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紙の本
少なくとも、「昭和史発掘」シリーズを読んでおかなければ、面白さが半減します。
2009/06/22 10:01
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あともう少しで結末を迎えるという段階で松本清張があの世に旅だってしまったことで『神々の乱心』は清張最後の作品となってしまった。『神々の乱心』の巻末には、担当編集者たちの結末についての推理が繰り広げられているが、これという確定的なものはない。松本清張は自らの死を予見して、のちのち、この未完というトリックにひっかかった人々をあの世から楽しむために、わざと書かなかったのではと勘繰りたくなる。
しかしながら、『神々の乱心』を読み解くと本書の副題にあるように、この『神々の乱心』は小説でありながら事実に即した記述もあり、さまざまな推理をはたらかせていくと、面白い読み物に変化していく。
たとえば、本書の解説には紹介されていないが、早稲田大学創立者の大隈重信像を制作した彫刻家の朝倉文夫は「ある一つを除いて、他は駄作だ」と自邸のアトリエにある彫刻を評している。その「ある一つ」とは、本書の核心でもある昭和天皇の弟である秩父宮の登山姿を指しているものと思える。台東区谷中に今も残るアトリエの中心には泉水がしつらえてあるが、ここで朝倉は陸軍の改革を画策する桜会の橋本欣五郎と会談を行っている。陸軍の佐官クラスの改革が失敗すると、次に青年士官に改革の実行が降りてくるが、これが二・二六事件へと発展していく。二・二六事件は未遂に終わったものの昭和の「壬申の乱」だったのではと考えると、「朝倉文夫彫塑館」が魔殿にすら見えてくる。
松本清張が精力を傾けたもう一つの作品である「昭和史発掘」シリーズはこの二・二六事件で終了しているが、陸軍の皇道派と統制派の派閥争いとして片づけてしまうと、『神々の乱心』を読み解く面白さは失せてしまう。反乱軍として処刑された青年将校の裁判での供述書に「大本(教)」に感化された人間が政権の中枢を動かしているという言葉が出てくる。あの日本海海戦でバルチック艦隊を撃滅した作戦参謀の一人である秋山真之も大本(教)の本部に参拝しているといわれるほど、海軍を中心とした軍部に大きな影響を与えたのが大本(教)であった。
松本清張は大本(教)については「粗い網板」という短編で作品を残しているが、「昭和史発掘」シリーズにおいて「天理研究会事件」として宗教と政治の関係を述べている。
本書は「昭和史発掘』シリーズも読破しておかないと面白さが半減するが、反面、底なし沼のように深みにはまる面白さを備えている。
著者は本書の最後に「最終講」として松本清張の遺言、予言とは何だったのかで締めくくっているが、ある権力機構によって目隠しされた日本人の歴史を振り返ることが大事と松本清張は言いたかったのではと個人的には思っている。
紙の本
これは未完の小説なので謎が多いが、それだけに大変楽しく読めた
2018/07/01 20:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
原武史は政治思想史の学者だが、松本清張の未完の遺作となった「神々の乱心」を読み解いている。これは未完の小説なので謎が多いが、それだけに大変楽しく読めた。原武史は特に天皇制との関連からこの小説を読み解いている。最後の3つのシナリオは余計なのではないか。あまりにもお穿ちすぎだと思う。
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