおもしろい。力士の名前が頭に浮かんできます。地理解説というよりも歴史書です。作者は悩みがない人という印象をもちました。何度も自殺を試みた人だなんて考えられません。
育ての親「たけ」について、人生はタイミングで決まっていくと感じました。理屈はあとからくっついてくるものです。たけに対する作者の想いはとても深い。「東京タワー」の作者リリー・フランキー氏もこの本を読んだのでしょう。
結びの言葉はさみしい。
紙の本
私の中ではこの作品イコールたけさんです
2019/02/04 09:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
何十年ぶりに読み返してみました。女中のたけさんの印象が強烈に残っていたので、もっと物語のなかにたけさんが登場すると思っていたのですが、想像よりも登場する場面が少なかったのですが、私の中ではこの作品イコールたけさんです、いつまでも
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
太宰治は終戦の前年、風土記執筆の依頼を受けて三週間故郷を旅した。道中、東京から来る小説家を迎える人々に対する恥ずかしい態度が、共感が持てる。
最後、育ての親ともいえる女中たけに会うというこの度の目的が明かされ、それまでの旅を見る目が変わった。
投稿元:
レビューを見る
普通の、小説家ではない太宰治さんの文章といった感じがしました。卵と味噌の料理など、青森県民にとっては、「分かる分かる」と思える部分が多いのではないでしょうか?
投稿元:
レビューを見る
よし、私も、蟹田で蟹を食べて、竜飛岬に行って、この本のとおりに太宰の旅をなぞって、金木の斜陽館にも行っちゃうもんねと、津軽に行くのがささやかな今の夢でありんす。
ラストがすごくいい。ああいう鮮やかな言葉で終わらせるところは、まさに太宰の真骨頂という感じ。
投稿元:
レビューを見る
『津軽』は、もう少し太宰作品を読んでから手をつけるべきだったなって少しだけ後悔。著作を読み尽くすほどの好きな作家になっていたら、もっと楽しく読めたんだろうな。生憎あたしはまだ太宰作品初心者だから(涙)
津軽の歴史についてかかれてあったことはほぼ忘れちゃったけど、でも新鮮でなかなか面白かった。
終わり方が良かったと思う!
投稿元:
レビューを見る
太宰治が故郷について書いたもの。最初はなんだか退屈だったが、次第に作者の内面に迫っていって興味深い。これまでの鬱屈したイメージとは一味違って生身の作者に近づいたような印象。
投稿元:
レビューを見る
津軽の地理と、雪国の気候にめっきり明るくないので、太宰さんの読んでて初めて苦しい!と思った作品。地理と歴史の描写以外は、どれも楽しく嬉しく読めたんだけどなぁ。でもラストがやっぱり太宰だ!という感じで、爽やかで感動したので★5つです。なんだかんだ言いましたが、これよんで津軽に行きたくなった。今でもこの景色は残ってるのかなぁ。
投稿元:
レビューを見る
太宰治が故郷の青森を旅する話。津軽にまつわる歴史や、友人・親戚、そして自分を育ててくれた、たけとの再会など。
今まで、太宰治=暗い・・・というイメージを持っていた。が、この本ではそういった暗さはあまりなく、太宰の生き生きとした感じが伝わってきた。こんな明るい一面もあったのかと、新鮮な驚きを与えてくれた一冊。それにしても、文中に「国防上重要なため、これ以上の記述を控える」っていうのが時代を感じさせる。(2004/2月頃読了)
投稿元:
レビューを見る
2006. 10月頃
つらつらつらつらと独りよがりのお国自慢か。そんなものは本当の太宰狂いか青森県民しか興味はないのだ。しかし最後の最後でまさかまさかの急展開。僕は不覚にもちょっと泣いてしまった。
投稿元:
レビューを見る
太宰作品と青森の津軽地方についてある程度の知識を得てから読むと良いかも。
前半は地理的描写が多く、なかなか頭にイメージが湧かなかった。ページが進むにつれて内面描写へと移行していく。
最後の育ての親に会いに行く場面は胸に来た。
太宰の思考回路は、卑屈で気弱でいやらしく見える。しかし、それは確実に自分をも映す鏡である。
投稿元:
レビューを見る
「金木は、私の生れた町である。津軽平野のほぼ中央に位し、人口五、六千の、これという特徴もないが、どこやら都会ふうにちょっと気取った町である。善く言えば、水のように淡泊であり、悪く言えば、底の浅い見栄坊の町という事になっているようである。」
斜陽館は 津軽の大地主で太宰治の父、津島源右衛門が建築した入母屋造りの建物で、明治40年6月に落成。米蔵にいたるまで日本三大美林のヒバを使い、階下11室278坪、2階8室116坪、付属建物や泉水を配した庭園など合わせて宅地約680坪の豪邸。
投稿元:
レビューを見る
実はあまり太宰が好きではないのだけれど、これは好きで楽しく読める。ただ時折彼が暗い、どうしようもないものを見つめているところがあって、そこが今はまともに読めない。だましていないわけはない。最初からそのつもりでいるのがはらただしい。
投稿元:
レビューを見る
安心して穏やかな気持ちで読める。
若い頃って、両親とか故郷とか、そういう生まれついてのものを格好悪く思ってしまいがちやね。
終盤、言葉が上手く出てこないほど感動。
・・・にしても「貴公子」だの「羽織」だのにまで注釈をつけたのは誰や!?
そんなんやから注釈だけで40Pも使う羽目になるねん!
読みにくーてしゃーなかったわ!
08.10.14
投稿元:
レビューを見る
津軽を読む際には青森や津軽の地理を頭に入れたほうが良いとよく聞きますが僕はそのあたり頭に入っているのですんなり読むことができました。1読目はただの紀行文かと思ったが、2読するにつれたけとの再会シーンがあっさりと描かれていることに妙に感動というかなんというか、読めば読むほどです。太宰文学の中では一番大衆に支持されやすいと思ふ。津軽人の僕にとってはたまらない一冊。