紙の本
『ローマ人の物語』に挫折した人のために
2009/02/26 23:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本シリーズを手にして2年余り、周囲の人に聞いてみると面白い現象が見られた。はまってずっと読み続ける人と、最初の数冊で挫折する人とに分かれることである。後者の人に聞いてみると、異口同音に「説教臭さ」がはなについたという。たしかに、最初の方は、帝国を築き上げたローマ人と現代日本とを比較する記述が少なくない(個人的には、同じく多民族帝国であった、戦前日本と比較すべきなのになあ、と感じるのだが)。
また、カエサルへの偏愛も大きい(単行本にして2冊分!)。まあ、このあたりを我慢すれば、「世界史」の講義では数ページで終ってしまう古代ローマ史を概観できる魅力は大きいといえよう。何より、キリスト教と啓蒙思想が西欧を覆う前のヨーロッパを知るにはちょうどよい。ハリウッド製ローマ映画とはやはり違う。
さて、そんな「挫折組」にあえて推薦したいのが、この「すべての道はローマに通ず」の巻である。本筋の政治・政治家史からはなれ、表題のローマの街道をはじめ、橋、水道、医療、教育といった社会基盤についてまとめて解説しており、豊富な図版とともに、本巻だけでも単独で楽しむことができる。くわえて、上下巻共に著名な遺跡のカラー図版がついており、ローマ遺跡案内にもなっている。イタリア旅行前にちょっと読むのにも手頃だろう。
著者も指摘するように、「道」に象徴されるローマのこうした社会基盤についてまとめて解説したものはほとんどないという。その「道」にしても、どれだけあったのかも正確にはわかっていないほどだとか。ローマの遺跡は、ローマ市に限られているわけではないから、その調査もだいぶやっかいなとうだ。
地中海周辺の国々に観光旅行に行くと、必ずローマ遺跡につれられて自慢されるが、どこも似ていて違いがわからない、という笑い話(?)を聞かされたことがある。「帝国」だけに広い地域に都市施設が散在し、またそこに「同じようなもの」をシスティマティックに作っていったのがローマなのである。このシステムを解説することで、本書は「モノとしてのローマ」を上手にまとめて解説している。
個人的にもっとも興味深いのは「旅行用のコップ」である(上巻)。その表面には都市・街間の距離も刻まれており、ガイドマップにもなっている。現代日本でも高速のサービスエリアで購入できそうだ。が、このコップの前提には、整備された道や橋、駅、都市、旅行者の安全の保証がある。それらがすべて確保されていたわけである。恐るべし古代ローマ帝国。そのローマをつかみとろうという著者・塩野七生氏の貪欲さもあなどるなかれ。
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ローマ人が造った道
2023/03/03 16:29
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ローマ時代、ローマと重要都市や征服した土地の街を結んだ街道。車道と歩道を分離し石で舗装して経済発展と防衛、統治を実行するのに役立てていたとは。平和を求め、造った街道は誰でも利用でき旅の便宜を図る施設までもあったとは想像以上。国家が行うインフラ整備とはどのようなことかを考えさせられる。
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ローマのインフラ整備のうち、街道、水道の二つのハードと医療、教育の二つのソフトについて書かれた章。今のように選択肢が多くないため、インフラ整備の本質が見えやすい。【061011新/061017】
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ローマ帝国の広さを現代の世界地図と比較しながらかみしめられる。改めて二千年も昔の技術で、ここまでの広さを統治出来たことに驚きを覚える。
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ローマ人の考え方に感動です。
というか水道と街道の立脚点であるクラウディウス・アッピウスの頭の中を観て見たいよ。
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ローマは鶴嘴とモッコで勝つ。
常勝ローマ軍とは即ちローマ市民の事、彼らは兵士であると同時に土木技術者でもあったのだ。
そしてインフラストラクチュアとは何かを描き出す。
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なぜローマ帝国はかくも広大な領土を得、長きに渡りパクス・ロマーナ(平和なローマ)を維持できたかを街道・水道などハードなインフラ、医療・教育などソフトなインフラという観点で描く。
ローマは、戦争が終わり支配下に収めるとそれまでの敵国から略奪や搾取をするのではなく、それとは逆に同等の権利と義務を与え、運命共同体として迎え入れ、インフラ整備もローマはもとより属州の各地に至るまで実施するのだから恐れ入る。そりゃー超大国になるわけだ。
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「インフラは、人が人として生きていくために必要なもの。」
そういった考え方、地方に住む私にとっては非常に共感できます。地方では人口が少ないため、一日に利用する人数は都会とくらべなくても判るくらい少ないです。でもそれがなければ生活に困難を来すということも理解して欲しい。
公共事業に反対する人々に読んで欲しい一冊です。
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ローマの特筆すべき点は、インフラのネットワーク化であったと思う。これはもう、技術的なレベルというよりは思想・概念レベルの問題意識の差であって、古代都市ローマが、旧来の都市国家的形式を脱し領土国家へ変貌するのにローマ街道ほど必要なものはなかったし、逆にローマ街道というインフラを先んじて所有したがために、ローマは領土国家になり得たともいえる。シリーズ中では地味な本巻であるが、シリーズ中でも屈指の”一番考えさせる一冊”かもしれない。
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es interesante, digo.
bueno, parece que este libro / este serio me dan algun interes en mi vida en Roma.
ahora conozco tanto (o sea, mucho mejor que antes) sobre la historia/ paatrimonio munial de Roma!!!!
Decimos que es muy bien!!!!
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28巻とあわせて読む。道路、水道といったハードインフラと医療などからなるソフトインフラという二つのインフラに話を絞っている。
特に道路、水道の考え方は、高速道路や公私の水道料金といった現代に通じる発想が紀元前からあったということが非常に興味深い。道路構造物には水が大敵であるとか、水道管の鉛は人へ有害であるといった知恵があったということが実証できるというのもすごいことである。
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ローマ人は,現代人から「インフラの父」と呼ばれるほどインフラを重視した民族だった.
『第一部 ハードなインフラ』
『第二部 ソフトなインフラ』
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ここに来て「物語」では完全になくなった。ローマのインフラに関してまとめた一冊。
これはこれで面白いんだけど正直求めていたものじゃないんだよな。巻頭のカラー写真集を見ているときが一番引き込まれたってのが、それを如実に物語ってるが。まあローマ帝国を知る上でインフラは外せないものだし、このシリーズの予復習って意味では良かったんじゃないかな。現地に飛んでみたいって思いも強まったわ。
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古代ローマ帝国のインフラのみを取り扱った本。
建築とか土木とかを勉強している人は一度は読んでおくべき本かもしれない。
こういう話で盛り上がれる友達が欲しいなあ。
ローマ人はインフラを「人間が人間らしい生活を送るためには必要な大事業」と捉えていた。
では、現代の日本人はどうだろう?「税金の無駄使い、公共事業廃止」などが大きな声で叫ばれる昨今、広い意味でのインフラについて考え直す時期に来ているように思える。
僕ら日本人ににとってのインフラとは何か。
難しい問題だけど、インフラストラクチャーくらい民族の資質を表わすものはないと思うし、僕自身は、希望と共に喜びを感じさせてくれるものだと確信している。
上巻は、ハード(1.街道 2.橋 3.それを使った人々)について。
下巻は、ハード(4.水道)とソフト(1.医療 2.教育)について。
P.21
ローマ人の考えていたインフラには、街道、橋、港、寝殿、公会堂、広場、劇場、円形闘技場、競技場、公共浴場、水道等の全てが入ってくる。ただし、これはハードとしてもよいインフラで、ソフトなインフラになると、安全保障、治安、税制に加え、医療、教育、郵便、通貨のシステムまでも入ってくるのだ。
P.26
夢とかゆとりとかは各人各様のものであって、政策化には欠かせない客観的基準は存在しない。政治家や官僚が、リードする類の問題ではないのです。政治家や官僚の仕事は、国民一人一人が各人各様の夢やゆとりを持てるような、基盤を整えることにあると思います。
P.70
彼らは、道路とは、国家にとっての動脈であると考えていたように思われる。だからこそ、一本や日本の街道を通したぐらいでは十分と思えず、街道網を張り巡らせていったのではないか。血管の中を通って身体の隅々にまで血液が送られてこそ人間は生きていけるのだから、国家が健康に生きていくにも、血管網は不可欠である。
P.71
インフラとは、膨大な経費をかけ多くの人々が参加し長い歳月を要して現実化するものであるだけに、ハードな分野の成果では終わらずにソフトな分野、つまりは精神の分野にまで影響をもたらさずにはすまない。言いかえれば、インフラがどうなされるかは、その民族のこれからの進む道まで決めてしまうのである。
P.77
ローマ人はインフラを、「公」がやるべきことと考えて疑わず、その考えはローマ帝国が存続していた間、全く変わらなかった。
P.153
ローマ字度では一体と考えられていた道路と橋を、ローマ人自身は次のように分類していた。
(1)公道(2)軍道(3)支道(4)私道
P.190
地図とは、情報の集積である。覇権国は、一つの例外もなく情報の重要性を知っている。だから、収集の結果が地図になろうと他の形になろうと情報集めに熱心であることではどの派遣国家も同じなのだが、違いはやはりある。集めた情報を統治者間だけで占有するか、それとも公開してしまうか、である。古代のローマは、共和政、帝政の別なく、この種の情報は公開することで一貫していた。何しろ、工程が建設させた公共建造物に��つきものの列柱回廊の壁面には、色大理石を使って属州別に色分けされた帝国の全図が張り付けられており、また市内の書店でも、様々な種類の地図が売られていたという。
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7/13:冒頭に塩野さんが書かれているように、確かに戦もなければ、新たな皇帝が出てくるでもない。とは言えつまらなくない。ローマのインフラについての解説の章でした。
この選挙後の時に読むとなおさらだけど、生活で必要とされているインフラを整備するのが国であり政治なのだなと改めて知らされた。しかもそれは当然の事として知られている。むふぅ。物や情報が少ない時代の方が幸せで心が豊かな気がするね。
2000年以上前から民主主義や公益など考えてあったんだよねー。ローマってばズゴイ。
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7/12:再開