紙の本
☆超絶技巧のメカニズム☆
2024/05/19 23:31
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアニストは、もちろん天性の才能も必要ですが、毎日の地道な努力のお蔭で、ピアノを弾くのに適した身体構造、脳機能等を構築していっていることを、実験データを交えて解析されているところが、他のピアノ教本等にはない点で面白かったです。
この本を何度も読み返して、自身の練習方法も見直すと、思わぬ効果が生まれるかもしれません。
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【第1章:超絶技巧を可能にする脳】
ピアニストの洗練された動きの1つの要因は《脳》にある。
確かに、生まれた時は誰もが同じ状態であるが、早い段階からの教育によって、ピアニスト特有の脳(手指等への信号の伝達が強くなり、沢山の情報を処理できるよう省エネ化される脳)へと発達していくことが分かった。
早期教育がこの様な脳への発達を促すのによく役立つが、大人になってからであっても脳の機能を引き上げることがある程度可能であることも分かった。
重要なのは、鍵盤を触っているときも、触らずにイメージトレーニングをするときも、ピアノと脳を結びつける時間を多くすることであろう。
【第2章:音を動きに変換するしくみ】
ピアニストは、素人音楽家に比べ、音楽を過去に、現在に、未来に幅広く音楽を見通す力があることが分かった。この力が、即座に演奏できる能力、演奏に表現を膨らませる能力、ミスをカバーする能力等を支えているのだと思った。
聴覚を掌る場所だけでなく、身体の動きを掌る部位でもピアニストの脳が反応していることに驚き!
【第3章:音楽家の耳】
音楽家に求められるのは《高い演奏技術》だけではなく《良い耳》も重要であることを、実験記録等を通して解説していく。
【第4章:楽譜を読み、記憶する脳】
演奏をする上で大事な《楽譜の読み取り能力》について、ピアニストはどのように素早く、正確に、沢山の情報を読み取り、かつ、その情報をどう運動機能に反映させているか、また、楽譜の情報をどのように記憶しているかを繙いていく。
【第5章:ピアニストの故障】
ピアノ演奏に付き纏う、心身の故障についての話です。
【第6章:ピアニストの省エネ術】
1日に何時間も練習をこなし、本番では何曲も弾きこなすピアニストの手や腕は、疲れ知らずなのか?
この答えのキーワードは《省エネ》にあった。
アマチュアは正確な打鍵を意識しすぎるあまり、筋肉を硬直させて演奏してしまうようだが、その硬直自体が無駄なエネルギーとなっている。正しいフォームから腕のしなり、打鍵直後の脱力等が、《疲れ知らずのピアニスト》の武器であることが分かった。
図解もあり、アマチュアがいかにエネルギーを無駄にしているかがよく分かった。
【第7章:超絶技巧を支える運動機能】
ピアニストの速く正確な打鍵はどのように確立されているのか。
手指の独立性が音楽家でない人と比べると高いことはわかってはいたが、身体的構造だけでなく、長年の練習の積み重ねにより、脳からの洗練された伝達回路により、全ての指がむらなく独立性を維持できるようになったことが分かった。また、指先だけでなく、肘等の腕全体の動かし方も確立していったことが分かった。
それにしても、「練習時間1日当たり3時間45分」の壁は、アマチュア演奏家にはなかなか厳しい壁ですね・・・
【第8章:感動を生み出す演奏】
音色を自在に操るピアニストのスキルについて触れていきます。
紙の本
話すように弾いている
2020/09/22 18:09
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:翔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアニストは、話すように弾いているというのが一番印象に残っています。あらかじめ次に話す言葉を念頭に置きながら、今話す言葉の口の形を自然に変えるというのが話すときに起こることです。それと同じように、ピアノも弾いているみたいです。
電子書籍
☆超絶技巧のメカニズム☆
2024/05/19 23:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアニストは、もちろん天性の才能も必要ですが、毎日の地道な努力のお蔭で、ピアノを弾くのに適した身体構造、脳機能等を構築していっていることを、実験データを交えて解析されているところが、他のピアノ教本等にはない点で面白かったです。
この本を何度も読み返して、自身の練習方法も見直すと、思わぬ効果が生まれるかもしれません。
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【第1章:超絶技巧を可能にする脳】
ピアニストの洗練された動きの1つの要因は《脳》にある。
確かに、生まれた時は誰もが同じ状態であるが、早い段階からの教育によって、ピアニスト特有の脳(手指等への信号の伝達が強くなり、沢山の情報を処理できるよう省エネ化される脳)へと発達していくことが分かった。
早期教育がこの様な脳への発達を促すのによく役立つが、大人になってからであっても脳の機能を引き上げることがある程度可能であることも分かった。
重要なのは、鍵盤を触っているときも、触らずにイメージトレーニングをするときも、ピアノと脳を結びつける時間を多くすることであろう。
【第2章:音を動きに変換するしくみ】
ピアニストは、素人音楽家に比べ、音楽を過去に、現在に、未来に幅広く音楽を見通す力があることが分かった。この力が、即座に演奏できる能力、演奏に表現を膨らませる能力、ミスをカバーする能力等を支えているのだと思った。
聴覚を掌る場所だけでなく、身体の動きを掌る部位でもピアニストの脳が反応していることに驚き!
【第3章:音楽家の耳】
音楽家に求められるのは《高い演奏技術》だけではなく《良い耳》も重要であることを、実験記録等を通して解説していく。
【第4章:楽譜を読み、記憶する脳】
演奏をする上で大事な《楽譜の読み取り能力》について、ピアニストはどのように素早く、正確に、沢山の情報を読み取り、かつ、その情報をどう運動機能に反映させているか、また、楽譜の情報をどのように記憶しているかを繙いていく。
【第5章:ピアニストの故障】
ピアノ演奏に付き纏う、心身の故障についての話です。
【第6章:ピアニストの省エネ術】
1日に何時間も練習をこなし、本番では何曲も弾きこなすピアニストの手や腕は、疲れ知らずなのか?
この答えのキーワードは《省エネ》にあった。
アマチュアは正確な打鍵を意識しすぎるあまり、筋肉を硬直させて演奏してしまうようだが、その硬直自体が無駄なエネルギーとなっている。正しいフォームから腕のしなり、打鍵直後の脱力等が、《疲れ知らずのピアニスト》の武器であることが分かった。
図解もあり、アマチュアがいかにエネルギーを無駄にしているかがよく分かった。
【第7章:超絶技巧を支える運動機能】
ピアニストの速く正確な打鍵はどのように確立されているのか。
手指の独立性が音楽家でない人と比べると高いことはわかってはいたが、身体的構造だけでなく、長年の練習の積み重ねにより、脳からの洗練された伝達回路により、全ての指がむらなく独立性を維持できるようになったことが分かった。また、指先だけでなく、肘等の腕全体の動かし方も確立していったことが分かった。
それにしても、「練習時間1日当たり3時間45分」の壁は、アマチュア演奏家にはなかなか厳しい壁ですね・・・
【第8章:感動を生み出す演奏】
音色を自在に操るピアニストのスキルについて触れていきます。
紙の本
凄く納得
2022/03/22 15:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
難しい本かと思って覚悟して読み始めたが、とても分りやすく、しかも著者もピアノを弾かれる方なので的確な表現。
ピアノを弾くものにとっては当たり前に思っていたことが、実は永年の間に培われた特殊能力的?!ものだったと再発見して引き込まれた。
これを読む限りでは、ピアノを練習することは、脳の刺激に欠かせないことだと感じて、より練習に励もうと思った。興味深かった。
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ピアニストではなくても非常に参考になる本だと思う。
脱力などの定義が客観的で明確。
そして、なによりも演奏障害についてジストニアをしっかりととりあげている。その治療法や予防法もある程度の知識を得ることができる。
一般的に音楽教師達の間で言われてきたことも、科学的に裏付けがとれる部分なども多いのだなあ、となるほどと思った。
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ピアニストはアーティストでもありアスリートでもあるようだ。
科学的な側面からピアニストを見ると、天才的なピアニストは天才的な努力ができた人、
もしくは努力の仕方がうまかった人なのだろうと思う。
これはどの分野にもきっと当てはまる。
驚異的なのは指の動きだけでは無かった。
初見演奏では何秒か先の楽譜を先読みして蓄積して感情を携えて演奏するし、
何時間も弾くための省エネ演奏も獲得していた。
それとは引き換えに脳が変化し過ぎることによって、指が思い通りにコントロールできなくなる。
そんな症状がピアニストを苦しめているなんて知らなかった。
人間の神秘が凝縮されている。
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ピアニストが超絶技巧を駆使できるのは、長年に渡る長時間の練習により脳が変化しているからだという事を、様々な実験を通して結論付けている。ピアニストの卓越した技術と脳の働きの関連性を研究した大変興味深い内容であり、ピアニストを目指す人は必読の一冊。
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丸善@OAZOの平積で興味を持って購入。あっというまに読了。
ピアニストが「ピアノを弾く」ときに、脳の何の機能を司る部分がどんな風に反応しているのか・・・具体的にはこんなテーマを取り上げています。
・ピアノを弾くために指を動かす指令の仕組み
・音を聴いて違いを判断する仕組み
・楽譜を読んで、暗譜する仕組み
・脳の機能に異常が現れる職業病
(書籍中のタイトルとは異なる、私なりの理解です)
研究データで裏付ける努力はしてますが、なにぶん未確立分野と思われますので、理論としての説得力が弱いのが難点。しかし、音楽をしている人は経験的に「あるある!」とうなずけるところが多く、楽しめる書籍と思います。
一番のヒットは、「ピアニストの場合、指を一切動かしていないにもかかわらず、ただ、ピアノの音を聴くだけで、指を動かすための神経細胞が活動した」(36p)。
私もそうですが、合唱団の音取り中になぜか指が動き、エアピアノしてしまう...。指を動かすとより具体的な音のイメージが湧くのかな、と苦笑した次第です。
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ま、ピアニストはなんであんなに指が動くんですかねぇっていうのを、脳科学の部分から探った1冊。
面白かったですよ。
結局のところ、アスリートが運動によって自身の体を変えて行くように、ピアニストは脳を変えて指の運動を可能にしてるってことなんだけど、漠然とわかっていたことが明確になったかな…。
プロと素人を比較してっていうのが、よく出てたんだけど、その辺の線引きがちょっと曖昧ですっきりしない感はいなめないんですけどね。
と、脳を育てる意味でも、やるんだったらピアノじゃないとダメ、と。電子ピアノじゃだめだよ、ってそこまでつっこんで欲しかったなぁ。
タッチの微妙さを会得するからこそ、脳神経が増殖し素早い伝達経路ができる。だから、ただ指を動かすだけみたいな電子ピアノじゃ、そういう脳の発達はあんま期待できないよって。
ま、それを書いてしまうと、メーカーから大ブーイングになるんでしょうかねぇ。
ともあれ、次回作も期待してますm(__)m
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タイトルや書評から、面白い本に違いないという期待値が高すぎたようで、思ったほど夢中になって読むということはなかったが、読みやすいし、内容的にもまずます面白い。
ピアニストがどうやって弾いているかということに科学的なメスを入れ、分かりやすく説明されている。もっとも、その研究方法は意外に単純で、本当のところというか、ピアニストにとっての真髄に当たるような部分までの道のりは、まだ長そうだ。それでも、ピアノが上手いということが、指の機能の向上というより、主に脳の機能向上によるものという説明などはなかなか興味深い。ゆえに、ピアノは早期教育が重要ということも納得がいった。
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ピアニストの脳や身体に演奏時にどのようなことが発生しているのかを研究した本。
ピアニストがピアノの音を聴いている時には音を聴くための神経細胞と指を動かすための神経細胞が活動している、と。
確かにピアノの音を聴くと、指を動かしたくなるし、動かせない時には頭の中で指を動かしている。
あと、ピアノが上手な人は、指だけではなく、腕の動きを使って強い打鍵をうみだしているそうです。
ピアノを専攻している音大生に、どの程度の練習を毎日していれば演奏スキルが上達したかを調べたら、1日あたり3時間45分だそう。
(2年間の調査)
(プロになるのだったらそれくらいは練習するだろうと思うけど、一般の人にその練習量はきついよね……。)
あと、1日の4時間練習するにしても、ずっと引き続けるのがいいわけではないらしい。
休憩をはさんで何回かにわけて練習するけど、この1回あたりの練習時間(休憩と次の休憩の間)が長いピアニストほどよい演奏ができるそうです。
あと、ピアノの練習は加齢による衰えも防ぐとか。
現在からさかのぼって過去10年間のピアノ練習量が多い人ほど、手指の運動能力が衰えならしい。
あと、演奏している時と聴いている時の違いも興味深い。
ピアノを演奏している時のほうが、聴いているときよりも心拍数が高いらしい。
また、演奏している時の方が呼吸が深いらしいです。
それもわかる気がする。
演奏している時の方が自分に深くむきあえる……ところがあるよね。
音楽に関わりがある人、特にピアノを弾いている人は学ぶものがとても多い本です。
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読み物、というよりも論文のような内容で、ピアニストの脳と身体がどのような働きをしているのか、音楽家でない人との違いは何かなどが、豊富なエビデンスと共に述べられている。論文として見ると、ピアニストの脳と身体についての研究分野を切り開く意欲的な作品なのかもしれないが、読み物としてみると、脳の仕組みを解明した、という点にとどまって、読者への示唆やメッセージが乏しいという不満は残る。
あえて本書を一般化して、自分へのメッセージを吸い上げるとすると、「結局は練習量がものを言う」ということと、「無駄な力を使わない(そしてそれは非常に難しい)」という2点だろうか。膨大な練習量によって脳がここまで進化できるということ、プロだからこそ分かっている力の抜きどころ、この2点を身をもって感じられるという点で、自己啓発に役立てることもできると思う。
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新刊で出たときから気になっていた。
ピアノは子供の頃からやっていたが、あまりうまくならなかった。
指も回らず、譜読みも遅い・・・。脱力って何?って感じだった。
第4章あたりまでは、脳科学のような内容。
音感は、大人になっても身につけることができること。
初見演奏には、ワーキングメモリ(短期記憶)が重要だが、これはトレーニングしてもあまり効果はないとか。
ジストニアや失音楽症の話も出てきた。
オリヴァー・サックスの『音楽嗜好症』でも出てきたことを思い出した。
第5章以降は、解剖学や運動生理学的なお話。
脱力について、自分が知っていたことよりは突っ込んで書かれていたとは思うが、だからといって、実践できるかどうか。
全体としては、非常に興味深く読むことが出来た。
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自身がピアノを弾く知識を生かし、ピアニストがどのような能力を使ってピアノを弾いているのか、を解き明かそうと科学的に取り組んだ意欲作。
細々と研究に取り組んでいる感は否めず、深く掘り下げた内容にはまだなっていないが、いくつかの側面から示唆を得ることが出来た。
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以下覚え書き
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左右10本の指を驚くほどのスピードで動かし、華麗な調べで観客を魅了する一流ピアニストたち。彼らと凡人を隔てるものは何か。
ピアノは比較的身近な楽器であり、小さい頃、ピアノを習っていたという人はかなりの数に上るだろう。だがその中から一流のピアニストになるのはほんの一握り。多くの人は途中で脱落していく。
本書では、その違いを「才能があるから」とか「努力をしたから」とか抽象的な話で片付けず、科学的に見たらどこが違うのかという視点で探っている。
非常におもしろい本である。
指を鍛えるとはどういうことか。脱力が大切なのはなぜか。音楽教育は本当に早いうちに始めたほうがよいのか。などなど、話題は多岐。
MRIや指につける測定装置を駆使して、ピアニストとアマチュアの違いを探り、その理由に迫っていく。
どのような仮説をたてて何を立証していくのかを見ていくだけでも楽しい。
音楽家の脳について、意外と多くの研究がなされているのを知ったのも新鮮だった。巻末に参考文献一覧あり。
研究のために高級ピアノのスタインウェイを一度分解してセンサーを埋め込んだなんてぶっ飛んだ話もある。ほか、ピアニストに多い疾患があるとか、同じ交響曲を聴いていても音楽家は自分の楽器の音によく反応している(=ピアニストとバイオリニストでは聴いている音楽が微妙に違う)とか、裏話も楽しい。
・・・但し、非常に残念なことに、本書が自分にとってどのように役に立つのか、結局よくわからず仕舞い。おもしろかったので、よいといえばよいのだが。ピアニストを本気で目指す人は読んで損はないのでは。
この分野、まだまだ可能性があると思う。さらなる発展を遠巻きに応援したい。
*自分も子どもの頃、ピアノを習っていた1人。脱力しろってよくいわれたけど、こういうことだったのかーと今更思う。あと、最後の発表会でドビュッシーの「月の光」を弾いて、それなりに弾けたじゃんと思ったけど、その頃来日したスタニスラフ・ブーニンが同じ曲を弾いているのを聴いて、ああとんでもなく違うわとがっくりきたことなんかを思い出しました・・・(^^;)。