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高い評価の役に立ったレビュー
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/08/17 21:35
短編集は楽しめたストーリー・テラーのアーチャー作品
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジェフリー・アーチャーが再び以前のように大河小説、冒険小説、短編というように、シリーズで書くサイクルに戻ってきたようだ。ただし、刑務所で臭い飯を喰ってきた後は、以前のような、キレがなくなっている。理由は分からないのだが、それに比べればデビュー当初からの小説はどれも機知とアイデアに富んでいて、素晴らしい出来だった。
むしろ、過去を知らずに読んでいれば、比較をすることもないので、相応の小説になっている。しかし、過去をほとんど読み尽くした読者にとっては、大変物足りないここ数年の作品である。
今回の短編集は題して『プリズン・ストーリーズ』である。そう、アーチャーが刑務所時代に集めたストーリーが中心になっている。したがって、犯罪者が主人公となっている短編である。12編の短編のうち、9編がそれで、残りの3編が監獄とは関係のないテーマである。
アーチャーが監獄で服役していたのは確かだが、その最中に他の囚人から聞かされた話をまとめたのが本編であるかどうかは、定かではないし、確かめようもない。しかし、ここ数年の長編、『運命の息子』、『ゴッホは欺く』は昔日の輝きを失い、凡庸な出来に終わっていたのである。
今回の短編集では、どれも平均的な出来栄えで傑出したものは見出せなかった。逆に言えば、どれも相応に楽しめたということである。中では、「自分の郵便局から盗んだ男」が面白かった。アーチャーがいつものように、ストーリーを時間を追って書くのではなく、飛び飛びに書いたり、回想を多用したりで、そこは昔のアーチャーが戻ってきたかのようだった。「もう10月?」は、プリズン・ストーリーズというタイトルをそのまま引き摺ったような設定だが、憎めない哀れを誘う囚人の物語である。
訳者永井氏の巻末の解説によると、本書より後に無実の罪で監獄に入れられた人物の大河小説を発表したそうである。早く訳本が出版されるのを待ちたいが、一方で、その出来が心配でもある。
低い評価の役に立ったレビュー
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2008/07/05 19:12
さらば アーチャー
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は今とっても悲しい思いにとらわれています。
ジェフリー・アーチャー作品との出会いは私がまだ15歳のとき。今から30年も昔に、「大統領に知らせますか?」というスリラー小説をたまたま手にしたときです。エドワード・ケネディがもし大統領に当選し、そして暗殺者の魔の手に狙われたら…ロナルド・レーガン(当時はまだ大統領になる前)の名まで登場するこの虚実ないまぜの小説のあまりの面白さに夢中になったものです。
続いて手にした軽妙洒脱なコンゲーム小説「百万ドルをとり返せ!」にもすっかり魅了され、「ケインとアベル」「ロフノスキ家の娘」「新版 大統領に知らせますか?」と一連のロフノスキ家サーガでは、読書の愉悦にどっぷりとつかったものです。
しかし、作者アーチャーが私生活上のスキャンダルに見舞われた頃と前後して、彼の著作物はどれもかつてのワクワク感を与えてくれなくなってきました。
私が手放しで賞賛できる彼の最後の作品は「盗まれた独立宣言」。それ以降は、どこかにアラが目立ってしまい、楽しめなくなってしまったのです。
そして今回の「プリズン・ストーリーズ」。投獄生活の中で仕入れたネタをもとに紡いだ11の短編集ですが、わずかに「アリバイ」という一編だけは楽しめたものの、あとの作品は読み終えたときに、これはもうダメだという思いしか残りませんでした。アーチャーが作家としてもう私を楽しませてくれることがなくなってしまったことが決定的だということを感じて、胸がつぶれる思いがしたのです。
巻末にある訳者解説によれば、次回作は現代の「モンテクリスト伯」ともいえる復讐譚だとか。しかし、それに対してもう高い期待をもつのはやめてしまった私がここにいるのです。
アーチャーほどの作家も、その力を失ってやがて消えていく日が来るのだな、そんな寂しい思いしか残らない短編集でした。
紙の本
短編集は楽しめたストーリー・テラーのアーチャー作品
2008/08/17 21:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジェフリー・アーチャーが再び以前のように大河小説、冒険小説、短編というように、シリーズで書くサイクルに戻ってきたようだ。ただし、刑務所で臭い飯を喰ってきた後は、以前のような、キレがなくなっている。理由は分からないのだが、それに比べればデビュー当初からの小説はどれも機知とアイデアに富んでいて、素晴らしい出来だった。
むしろ、過去を知らずに読んでいれば、比較をすることもないので、相応の小説になっている。しかし、過去をほとんど読み尽くした読者にとっては、大変物足りないここ数年の作品である。
今回の短編集は題して『プリズン・ストーリーズ』である。そう、アーチャーが刑務所時代に集めたストーリーが中心になっている。したがって、犯罪者が主人公となっている短編である。12編の短編のうち、9編がそれで、残りの3編が監獄とは関係のないテーマである。
アーチャーが監獄で服役していたのは確かだが、その最中に他の囚人から聞かされた話をまとめたのが本編であるかどうかは、定かではないし、確かめようもない。しかし、ここ数年の長編、『運命の息子』、『ゴッホは欺く』は昔日の輝きを失い、凡庸な出来に終わっていたのである。
今回の短編集では、どれも平均的な出来栄えで傑出したものは見出せなかった。逆に言えば、どれも相応に楽しめたということである。中では、「自分の郵便局から盗んだ男」が面白かった。アーチャーがいつものように、ストーリーを時間を追って書くのではなく、飛び飛びに書いたり、回想を多用したりで、そこは昔のアーチャーが戻ってきたかのようだった。「もう10月?」は、プリズン・ストーリーズというタイトルをそのまま引き摺ったような設定だが、憎めない哀れを誘う囚人の物語である。
訳者永井氏の巻末の解説によると、本書より後に無実の罪で監獄に入れられた人物の大河小説を発表したそうである。早く訳本が出版されるのを待ちたいが、一方で、その出来が心配でもある。
紙の本
さらば アーチャー
2008/07/05 19:12
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は今とっても悲しい思いにとらわれています。
ジェフリー・アーチャー作品との出会いは私がまだ15歳のとき。今から30年も昔に、「大統領に知らせますか?」というスリラー小説をたまたま手にしたときです。エドワード・ケネディがもし大統領に当選し、そして暗殺者の魔の手に狙われたら…ロナルド・レーガン(当時はまだ大統領になる前)の名まで登場するこの虚実ないまぜの小説のあまりの面白さに夢中になったものです。
続いて手にした軽妙洒脱なコンゲーム小説「百万ドルをとり返せ!」にもすっかり魅了され、「ケインとアベル」「ロフノスキ家の娘」「新版 大統領に知らせますか?」と一連のロフノスキ家サーガでは、読書の愉悦にどっぷりとつかったものです。
しかし、作者アーチャーが私生活上のスキャンダルに見舞われた頃と前後して、彼の著作物はどれもかつてのワクワク感を与えてくれなくなってきました。
私が手放しで賞賛できる彼の最後の作品は「盗まれた独立宣言」。それ以降は、どこかにアラが目立ってしまい、楽しめなくなってしまったのです。
そして今回の「プリズン・ストーリーズ」。投獄生活の中で仕入れたネタをもとに紡いだ11の短編集ですが、わずかに「アリバイ」という一編だけは楽しめたものの、あとの作品は読み終えたときに、これはもうダメだという思いしか残りませんでした。アーチャーが作家としてもう私を楽しませてくれることがなくなってしまったことが決定的だということを感じて、胸がつぶれる思いがしたのです。
巻末にある訳者解説によれば、次回作は現代の「モンテクリスト伯」ともいえる復讐譚だとか。しかし、それに対してもう高い期待をもつのはやめてしまった私がここにいるのです。
アーチャーほどの作家も、その力を失ってやがて消えていく日が来るのだな、そんな寂しい思いしか残らない短編集でした。