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「美しい」ミステリというものが存在するとしたらまさにこの本です。伏線が綺麗に繋がっていく様子は芸術ものでした。
2005/01/07 11:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本格ミステリというと何となく騙されまいとして肩に力を入れて読んでしまう事が多いのですがこの本はそんな肩の力を入れさせないうちに物語の中へと引き込んでいく力がありました。
物語の展開に強引さがないので知らず知らずに著者に誘導されるように話の中へ入れるのです。
ミステリって何だか小難しいし、あまり好きじゃないと言う人でもこの本は本格であり完成度の高さも一級品でありながら敷居の高くない本です。
まず事件が起きるまでの序章とも言える部分が実に自然なんですよね。
複雑といえば複雑な人間関係を一読で頭の中ですぐにインプットできます。
また彫刻家の川島伊作が病死したことで悲しみにくれる遺族たちの様子を前面に押し出しておいてから伊作の遺作、娘がモデルになった「母子像」の首切り事件が勃発するので事件の発生も突拍子ではありません。
そして一体誰が何の目的で?と綸太郎達が色々と調べていく中で娘の江知佳が行方不明になっていることが発覚します。
そして中盤での大きな事件の発生。
二転三転する事件の真相は綸太郎と一緒に偽の情報に踊らされてしまう事もあるのですが実はこの騙され踊らされる部分も計算の上なんですよね。
犯人とニアミスをしながらもほんのちょっとした誤解や行き違いで悲劇を招く。
また名探偵と言えども警察ではない綸太郎が手を出せない部分や事件を回避できなかった、また救えなかった事を後悔する場面も最近のサクサクと謎解きをする名探偵に比べると派手さはないのですが好感度がありました。
また事件の要となる16年前のある1つの誤解も冒頭でサラリと出している部分もお見事です。
たった一言の同じ言葉でも両者の間で誤解を招き、悲劇を生んだ過去と、解けた誤解が招いた今回の事件。
最初から最後まで全く無駄がなく、伏線が見事に張られ、その伏線が綺麗に繋がっていく様子はまさに芸術でした。
傑作と言いますか、「美しい」ミステリというものが存在するとしたらまさにこの本ですね。
ミステリ初心者にもオススメできる1冊です。
非常に地味ですが優れた本格ミステリです。
2021/01/10 01:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
トリック、推理は一級品の本格ミステリの傑作でした。石膏像の首が持ち去られた謎が主たる謎なわけですが、そこから導き出される大胆で華麗な真相は、盲点をついた衝撃的なものでした。前半は、芸術の話など専門的な描写が多く、説明をそこまで詳しくする必要があるか少々疑問でしたが、後半、謎が解き明かされていく過程は面白かったです。よく練られた大胆なトリックでした。
この作品を今年度のベスト3にあげる人がいた。わからないではない。推理にはいい所がある。でもお話のほうは本格推理の悪いところが一杯、うーむ
2004/12/03 20:11
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
得意の脱線だけれど、この話に出てくるジョージ・シーガルの作品を初めて見たときのことを書いてしまおう。それはbunkamuraでの展覧会だった。初期のペインティングは、いまどきの学生作品風で感動なし。さっさと帰ろうとしたところで見たのが歯科医師らしい人の立像。息を呑むとはまさにその時の私。石膏だから存在感があるのは当然としても、なんという孤独感だろう。そこに一緒に飾られていたパステルのドローイング、これがまた抜群のセンス。そして1970年代の、埋め込まれたようなレリーフが続く。これは技巧で勝負みたいで感動なし。
そのコーナーを抜けると全身像が並ぶ。階段に座った青年や老人。街角の群像。吊革につかまる人びと。1995年頃の大きなドローイングが何枚もあり、これがまた実にいい。石膏は技法のせいか皆目を閉じているが、ドローイングの人物は見開いた目で私を見つめる。大胆で力強いタッチ、これが70歳の時の作品かと思わず首をひねりたくなるほど。彼が自分で企画しながら、自分の死で見ることなく終った日本で初の回顧展。私にとって今年(2001年)のベスト。
ということになる。ここで触れた「石膏は技法のせいか皆目を閉じている」、これが小説にも出てくるので、読んで欲しい。そしてできればシーガルの作品を見て欲しい。法月がこの小説を書いた動機の一つに、絶対にシーガル作品との出会いがある、と確信するはずだ。しかし、カバーデザインは、結構オドロオドロしい。デザイン:小林昭彦+玉村絵夢(moon)、PHOTO:(c)CARL JOHAN RONN/Johner/amana images。
さて本題。目次を見ると、英語苦手人間は腰抜かすぞ、第一部 FraKctured、第二部 Happy with What You Have to Be Happy with、第三部 Dangerous Curves、インタルード Fact of Life:Intro、第四部 Fact of Life、第五部 Level Five、第六部 Eyes Wide Open、エピローグ Coda:I Have a Dreamである。参ったか。
高校の後輩で写真家の田代周平が銀座で開く写真展に招かれた法月綸太郎に声をかけてきた美女というのが川島江知佳、あとで知って驚くのだけれど、綸太郎の知り合いで翻訳家の川島敦志の姪である。彼女は彫刻家の川島伊作と妻の律子の間に出来た一人娘だが、律子は離婚して現在は歯科医である各務順一と再婚している。
そして川島伊作は回顧展に向けて石膏像の制作に励んでいる。その回顧展を仕切っているのがキュレーターの宇佐美彰甚である。そして事件が起きる。それがタイトルの「生首に聞いてみろ」に繋がっていく。傷ついた石膏像、母になることを知佳に拒絶された秘書の国友レイカ、知佳につきまとう不良カメラマンの堂本峻。律子の妹で16年前に自殺した結子。
まさにオーソドックスな本格推理。たとえば、探偵のつまらないミスによって事件が拡大する。あと一歩のところで犯人を取り逃がし、悲劇をまねく。黄金期のクイーンもの、あるいは金田一耕介シリーズもかくや、である。違うとすれば、事件に留守番電話の伝言機能といった現代ならではのものが絡むことだろう。
しかし、不自然さも引き継いでしまっているのはどうしたことだろう。この作品が今年のベスト3に入る作品として名を上げられ始めると、ちょっと待ったと言いたくなる。たとえば、今書いたばかりの留守番電話のメッセージである。いやしくも捜査中の人間が、ちょっと疲れたからと伝言も確認せずに電話を何日も放置することは、ご都合主義が過ぎる。
しかもだ、被疑者が海外逃亡したというのを、まったくウラもとらずに信じ込むというのは、どうだろう。実際の捜査を知らない自分がいうのも変だけれど、渡航記録や飛行機の搭乗記録くらい簡単に捜せるはずだ。無論、それが話しに大して関係しない、というならばわからないではないけれど、悲劇を拡大するとなれば、何をかいわんやである。
生首「もっと早く解決できたやろ」
2023/07/07 10:18
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投稿者:どら - この投稿者のレビュー一覧を見る
「法月綸太郎」痛恨のやらかしもあり、かなり最後の方まで解決のめどが立っていないように見える事件は見事な論理により一気に解決 ちょっとだるいけどとにかく最後が鮮やかであった
しかしいろんな意味で救いようのない結末だこと…
悲劇の色を濃くしていく前半からぐいと首を掴まれた、これはクビキリミステリー
2004/10/03 01:57
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投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
一人娘の江知佳をモデルに、石膏像の新作を発表しようとしていた彫刻家の川島伊作。作品は完成したものの、その展示を前にして、彼は急死してしまう。そして、何者かが石膏像の首を切断し、顔の部分を持ち去るという事件が起こる。しかし、この石膏像の首紛失事件は、来るべき悲劇の序幕に過ぎなかった。関係者に依頼され、調査を始めた法月綸太郎は、試行錯誤しながら、事件の裏側に秘められていた真相に迫っていく……。
川島伊作の死をきっかけに、悲劇の色を濃くしていく前半から、作品としての手応えを感じた。始まりの事件そのものに、それほどインパクトがある訳ではない。しかし、事件関係者間の葛藤やきしみが、法月綸太郎の目を通して徐々に明らかになっていく展開が読ませる。なかなか魅力的なダミー解が提示されるなか、綸太郎が真実の頂点に向けて推理をめぐらせていく様子がスリリング。
話が二転三転して訳が分からなくなってくる中盤では、正直、いらいらすることもあった。綸太郎や父親の法月警視が、適当なところで、現在までの状況を要領よく説明してくれているにも関わらず。その時は自分の頭の回転の遅さを呪いたくもなったけれど、ラストで「ああ、あれはそういうことだったのか」と腑に落ちたということは……ん? 作者が仕掛けた術中に知らずにはまっていたのかもしれない。
タイトルの「生首に聞いてみろ」というのは、何か先行作品を意識して付けたのだろうか。ひょっとして、都筑道夫の『なめくじに聞いてみろ』をもじったのか。
このタイトルよりはむしろ、表紙カバーに小さく印字された「THE GORGON'S LOOK」という英語のタイトルのほうが作品にふさわしいと思った。ちょっと気になって、ロス・マクドナルドの作品リストにあたってみたら、「THE GOODBYE LOOK」(邦題『別れの顔』)というのを見つけた。関係があるかどうかは分からないのだけれど。
本格ってこういうことか、と思う。
2005/06/13 11:24
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:level-i - この投稿者のレビュー一覧を見る
定食についてくる味噌汁を飲んで「ぬう、店主め、塩梅という言葉を知らんのか」などと言い出すほど野暮ではないのだが、割烹とか小料理とか銘打ってる店で吸い物の味に難があったら「ええい、店主を呼べい!」と言いたくもなる。言わないけど。
法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』(角川書店)には、そういうわけで2、3の文句がある。とても丁寧に練り上げられたミステリもの、非常に頭の良い人物が書き出した謎解きもの、と認めた上で、「ええい店主」とは言わないけれど、「ねえちょっと法月さんさぁ」と言いたくなる2、3の不満だ。ややネタバレ気味になるので、『生首〜』を未読の人はこの先は読まないほうがいいかもしれない。
不自然で気になった点が2つある。1つは、人探しをするときに、その人物の顔写真を確かめない不自然。一般の人でもありえないけれど、まして探偵みたいなことをライフワーク的にこなしている人が、そんなアホらしい間違いを犯すわけがない。2つ目は、AがBに辛い目に遭わされたとき、Bと縁深い人物にAが相談する不自然。相談するときに加害者がBだということを隠すのは当然として、それでも言えっこない。特に、ことこういう問題なら、もう絶対に言えっこないと思う。
あと1つは、不自然というのとは違うけれど、監視カメラに関して、作者の都合で隠していた情報を後出しにしてきたこと。これこれこうなのでこの筋は無理です、という謎解き上の前提条件を後になって、でも実は大丈夫なんでした、とやられたんじゃたまらない。私は謎を解きながら読むほうではないので、ちょっとムカっときた程度で済んだけれど、もし真剣に考えながら読み進めていたら、相当に腹が立ったと思う。
他にもあるが、無理やり飲み込めば飲み込めなくはなかったので書かない。
不満は不満として書かずにいられなかったけれど、それでも概ね満足させてもらったことも付け加えておく。登場人物それぞれに全く異なる思惑があって、虚実入り乱れる状況は、それだけで抜群に緊張感がある。序盤、中盤は種まき段階で、ちょっと退屈したけれど、356ページ目あたりから俄然、面白く読んだ。最後には、やや退屈な序盤もちゃんと読んでおいてよかったな、と思わせてくれる。
いまどき人ひとり死ぬだけの(という言い方も乱暴だけど)地味なミステリで500ページ読ませる腕はまさに「すごい」の一言。なにしろ、こう言ってはなんだけど、文章そのものや人物の描写にはほとんど魅力が感じられないので、つまり、着想や物語展開だけの勝負で読者に勝っているのである。「このミステリがすごい!」で第1位というのは、そういう意味で納得だった。
お薦めしません。
2016/01/23 23:12
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
このミステリーがすごい!の
2005年度版第1位だそうですが、退屈だった。(笑)
何度か途中で読むのをやめようかと思ったけれど、
ミステリーは最後の数ページで
「お〜」っと思う作品もあるので頑張って読み終えました。
私はお薦ましません。(笑)
内容紹介
2004/09/02 16:02
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投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
眼を閉じた石膏像を作ることで有名な彫刻家・川島伊作は、最期に娘・江知佳をモデルにした作品を完成させていた。だが、伊作の葬儀であわただしい中、その石膏像の首が切り取られていたことが判明する。江知佳の叔父はそれが江知佳の殺人予告だと考え、知人である綸太郎に相談に来た。だが、伊作の作品を管理していた美術評論家の宇佐見から、石膏像の首は切り取られたものではなく、最初からなかったのだと聞き、石膏像の首に関しては事件性はないものと考えていた。だが、その後、江知佳が行方不明になり、生首だけが、宇佐見の手元に送られてきた。江知佳殺害の容疑者として、かつて江知佳にストーカーをしていた堂本峻が有力視されていた。だが、綸太郎は、江知佳の出生に疑問を持ち、調べはじめる——。
名探偵・法月綸太郎、9年ぶりの長編作。