紙の本
一風変わった読書案内
2009/07/06 22:29
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
20世紀(1901年の「みだれ髪」から2000年の「朗読者」)の1年1年に1冊ずつを選び、紹介をしている。著者は『100冊の選択におおむね異論はなかった。』(p.2)そうだが、私のとは違う。もちろん、新潮文庫という制約はあるのだが、これを選ぶのかと疑問を覚えるものがあった。それは好みの問題以外に、選択の視点の違いもあるだろう。名作と面白い本と読むべき本は、それぞれ違う観点だからである。
本編は、解説と内容解説の部分に分かれている。解説部分は作品及びその著者の解題のようであり、内容解説はその文庫に収録された作品のプロット紹介である。解説の質はピンキリである。俎上にあがった作品のほとんどが日本文学で、明治から戦前の文学作品解説は流石なのであるが、海外文学となると心もとない解説が増える。いっそ日本文学に限ったほうがよかったのではないか。
100冊の中には読んでいない作品、作家がいくらかあり、読まずして先入観から手をつけなかったものがあるのに気づかされた。本棚からひっぱりだしてきて久しぶりに文学三昧をしてみてもいいなという気分にさせられた。高校・大学の間にこの100冊くらいは読んでおいたほうがいい。順に週1くらいで読むと決めて実行することを奨める。
話は変わるが、この本は読書案内として以外の利用ができる。そして、これが本編よりけっこう楽しかった。特にその年に誰が生まれたかのコーナーは、この人とこの人が同い年なんだと驚くこと多し。さらに、自分と同年代は?と興味は尽きない。
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選ばれている100冊の中で、読んだに違いないんだけど、どんな話だっけ?なんて思う文庫がチラホラ。
しかし、基本的には知らない本が多かったので、読んでみたいなと思わせる紹介文が良いとおもった。
先入観を捨てて、まずは読んでみる事から始めようと思う。
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[ 内容 ]
文学作品は、時代から独立して存在しているわけではない。
その作品が書かれ、受け入れられ、生き残ってきたことには理由がある。
与謝野晶子、夏目漱石、森鴎外などの古典から、谷崎潤一郎、三島由紀夫などの昭和の文豪、現代の村上春樹、宮部みゆきまで、1年1冊、合計100冊の「20世紀の名著」を厳選。
希代の本読み、関川夏央による最強のブックガイド。
[ 目次 ]
みだれ髪―与謝野晶子
クオーレ―E・デ・アミーチス・和田忠彦訳
トニオ・クレーゲル・ヴェニスに死す―トーマス・マン・高橋義孝訳
桜の園・三人姉妹―チェーホフ・神西清訳
吾輩は猫である―夏目漱石
車輪の下―ヘルマン・ヘッセ・高橋健二訳
婦系図―泉鏡花
あめりか物語―永井荷風
ヰタ・セクスアリス―森鴎外
刺青・秘密―谷崎潤一郎〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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そういえば、そんなフェアをしていたなと、この本を読んで思い出しました。なぜ、このタイミングで出版されたのかが?です。
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1年につき1冊っていう縛りのせいで、どうしてもチョイスが難しかったんだろうな、っていうのが垣間見える本。そのことは、前書きで著者も書いてますけどね。当然というか、そこまで奇を衒った本が入選するわけでもなく、「夏の百冊」にも選ばれそうなものが大半の印象。これを見て新たな読書体験をってこともあまりなく、上述の「夏の百冊」を参考にすれば良いのか、ってことが再確認できたのでした。
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「新潮文庫20世紀の100冊」関川夏央。新潮新書2009年。
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「本についての本」が、結構好きです。
「お、これ読んでみようかな」とかそういう発見がありますから。
新潮文庫と言えば、子どもの頃から本屋に日参していた身としては、文春、講談社と並んで「老舗のメジャー御三家の、筆頭格」というイメージ(岩波文庫は別格番外)。なんと言っても紐の栞がついているところが貫禄(?)。
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題名の通りの、気軽に読める一冊。2019年4月に読了。
1901「みだれ髪」与謝野晶子
から始まって
2000「朗読者」ベルンハルト・シュリンク
に至るまで、村上春樹も司馬遼太郎もサリンジャーもフロイトも大江健三郎も北杜夫もロレンスもカミュも中島敦も太宰治も谷崎、漱石、鴎外、チェーホフ・・・という感じ。
それが全部、新潮文庫で読めるんだゼ、というところに「えっへん、ドーダ」という自負が見えますし、確かに凄味もありますね。
(ちなみに、「朗読者」はあまり予備知識なしで気軽に読んで、暖かい春の夜道をほろ酔いで歩いているときに忽然と後頭部をぶん殴られたかの如き強烈なオモシロさにシビレました。喩えが宜しくない気もしますが。
ドイツ語の本として史上初めて「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーリスト1位に輝いた一冊だそう。作者は元判事の法律学者。なンだけど同時にミステリー作家で、小説はお固くもなく、実にエンターテイメント。
ケイト・ウィンスレットで映画化もされてますね。未見ですが、きっと面白いでしょう。原作が原作ですから)
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関川夏央さんが、初出年1年ごとに、それぞれ1冊選んで、極めて短い論評、柔らかエッセイ、こぼれ話など。深沢七郎がプロのギタリストだったとか。安部公房と「男はつらいよ」の類似点とか。橋本治さんの名作「二十世紀」を思い出します。アレは一年に付き橋本さんがどの年も「6ページで語る』趣向でした。
こういう、「ベスト100」とか「ベスト10」とかを選ぶのって、無邪気に楽しいですね。スポーツファンが、「史上最高の選手は」「今年最高の選手は」とかを語るのと同じで、実に罪が無くて、自己満足で(笑)、本質的にはどーでも良くて(笑)、知ってる人からすると興味深い。
映画もジャズも、こういうベスト100とかそういう本を、よく読みました。
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乗っかって、2019年の個人的な読書ベスト10。順位はつけず。
●「殺人犯はそこにいる」清水潔
→「桶川ストーカー殺人」も込みの気持ち
●「夜に生きる」デニス・ルヘイン
→とにかく止まらないオモシロさ。ルヘインは今後、長く楽しみたい。「ミスティック・リバー」の人ですからねえ。
●「世界の歴史 ローマ帝国とキリスト教」弓削達
→同時に読んでいた「100de名著 戦争論」と絡み合って、わくわくして楽しんだ。旧仮名と棒瓦と並んで、世界史を愉しむという汲めども尽きぬヨロコビも今後は自分の趣味と思へる、心踊る一冊でした。
●「暗約領域 新宿鮫XI」大沢在昌
��→前作から8年ぶりだそうで、もう歓喜と感動の涙。新宿鮫以外の大沢さんは正直あまり興味が湧かないのですが、そういう人がきっと多いのではないでしょうか。「なぜ新宿鮫シリーズだけが大沢作品でオモシロイのか」という評論、生きていれば橋本治さんか丸谷才一さんあたりに書いてほしかった。
●「ドリアン・グレイの肖像」オスカー・ワイルド
→冗長だし、エンターテイメントとしてはアマチュアな感じも若干しますが、やっぱりワイルドの変態的なパワーには脱帽。三島テイストが強烈なブルーチーズを食べたかの如き。
●「本を贈る」笠井瑠美子他
→2019年の本屋店頭衝動買い大賞。本を作る色んな立場の人たちのエッセイ集のようなものですが、泣けます。本好きな人には全身全霊を賭けてオススメ。詰まらなかったら料金はお返しします(嘘)。電子書籍漬けの自分を大いに反省した。
●「青べか物語」山本周五郎
→都合で周五郎をいっぱい再度読んだのですが、やっぱりすごい。上手い。そして小説を良く知っている。プロ。そして自由。そして、なんと言うか「手渡したいモノがある」と言うか。「謳いたい詩(うた)があって歌う唄」は、奥に響きます。「季節のない街」も絶品ですが、「青べか」も、参りましたぁ!とひれ伏したい一冊。あと周五郎の日本映画史への貢献についても、誰が論じてくれないものだろうか。
●「福島原発事故はなぜおこったか」畑村洋太郎他
→極上なミステリを読んだ気分。脳内は「24」状態。
●「国宝」(上・下)吉田修一
→歌舞伎を少しでも好きなら、辞められない止まらないカッパえびせん。もちろん小説としてもウェルメイド。さすが。
●「サマーブロンド」エイドリアン・トミネ
→つげ義春を思い出しました。こういう「痛み」のあるものを最近読んでなかったなあ。読書会の課題図書でした。ありがたや。
こうやって挙げると、「2019年もオモシロイ本をいっぱい読んだなあ」と、本の神様(?)に感謝。