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紙の本
今回は小説よりも、折原一のコレクションを楽しみましょう。それにしてもコレクターというものは、たくさんの作品を集めるものと感心します
2005/08/18 20:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
扉を開きますと、
装画 石田黙「室内風景」
(口絵、本文中作品もすべて著者蔵)
装幀 関口聖司
といった文字が飛び込んできます。(口絵、本文中作品もすべて著者蔵)がミソですね。それが何かは、読んでいけばわかりますが、巻末の著者コメントと併せて読めば、納得です。もって回った言い方をしていますが、決してトリックやネタバレの話ではありませんのでご安心ください。
ちなみに、奥付の前の頁に載っている文章ですが
「本作品は、関係者の了解のもと、画家・石田黙の作品並びに伝記的事実を踏まえて執筆されていますが、全体としてはフィクションであり、登場する人物、団体等の一部は架空のもので、実在のものとは関係ないことをお断りしておきます。 著者」です。
構成ですが、「黙の部屋 目次」となっていて、全体は、前景「黙のいる部屋」と後景「黙のいる風景」が、第一部「沈黙の画家」、第二部「沈黙のアトリエ」、第三部「沈黙の美術館」、第四部「沈黙の果て」を挟む形となっています。また224頁と225頁の間にカラーの図版が8ページ分、作品数で10点掲載されています。本文中では、字体の異なる文章が挿入されて、如何にも叙述ミステリの第一人者折原らしいものとなっています。
主人公は、石田黙の作品に魅入られてしまうことになる折原の分身とも言っていい35歳の水島純一郎、「月刊美術情報」という美術ガイドの編集長です。とはいえ編集部の人員は三人なので、実質的には平の編集部員とは変わりません。彼の趣味はといえば、取材かたがたオークションに参加して、手頃な価格の作品を手に入れることです。
で、彼が石田黙の15号の作品「夜光時計」と運命の出会いを果たすのが、新富町に住む55歳の美術評論家で自らも絵画のブローカーのようなこともしている資産家の竜野健作のもとに取材に行く途中で迷い込んだ、築地にある廃業寸前の古物商のところでした。再び訪れようにも探し出すことの出来ない謎の店。いかにも、ミステリらしい出だしで、乱歩も大喜びではないでしょうか。
美術年鑑類にも名前の出てこない、それでいてプロが見ても心惹かれる作品を残した作家を巡り、様々な人の思い、男と女の熱い想いが錯綜する話ですが、私にはヒートアップするネット・オークションの様子が面白かったです。また、一般の美術好きは600万円くらい作品を購入すると、飾るスペースや費用の関係で買うことを一旦ストップし、それ以降は作品を売却しながら、その代金で買い続けるというあたり、具体的で唸りました。
ちょっと腑に落ちないかな、というのが水島のオークションに望む姿勢。35歳という設定ですから、もう美術の世界に10年以上住んでいるわけです。オークションが盛んになったのが1990年ですから、殆どそれが日常化している時間をプロとして生きているわけです。取材は勿論、趣味がオークションでの落札というのですから、この期に及んで会場に足を運ぶのが初めて、とか、下見会で目当ての作品を前で熱心に見入る、なんて、全くの素人、おかしいですよね。
ただし、オークションはプロでも熱くなるそうですから、折原もきっとこうやって石田作品を手にしていったんだろうなあ、ドキドキしたのは分るなあ、と分らないではありません。実力がありながら埋もれていった作家が星の数ほど居ることを思うと、折原のように小説という形は無理でも、私も何とか、そういった人たちに光をあててみたい、そう思います。
ちなみに、美術の窓、という月刊誌があります。2005.7月号を立ち読みをしていたら、その中の本を紹介するコーナーに、この『黙の部屋』について1頁が裂かれていました。
最後になりますが、掲載されている石田黙の作品数は、30点を越えます。すべて著者蔵ですから、折原も600万くらいは投資しているかもしれません。
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