紙の本
基一郎の行動力に脱帽
2019/08/12 22:28
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1部は破天荒な病院創設者・楡基一郎を中心に展開していきます。この人のスケールに比べてほかの男性陣の器の小さいことと言ったら・・・。
紙の本
楡家の人びと 第一部
2022/12/30 19:15
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
基本的には作者の生まれた家を参考にしつつ、『魔の山』的な時間感覚を問題意識にのせながら大正時代から昭和にかけての時代を描いている。
ドイツで精神医学を学んだ「ドクトル・メジチーネ」楡基一郎を中心とした楡家の人々を描く群像劇。基一郎は医学的には根拠の無い事でも、自信たっぷりに診断してみせ、直してみせる。精神病院だから暗示療法になっているのだろうが、作品の意図としてはそうは描かれていないと思う。基一郎のやりかたを絶対視する人々と、疑問視する人々、家族や書生、使用人、患者を含めた多くの人々が交差していく。
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企画コーナー「追悼- Steve Jobs・北杜夫」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。
展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/11/1-12/22まで】
湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1604136
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父の本棚から抜き取って読み始めたのは中学生の頃か高校生になってからのことか定かではありませんが、その頃読んだ本は立派なケース入りの分厚い単行本でした。つい最近逝去された北杜夫さんのマンボウシリーズも楽しく読みましたが、この「楡家の人びと」に代表される純文学といわれる数々の作品も愛読していました。本屋さんの店頭には”追悼北杜夫”の帯がついた文庫本が並んだので早速買い求め懐かしく読みました。
この小説は、大正末期から昭和にかけて東京の青山にあった楡病院(精神病院)を舞台にした物語です。院長の楡基一郎が一代にして築き上げたその病院には楡家の家族はもとより、従業員から患者さんまで大勢が混然一体となって過ごしています。その活気ある病院が関東大震災を経て、暗い時代に同調するように傾いてゆく様子がこの第一部ではかかれています。何といっても院長の楡基一郎のキャラクターが秀逸で、その子供たち特に三人の娘たちが三者三様の人生を歩む姿が印象的でした。
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どくとるまんぼう以来、二作品目。
舞台は第一次大戦後の日本。
風変わりな楡病院の人々。
楡基一郎が死ぬところまでが第一部でした。
まず、凄く表現が細かい!
登場人物みな個性的なキャラクターなのですが、とても繊細に表現されていて、まるで知古の友人のように感じます。
感情移入はしにくいけれど。
続きが楽しみです。
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大正時代の中ごろの日本、それは自分の祖父母が生まれる少し前の時代。 楡病院の創始者基一郎の楽天的で憎めない性格とそれに影響された楡家の貴賎あいまった人々の人間模様と生活。
原敬内閣などその当時の世相や、文学も織り交ぜての表現
時に、ちょっと重たいな、と思って読むスピードが遅くなったこともあるが、ちょっと気を楽にして読めば、それはそれで愉快でありながら、時にちょっと悲哀さも感じさせる面白い文学だと思いました。
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本日読み終わりました。楡家の人々の人生を描いた本。楡家は精神病院てことで、付近では有名だったけれど、歴史から見たら小さな存在(こんなことを言ったら院代に怒られそうだ)。でも一人一人にはものすごいドラマがあって、そういう営みが社会を作っている。人間の営みは小さいけれど、大きいと思った。思わず、東日本大震災のことを考えた。
人の営みを偉い、偉くないといった、評価はできないのではないか。皆、懸命に生きてるんだものね。
人物が個性的で、楡ワールドにどっぷり漬かってしまった。
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大病院の院長とその一族や患者の話。科が「精神科」なのでそこに惹かれて読んでみました。最初はなかなか面白かったのですが、後半からはあまり読み進む気になれなかったです。
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前々から読みたいなと思っていた作品を遂に読み始めた。
評価は読了まで保留。
ただ非常に今後への期待が高まる第一部だった。
奇天烈な一家の物語でありながら、最近の作家にありがちな奇抜あるいは直接的な表現等は特になく、ある意味淡々と描かれている。
これは文体含めてこの作家の力量が相当なものであることを示すものだと思う。また戦前の不穏になっていく空気感の描写が秀逸。
とにかく久々に重厚感ある作品に会った気がする、次が楽しみ楽しみ。
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8月のお盆休みに読みはじめ、1部2部と一気読みしたのdが、3部でなぜかページをめくる指がにぶり、3部だけは読破に2週間くらいかかってしまったのではないか。
平成の世に読むと感覚が鈍りがちだが、戦前の日本のお話と思えばなんというブルジョアジーなお話だろうとおもう。
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北杜夫がトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』に触発されて書いた作品。大正時代の精神科病院を舞台に、楡家と関わる人々の個々の生き様が描きだされます。
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何十年も前に書かれた作品だけど、一切色褪せていないのがまず凄い。明治以降の近現代に起こった重大事件を縦軸に、その中を生き抜いた楡家の人々の上に起こるイベントを横軸に、飽きさせないように緩急つけた物語が紡がれる。一家の大黒柱の一代記なのかなと思いきや、上巻の最後で呆気なく退場。中心人物を入れ替えながら、一家の栄枯盛衰が綴られていくんでしょうか。ここからの展開も楽しみです。
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じつに面白かった。なんといっても登場する人々がそれぞれユニークで行動も面白い。もちろん楽しいことばかりでなく、大変なことも起こるのだが、それを実によく乗り越えている。1部だけdも終わりそうなものを、これがどう続いていくのか、今から楽しみだ。
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作家本人のエッセイを読むと和製「ブッデンブローグ家の人々」らしいです。自分の家族をモデルにし執筆のためにインタビューを入念にしたらしいので書かれている内容はかなり事実に基づいているとのこと。物語としても面白いですが、当時の世相等を知る上での上等な資料としても面白い(貴重)です。
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時は大正時代。時代の流れのなかで紡がれる楡家の人々の物語。
物語はその中心地である楡病院の院長にして創始者である楡基一郎の一代記でもある。
楡基一郎は立志伝中の人である。大ぼらふきの気質にして、終始、躁状態を思わせるようなハイテンションで行動が変人。当時の時勢に乗って衆議院議員にもなるほどの野心家でもある。
そして、彼を取り巻く家族がまた個性が際立っていてなかなか楽しい。
印象に残る登場人物では、父・基一郎を尊敬して止まず、偉大な父を厳格に崇め奉っている長女の龍子。
ぼんやりしていてどこか抜けているが、おませなところもある三女の桃子。
龍子と桃子に挟まれてどっちつかずの存在である次女・聖子。
長女・龍子の夫にして「マスオさん」として楡病院を継ぐことになっている徹吉。
家族ではないが楡病院の事務長として権力をふるい、鶴のように歩く腰巾着の院代・勝俣秀吉などなど。
この物語の登場人物はどこか何かが変で抜けているか、規律が厳しいあまりやはりどこか変で可笑しみのある人々が次から次と登場してきて、魅力溢れる物語を形作っている。
物語の始終、どことなくユーモラスな旋律が底流にあって、物語全体に深刻さが欠けているところがまたいい。
『マンボウ』シリーズでも全開になっていたが、作者に流れるユーモアのセンスがこの大河な物語に彩りを添えている。
この楡病院の家族はどことなく作者の家族が投射されているように思われ、私は楡基一郎は躁状態の時の作者本人のことかと思っていたら、どうも大ぼらふきだったという祖父がモデルのようですね。(笑)
これほどの家族の大河な物語にもかかわらず、出だしはあまり登場しない飯炊きの伊助爺さんの豪快な仕事場面というところが、オペラの序曲にも似てわくわく感を醸し出していい。
特に序盤の病院職員全員を集めての賞与式の場面は、それぞれの個性と病院の雰囲気を端的に伝えてくれていてなかなか楽しかった。
時代は大正が終わり昭和の第二部に引き継がれる。
三島由紀夫が絶賛したという本書。第二部の展開が楽しみな限りです。