紙の本
全く違う視点
2021/12/04 19:58
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投稿者:TAROLEB - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史で学ぶ島原の乱とは全く異なる視点からの小説で、一気に読了してしまいました。長崎という地が如何に貧しかったか、それを助けたいと思う中間層、争いを始める子供達、いろいろな話が縦横に絡み、最期に繋がる力量に感服しました。必ずしも悲劇で終わらないところも良かったです。
紙の本
蜂起軍が負けるのはわかっていても
2019/09/29 21:56
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
島原の乱を題材にした作品というと、天草四郎時貞を中心にしたものと思ってしまうのだが、この作品は島原の有家村の庄屋、元有馬藩藩士・鬼塚甚右衛門を中心に描かれている。鬼塚の長けた作戦が蜂起軍を勝利に導いていく、しかし多勢に無勢、最後には・・・・という王道のストーリー、ここでの天草四郎はカリスマ性はあるけれど、あまり戦略のことは知らないというポジション。うまい歴史ものというのは、結果がわかっているにもかかわらず、ひょっとしたら、蜂起軍が勝利を収めてしまうではないかというわくわく感がある。この小説がそうで、すっかり鬼塚という初めて知った武将のことを好きになってしまった。
紙の本
久々の骨太作品
2018/12/31 15:04
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
傑作でした。島原の乱を別の角度から描いている。教科書とは違う側面が見れて大変考えさせられた。苛政は虎よりも怖しというか、まさしくその通りである。江戸時代の支配体制がいかに過酷であったかがよくわかる。
その中で自分としての独特の世の接し方、権力に阿らない生き方を見つけた寿安に拍手である。
電子書籍
長大な作品
2022/08/01 09:08
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ作者の「雷電本紀」の流れをくむ 政治・社会への怒り 絶望感を主題として打ち出した長大な作品である。一部と二部とでかなり雰囲気や緊迫感が異なるが、やはり激しい戦いの描写が凄まじい迫力を伝えてくる第二部のほうが読み応えがあるかな。宗教そのものが持つ一種のいかがわしさもいくらか感じることができる。
紙の本
意外な展開で。
2015/06/04 15:18
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投稿者:ほしすたー - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史上の大事件である「島原の乱」。キリシタンの反乱という、という大きな事実は変わりませんが、そこに至るまでの流れ・うねり、教科書等で首謀者とされる人間とは違う主人公達による葛藤、活躍等、乱自体の結末はわかっていますが、徐々に盛り上がっていく感じ等もすばらしく、一気に進みました。
最後に、別の人生を歩んで行った者も描かれており、こうような史実もあったのかと、感動させられました。
面白かったです。
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寡作の人、飯島和一。漸く文庫化なったこの本、満を持して読み始める。
しかし700頁余になる大部を一冊にされると寝っ転がって読んだり通勤で持ち運ぶのはちょっと大変。加えて仕事が忙しく読む時間が殆ど取れず、且つ重厚濃密丹念な文章はサクサク読み進めることは能わず、ひと月掛かって読了。
「黄金旅風」の時から少し歳月が経ち、末次平左衛門が大政商として治める長崎から少し離れたところで起こった「島原の乱」の一部始終が、いつもながらの語り口で描かれていく。
私の田舎は西彼杵のほうで長崎からはまた島原とは違う方角なのだけど、ここもまた遠藤周作が「沈黙」で描いたように隠れキリシタンの里であって、本書に描かれる地味に乏しい土地で過酷な労働に耐え信仰だけを支えに生きる人々の暮らし振りには、今でも残るそうした風情に何となく似たような風景を想像させられる。
小学校の修学旅行では島原へも巡り、その事前勉強で「島原の乱」や原城のことも出てきた記憶があるのだけれど、覚えている天草四郎や乱のイメージとは全く異なる姿を、作者は淡々と提示する。
文章の確かさ、戦の場面の精緻さ、サイドストーリーにも手抜きの無い語られ方は相変わらず期待通りも、誰にフォーカスを当てているのかも分り難く、何より殆ど救いの無いお話で、最後の寿安の話が星が出る前の希望の話になったのか、鬼塚監物や蜂起勢の名もなき人たちの死に様を見た時には、聊かの違和感を思う。
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圧政は圧制を生み、歪は下へ。
最下層は望みもなくただどうにか生き耐える。
島原の乱。
著者の史実への誠実さが、深く重く心にのしかかる。
それは読み終えてほっとするほど、強烈に辛い事実。
いま。時代が変わっても変わらぬに悪政。過去から学ぶことはたくさんあるのに。
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期待通りの読み応え。
ジリジリと導火線を這う火花のような緊張感。
その場にいるような臨場感。
これは読まないと。
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数年前に単行本を購入したものの、運悪く落丁本だった為、途中で挫折。文庫本で再挑戦した。
歴史の事実として結末が知れているので、胸のすく場面に出くわしても裏では常にやりきれなさを感じながら読むこととなった。ジュアンだけが唯一の救い。
故郷のお話というのも個人的な高評価の理由。
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枝葉の多い文章でくどく、私には少し読み辛かった。でも独特の勢いというか熱を持った小説で、「読み辛いなー」と思いながらも読むことをやめられなかった。話に捕らわれた感じだった。
話は、島原の乱を題材にしている。昔歴史の教科書でそういう出来事があったことと天草四郎の名前は覚えていたけれど、詳細については全く知らなかったので、とても興味深かった。あの時代の九州について書かれた本を読んだのは初めてだった。
人の世のやるせなさ、その中で強く誇り高く生きる人達の生の眩しさ。人の宿命、使命…そういうことを考えながら読んだ。
私も、逆境にあっても顔を上げて生きていたいと思った。
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飯島和一は敬愛する作家さんの一人。とあるノンフィクション作家が 飯島和一を読むと 他の小説が読めなくなる、と書いてあったのもちょっと分かります。
神は細部に宿る。という言葉を思い出します。
昔は 詳細な記述や描写必要なんかなぁと たとえば中学生のころ初めて「レミゼラブル」読んだときは、長々とある戦争記述部分なんかは余計じゃない?と思っていたんですが、
いつのまにか、そういう一見 そこまで詳細に書かんでも、という不満がなくなりました。むしろ、そのような細部が全体のテーマをより重厚なものにしているのかなと、そういうふうに思えるようになってきました。
この作品は、重層的で非常によかったです。物語としては「雷電本紀」なんかのほうがすらすらよめたけど、内容の濃さ?的にはこちらの方が より深みを感じます。
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圧倒される。著者の作品でも一番流される血の量が多いけど。
文庫本のカバーで紹介されている過去の二作品、なるほどと頷く。確かに繋がっている。単行本が出てから時間が経つので忘れていました。
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ひたすら暗い。重い。
島原の乱がベースだけど
一般的にイメージされてる内容だと思うと
ガツンとやられます。
それくらい深い。重い。暗い。
同じ長崎を舞台にした
「黄金旅風」とあわせて是非。
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オリンピックの年にしか新作が出ない作家、飯嶋和一の最新作(の文庫化、700頁)。前作『黄金旅風』の続編にも若干なっている。天草四郎がほとんど出てこない「島原の乱」。主題が主題だけに救いがない話しだけれど、とうぜんのように読み応えあり。「民衆史観」とも言えないが、飯嶋独自の視点と史観がしっかりしているとこうなるのだと思う。権力者の野望と人殺しだけを「歴史」と見るような凡百の歴史小説とはまったく異なる。ただ前作までの文章に比して、今回は同じ表現が重要なシーンでときおり出てくるのは少し気になった。でも「飯嶋和一にはずれなし」は継続中。
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島原の乱をテーマに描かれた作品。
発端となったのは飢餓からくる伝染病で、藩の悪政に対抗してやがてキリシタンが立ち上がり武装蜂起となっていく。
しかしこの作品の主人公は天草四郎ではなく、争いをなるべく止め、民を助けようとする青年寿安や庄屋の甚右衛門や医者の恵舟である。
島原・長崎の男気あふれる人物たちの物語は読んでいてすがすがしい。
ハッピーエンドとはならないが、心意気の強さは伝わる。