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紙の本
小川洋子、って名前、素直だと思うんですよ。使われている文字も簡単で、それでいて野暮じゃあない。しかも座りがいい。でも、お話はちょっとひねりが。それがね、わざとらしくないんです
2007/09/19 20:13
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
気付いたら、出る新刊は全部読むことになってしまった小川洋子ですが、初期の作品は全く読んでいません。機会があれば読みたい、とは思うのですが何せ抱えている本の量が生半可ではないので、結局後回し。で、そういうきっかけを待っている人には格好の企画がこれではないでしょうか。少なくとも私にとってはありがたい。
シンプルなブックデザインは、文春お気に入りの大久保明子。他の作家はともかく、小川洋子にはこのカバーはピッタリですね。だって、小川洋子って、素直でしょ。気取ったところが全然ない、易しい漢字で構成された名前。それにこんなにあう装幀があるか、って思います。それはともかく、早速、簡単に内容紹介。
・冷めない紅茶 (『完璧な病室』中公文庫 2004年11月):小さい時の弟からの死についての問いかけ、祖父の死、色々あったけれど、私が初めて死というものについて考えたのは、中学校を卒業して10年以上経った同級生の通夜のとき・・・
・薬指の標本 (『薬指の標本』新潮文庫 1998年1月):標本室に来る前、わたしは海に近い田舎の村の清涼飲料水を作る工場で左手の薬指の先を失った。そして、新しい職場の上司・弟子丸氏と出会って・・・
・ギブスを売る人 (『寡黙な死骸 みだらな弔い』中公文庫 2003年3月):伯父さんの作り出した物は、何でもかんでもすぐ簡単に壊れてしまった。僕から取り上げて一晩がかりで作り上げたプラモデルも、何もかも。そんな伯父さんが死んだのは・・・
・キリコさんの失敗 (『偶然の祝福 』角川文庫 2004年11月):母が常時雇っていた二、三人のお手伝いさんの一人にキリコさんという人がいた。それは私が父からもらった万年筆でものを書き出した11歳の頃のこと・・・
・バックストローク (『まぶた』新潮文庫 2004年11月):処刑の行われた広場にあるプールを見た私が思い出したのは、背泳の選手だった弟のこと。二つ年下の弟のために母は自宅にプールまで作って・・・
・カタカタ鳴る本:小川洋子の小学校時代、家に向かう彼女のランドセルの中にある、図書館で借りた本と、小川のこころのときめき・・・
どれも好きですが、個人的には「バックストローク」ですね。内容からの安直なイメージですが、湿り気がね、こう、膚に纏わりつくような感じなんですが、それが決して不快ではない。そして、こう、悲劇が悲劇に終らない、といって単純な救いでもない、ちょっとした飛躍が、ああ、こういうのもありなんだ、って読者を納得させる。
川上弘美の作品にもこういう味わいがあって、小説を読んでいるなあっていう醍醐味っていうのは、こういうことかな、なんて思います。短篇でも、いや短い話だからこそ、こういう味が出るんでしょう。「薬指の標本」は再読ですが、相変わらず淫靡というか、こう体の奥のほうが疼くっていうか、楽しめます。
読書好きな子供が、そのまま作家になる、そういう好例としての小川を教えてくれるのが「あとがき」。ちなみに、前にも書きましたが、入手しやすい文庫を列記してくれるのは親切ですが、やはり初出は別に記載してほしいな、って思います。でばいと、作家の本当の軌跡が見えてこないんです。出版社さん、そこのところよろしく。
紙の本
はかない5編
2016/05/14 06:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ギブスを売る人」に登場する壊れやすいプラモデルが印象的だった。人も物も傷付きやすいことに気づくと、他の誰かにやさしくなれるのかもしれない。