紙の本
林芙美子に何かある
2024/06/03 09:13
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの「ナニカアル」というのは、林芙美子がペン部隊の一員として中国へ行き、戦地をルポした「北岸部隊」の冒頭に掲げられた自作の詩の一節だ、「なにかある・・・/私はいま生きてゐる」、漢口一番乗りとして新聞に大きく取り上げられたらしい、しかし、またそのことが戦後、戦争協力者のレッテルを張られた彼女を苦しめていくことにもなる、南方でのいろいろな出来事、妊娠、久米正次との不仲、どこまでが真実なのか、とても興味がある。窪川(佐多)稲子らほかの女流作家も従軍したことや恋人・斎藤謙太郎にモデルがいたことは事実のようだ。この作品を読みながら、本当にこれは林芙美子の小説、日記ではないのかと何度も錯覚に陥ってしまったが、これは、もちろん桐野夏生の渾身の小説、夢中で読了した
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林芙美子を近くに感じる
2022/08/11 19:24
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
林芙美子の戦中の記録などを掘り起こし、激動の時代に生きた女性作家の姿を小説としてよみがえらせた。
林芙美子=「放浪記」というイメージしかなかったので、売れっ子作家、従軍記者(戦争協力作家としての批判は知られるが)としての姿は新鮮であった。しかし、この部分は、史実を著者の想像力で埋めている。
芙美子が当時の文壇でどんな扱いを受けていたかを含め、桐野夏生さんのジェンダーへのまなざしも光る。
あまり関心のなかった人物をここまで近く感じられるのは、非常に稀有な体験だ。
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「放浪記」で有名な林芙美子の話だったので驚いた。これはノンフィクションなのでしょうか?調べても夫「緑敏」は実在だけど、実子の「晋」は出てきませんね(「泰」を養子に迎えたとされている)。エピローグでもそれを匂わす記載がありますが。。
戦中の話ですが、結構おもしろく読めました。
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この本を読んでいる間に森光子が亡くなった。森光子と言えば、「時間ですよ」、では無く、今日のところは「放浪記」、ですね。
さて、この本、その「放浪記」の作者、林芙美子を題材に、桐野夏生が林芙美子になりきって、戦時中の南方紀行を記す。
ナニカアル、と思って読むと、多少肩透かし。至極真っ当に、戦時下の鬱屈した世情が醸し出され、その中における女流作家の置かれた立場と、そして不実を行う男女の機微が書き記される。
作中、芙美子の心情として『人間は急に心を分けたり、心を閉じたりすることなどできない生き物なのだ。その人間の不可思議さについて考えを巡らすのが、小説を書くという、私の仕事ではなかったか』と記されるが、正にそんな感じ。
事実を元に、その記録に残らない部分に自らの想像力で物語を付け加えるって、なかなか凄い。
ただ、検閲があると分っている筈なのに、書かれる手紙の内容があまりに緩んでいるのがとても気になって仕方なかった。
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純粋な恋愛小説。ナニカアル、もっと何かあるんじゃないかと読み進めて行ったが、あれっ?という感じで終わってしまった感があった。期待値が高かったせいか?
それにしても桐野夏生という作家は色んな作品が書けるものだ。
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戦中に活躍した女性作家の遺稿が9割9分、残りは子孫と知人の書簡のやり取り。戦時の南方の戦場以外の雰囲気・濃厚な緑の感覚が伝わる。戦時の、かつ不義の恋についてが題材だからか、やや暗め。
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桐野夏生は駄作が少ないですよね。
毎回結構驚かされていますね、良い意味で。
とても自由に小説を書いている気がします
OUTでブレークして グロテスク、柔らかな頬、東京島、女神紀、メタボラ...
ジャンル不定の とてもワクワクする作家さんです。
この題材も、え? 林芙美子?
とも思いましたが、ぐいぐい物語世界に引き込まれてました。
読後感、とてもいい感じでした。「放浪記」ちょっと読んでみたくなりました。(ドラマは昔見たんですが、)
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2014/02/12読了。『放浪記』が有名な林芙美子の半生を描いた作品です。この小説のなかに出てくる落合の邸宅、いまは林芙美子記念館、の近くに住んでいたことがあり、その雰囲気を思い出しながら読みました。
第二次世界大戦中に戦線の様子を伝えるために作家が戦地に派遣されていたこと、この小説で初めて知りました。危険な地に赴いて行動も作品内容にも自由はあまりないなか、年下の新聞記者に恋をして強くしたたかに生きる姿がとても濃密に書かれています。
最後の方、放浪しつづけた母と芙美子の会話がよかった。女性におすすめの作品です。
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以前から桐野先生が林芙美子が好きなのは知っていましたが、こんな作品ができるとは驚きです。作家が別の作家になりきって小説を書くというのは大変な苦労が要るのだろうと思います。よく調べて、想像力を最大限に駆使したのがよく分かります。
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戦時中に作家を戦地に派遣してルポを書かせてたなんて知らなかった。
読み応えあったが、面白かったかと言われると…イマイチ。
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凄い。
桐野夏生を執念というか、熱の量というか…、凄い。
それと、世の中にはまだまだ知らなかったことがいっぱいあるなあ
と、改めて認識させてくれた。
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林芙美子女史の半生記のような自叙伝風な小説。
最初はいまいち、後半になるとドキドキの進展になります。
太平洋戦争を背景にしたちょっと艶やかな女流作家の一生でした。
こんど林女史の本を読もうと思います。
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始めから終わりまでぐいぐい読ませる内容で、読み応えあり。
実在の作家、しかもそれほど昔の人ではない著名人を主人公としてこんな小説が書けるというのはすごいと思った。
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劇中劇?フィクション?ノンフィクション?。史実に忠実な部分が多いから、時代がそうさせたのか?と引き込まれる。
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プロローグとエピローグが主人公の周辺人物同士による(しかも、直接は物語に登場しない者の)手紙のやり取りという斬新なかんじで始まり、面白かった。最初は、訳が分からず、戸惑ったが、一読した際に、プロローグを読み返してみたら、様々な物語の伏線があり、とっても素敵なプロローグとなっており、桐野先生のすごさがわかった。
また、中身もすっごく現実に迫っているな。と思って、読んでいたら、登場人物もほとんどの出来事も史実に基づいて描かれていることを知り、とっても面白かった。主人公の林芙美子さんが戦時中の女流作家であり、海外の戦地に赴いていたという事実も知らなかったので新鮮に読めた。読了後の率直な感想は、戦争というのは本当に人の人生を狂わせるものであると思った。さらに、戦時中の教育は本当に怖いものだと思った。軍人や官憲の人を人と思っていないような行動や言動はそういう教育による洗脳の賜物と思うとぞっとした。
芙美子と謙太郎との狂わしい不倫には、戦時中だからこその熱いものがあったのだろう。情熱的で冷酷なこの不倫はとっても読みごたえがあった。