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紙の本
カラコルム山脈を舞台とする山岳小説
2011/09/04 21:47
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は文庫本にして1冊であるが、600頁を越える大作である。ジャンルはと言えば山岳小説である。しかも、主たる舞台はパキスタン、インド、中国の国境紛争が未解決の地であるカラコルム山脈である。その中のK2、ブロードピークなどが連なる世界でも有数の山岳地帯である。
夏山でも体力的に厳しいところであるが、冬山登頂を目指す主人公たち山男の物語である。トレーニングで国内やアラスカにも赴くが、目指すはカラコルム山脈である。エベレストも話題には出てくるのだが、それよりはK2の東壁からの登頂が目標であった。
エベレストとカラコルム山脈とでは、かなり離れている。エベレストはヒマラヤの真ん中であるが、カラコルム山脈はカシミールの北辺である。ここには世界第2の高峰K2がある。山に詳しい人以外はK2がどこにあるのか、あるいはどのような山なのかは不明であろうが、そこの説明は小説といえどもきちんと為されている。
山岳小説といえば、遭難死が扱われる場合が多く、その遭難の原因がモチーフとして取り上げられている。本書もその通りなのだが、人間の愛憎渦巻くストーリーとは一線を画している。すなわち、原因がその後の山行で明らかになるということである。すぐには読者に明快に解答を与えず、ストーリー展開の中でわだかまりを氷解させるというなかなか凝った仕掛けである。
本書ではもう一つのプロットが用意されている。企業家が還暦を過ぎてから登山を始めると言う、中高年の登山熱という今様の話題を取り入れていることだ。昔であれば、企業を創業して立志伝中の人物となった人たちの中には、人格的に尊敬すべき高潔さを持った人も少なくなかったであろう。しかし、昨今はそのような人は少なくなっているようだ。笹本はこの人物をどのようにストーリーに組み込んでいったのか、なかなか巧みに料理しているように思えた。
数回の山行が表現されているが、いずれの場合も山の厳しさが丁寧に描かれており、夏の暑い時期の読書としては読後に爽快感を味わうことができた。できれば、地図と登山装備の解説をしてくれると有難いと思う。山岳小説に親しみを持つ読者が増えるであろう。
紙の本
手に汗握り、背筋も凍る山岳冒険小説
2012/08/26 08:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒマラヤ山系を舞台にした山岳冒険小説に、背骨として一つミステリーを入れてある。構成も面白く登場人物も非常に魅力的で、ボリュームたっぷりだけど一気に読める。
氏の山岳冒険小説といえば名作「天空への回廊」が思い起こされる。しかし天空の回廊の背景には「国家レベルの謀略」のような物があったのに対し、本作品はもう少しリアルな感じ。商業登山を背景として、登山現場や登山シーンなどが、ディテール細かに描かれていく。もしや零下50度の嵐の山に、作者は立ったのではないかと思わせるようなリアル感。山好きにはもちろん、そうでなくてもページを捲る手に汗がにじむ。
ハラハラドキドキ、そして絶望からの生還。スカっと読み終われる感じは、氏ならでは。この暑い季節に、胸熱くなり背筋は凍る、オススメの良作品です。
紙の本
山岳小説では随一!まるで8000m峰の登山を疑似体験できる描写!
2016/07/27 20:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界第2位の高峰にして、カラコルム山脈の最高峰K2。その登攀ルートは世界最高峰エベレストよりもはるかに難度が高く、その山容からも「山の中の山」とも評されます。登場人物たちにとって、なぜK2が「還るべき場所」なのか。文庫で600ページに及ぶ大作ですが、全く飽きさせることなく物語に没入できます。
標高8000mを超える領域がいかに人間にとって生命を脅かされる危険な場所であり、そのような高峰の登攀とはどのような作業であるのか、リアリティ抜群な描写でどんどん引き込まれていきます。
8000m峰の頂上からの雄大な眺望はこの作品を読んでみて是非、見てみたいとは思います。でも実際に登ってみようという気には残念ながらなれません。あまりに危険過ぎます…。