紙の本
ちょっとした元気がもらえる一冊
2016/02/07 14:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩漬屋稼業 - この投稿者のレビュー一覧を見る
通天閣界隈を舞台にした本書の主人公は二人。
四十代前半の男と二十代後半の女。彼・彼女の冴えない日常が一人称で交互に描かれる。
読み進む内に二人にそこはかとないつながりがあるのがわかる。
二人ともに、どこか孤独に諦めている。
最後にちょっとした事件があって、いうなれば親密さが生きる力になることに気づく。
読んでいて評者の琴線に触れる箇所が多々あるのだが、一人称語りであるだけに、孤独な内的独白が余りにも、なまな感情をそのまま表出しているところに違和感が湧いてくるのだ。とりわけダメな四十男の述懐が評者の胸に沁みるが、こういう、なまな書き方で「小説」として通用するのなら、ちょっと簡単すぎやしないかと思えるのだ。
但し、全体の結構は巧みに仕上がっている(偉そうな物言いですみません)。
それに現在的な生き難さがよく捉えられていると思う。
貧乏であったり、孤独であったりするのが辛いのではない(そりゃあ貧乏でも孤独でもない方がいいんだろうけど)。
日常を重しと捉えさせてしまう価値観というか、日常に埋没することを否定して、発信を強いる資本の論理やそのシステム、そういったものが日常を心地よく過ごすことを難しくしているのだ、恐らく。
(そう、いまや資本の論理は疎外してくれない(放っておいてくれない)のだ。隅っこで小さくなっている者にまで、その触手を延ばしてくる。かくいう評者もまたその論理に搦め取られ、こうしてあてどなく発信しているわけだ)
そういった意味でいうなら、本書はその論理に対抗する局地戦でもあるのだ。
ダントツの勝利を得られるわけでは当然ないが、ちょっぴり元気になれる読後感でした。
紙の本
シンボルマークが人を動かす
2021/10/04 04:20
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミナミの工場で働くさえない男と、恋愛依存症女とのコントラストが絶妙です。孤独なふたりを結び付ける、通天閣の不思議なパワーも素敵ですね。
紙の本
アツいアツい大阪文学
2017/01/02 23:00
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
スナックで働く女とライト工場で働くおっさんを軸にした素朴で雑多な小説です。
汚い部屋で目を覚まし、大してうまくない飯を食い、したくない仕事をこなす毎日の中にある「救い」みたいなものが描かれています。「生」の肯定っていうと少し大げさかもしれませんけど、生き方くらい自由でいいかなとは思える小説でした。
織田作之助文学賞も受賞しているアツいアツいコテコテの大阪文学です。
紙の本
ほんのり本。
2016/12/11 23:44
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投稿者:てつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
西加奈子さんらしくほんのりするいい話し。通天閣行ってみたい。あの坂も自転車で走ってみたい。あの食堂は本当にあるのか確かめに行きたい。
ただ、西さんのエンディングはいつもモヤモヤが残る。私の感想と西さんの想いに乖離があるような気がしてすっきりしないんだよなあ。
それでも、前向きになれるので、大ファンです!
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あ、ここでつながるのかぁと最後に納得。
なんかどうしようもない人たちの
どうしようもない暮らしでも
みんな生きてる感じがしてとても良い。
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西加奈子らしい、と思った。
どうしてここまで書けるのか、いや書いてしまうのか。
この「最悪」な状況。
最悪を通りこして滑稽ですらある。
きっとこれはコメディなのだ。
悲劇の先はいつも喜劇なのだから。
これが好きで彼女の本を手に取り続けている。
ものがたりのはじめとおわりで主人公たちのおかれている状況は全然変わってない。
恋人は戻ってこないし、家族が再会することもない。
人生ってそういうもん。
奇蹟は起きない。
でも、どんなにしょうもないと思える人生でも、肯定することで前に進めるということをそっと教えてくれている。
彼女の小説がやめられない本当の理由はこっちかもしれない。
「そうだ、それでこそ、お前の人生だ。」
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ああ、自分、この世界、少し分かるようだ。残念ながら…
顔も知らないし、何考えてるのか知らないけど、なんとなくこの隣人のことをもっと知りたいと思う気持ちが湧いてくるような本だ。
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丁寧で、味わい深い人間描写と、
ほっこりと温かい最後。
新入りのお嫁さんってどんな子なんだろうな。
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どこにでもありふれたといえば、そうだけど、それを的確な言葉で表現できるのは西さんだからできるのだなぁ・・・。自分なんていてもいなくても変わらない、というのは最近よく思ってしまうだけに響いた。
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関西弁の軽やかな語り口で、ちょっと笑えて、でも寂しくてせつない話。通天閣の隅っこで生活している人たちが、生き生きと描かれていて、本当に楽しく読めた。
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年が明けると、学生たちが騒がしくなる。入試や就職活動が待っているからだ。就活ではもちろんだが、入試でも人柄やらを見定めるべく「面接」というものを受けなければならないと思う。そして悩むのだ。
「自己PR」。
10数年の己の人生について、面接官であらせられる人生の先輩方に披瀝せんければならないのである。難渋している学生も多かろう。というのも、「自己PR」というのは言うなれば自慢であり、自慢という行為は謙虚さが足りないこととして控えるべき行為・恥ずべき行為として教わってきたからだ。で、何もアピールすることないなあとボヤキつつ、にわかにTOEICを受けてみたり、ボランティア活動に勤しんでみたりするのがある。
でも人生ってのは、誰も彼もがそんなドラマティック&ドラスティックになんて歩んでいないし、フツーの、ぶっちゃけ「ショボい」人生である人が大半だ。学生たちに限らず、朝の電車を見たら、どのおっちゃんもおねえちゃんもみんな似たような顔をしたのばかりだ。大半の大人はありきたりな、取り立てて威張れるようなもんなんかない「ショボい」人生を生きているわけなのよ。で、酒なんか飲んだ日には、「俺の生きている理由ってなんやろか…」「自分
の存在意義って…」という出口のない迷路に自らダイブするのである。
あああああ、虫酸が走るぅぅぅぅぅっ!!意味なんか探すな!いちいち探すな!意味がなかったら己は生きられんのかっ!!ってな感じで、上辻、シャウトする。日常なんて、「ショボい」人たちが集まって「ショボい」ことをして、その繰り返しだ。しかし、勘違いをしてはいけない。この「ショボい」の判断基準を決めるのは自分であり他人ではない。ヘイ!そこのYou!Youは自分の人生を誰かと比較して「ショボい」と勝手に決めつけていないかい?でもって、
自分にがっかりしていないかい?
で、長く変な前振りになったが、この本、西加奈子女史の『通天閣』である。この本に登場する人たちは、「ショボい」人たちばかりで、「ショボい」日常を過ごしていて、物語もまた特に劇的な展開をすることもなく終わる。ということは、この小説は「ショボい」小説ということになるわけであるが、否、人間の大半はこんな感じで生きているやん、こんな感じで生きていて、それでいいやん、というさりげな~いメッセージが込められているように思えてならないのだ。「ショボい上等」みたいな。
生きているのがなんだかわけが分からなくなった・面倒臭くなったというような人には、是非、読んでみてもらいたい。
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自分まで落ち込みそう話でした。いつまでもうじうじしているのをアホだなぁと思いつつも彼らの他の人のことを馬鹿にしているのだ。私となにもちがわない・・・
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不思議な夢を合間にはさんだ長編。
ファンタジーといっても差し支えはない気がする。
本人は一生懸命なんだけど、冷静に見れば笑える。その懸命さがとても愛しくて面白い。
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西加奈子さんの作品はたぶんこれで四冊目
西加奈子さん独特の表現がいっぱいで多少読みずらい言い回しが多いけど大いに楽しめます
舞台は通天閣がみえるという利点だけのアパートに住む男
そして遠くニューヨークに行った大好きな恋人、マメを待ち続け信じ続ける女
最後は急スピードで展開する
著書での文を抜粋
――しんどいときは、自転車降りたらええねや。あの坂を毎日上るみたいに、毎日毎日頑張っとったら、いつかええことがある
どこか寂しげな大阪、西加奈子さんワールド炸裂です
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2010年3月17日購入
じゃじゃもってきさらせ~い
耳につく。
ドロヨイ。
懐かしいような、思い出したくもないような。
関西のにおいが漂ってくる小説。
西加奈子は昔に比べるとずいぶん垢ぬけたなあと思う。