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2人のイノベーター、カエサルとアッピウス。
パックスロマーナをささえてたのは、ローマ街道網だったのか。これほど、その裏にある背景、狙い、歴史的意味づけを考えるところがすごい。
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巻頭カラー
イタリア本国のインフラ
イタリアの遺跡
ローマ近郊地図
フォロ・ロマーノ
紀元前六世紀及びコンスタンティヌス帝時代のローマ復元模型
ローマ市内の遺跡
ローマ市内の橋
ナポリ近郊地図(ローマ時代/現代)
ナポリ近郊の遺跡)
ハードなインフラ(街道;橋;それを使った人々)
著者:塩野七生(1937-、北区、小説家)
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古代ローマの歴史には多くの魅力的な人物が登場するが、もう一つ、忘れてはならない陰の主役が、インフラストラクチャーである。「人間が人間らしい生活を送るためには必要な大事業」であるとその重要性を知っていたローマ人は、街道を始め様々な基礎的システムを整備してきた。現代社会にとっても欠くことができないこれらのインフラは、すべてローマに源を発している。豊富なカラー図版も交え、ローマの偉大さを立体的に浮かび上がらせる。
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土木学科の学生として読んだのだが、とても感動した。その理由を探るうち、現代日本と古代ローマの、インフラストラクチャに対する姿勢の違いに行き着いた。
土木、Civil Engineeringは、現代日本では軽視されがちな分野であると感じている。そもそも、一般市民が土木のことを考える機会が少ない。市民は専門家任せにしてしまっている。そのような状況下で、ときどき市民の耳目に触れるのは次のようなニュースばかりだろう。一部の議員が自分の支持基盤の拡大のため、自らの地方に公共事業を引っ張ってくる。あるいは、お金や工期の不足などから、必要なデータの改ざんや流用をする。これでは、土木業界の重要性や正当性が疑われるのは当然である。そして、このような土木に対する悪いイメージから、土木に対する市民の興味はますます失われる。。。
一方、ローマ時代の「土木」はより重要性が高く、国家の正当な事業であり、ひとびとの関心も高かった。本文では、
「ローマ人はしばしば、人間が人間らしい生活をおくることを、文明という一語で表していた。文明を表す言葉はすべて・・・ラテン語の「チヴィリタス」(Civilitas)を語源にしている」
とある。インフラストラクチュアは、ひとびとの生活のために作られるもので、それ以外のなにものでもない。”Civil Engineering”という名と、「ひとびとが人間らしい生活をおくること」が自分のなかでしっかり結びついた瞬間であった。
また、このようにひとびとの生活に利する、という明確な理念をもつ事業だったからこそ、市民も当事者意識をもって関われたのだと思う。
このような根本的な姿勢の違いだけでなく、本書に出てくる具体的な技術水準にも驚かされた。個人的には橋梁が好きなので、古代ローマの橋の絵は単純にきれいだと思った。
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(2016.08.22読了)(2016.08.18借入)
単行本では「ローマ人の物語Ⅹ すべての道はローマに通ず」2001年9月刊行、にあたります。
「ローマ人の物語」Ⅰ~Ⅸは、歴史の順序に従って記述されてきましたが、Ⅹは、ローマ帝国の主要なインフラについて記述してあります。多くの図版や写真も掲載されていますので、今まで10巻のなかでは一番読みやすいかもしれません。
「ローマ人の考えていたインフラには、街道、橋、港、神殿、公会堂、広場、劇場、円形闘技場、競技場、公共浴場、水道等のすべてが入ってくる。ただしこれはハードとしてもよいインフラで、ソフトなインフラになると、安全保障、治安、税制に加え、医療、養育、郵便、通貨のシステムまでも入ってくるのだ。」(21頁)
「ローマ人はインフラを、「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」と考えていた」(24頁)
この巻では、街道と橋について述べています。
【目次】
カバーの銀貨について
はじめに
ローマ帝国主要街道網
●巻頭カラー
アッピア街道
各地で築かれたローマ街道
「タブーラ・ペウティンゲリアーナ」
クラウディア水道
各地で築かれた水道
イタリア本国のインフラ
イタリア地図(ローマ時代/現代)
イタリアの遺跡
ローマ近郊地図(ローマ時代/現代)
フォロ・ロマーノ
紀元前六世紀及びコンスタンティヌス帝時代のローマ復元模型
ローマ市内の遺跡
ローマ市内の橋
ナポリ近郊地図(ローマ時代/現代)
ナポリ近郊の遺跡
第一部 ハードなインフラ
1 街道
2 橋
3 それを使った人々
図版出典一覧
●街道(81頁)
まず第一に、軍団の敏速な移動を目的にした。軍用道路としての機能を十分に満足させられるものでなければならなかった。
第二は、ローマ街道は政略道路であらねばならない
ローマ街道の特色の一つは、町の中央を通り抜けていく点にあった。
町の中央を通すことによって、移動するローマ軍団だけでなくその町の住民もまたローマ街道を活用することになることが、街道敷設の目的の一つであったからである。
●インフラとは(85頁)
インフラとは、経済力があるからやるのではなく、インフラを重要と考えるからやるのだ
●マイル(91頁)
ローマ時代の「マイル」とは、「一千歩」に等しい距離のことであり、キロ数に直せば、1.485キロ前後になる。
●複線化(111頁)
複線化とは複数の選択肢を持つことだが、その効力は主として二つの面で発揮された。第一は、自然災害への対策だ。洪水や崖崩れによって一時的にしろ使用不可能になった場合に、選択肢を他にもっているといないとでは、共同体の機能に大きな差が出てくる。第二は防衛上の対策で、敵が一つ押さえても別の街道が使えれば、袋のネズミにならないですむ。、
☆関連図書(既読)
「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
「世界の歴史(5) ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出文庫、1989.08.04
「ローマの歴史」I.モン��ネッリ著、中公文庫、1979.01.10
「古代ローマ帝国の謎」阪本浩著、光文社文庫、1987.10.20
「ローマ散策」河島英昭著、岩波新書、2000.11.20
☆塩野七生さんの本(既読)
「神の代理人」塩野七生著、中公文庫、1975.11.10
「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
「ローマ人の物語Ⅰ ローマは一日にして成らず」塩野七生著、新潮社、1992.07.07
「ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記」塩野七生著、新潮社、1993.08.07
「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」塩野七生著、新潮社、1994.08.07
「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサルルビコン以前」塩野七生著、新潮社、1995.09.30
「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサルルビコン以後」塩野七生著、新潮社、1996.03.30
「ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ」塩野七生著、新潮社、1997.07.07
「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」塩野七生著、新潮社、1998.09.30
「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」塩野七生著、新潮社、1999.09.15
「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」塩野七生著、新潮社、2000.09.30
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
「ローマの街角から」塩野七生著、新潮社、2000.10.30
(2016年8月26日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
古代ローマの歴史には多くの魅力的な人物が登場するが、もう一つ、忘れてはならない陰の主役が、インフラストラクチャーである。「人間が人間らしい生活を送るためには必要な大事業」であるとその重要性を知っていたローマ人は、街道を始め様々な基礎的システムを整備してきた。現代社会にとっても欠くことができないこれらのインフラは、すべてローマに源を発している。豊富なカラー図版も交え、ローマの偉大さを立体的に浮かび上がらせる。
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文明は常に進歩するのではなく、後退することもあるんだな。特に、宗教がかかわると、客観性が失われ主観が強くなるのか。もちろん、宗教を否定するわけではないけれど。
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副題の通り、ローマ帝国のインフラについて焦点をあてる。
すべての道はローマに通ず、とはよく言ったものであるが著者が言っているように実際は、全ての道はローマから発す。といったほうが正しいように思える。
古代エジプトやギリシアをみても、都市間に整備された街道を通すという発想はなかったようである。
これは、整備された街道がもろ刃の剣であることを認識していたからだろう。つまり、戦争時に相手の侵入経路としても利用されてしまう可能性がある、ということである。
翻って、ローマ帝国滅亡以降、中世ではこのリスクを嫌って都市間の街道は整備するが、わざと曲がりくねって道を作ったそうだ。
話をローマに戻すが、他者を融和していくという政策を一貫しているローマ人だからこそできた、この「道」に対する思想は非常に興味深い。
それどころか、街道を整備すること以上にそれらを維持していくということに関しても重要視していたらしい。
道の土木学的な作り方は本書を見てほしいが、現代の工程とほぼ同じではないか!
古代ローマにおいては、高度な数学は発達しなかったが、高度なエンジニアリングは発達していたのだ。(話はそれるが、ということは古代ギリシア時代の基礎数学をもってすれば、使い方次第で日常のほぼすべてをカバーできるということだ!)
ちなみに、ローマでは現代のインフラストラクチャーという言葉はなかったらしい。代わりに「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」というMoles Necessarieという言葉それに近いとのことである。
ローマ人、畏るべし・・・
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今までの人物フォーカスの物語から離れ、この巻からしばらくはインフラストラクチャに注目。
ほぼ同時期に西方では街道を整備し、東方では秦の時代に万里の長城が整備された。なぜローマ人は街道を整備したのか。それは彼らの敗者同化政策を具現したものと説く。
インフラを整備し征服した地域にも利益を享受させることが、不満分子の抑制および非常時に迅速に行動に移すこと可能にするからとローマ人は考えていたからである。事実、カルタゴのハンニバルに攻め込まれた時にもこの街道ネットワークによりローマが孤立無援になることを免れた。
長期的な視点に立って整備されたインフラは今なお各地でそのコンセプトが残存している。
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本書では、歴史を順に追うことから離れて、ローマ帝国のハードとソフトのインフラに関する総括を試みている。
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著者は、今回の巻の内容は当初から書きたかったことであったようです。しかし、勉強していくうちにそのこと、つまり古代ローマのインフラストラクチャーを論ずることの不可能さを思い知ったとあります。しかし、著者は困難が伴うと認識しながらも、インフラを重視した民族の根底にある「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」という考えを是が非でも現代人に分かってもらおうと書き始めたようです。そう言うわけでこの巻と次の巻では、図や表、写真が多用されています。広大な世界地図と2000年という年月も読者は頭に入れて読む必要があるとことわってあります。(実際それは難しく、写真を見て楽しむくらいでも…)
人間なら動脈にあたるローマ街道を張り巡らせ、メンテナンスも常に忘れないようにして、国家をネットワーク化することの意味は、ハードな分野に限らず、ソフトな分野、精神分野まで影響を及ぼしただろうと著者は考えを巡らせています。現代の地図と帝国時代の街道の地図が載っていますが、2000年後の今も何ら変わることなく、赤い血管のように走っていることに驚くばかりです。
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現代においては有力者の意向で道路や線路の方向が歪められるなんてどこの国でもありそうな話だが、
ローマ帝国においては、皇帝でさえもそんなことは出来なかった。
ローマ、アテネ、コンスタンティノープル、アンティオキア、エルサレム、カイロ、チュニジア、コルドバ、リヨン、ロンドン、アウグスブルク、ウィーン、ブタペスト。
他にも広範な地域の制覇に成功した帝国は存在したが、なぜローマだけがこれほどの地域をネットワークと言えるほどに道路を張り巡らせることができたのか。
本書で他国の実例が語られるわけではないので詳細な比較はできないが、多くの長所がそうであるように。
その必要性から作られたものは、やがてそれ中心の構造となり、もはやそれなしでは成り立たないように成長していった。
もちろん街道自体はどこの国にでも、いや、国の成立以前から存在する。
だが、ローマを代表する街道として最初に建設されたのは、自然にできた道を頑丈に舗装したわけではなく、
都市から都市を目的地とする移動路でもなく、港から物資を運ぶ輸送路でもなく。
既に存在した街道に、別の経路を新設して複線化したアッピア街道が始まりだった。
複線化の利点は現代においてさえ一見して理解されないが、
工事や災害、出兵や外敵侵入などの緊急時にはもちろん、
平時であっても路面や気候、宿や駅舎などの状況に応じて経路を選択可能である利点は予想以上に大きい。
何より、郵便や物流が安定しているという事実は、経済活動に対する信頼へとつながることとなる。
少なくない費用はその名誉のために富裕層による寄付でまかなわれ、
人手はパクス・ロマーナという平和を与えられた軍団兵が担当。
さらに、移動速度が上がれば少ない軍団兵で広大な地域を治められる。
こうして多くのローマの制度は、何時如何なる状況でも道路が使用できるという信頼のうえに成り立つこととなった。
それでは、このような盤石なローマのハードなインフラの上に乗るソフトなインフラとは何であったのか。
次巻に続く。
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今までとは違って人からインフラに焦点を当てて、歴史横断的に考察を加えている。
巻頭のカラーの写真や図も多く読んでいてワクワクする巻でした。
インフラの重要性を見越したカエサルやそれを維持・発展させた歴代の皇帝の先見の明に驚かされ、創造的天才ってどうやって生まれるんだろうと改めて考えさせられました。
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現代日本において道路法上の道路であることを満たす幅員は4m。
これがローマの街道の車道の幅員と同じだった事実にも驚きだが、それよりも感心したのは歩道について。
ローマの街道の両脇には歩道が3mづつあったということだが、これは歩行者、つまり一般市民の尊重の表れではないだろうか。
タブーラ・ペウティンゲリアーナのような楽しげで有益な地図の存在が、このことを証明しているように思える。
現代日本の貧弱な歩道に常々不満を抱いている自分としては、羨ましい事実。
返す返すも惜しいのは、ローマ人のインフラ整備の精神が中世で途切れてしまったこと。
ローマ帝国が滅ばずに、その後も継続して発展していたならば一体どんな世界になっていたのか。想像するのは楽しい。
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番外的な巻であり、ローマ帝国のインフラ整備を扱った巻。主として、ローマ街道網を解説。
インフラ整備の視点が現代と通じる点は、さすがローマ帝国と思わずにいられない。
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写真が多数掲載されたローマ街道の巻。
ローマが中世を生き残って現代に存続していたら、世界は
ひとつの国家で統一され、幸せな星になっていたかもしれない。
今、ある国家、リーダー達のくだらなさがよくわかる。